(1)適時開示制度の概要 a.適時開示の意義
金融商品市場の機能は、国民の有価証券による資産運用と企業の有価証券の発行による長期安定 資金の調達とを適切かつ効率的に結び付けることによって、国民経済の発展に資することにありま す。この機能が十分に発揮されるためには、市場の公正性と健全性に対する投資者の信頼が確保さ れていることが必要であり、有価証券について適切な投資判断材料が提供されていることが前提と なります。
このような投資判断材料の提供の機能を果たす制度として、8で説明した金商法に基づく法定開 示制度(有価証券届出書、有価証券報告書、四半期報告書など)と、金融商品取引所における適時 開示制度が併存しています。適時開示制度は、金融商品取引所の上場規程により、重要な会社情報 を上場会社から投資者に提供するために設けられているものであり、投資者に対して、報道機関等 を通じてあるいはTDnet(適時開示情報伝達システム)により直接に、広く、かつ、タイムリ ーに伝達するという特徴があります。
金融商品市場においては時々刻々と発生する各種の会社情報によって売買が大きな影響を受ける ことが多いことなどから、投資者にとって、適時開示は大変重要なものとなっています。特に、近 年のように、企業を取り巻く環境の変化が著しい時代にあって、最新の会社情報を迅速、正確かつ 公平に提供する適時開示の重要性が、より一層高まっています。
会社情報の適時開示はその担い手である上場会社が主体的な役割を果たすものであり、上場会社 各社において、会社情報の適時開示の意義・重要性についての十分な認識と開示に対する真摯な姿 勢が強く期待されるとともに、適時適切な情報開示を実行するための社内体制の整備が求められま す。
東証では、投資者への適時、適切な会社情報の開示が健全な金融商品市場の根幹をなすものであ るという基本認識のもと、上場規程の中に会社情報の適時開示に関する規定を設け、上場会社に対 して、重要な会社情報を適時、適切に開示することを義務付けています。
b.会社情報の適時開示制度の概要
(a) 誠実な業務遂行に関する基本理念
上場規程では、上場会社は、投資者への適時、適切な会社情報の開示が健全な金融商品市場 の根幹をなすものであることを十分に認識し、常に投資者の視点に立った迅速、正確かつ公平 な会社情報の開示を徹底するなど、誠実な業務遂行に努めなければならないことを定めていま す。上場会社各社におかれては、この基本理念の趣旨を十分にご理解いただいたうえで、誠実 な業務遂行に努めるとともに、積極的な適時開示に取り組むようにしてください。
【上場規程第401条関係】
(b) 適時開示体制の整備
重要な会社情報の適時開示が適切に行われることは、金融商品市場において自己責任原則の もとで投資を行う大前提として、投資者にとって極めて大きな意味を有しています。したがっ て、上場会社は、真に適切な情報開示を行える有効な社内体制を整備する必要があります。
適時開示体制を適切に整備するうえで特に重要なポイントは、以下の3点です。
1.適時開示体制を有効に整備・運用するために、経営者自らが開示の重要性に対する明確 な姿勢・方針を打ち出し、かつ社内にこれを啓発していくこと。
2.適時開示を適切に行ううえで達成しなければならない要点を明確化すること。
3.整備した体制を適切に運用していくために、内部監査部門をはじめ取締役、監査役等(委 員会設置会社においては監査委員会等)による適時開示体制を対象としたモニタリング を行うこと。
上場会社の適時開示体制に関する概要については、「コーポレート・ガバナンスに関する報告 書」の記載事項として、東証ホームページ(コーポレート・ガバナンス情報サービス)などを 通じて広く提供されています。
(c) 適時開示が求められる会社情報
適時開示が求められる会社情報は、有価証券の投資判断に重要な影響を与える上場会社の業 務、運営又は業績等に関する情報です。具体的に開示すべき項目は以下に掲げる種類に区分さ れます。
上場規程において、上場会社は、投資者の投資判断に及ぼす影響が軽微なものとして施行規 則で定める基準(以下「軽微基準」という。)に該当するものを除き、直ちにその内容を開示 することが義務づけられています。軽微基準に該当するかどうか明らかでない場合にも、適時 開示を行うことが義務づけられますので、十分に留意してください。
なお、上場有価証券の発行者等が外国又は外国法人である場合の当該外国又は外国法人に対 する当取引所の規則の適用にあたっては、当該外国又は外国法人の本国等における法制度、実 務慣行等を勘案して行われます。
【上場規程第7条】
〔適時開示が求められる会社情報〕
イ.上場会社の情報
(イ)上場会社の決定事実
・ 発行する株式、処分する自己株式、発行する新株予約権、処分する自己新株予約権 を引き受ける者の募集又は株式、新株予約権の売出し
・ 発行登録及び需要状況調査の開始
・ 資本金の額の減少
・ 資本準備金又は利益準備金の額の減少
・ 自己株式の取得
・ 株式無償割当て又は新株予約権無償割当て
・ 新株予約権無償割当てに係る発行登録及び需要状況・権利行使の見込み調査の開始
・ 株式の分割又は併合
・ ストック・オプションの付与
・ 剰余金の配当
・ 合併等の組織再編行為
・ 公開買付け又は自己株式の公開買付け
・ 公開買付けに係る意見表明等
・ 事業の全部又は一部の譲渡又は譲受け
・ 解散(合併による解散を除く。)
・ 新製品又は新技術の企業化
・ 業務上の提携又は業務上の提携の解消
・ 子会社等の異動を伴う株式又は持分の譲渡又は取得その他の子会社等の異動を伴 う事項
・ 固定資産の譲渡又は取得、リースによる固定資産の賃貸借
・ 事業の全部又は一部の休止又は廃止
・ 上場廃止の申請
・ 破産手続開始、再生手続開始又は更生手続開始の申立て
・ 新たな事業の開始
・ 代表取締役又は代表執行役の異動
・ 人員削減等の合理化
・ 商号又は名称の変更
・ 単元株式数の変更又は単元株式数の定めの廃止若しくは新設
・ 決算期変更(事業年度の末日の変更)
・ 債務超過又は預金等の払戻の停止のおそれがある旨の内閣総理大臣への申出(預金 保険法第74条第5項の規定による申出)
・ 特定調停法に基づく特定調停手続による調停の申立て
・ 上場債券等の繰上償還又は社債権者集会の招集その他上場債権等に関する権利に 係る重要な事項
・ 公認会計士等の異動
・ 継続企業の前提に関する事項の注記
・ 有価証券報告書・四半期報告書の提出期限延長に関する承認申請書の提出
・ 株式事務代行機関への株式事務の委託の取止め
・ 開示すべき重要な不備、評価結果不表明の旨を記載する内部統制報告書の提出
・ 定款の変更
・ 全部取得条項付種類株式の全部の取得
・ 特別支配株主による株式等売渡請求に係る承認又は不承認
・ その他上場会社の運営、業務若しくは財産又は当該上場株券等に関する重要な事項
(ロ)上場会社の発生事実
・ 災害に起因する損害又は業務遂行の過程で生じた損害
・ 主要株主又は主要株主である筆頭株主の異動
・ 上場廃止の原因となる事実
・ 訴訟の提起又は判決等
・ 仮処分命令の申立て又は決定等
・ 免許の取消し、事業の停止その他これらに準ずる行政庁による法令等に基づく処分 又は行政庁による法令違反に係る告発
・ 親会社の異動、支配株主(親会社を除く。)の異動又はその他の関係会社の異動
・ 破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始又は企業担保権の実行の申立て又は通 告
・ 手形等の不渡り又は手形交換所による取引停止処分
・ 親会社等に係る破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始又は企業担保権の実行 の申立て又は通告
・ 債権の取立不能又は取立遅延
・ 取引先との取引停止
・ 債務免除等の金融支援
・ 資源の発見
・ 特別支配株主による株式等売渡請求等
・ 株式又は新株予約権の発行差止請求
・ 株主総会の招集請求
・ 保有有価証券の含み損
・ 社債券に係る期限の利益の喪失
・ 上場債券等の社債権者集会の招集その他上場債権等に関する権利に係る重要な事 実
・ 公認会計士等の異動
・ 有価証券報告書・四半期報告書の提出遅延
・ 有価証券報告書・四半期報告書の提出期限延長申請に係る承認等
・ 財務諸表等の監査報告書における不適正意見、意見不表明、継続企業の前提に関す る事項を除外事項とした限定付適正意見
・ 内部統制監査報告書における不適正意見、意見不表明
・ 株式事務代行委託契約の解除通知の受領等
・ その他上場会社の運営、業務若しくは財産又は当該上場株券等に関する重要な事実
(ハ)上場会社の決算情報
・ 決算短信
・ 四半期決算短信
(ニ)上場会社の業績予想、配当予想の修正等
・ 業績予想の修正、予想値と決算値の差異等
・ 配当予想、配当予想の修正
(ホ)その他の情報
・ 投資単位の引下げに関する開示
・ 財務会計基準機構への加入状況に関する開示
・ MSCB等の転換又は行使の状況に関する開示
・ 支配株主等に関する事項の開示
・ 非上場の親会社等の決算情報
・ 上場廃止等に関する開示
ロ.子会社の情報
(イ)子会社の決定事実
・ 子会社の合併等の組織再編行為
・ 子会社による公開買付け又は自己株式の公開買付け
・ 子会社の事業の全部又は一部の譲渡又は譲受け
・ 子会社の解散(合併による解散を除く。)