第 3 章 CdTe 両面ストリップ検出器応答 のモデル化のモデル化
3.3 ピークホールドモードの有効性の検証
3.3.2 光子反応ストリップの隣接ストリップの信号
重み付けポテンシャルが隣接ストリップへ漏れ込む影響を受けての信号が、無限積 分モードとピークホールドモードでどのように違いが出てくるかを調べた。図3.15は 0.75 mm厚、400µmピッチのCdTe両面ストリップ検出器に500 Vを印加し、光子反応 があったスプリットの信号と、それに隣接するストリップ(左右2つずつまで)の信号 の大きさを光子反応の深さ位置ごとにプロットしたものである。また光子は赤色のス トリップの中心ではなく、緑の方向に80µmだけずれた位置で反応したとする。-0.375
がCathode面に対応している。誘導電荷効率(左)からピークホールドされた値(右)
に変換される際に各ストリップの出力値の比が変化している。
図3.15: 0.75 mm厚、100 Vでの出力信号の大きさと光子の反応位置の関係。-0.375が
Cathodeである。誘導電荷効率(左)からピークホールドされた値(右)に変換される
ことで各ストリップの出力値の比が異なってくる。
中央ストリップの信号の大きさに対する、隣接するストリップの信号の大きさを調 べるために、次のような比較を行った。赤色ストリップと重み付けポテンシャルの漏
れ込みによる信号が最も強く現れる緑色ストリップの、任意の深さZにおける出力信 号の大きさを求める。それぞれの大きさをPH0ch、PH+1chとする。図3.16と図3.17に は、0.75 mm厚と2.0 mm厚でPH+1ch/PH0chの値を光子の反応した深さごとにプロッ トしたものを示す。なおこれらの図の赤色曲線は無限積分モードで計算したもの、緑 色曲線はピークホールドモードで計算したものである。
図3.16から、無限積分モードはピークホールドモードに比べて、|PH+1ch/PH0ch|の値 が大きくなっていることがわかる。この差は相互作用位置がAnodeに近づくほど大き くなっており、この結果から0.75 mm厚の検出器では無限積分モードによる計算は隣 接ストリップの信号を過大評価してしまう可能性があることがわかった。これらの値は 中央ストリップに比べれば数%ほどと小さい値であるが、中央ストリップで数百keV の信号が発生した場合には数10 keVの信号が発生することになる。従って、大きなエ ネルギーが入射する場合の、複数ヒットの見積もりを行うにはピークホールドモード は有効であると考えられる。
図3.17から、2.0 mm厚の場合には必ずしも|PH+1ch/PH0ch|は無限積分モードがピーク ホールドモードに比べて大きくなってはいないことがわかる。特に100 V印加時の Cath-odeではピークホールドモードは無限積分モードに対し最大約2倍の|PH+1ch/PH0ch|の値 を示している。反対にAnodeでは無限積分モードとピークホールドモーでの|PH+1ch/PH0ch| は非常に近い値をしている。この原因は現在調査中であるが、Cathode信号は100〜500 keVの全バイアス電圧で異なった傾向の曲線を示していることから、2.0 mm厚の検出 器での重み付けポテンシャルの影響による複数ヒットイベントを見積もる場合にもピー クホールドモードは有効と考える。
以上の結果から、中央ストリップのみではなく、隣接ストリップからの応答信吾を 正確にモデル化していくためにはピークホールドモードによる出力計算は高い重要性 を持つことがわかった。
図3.16: 0.75 mm厚のCdTeでの中央ストリップと隣接ストリップの信号比の位置依存 性。赤が無限積分での計算、緑がピークホールドモードでの計算の結果。
図3.17: 2.0 mm厚のCdTeでの中央ストリップと隣接ストリップの信号比の位置依存 性。赤が無限積分での計算、緑がピークホールドモードでの計算の結果。