第 4 章 梁試験体を用いた振動実験
4.1 実験の目的と概要
4.5.2 定量化した指標の適用性検討
本論文の第3章で検討した鉄道トンネルにおける振動計測結果は,周辺に変状が顕 在化しておらず,計測期間中に新たな変状等を確認していない。このことから,ある 測定点間に着目すれば,進行性指標Rは 0 に近い数値となる。そこで,実トンネルの 計測結果を用いて,進行性指標Rを求めた。
進行性指標の算出は,通過列車によるフーリエスペクトル比のばらつき度合いを見 るために,表 3.3.3 のすべての列車のフーリエスペクトル比の平均値を基準とし,そ れぞれの列車に対して進行性指標を求めた。算定結果を表 4.5.1 に示す。進行性指標 を求めた 2 点間の距離は,「上部」~「下部」で 98cm,「上部」~「脚部」で 190cm で ある。計測対象としたトンネルでは変状が顕在化しておらず,振動を計測している時 間の範囲においても,短時間であることから変状の進展はない。進行性指標の算出に あたっては,8,000Hz までの周波数を考慮した。第 3 章の複数列車のフーリエスペク トル比の重ね書きでは,概ね 6,000Hz 以降の高い周波数帯で若干のばらつきが見られ たが,表 4.5.1 に示すように,8,000Hz までの周波数を対象とした進行性指標は,列 車種別,測定点間距離によらず,0.1 以下の安定した値を示していることがわかる。
表 4.5.1 実トンネルにおける進行性指標 覆工周方向
(Z方向)
覆工面外方向
(Y方向)
線路方向
(X方向)
No. 種別
下部/上部 脚部/上部 下部/上部 脚部/上部 下部/上部 脚部/上部 1 貨物 0.1 0.1 0.1 0.0 0.1 0.1 2 特急 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 3 貨物 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 4 特急 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 5 普通 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
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(2) 梁試験体でひびわれが進展したときの進行性指標
梁試験体の振動実験結果を用いて,ひびわれが進展したときの進行性指標Rについ て検討した。試験体 B に対する試験体 C の進行性指標,すなわちひびわれの進展性を 模擬した場合の進行性指標を図 4.5.1 と図 4.5.2 に示す。図 4.5.1 は二つのひびわ れの中心位置にある測定点③と閉合させたひびわれの外側にある測定点④間のフーリ エスペクトル比から求めた進行性指標である。これらの進行性指標は,基準となる状 態を試験体 B として,この試験体 B において約 2.5 秒間ごとに分離した 4 つの波形の フーリエスペクトル比の平均値を基準のフーリエスペクトル比とし,ひびわれ長さが 進展した試験体 C で分離した 4 つの波形に対して進行性指標を求めたものである。進 行性指標を算出するときの周波数については,実トンネルで安定したフーリエスペク トル比が見られた 8,000Hz までを対象とした。求めた進行性指標は,4 つの波形のば らつきが小さいことが確認できる。
しかし,同一の変状変状の進展においても,対象とする振動方向によって,進行性 指標の値は異なる結果が得られている。ひびわれの進展性を模擬した試験体 B と試験 体 C の比較による進行性指標は,面外方向の振動成分を対象とした場合は,二つのひ びわれをはさんだ測定点②と④の間のフーリエスペクトル比から求めた進行性指標は,
ひびわれの間の測定点③とその周辺の測定点④の間のフーリエスペクトル比から求め た進行性指標より小さい。このことは,センサの配置によっては,変状進展の検知の 精度がばらつくことを示唆しているが,いずれの振動成分においても進展性指 標は 0.4 以上となっており,表 4.5.1 に示す変状が変化しないときの進行性指標と異なる ことから,進行性指標によって十分に変状の進展性を把握できるものと考えられる。
図 4.5.1 ひびわれ進展時の測定点③-④間の進行性指標の比較
(測定点間距離:60cm)
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2
上下方向 (z方向)
部材軸方向 (x方向)
部材軸直角方向 (y方向)
進行性指標
それぞれ4波を表示
0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2
進行性指標
それぞれ4波を表示
104 (3) コンクリートの浮きの有無による進行性指標
健全な試験体 A に対して,浮きを模擬した試験体 D の進行性指標を図 4.5.3 と図 4.5.4 に示す。図 4.5.3 は,浮きの中心位置にある測定点③に対して浮きの脇にある 測定点④のフーリエスペクトル比から求めた進行性指標であり,図 4.5.4 は,浮きを 挟んだ測定点②~④間のフーリエスペクトル比から求めた進行性指標である。これら の進行性指標は,ひびわれが進展したときの進行性指標と同様に,健全な試験体 A を 基準として,約 2.5 秒間ごとに分離した 4 つの波形のフーリエスペクトル比の平均値 を基準とするフーリエスペクトルとし,浮きを模擬した試験体 D の,分離した 4 つの 波形に対して進行性指標を求めたものである。進行性指標を算出するときの周波数に ついては,8,000Hz までを対象とした。浮きを模擬した場合においても,求めた進行 性指標は,4 つの波形のばらつきが小さいことが確認できる。
しかし,同一の変状変状の進展においても,対象とする振動方向によって,進行性 指標の値は異なる結果が得られている。面外方向の振動成分を対象とした場合は,ひ びわれが進展したときの進行性指標と同様に,浮きを挟んだ測定点②-④間のフーリエ スペクトル比から求めた進行性指標は,浮きの中心位置の測定点③と浮きの脇の④の 間のフーリエスペクトル比から求めた進行性指標と比較して小さい。
しかし,ひびわれの進展を模擬した場合でも,浮きの発生を模擬した場合において も,進行性指標は,0.4 以上の大きな値が得られている。一方,前項で示したように 変状が進展しない場合の進行性指標は 0 に近い値となっていることから,進行性指標 を用いて,潜在的な変状の進展も含めて,その変化の有無を検知できる可能性がある ものと考えられる。
図 4.5.3 浮きの有無による測定点③-④間の進行性指標の比較
(測定点間距離:60cm)
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2
上下方向 (z方向)
部材軸方向 (x方向)
部材軸直角方向 (y方向)
進行性指標
それぞれ4波を表示
0.4 0.6 0.8 1.0 1.2
進行性指標
それぞれ4波を表示
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