第 4 章 シミュレーションと実験データ との比較との比較
4.2 実験データ処理の流れ
CdTe両面ストリップ検出器から得たデータ処理の流れは次のように処理される。
1. 生データのADC値に対してペデスタル補正とコモンモードノイズの除去を行い、
パルス高(pulse height amplitude ; PHA)を算出する。
2. PHAでの各ピークとそれに対応するエネルギーからエネルギー較正曲線を作成す
る。このエネルギー較正曲線によってPHAからエネルギーに変換した値PI(pulse height invariant)を得る。
3. 全チャンネルのPIについて、設定したスレッショルドを上回っているものをヒッ ト判定し、チャンネルから位置情報も得る。
以下にはその詳細について述べる。
4.2.1 PHA の算出
PHAは生のADC値に対してペデスタル補正とコモンモードノイズを除去すること で求まる。ペデスタルとは、エネルギー損失がないとき、すなわちゼロ点でのADC値 を指す。この値はそれぞれのチャンネルで異なり、ペデスタル補正によって全てのチャ ンネルのゼロ点を合わせてやる必要がある。図4.2は0.5 mm厚のCdTe両面ストリッ プ検出器に57Coを入射させたときのADC値の分布である。図の一番大きなピークが ペデスタルの分布に対応している。このピークにおけるADC値の平均をとり、これを
そのチャンネルにおけるペデスタルとする。取得した全てのチャンネルにおいて、取 得したADC値からそのチャンネルにおけるペデスタルを差し引くことでペデスタル補 正を行う。
同一のASICで複数チャンネルの信号を読み出した場合、それらのADC値には共通 のノイズがのる。これをコモンモードノイズという。図4.3には同一のASICで読み出 したときの読み出しを行った任意のチャンネルである、XチャンネルとYチャンネル のADC値の二次元ヒストグラムである。二つの間に傾き1の相関があることが分か る。これはコモンモードノイズのためであり、検出器のエネルギー分解能悪化を防ぐた めに、1回のイベントごとにコモンモードノイズをADC値から差し引く必要がある。
今回の計算ではペデスタル補正をした後、Anode、Cathodeそれぞれで32チャンネル 分のADC値の平均を取り、それをコモンモードノイズとした。これを差し引くことで ADC値の分布が図のようにPHAの分布へと変換される。
図4.2: 57Coを入射させたときのADC値の分布。0.5 mm厚CdTeのAnode25チャンネ ルより作成。
図4.3: 241Amを測定したときの同一のASICにおけるX chとY chの生ADC値の二次 元ヒストグラム。コモンモードノイズによる傾き1の相関が見られる。
PHA
-400 -200 0 200 400
counts
1 10 102
103
104
105
106
図4.4: 57Coを入射させたときのPHAの分布。0.5 mm厚CdTeのAnode25チャンネル より作成。ADCをペデスタル補正した後、コモンモードノイズを除去した。
4.2.2 エネルギー較正
PHAを実際に検出したエネルギーの単位に変換するには、PHAとエネルギーの関係 を表すエネルギー較正曲線を全チャンネルについて用意する。これをベースとして、得 られたPHAをそれに対応するエネルギー(PI)に変化する。エネルギー較正曲線は表 4.2に示したように数種類のガンマ線源で測定を行った後、各チャンネルにおけるPHA のスペクトルピークから測定線源のエネルギーに対応するPHAを決定する。このよう にしてエネルギーに対応するPHAを数点求め、それらを3次スプライン曲線を用いて 滑らかに接続したものをエネルギー較正曲線とした。
図4.5: 2 mm厚CdTe、Anode26チャンネルのエネルギー較正曲線。662 keV以上は直 線として伸ばしている。
4.2.3 ヒット判定とヒットリストの作成
全チャンネルについてのPIが得られたら、その中から実際のガンマ線イベントを選 択し、その反応のエネルギーと位置を決定する。ノイズ成分は拾わないように適当な スレッショルドを設定し、それを上回るPIを持つチャンネルを選択する。今回の実験 ではPIがスレッショルドエネルギーを超えたチャンネルをヒットチャンネルとしてい る。CdTe両面ストリップ検出器はAnode、Cathodeと両面にチャンネルがあるため、一 つのガンマ線イベントはそれぞれのサイドにヒットチャンネルをつくる。
このようにして得た、1つ1つのイベントに対するヒットの数、検出エネルギー、検 出位置といった情報はヒットリストへ登録される。登録される主要な情報を表4.3に示 す。ヒットリストにはイベント解析を行うための必要な情報が全て含まれており、ま たそれぞれの情報が扱いやすい形式にまとめられている。図4.6はにヒットリストの中 身を表示したものを示した。
表4.3: ヒットリストに含まれる情報
名称 意味
eventid イベントが処理された順番をしめすID
totalhit 1つのeventid内でのヒットの総数
e pha PHAの値
e pi PHAをエネルギーに変換した値 xstrip , ystrip 検出されたストリップのチャンネル
図4.6:ヒットリストの中身を表示したもの。xstripもしくはystripが-1かどうかでAnode かCathodeかという判断ができる。