金商法上の法定開示には、証券を発行する際の発行開示と、証券を発行又は上場した後の継続開示 の二つの種類があります。
(1)発行開示
a.有価証券届出書
(a)有価証券届出書の提出
通常のケースでは、上場前に外国株のIPO(公募・売出し)が日本において行われ ます。その場合は、外国株の勧誘を始める前に、発行開示として、有価証券届出書を関 東財務局に提出する必要があります(金商法第4条第1項)。有価証券届出書のフォーム、
記載事項及び添付書類等は法律により定められています(8(1)a(c)をご参照く ださい。)。
有価証券届出書その他の開示書類及びその添付書類は、EDINETを通じて提出され、
公衆縦覧に供されます。
なお、外国会社は、有価証券届出書の提出にあたり日本国内の代理人を選任しなけれ ばなりません(開示府令第7条第1項)。実務上は、日本の弁護士が日本国内の代理人に 選任されることが通常です。そして、実際の有価証券届出書の提出作業は、このような 日本国内の代理人により行われます。
(b)有価証券届出書の届出前の勧誘の禁止・効力発生日前の取引の禁止
上記のとおり、外国株の勧誘を始める前に、有価証券届出書を関東財務局に提出する 必要がありますので(金商法第第4条第1項)、有価証券届出書を提出する前に日本の投 資者に向けた勧誘(プロモーション等)を行うことはできません。
また、有価証券届出書が効力を生じた後でなければ、投資者に外国株を取得させ又は 売り付けることはできません(金商法第15条第1項)。有価証券届出書が提出された日 から効力を生じる日までの期間(待機期間)は、原則として 15 日間です(金商法第8 条第1項)。
ただし、プレヒアリング(発行体、引受証券会社によって行われる募集又は売出しを 行おうとする有価証券に対する投資者の需要の見込みに関する調査)であって、特定投 資家又は大株主(株券等保有割合が5%以上である者)を当該調査の対象者とし、必要 な措置を講じて行われるものについては取得勧誘又は売付け勧誘等に該当しない行為と されています(企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドラ イン)2-12②)。
(c)有価証券届出書の記載事項・添付書類
外国会社が提出する有価証券届出書は、第7号様式によります(開示府令第8条第1 項第4号)。第7号様式において求められている記載事項は以下のとおりです。
以上のとおり、有価証券届出書においては、最低限として最近3事業年度分の財務書 類を掲げる必要があります。この財務書類の会計基準及び監査証明については、8(3)
をご参照ください。
また、有価証券届出書の添付書類として以下の書類を提出する必要があります(開示 府令第10条第1項第4号)。
① 定款
② 取締役会議事録等(当該有価証券の発行につき取締役会の決議等若しくは株主総会の 決議があった場合における当該取締役会の議事録等の写し若しくは当該株主総会の 議事録の写し若しくは行政庁の認可を受けたことを証する書面)
③ 資本金額の変更に関する認可証明(資本金の額の変更につき、行政庁の許可、認可又 は承認を必要とする場合における当該許可、認可又は承認があったことを知るに足る 書面)
④ 信託契約その他主要な契約の写し(JDRの場合)
⑤ 在職証明書(当該有価証券届出書を提出しようとする外国会社の代表者が当該有価証 表紙
第一部 証券情報 第1 募集要項 第2 売出要項
第3 第三者割当の場合の特記事項 第4 その他の記載事項
第二部 企業情報
第1 本国における法制等の概要 第2 企業の概況
第3 事業の状況 第4 設備の状況 第5 提出会社の状況 第6 経理の状況
※最近2事業年度又は3事業年度の財務書類を掲げる。
第7 外国為替相場の推移
第8 本邦における提出会社の株式事務等の概要 第9 提出会社の参考情報
第三部 提出会社の保証会社等の情報
※保証付社債に関して必要となる情報であり、外国株の場合には記載は不 要。
第四部 特別情報
※最近5事業年度の財務書類のうち、第二部第6に掲げたもの以外の財務 書類を掲げる必要。ただし、第二部第6に最近3事業年度の財務書類を掲 げた場合には、さらに財務書類を掲げる必要はない。
券の募集又は売出しの届出に関し正当な権限を有する者であることを証する書面)
⑥ 委任状(当該外国会社が、本邦内に住所を有する者に、有価証券の募集又は売出しの 届出に関する一切の行為につき、当該外国会社を代理する権限を付与したことを証す る書面)
⑦ 法律専門家の法律意見書(募集又は売出しが適法であること及び有価証券届出書に記 載された法令に関する事項が真実かつ正確であることについての法律専門家の法律 意見書)
⑧ 外為法上の認可証明(外国為替及び外国貿易法第21 条第1項又は第2項の規定によ る許可を必要とする場合における当該許可を受けたことを証する書面)
⑨ 元引受契約の契約書の写し(当該外国会社が金融商品取引業者との間に締結した元引 受契約の契約書の写し)
b.目論見書の作成・交付義務
有価証券届出書を提出した発行者は、目論見書を作成し(金商法第13条第1項)、かつ投 資家に有価証券を取得させ又は売り付ける前に(又は同時に)目論見書を投資家に交付しな ければなりません(金商法第15条第2項)。
目論見書の記載事項は上記有価証券届出書の記載事項とほぼ同様であり、実務上は、提出 された有価証券届出書に若干の調整を行った書類を目論見書として使用・交付しております。
(2)継続開示
上場後には、継続開示として、有価証券報告書、内部統制報告書、四半期報告書及び臨時報告 書を提出することが要求されます。
これらの開示書類及びその添付書類は、有価証券届出書と同様に、EDINETを通じて提出され、
また開示されます。また、実際の提出作業は通常は日本国内の代理人(通常は日本国内の法律事 務所)により行われる点も、有価証券届出書と同様です。
a.有価証券報告書
上場会社である外国会社は、事業年度ごとに、事業年度終了後6か月以内に、有価証券報 告書を関東財務局に提出しなければなりません(金商法第 24 条第 1項、金商法施行令第 3 条の4)。
ただし、外国会社は有価証券報告書について、本国の法令又は慣行その他やむを得ない理 由により期限までに提出できないと認められる場合には、金融庁長官の承認を得ることによ り、提出期限の延長が認められます(金商法第24条第1項、金商法施行令第3条の4、企業 開示府令第15条の2の2)。
外国会社が提出する有価証券報告書は、第8号様式によります(開示府令第15条第2号 イ)。第8号様式において求められている記載事項は、上記の有価証券届出書(第7号様式)
の記載事項とほぼ同様ですが、有価証券報告書では「第一部 証券情報」及び「第四部 特 別情報」は不要です。
有価証券報告書には最近2事業年度分(最近1事業年度の財務書類に連結財務諸表規則又 は財務諸表等規則に規定する比較情報に準ずる情報が含まれ、かつ、過去に提出した有価証 券届出書又は有価証券報告書で最近2事業年度分の財務書類が開示済みの場合については、
最近1事業年度分)の財務書類を掲載する必要があります。この財務書類の会計基準及び監 査証明については、8(3)をご参照ください。
有価証券報告書の添付書類として以下の書類を提出する必要があります(金商法第 24条 第6項、開示府令第17条第1項第2号)。
①定款
②定時株主総会に報告したもの又はその承認を受けたもの(アニュアル・レポート等)
③ 信託契約その他主要な契約の写し(JDRの場合)
④ 在職証明書(当該有価証券報告書に記載された当該外国会社の代表者が当該有価証券 報告書の提出に関し正当な権限を有する者であることを証する書面)
⑤ 委任状(当該外国会社が、本邦内に住所を有する者に、当該有価証券報告書の提出に 関する一切の行為につき、当該外国会社を代理する権限を付与したことを証する書 面)
⑥ 法律専門家の法律意見書(有価証券報告書に記載された法令に関する事項が真実かつ 正確であることについての法律専門家の法律意見書)
⑦有価証券届出書等を提出した社債等がある場合には、当該外国会社が債権の管理その 他債権者のための行為又は当該外国会社のための行為又は当該外国会社のための行 為をする職務を委託する契約書及び元利金の支払いに関する契約書の写し