4.2 実験検証
4.2.1 実験方法
表4.1 実験で使用したパワーデバイスとキャパシタ
Power module CAS100H12AM1
Voltage rating 1,200 V
Current rating 168 A (Pulse : 400 A)
Capacitor PEH200YX4470M
Number of parallel connection 1 or 3
Inductor Laminated
bus bar Power module
Capacitors Gate drive circuit
図4.6 実験装置の外観
4.2.2 キャパシタ並列数変更時の寄生インダクタンス評価
図4.7,4.8はSiC-MOSFETモジュールの定格電流である160 Aにおけるターン オフ波形を示し,それぞれキャパシタの並列数を1台および 3台とした結果である。
なお,以下の実験波形は電流プローブの遅延 (20 ns)を考慮している。ターンオフ動 作時の電流変化率did(t)/dtはキャパシタの並列数を変更しても4.7 kA/µsで同等で ある。それに対して,誘導起電力vL はキャパシタの並列数を1台から3台に増大す ることで227 Vから177 Vに低下している。
表4.2は寄生インダクタンスの内訳を示す。解析はデータシートから各素子の値を
50 ns/div -50
0 50 100 150 200 -200 0 200 400 600 800
Voltagevds(t)[V]Currentid(t)[A]
-2 0 2 4 6 8
Turn-offlossEoff[mJ]
図4.7 寄生インダクタンスLloopが34.1 nHのターンオフ波形
抽出し,実験は(3.2)式を用いて一括の寄生インダクタンスを算出した。キャパシタ を3台並列接続することでキャパシタの寄生インダクタンスは等価的に1/3であるた
め,5.7 nHとなる。すなわち,(3.1)式より外付け配線やラミネートバスバーを含め
た寄生インダクタンスLloopは,キャパシタの並列数を1台から3台に増やすことで 25%低減できる。
以下では,データシートの評価条件を寄生インダクタンスLloop を低減した構成で あるキャパシタ3並列 (34.1 nH)と想定し,実機の電力変換装置を模擬したキャパシ
タ1並列のLloop = 45.4 nHにおけるスイッチング損失の増減割合を評価する。
4.2.3 ターンオフ損失の評価結果
図4.7,4.8は電流IDが160 Aにおけるターンオフ波形を示す。この波形からター ンオフ損失を図4.2,4.3に記載のEoff1,Eoff2 に分離した。表4.3は実測のターンオ
50 ns/div -50
0 50 100 150 200 -200 0 200 400 600 800
Voltagevds(t)[V]Currentid(t)[A]
-2 0 2 4 6 8
Turn-offlossEoff[mJ]
図4.8 寄生インダクタンスLloopが45.4 nHのターンオフ波形
表4.2 寄生インダクタンスの内訳
Lcap Ldio Lbus Lloop
Ana. (three caps.) 5.7 nH 10 nH 18.4 nH 34.1 nH
Exp. (three caps.) − − − 37.7 nH
Ana. (one cap.) 17 nH 10 nH 18.4 nH 45.4 nH
Exp. (one cap.) − − − 48.3 nH
フ損失の分離とインピーダンス比による計算値と比較した結果を示す。実測における 損失の差分は次式で算出した。
∆Ex=
(EX(L2) EX(L1) −1
)
×100 [%] (4.10)
ここで,「x」はターンオフ損失の場合は「off1」または「off2」,ターンオン損失の場合 は「on1」または「on2」である。寄生インダクタンスLloopが34.1 nH,45.4 nHのイ
表4.3 ターンオフ損失の実測とインピーダンス比による解析結果
Stray inductance Turn-off loss Impedance ratio Eoff1 Eoff2 Eoff1 Eoff2
34.1 nH 1.87 mJ 2.52 mJ αoff1 = 0.32 45.4 nH 1.86 mJ 2.76 mJ αoff2 = 0.43
Difference ∆ −0.4% +9.8% 0% +8.1%
ンピーダンス比αoff はそれぞれ0.32,0.43である。インピーダンス比αoffを変更し ても電圧が上昇する傾きは14.6 kV/µsで同等である。そのため,寄生インダクタン スLloopが34.1 nHのときターンオフ損失Eoff1が1.87 mJに対して,Lloopが45.4
nHは1.86 mJと同等である。この結果は,(4.2)式による計算結果と一致している。
また,ターンオフ損失Eoff2はLloop = 34.1 nHが2.52 mJに対してLloop = 45.4 nHが2.76 mJであり,9.8%増大している。一方,インピーダンス比αoff1,αoff2 か ら算出されるターンオフ損失Eoff2 の差分∆Eoff2 は(4.4)式より+8.1%と計算され,
実測のターンオフ損失の差分と概ね一致している。
4.2.4 ターンオン損失の評価結果
図4.9,4.10は電流ID が160 Aにおけるターンオン波形を示す。それぞれキャパ シタが1台または3台の波形であり,電流変化率did(t)/dtは3.1 kA/µsである。そ の結果,図4.4,4.5に記載の通り,電流が上昇している期間における誘導起電力に起 因する電圧降下は寄生インダクタンスが大きいほど高くなる。また,還流ダイオード
にSiC-SBDを使用しているためリカバリ電流が生じておらず,本研究の解析方法を
適用可能な条件であることがわかる。
表4.4は取得した実測のターンオン損失を図4.4,4.5に記載のEon1,Eon2 に分離 し,本研究で提案するインピーダンス比による計算値と比較した結果を示す。ター ンオン損失Eon1,Eon2 ともに,寄生インダクタンスが大きい方が低くなっている。
たとえば,ターンオン損失Eon1 は2.95 mJから 2.70 mJに減少し,8.3%低減して いる。このとき寄生インダクタンスLloop が34.1 nH,45.4 nHのインピーダンス比 αonはそれぞれ0.21,0.28であることから,(4.6)式よりターンオン損失Eon1 の差分
50 ns/div -50
0 50 100 150 200 -200 0 200 400 600 800
Voltagevds(t)[V]Currentid(t)[A]
-2 0 2 4 6 8
Turn-onlossEon[mJ]
図4.9 寄生インダクタンスLloopが34.1 nHのターンオン波形
表4.4 ターンオン損失の実測とインピーダンス比による解析結果
Stray inductance Turn-on loss Impedance ratio Eon1 Eon2 Eon1 Eon2 34.1 nH 2.95 mJ 3.72 mJ αon1 = 0.21 45.4 nH 2.70 mJ 3.05 mJ αon2 = 0.28 Difference ∆ −8.3% −18.0% −9.0% −17.2%
∆Eon1 は−9.0%である。すなわち,ターンオン損失の差分は実測値とインピーダン ス比による計算は一致している。同様にして,ターンオン損失Eon2 の差分は実測値
が−18.0%に対して,インピーダンス比による計算値が−17.2%であり,本研究で提
案する手法は妥当と言える。
50 ns/div -50
0 50 100 150 200 -200 0 200 400 600 800
Voltagevds(t)[V]Currentid(t)[A]
-2 0 2 4 6 8
Turn-onlossEon[mJ]
図4.10 寄生インダクタンスLloopが45.4 nHのターンオン波形
4.2.5 インピーダンス比の依存性評価
提案手法の妥当性を検証するため,遮断電流ID を40 A ∼ 160 Aとしてインピー ダンス比αを0.1∼0.5まで変化させたスイッチング試験を実施した。
図4.11はターンオフ損失Eoff1,Eoff2の増減に対するLloop = 45.4 nHのインピー ダンス比αoff の依存性を示す。インピーダンス比αoff は実測の誘導起電力 vL から (3.22)式を用いて算出した。また,•,×はLloop = 34.1 nHに対するLloop = 45.4 nHの実測におけるターンオフ損失増減∆Eoff1,∆Eoff2 を示している。∆Eoff1 は概 ねゼロかつ∆Eoff2 は正の値を有しているため,(4.2),(4.4)式が妥当であることを確 認した。
図4.12はターンオン損失∆Eon1,∆Eon2 の増減に対するインピーダンス比αon の 依存性を示す。インピーダンス比αon を変更してもターンオン損失∆Eon1,∆Eon2
0.10
0.20 0.30 0.40
0.50
-20 -15 -10 -5
0 5 10 15 20
Impedance ratio αoff
Variationofturn-offloss ∆Eoff1,∆Eoff2[%]
∆Eoff1
∆Eoff2
図4.11 ターンオフ損失増減のインピーダンス比依存性
0.10 0.15 0.20 0.25 0.30
-20 -15 -10 -5
0 5 10 15 20
Impedance ratio αon
Variationofturn-onloss ∆Eon1,∆Eon2[%]
∆Eon1
∆Eon2
図4.12 ターンオン損失増減のインピーダンス比依存性
ともにゼロ以下の値であり,(4.6)および(4.9)式が成立していることがわかる。ただ し,∆Eon2 はインピーダンス比の二乗で変化するため,損失減少分が15%程度と大 きくなる。本研究の提案手法は実使用範囲において妥当であることを明らかにした。