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光子の反応位置深さ決定による SN の向上

ドキュメント内 master thesis sugimoto (ページ 87-91)

第 5 章 Astro-H 衛星検出器周りのデザ イン最適化に向けてイン最適化に向けて

5.4 光子の反応位置深さ決定による SN の向上

ここでは、両面ストリップ検出器の特徴を生かし、さらにSNを向上させるための 手法を提案し、その上で有利なバイアス電圧を探る。エネルギースペクトル予測の際 に、Anodeにおいてはバイアス電圧を100 - 1000 Vまで変化させてもエネルギー分解 能FWHMやテール成分の量の変化は小さい。またエネルギー分解能FWHMは100 V

でも1.3 keV@60 keVと優れた値を示した。そこで、エネルギー分解能の優れたAnode

の信号から天体のエネルギーを測定し、光子の反応位置の深さに出力信号の依存度が

高いCathodeの信号から反応位置の深さを測定するという観測法により天体からの信

号とバックグランドの数のSN比を高める。なおSとNがどれくらいの大きさである かは表5.1に示す。なお天体からの信号数はあくまでも光子の個数であり、実際の検出 器内での信号のカウント数とは異なる。

表5.1: 10µCrab、べき-2.1のPower Law天体を見たときのSNの大きさ 天体のエネルギー 40 keV 70 keV 天体からの信号数S[photons/sec/cm2/keV]  5.1×108 1.6×108 NXBのカウント数N[counts/sec/cm2/keV]  1.4×106 3.6×106

具体的な方法を述べる。まず、Cathodeを目標天体に向け、Anodeにおいて40 keV

のエネルギーを検出したと仮定する。これが天体からの入射光子によるものだとすれ ば、その光子は厚さ0.75 mmのCdTe検出器に入射した後0.21 mm進んだところまで に90%の確率で半導体と相互作用をおこす。図5.7にその様子を示す。このとき、入

射面から0.21 mmだけ進んだ深さ位置で反応が起きたときのCathodeのエネルギーの

大きさをスレッショルドエネルギーEthとし、それよりも検出されたエネルギーが大き いか小さいかで赤色の領域で起きた反応か否かを判断する。赤の領域で起きた反応な らばそれは天体からの信号と判断する。反対に赤以外の領域で起きた反応ならばそれ はバックグランド信号と判断し除去する。これによってSNを上げるというのが狙いで ある。

10µCrab、べき-2.1のPower Lawの天体の場合、EkeVでは

S =11.7×106×E2.1[photons/sec/cm2/keV] (5.1) だけの光子数があるため、40 keVでは5.1×108[photons/sec/cm2/keV]だけの光子が天 体からの信号として存在する。また、予測されているHXIのバックグランドレベルを 図5.6に示す。

図5.6: HXIの予測バックグランド。ただし、厚み候補がが0.5 mmだったときのもの。

0.75 mmの場合はこれを1.5倍すれば良い

Cathodeの信号の大きさから反応位置を判断し取得するか除去するかを決定する上で

の問題点として挙げられるのが電子回路からうけるノイズである。仮にノイズがない とすれば、理論上は正確に位置を求めることができる。しかし、実際にはそれぞれの

図5.7: 反応位置の深さを決定することによってSNを向上させる方法。

深さで起きた信号はノイズによる揺らぎを持つ。従って本来は赤色の領域で起きた信 号が、ノイズがマイナス方面に働き最終的な検出エネルギーがスレッショルドエネル ギーより小さくなることで、赤以外の領域で起きた信号と誤って判断してしまう。同 様の原理で赤以外の領域で起きた信号を赤色の領域で起きた信号と判断してしまうこ とも考えられる。このような場合では、図5.7の上段にあるバイアス電圧が100 Vと

1000 VのときのCathodeにおける出力信号と光子反応の深さの関係から、より深さに

対して強い依存度を持つ100 Vの方が反応位置の判断に有利に働く。

天体からの光子入射によるイベントは9割が赤の領域で発生するのに対し、バック グランドイベントは検出器全体で等価に発生するという仮定をした上で、40 keVのエ ネルギーを観測する際に、上で述べた方法によるSN比の向上率を図5.8に示す。反応 場所から信号を取得するか除去するかを決めずに、全ての天体信号とバックグランド 信号を取得したときの向上率を1としている。ノイズがない場合の向上率は、天体か らの信号によるイベント数は0.9倍、バックグランドによるイベント数は0.21/0.75倍 されるため、

S

N → 0.9S

0.21/0.75N = 3.2S

N (5.2)

となる。しかし、ここでは各深さでのエネルギーが電子回路ノイズの影響でσ = 0.5

keVのガウス分布をするとする。ノイズを考慮した上での各バイアス電圧ごとの向上 率の計算は、検出器ノイズが加わることによってEth以下となってしまう天体信号のイ ベント数とバックグランドのイベント数をそれぞれ0.9S、0.210.75Nから引く。また検出器 ノイズが加わることによってEth以上となる天体信号のイベント数とバックグランドの イベント数をそれぞれ0.9S、0.210.75Nに加える。これにより得られる最終的な向上率を図 5.8に示す。FWHMやテール成分の割合とは異なりここではバイアス電圧が低いほど 向上率が高くなるという結果となっている。

図5.8: 40 keVを観測したときの反応位置の深さを決定することによって向上するS/N

の向上率の比較。

40 keVのときと同様の考え方で70 keVに対しても各バイアス電圧におけるS/Nの

向上率を調べた。40 keVでは100 Vで向上率は最も高くなったが、70 keVの場合では 各バイアス電圧で大きな差異はないという結果が得られた。これは大きなエネルギー になればなるほど天体からの信号も検出器内で一様に相互作用を起こすようになって くるためであると考えられる。従って、低バイアス電圧でS/Nを向上させる手法は40 keVまでは少なくとも有効であり、70 keV以上ではあまり効果がないという結論が得 られた。

図5.9: 70 keVを観測したときの反応位置の深さを決定することによって向上するS/N の向上率の比較。

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