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大気圧高周波誘導結合プラズマと湿式処理の連続処理による高イオン注入量レジ

第 5 章 次世代に向けた新しい枚葉回転湿式処理技術の開発(乾式処理と湿式処理の融合技

5.1 大気圧高周波誘導結合プラズマと湿式処理の連続処理による高イオン注入量レジ

5.1.1 緒言

従来、半導体素子製造のレジスト除去工程では、酸素イオンによるアッシング(灰化)

と浸漬湿式処理によるアッシング残渣除去の組み合わせにより行われてきた。しかし、

3Xnm、2Xnm、1Xnmへプロセスの微細化が進む中、低誘電率層間絶縁膜(Low-膜)の登

場によりプラズマアッシングが Low-膜にもたらすダメージの大きさが問題となってきた。

そのため、レジスト除去の全ての工程をよりダメージの少ない湿式処理により行いたいと いう要求が強くなっている。したがって、その要求にこたえるため、これまで薬液と物理 的力の併用による除去法(1)、超高温の SPM(Sulfuric Peroxyde Mixture)を用いた除去法(2)、 超臨界流体を用いた除去法(3)などが提案されてきた。さらに処理中の再汚染の懸念から、

枚葉回転湿式処理への移行が強く求められ、枚葉回転湿式処理装置を用いた除去法なども 提案されている(4)-(8)。32 nm以降のプロセスではドーズ量1 x 1015 atoms/cm2以上の高い注入 量のイオン照射が行われるため、レジストの上層に非常に堅い炭素化し架橋化したポリマ ー層が形成される。しかし、この膜は SPM などの一般的な化学薬品には溶解しないため 除去することが非常に難しく、湿式処理において大きな課題となっている(図5.1-1)。

そこで、筆者はプラズマ処理で炭化ポリマー層だけを除去し連続して、枚葉回転湿式処 理でレジスト除去および洗浄を行う単一装置内での乾式処理と湿式処理を融合した処理技 術を考案した。

本節では、高ドーズイオン注入レジスト(High Does Ion implanted: HDI)除去における大 気圧高周波誘導結合プラズマ(Atmospheric Inductively Coupled Plasma: AICP)による枚葉回 転乾式処理と薬液による枚葉回転湿式処理を融合した新しい処理技術について述べる。

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図 5.1-1. レジスト除去における問題点(引用元: DuPont EKC)。

5.1.2 大気圧高周波誘導結合プラズマ

プラズマ発生器を枚葉回転湿式装置に搭載するには、大気圧でプラズマを生成できるこ とが不可欠となる。そこで、大気圧高周波誘導結合プラズマ技術に注目した。大気圧高周 波誘導結合プラズマ技術は次のような特徴がある。

(1) 汚染源となる電極を持たないため、非常に清浄である(半導体製造工程で使用可 能)。

(2) 真空系を用いないため、装置構成を簡単化できる(安価)。

(3) 加工対象や試料を差動排気を用いずにそのままプラズマ中に導入できる(連続処 理)。

(4) 高密度のプラズマが生成できるため、高速かつ大量の処理が可能となる(高速・

大量処理)。

しかし、このような利点を持ちながら、これまで低気圧プラズマに比べてプラズマの安 定生成が容易ではなかったが、近年の技術革新により、プラズマガスを選ばず、またガス 流量を抑えた条件でも安定したプラズマを生成できるプラズマ源の技術が開発された。プ ラズマガスの流れや高周波の印加法などを工夫することで、図5.1-2に示すように、一般的

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なアルゴンやヘリウムだけでなく、空気、窒素、酸素、二酸化炭素、及びそれらの混合ガ スを用いた場合でも安定したプラズマを生成できる (9)

5.1-2. AICPによる様々なプラズマ。

図5.1-3に大気圧プラズマを生成するトーチの図を示す。トーチは石英により成型され、

図に示すようにトーチの構造は非常にシンプルである。また、トーチ径は20 mmで非常に 小さく、軽量である。さらに電極を持たないため、半導体製造で最も大きな問題となる金 属汚染などの心配が無い。これらの特徴から筆者らは、この技術を枚葉回転湿式装置に導 入し、乾式処理と湿式処理を一つの装置内で連続処理する技術を考案した。

5.1-3. 大気圧プラズマを生成するトーチの図。

195 5.1.3 枚葉回転乾湿式処理技術の概念

5.1.3.1 プロセスの流れ

図 5.1-4に HDIレジスト除去のプロセスの流れを示す。全ての工程は一つの装置内でそ

れぞれのチャンバーに移動して連続で行われる。a)高ドーズイオン注入によりレジスト表 面に炭化ポリマー膜が形成される、b)プラズマ処理により炭化ポリマー層を除去、c)SOM

(Sulfuric Ozone Mixture)によりレジスト膜を除去、d)APMにより残渣などを除去。

5.1-4. 枚葉回転湿式処理技術とAICP技術の融合によるHDIレジスト除去のプロセスの流れ。

196 5.1.3.2 装置概要

図 5.1-5 に示すように一つの装置内にプラズマトーチと薬液ノズルを搭載し、同じチャ

ック上でチャンバーを移動して連続処理が行われる。また、プラズマ処理でも薬液処理と 同様にウェハを回転させながら、プラズマトーチが走査して処理が行われる。

5.1-5. 枚葉回転湿式処理技術とAICP技術の融合による処理装置の概念。

5.1.4 実験方法

実験には、様々な条件でイオン注入したパターンウェハを用いた。

枚葉回転湿式処理では、Lam Research社スピンエッチャーRST304を使用した。

プラズマ処理は、新たに実験機を作成し行った。プラズマガス種は、酸素および水素を 使用し、キャリアガスとしてヘリウムが用いられた。ガスの混合比はHe:O2及び He:H2=100:1とした。

レジスト除去には、温度は150 ℃のSOMを用いた。

パターン観察は、光学顕微鏡および、SEMにより行い、また、表面粗さ測定はAFM、 膜厚測定はエリプソメータにより行った。

197 5.1.5 実験結果

5.1.5.1 AICPによる炭化ポリマー層の除去

はじめに AICPによる HDIレジストの除去について測定を行った。図 5.1-6に酸素プラ ズマと水素プラズマを照射した場合の HDI レジスト除去について示す。ここで、イオン 注入は、イオン種:P+、ドーズ量:5 x 1015 atoms/cm2、出力:800 Wの条件で行った。試料 とトーチの距離は 2 cm、また、トーチはパターンウェハ上の一箇所に固定して実験を行 った。図に示すように、炭化ポリマー層を有したレジスト膜は酸素プラズマと水素プラズ マの処理により完全に除去できた。また、全剥離時間は酸素プラズマで1秒、水素プラズ マで 10 秒となり、酸素プラズマの方の除去レートが速い。この結果は、HDIレジストに 対して酸素プラズマの方がより強力であることを示し、しかし、同時に基板に強いダメー ジを与える可能性がある。

図5.1-6. 酸素プラズマと水素プラズマを照射した場合のHDIレジスト除去。イオン種:P+、 ドーズ量:5 x 1015 atoms/cm2、出力:800 W 、a) オレンジの部分:レジスト残差。

次にトーチとウェハの距離の効果について調べた。図 5.1-7 に水素プラズマを使用した 場合のトーチとウェハの距離の変化による HDIレジストの除去を示す。ここでイオン注 入の条件は図 5.1-6 と同様である。その結果、炭化ポリマー層を有したレジスト膜は、3 cmの距離では 10秒で完全に除去された。また、5 cmの距離では、完全除去までに 30秒 の処理が必要であった。さらに、7 cm の距離では、30秒の処理でもレジスト膜は除去さ れず、除去レートはトーチとウェハの距離が大きくなると共に減少する。距離が大きい場 合は十分なラジカルがウェハに供給されないことが原因であり、トーチとウェハの距離の 最適化が重要であることが明確になった。