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実工事における提案手法の適用と効果

ドキュメント内 早稲田大学大学院 創造理工学研究科 (ページ 133-150)

第 6 章 ネットワーク解析手法を用いた工期順守に影響を与える作業工種の抽出法に関す

第 3 節 実工事における提案手法の適用と効果

(2) 従来工法とIn-Fill(インフィル)工法の作業時間の差異

発注者の設計・計画に基づくEW橋の工程表を表 6-2 に,概略図(側面)を図 6-5 に 示す.全体工程表から1施工径間のみを抜粋し,13の作業工種に分解して示している.赤 い連結線はクリティカルパスを示し,オレンジ色に着色した作業工種はPC作業を行う専門 業者を示している.標準的な箱桁橋の断面とコンクリート打設順序を図 6-7に示す.

表 6-2 従来工法による工程(施工径間 30m 長)

作業日数(日)

作業工種 1 足場組み 2 型枠組み 3 鉄筋組み

4 テンドンシース固定 5 PC鋼線挿入(接続)

6 内型枠組み

7 コンクリート打設(soffit & web)

8 内型枠解体 9 床板型枠組み 10 鉄筋組み(床板)

11 コンクリート打設(床板)

12 養生

13 PC鋼線緊張&グラウト

30

1 60

長い工程

短い工程

6m 6m 6m 6m

CJ CJ CJ CJ

 橋脚P4  橋脚P3 橋脚P2

GL GL GL GL GL

橋脚P2 橋脚P1

36m

      EW-5      EW-4      EW-3      EW-2 EW-1

30m 30m

30m 24m

CJ 既存カルバート 既存カルバート 既存カルバート

施工方向 補強盛土

(テールアルメ)

橋台

場所打杭(摩擦杭)

(径1,000mm:抗ネガティブフリクション用スキンライナー有り)

場所打杭(支持杭)

(径1,000mm)

図 6-5 従来工法を採用した 5 連続箱桁橋(概略側面図)

5m 5m 5m

   5m

6m 6m 6m 6m

CJ CJ CJ CJ

 橋脚P4  橋脚P3

GL GL GL GL GL

橋脚P2 橋脚P1

EW-5(第5先行)

  19m

EW-4(第4先行) EW-3(第3先行)

25m 25m 25m 36m

EW-2(第2先行) EW-1

CJ 既存カルバート 既存カルバート 既存カルバート

施工方向 補強盛土

(テールアルメ)

橋台

場所打杭(摩擦杭)

(径1,000mm:抗ネガティブフリクション用スキンライナー有り)

場所打杭(支持杭)

(径1,000mm)

追加CJ

追加CJ

追加CJ 追加CJ

第4_In-Fill 第3_In-Fill 第2_In-Fill

第5_In-Fill

図 6-6 In-Fill工法を採用した 5 連続箱桁橋(概略側面図)

コンクリート打設順序

CJ CJ

CJ CJ CJ

ウェブ &ソフィット 床板

パラペット

③場所打ちコンクリートパラペット

②場所打ちコンクリート床板

①場所打ち ウェブ&ソフィット

図 6-7 標準的な箱桁断面とコンクリート打設順序

図 6-5,図 6-6および図 6-7において,CJ(Construction Joint)はコンクリートの打ち 継ぎ目,GL(Ground Level)は現地盤の略称である.

EW橋の全体工程を表 6-3に示す.従来の施工方法では,コンクリート橋上部工のみで,

248日間の時間が必要であると計画されていた.全体工期の約3分の1をコンクリート橋上 部工が占める.従来の施工方法では,全ての作業工種がクリティカルパス上である.専門 業者のPC作業以外にも,それぞれの作業工種には異なった職種の労働者や施工機械,建設 材料を必要とする.したがって,労働者と施工機械には待ち時間が多くなる可能性が高く,

作業の効率化が重要課題である.

そこで,作業の効率化手法として時間短縮の可能性を検討する.一般的な時間短縮法は,

①作業資源を増やすこと(Crushing),②並行作業とすること(Fast Tracking),である.し かし,当該橋梁工事はPC鋼線が連続する設計であるため,複数施工径間の並行作業を実施 することは,従来の施工方法では不可能である.また,発注者の設計では施工できる径間

長が30m(第1施工径間は36m,第5施工径間は24m)であるため,大幅に追加の労働者

や施工機械という作業資源を投入しても作業の効率化は困難である.ただし,前述した施 工径間の数m(30m に対する±6m)の差に対しては,作業資源を調整して同等の工程とす るように計画している.

表 6-2および図 6-7において,テンドンシースを設置してウェブ(web)と下床板(soffit)

のコンクリートを打設するまでの日数に比べて,上床板(slab)のコンクリートを打設まで の日数が短いことに着目した.従来の施工方法は,長い作業日数の必要なウェブとソフィ ットを含んでクリティカルパスを構成している.すなわち,長い作業日数の必要な作業を クリティカルパスから除外し,クリティカルパスを作業日数の短い作業のみに移動するこ とにより,時間の短縮,作業の効率化が可能になると考えた.

表 6-3 従来施工法による場所打ちコンクリートポストテンション工法連続箱桁橋の工程

(赤い連結線がクリティカルパス,緑線は足場及び型枠材の転用を示す)

工程(日数:雨休率も含む)

1 足場組み 2 型枠組み 3 鉄筋組み 4 テンドンシース固定 5 PC鋼線挿入(接続)

6 内型枠組み

7 コンクリート打設(soffit & web)

8 内型枠解体 9 床板型枠組み 10 鉄筋組み(床板)

11 コンクリート打設(床板)

12 養生

13 PC鋼線緊張&グラウト 1 足場組み 2 型枠組み 3 鉄筋組み 4 テンドンシース固定 5 PC鋼線挿入(接続)

6 内型枠組み

7 コンクリート打設(soffit & web)

8 内型枠解体 9 床板型枠組み 10 鉄筋組み(床板)

11 コンクリート打設(床板)

12 養生

13 PC鋼線緊張&グラウト 1 足場組み 2 型枠組み 3 鉄筋組み 4 テンドンシース固定 5 PC鋼線挿入(接続)

6 内型枠組み

7 コンクリート打設(soffit & web)

8 内型枠解体 9 床板型枠組み 10 鉄筋組み(床板)

11 コンクリート打設(床板)

12 養生

13 PC鋼線緊張&グラウト 1 足場組み 2 型枠組み 3 鉄筋組み 4 テンドンシース固定 5 PC鋼線挿入(接続)

6 内型枠組み

7 コンクリート打設(soffit & web)

8 内型枠解体 9 床板型枠組み 10 鉄筋組み(床板)

11 コンクリート打設(床板)

12 養生

13 PC鋼線緊張&グラウト 1 足場組み 2 型枠組み 3 鉄筋組み 4 テンドンシース固定 5 PC鋼線挿入(接続)

6 内型枠組み

7 コンクリート打設(soffit & web)

8 内型枠解体 9 床板型枠組み 10 鉄筋組み(床板)

11 コンクリート打設(床板)

12 養生

13 PC鋼線緊張&グラウト

120 30

1 60 90

EW-5EW-1EW-2EW-3EW-4

240

150 180 210 248

長い工程

短い工程

足場材・型枠材の転用

足場材・型枠材の転用

足場材・型枠材の転用

1施工径間は36m長,第5施工径間は24m長であるが,作業資源の調整,監督検査及びコンクリート打設等の段取りを踏まえ,各施工径間の工程は同等として計画している.

ここで,連続PC橋という基本設計を変更する提案は,設計責任(Design Indemnity)が提 案者(施工業者)に転嫁されるため,施工業者にとってリスクが大きく十分な提案効果が 得られないことが,海外工事契約では一般的である.したがって,基本設計は変更せずに,

クリティカルパスを可能な限りPC鋼線に関係する作業工種だけになるように,追加のコン クリート打ち継ぎ目(CJ:Construction Joint)を考案した.

本施工法は,先行して施工する部分(以下,先行施工径間と呼ぶ)と既に施工した部分 の間を“埋め込む(In-Fill)(以下,この部分をIn-Fill施工径間と呼ぶ)”という形式になる ため“In-Fill(インフィル)工法”と呼ぶ.基本設計の変更はなく,施工方法の提案であり,

設計監理コンサルタント及び発注者の承認が得られた.In-Fill工法を採用したEW橋の全体 側面図を図 6-6に示す.

In-Fill工法の概略施工順序を表 6-4および図 6-8に示す.従来工法では248日間を必要

とした計画であったが,EW橋の4施工径間にIn-Fill工法を採用することにより,コンクリ ート橋上部工のみで116日間の時間短縮が可能であることが判明した(表 6-3および後に 示す表 6-5の比較).ただし,In-Fill工法は,クリティカルパスではない“先行施工径間”

の作業とクリティカルパスとなっている“In-Fill施工径間”の2つの施工系統に分けて作業 が進捗する.また,In-Fill 工法の採用により,1 施工径間の作業工種が13から細分化され て19に増えている.すなわち,連関する作業資源(労働者や施工機械など)の移動がより 複雑になり,かつ,作業工種毎に受検しなければならない監督・検査の回数も増えること になる.

表 6-4 In-Fill 工法による EW 橋の概略施工順序 STAGE-1

第1施工径間から,足場組,型枠組,鉄筋組,テンドン挿入等の 作業を順次着手.

STAGE-2

第1施工径間から5m間隔をあけて(第2_In-Fill施工径間),第2 先行施工径間に着手.そして,第3先行施工径間にも着手.

STAGE-3

第1施工径間のPC作業終了後,第2_In-Fill施工径間に着手,第 3先行施工径間がほぼ完了するようにコントロールし,第4先行 施工径間に着手.

STAGE-4

第2_In-Fill施工径間の作業完了後にPC作業を実施し,次のクリ

ティカルパスである第3_In-Fill施工径間に着手.第4先行施工径 間がほぼ完了,第5先行施工径間に着手.

6m CJ

GL GL GL GL GL

橋脚P4 橋脚P3 橋脚P2 橋脚P1

5m

6m 6m

CJ CJ

GL GL GL GL GL

橋脚P4 橋脚P3 橋脚P2 橋脚P1

5m 5m

6m 6m 6m

CJ CJ CJ

GL GL GL GL

橋脚P4 橋脚P3 橋脚P2 橋脚P1

5m 5m 5m

6m 6m 6m 6m

CJ CJ CJ CJ

GL GL GL GL

橋脚P4 橋脚P3 橋脚P2 橋脚P1

EW-1 36m

25m 36m

EW-2(第2_先行) EW-1

25m 25m 36m

EW-3(第3_先行) EW-2(第2_先行) EW-1

25m 25m 25m 36m

EW-4(第4_先行) EW-3(第3_先行) EW-2(第2_先行) EW-1

CJ 既存カルバート 既存カルバート 既存カルバート

施工方向

橋台

(RC構造)

CJ 既存カルバート 既存カルバート 既存カルバート

補強盛土 施工方向

(テールアルメ)

橋台

(RC構造)

追加CJ

CJ 既存カルバート 既存カルバート 既存カルバート

施工方向 補強盛土

(テールアルメ)

橋台

(RC構造)

追加CJ 第2_In-Fill

CJ 既存カルバート 既存カルバート 既存カルバート

補強盛土 施工方向

(テールアルメ)

橋台

(RC構造)

追加CJ

第3_In-Fill 第2_In-Fill 補強盛土

(テールアルメ)

STAGE - 4 STAGE - 3 STAGE - 2 STAGE - 1

図 6-8 In-Fill工法によるEW橋の概略施工順序(側面)

2. In-Fill 工法における工程順守に影響を与える作業工種の抽出

(1) 媒介性指標による工程順守に影響を与える作業工種の抽出

次に,実施工の留意点として,時間を短縮した場合の作業工種間の連関性変動による影 響について,媒介性指標を算出して検討する.

前述したように,In-Fill工法の採用により大幅な時間短縮の可能性が判明していた.CPM によるクリティカルパスは,第2施工径間以降第5施工径間まで5m長のIn-Fill施工径間で ある.クリティカルパス上の作業遅延は,直接的に全体工程に影響を与える重要な作業工 種の連続である.

In-Fill 工法における作業工種の連関を短縮工程表(表 6-5)に青線で示している.赤い

連結線はクリティカルパスを示している.ここで,表 6-5に示すような作業工種の連関性 を加えた工程をネットワークモデルと捉え,第 3 章に示した式 3-4を用いて媒介性指標を 算出する.総ノード数93,総リンク数133の媒介性指標算出用のネットワークモデルを図 6-9に示す.そして,各作業工種の媒介性指標の算出結果を図 6-10に示す.

図 6-9の各ノードの数字は,表 6-5の左側に示した作業工種番号である.図 6-9の右 側に集中している水色のノードは,In-Fill 施工径間の作業工種である.CPM を用いて検討 した場合のクリティカルパスである.中央付近の赤い○印を付けたノードは,先行施工径 間において媒介性指標の高いノードを表している.この6つの作業工種が,CPMでは表現 されないクリティカルパス上の作業工種に影響を与える可能性の高い作業工種である.

図 6-10より,第2施工径間から第4施工径間のクリティカルパスであるIn-Fill施工径 間と同等に,または,それ以上に媒介性指標が高くなる作業工種が先行施工径間にも存在 していることがわかる.これらの媒介性指標の高い作業工種は,内型枠組み(表 6-5と図 6-9の作業工種番号18,38,60)と床板型枠組み(表 6-5と図 6-9の作業工種番号21,

41,61)である.他の作業工種への連関性が強く,工程遅延等の影響を他の作業工種へ与 える可能性の高いことが推測できる.

ドキュメント内 早稲田大学大学院 創造理工学研究科 (ページ 133-150)