第 5 章 トンネル覆工大型模型を用いた振動実験
5.4 実験結果及び考察
5.4.3 トンネル覆工模型載荷実験における進行性指標
148
定点 1-2 間を含まない測定点間と比較して小さな値を示す傾向が傾向がある。この STEP7 では,測定点 1-2 間にあるひびわれが部材を貫通するとともに開口幅が大きく なっており,STEP8 以降の載荷 STEP で開口幅がさらに拡大するとともに,覆工内面側 にはく離部が広がっている。このことから,覆工面外方向の振動成分に基づく進行性 指標を部材厚さ方向に貫通したひびわれを挟む測定点に基づいて評価した場合は,ひ びわれを含まない測定点間で評価した進行性指標と比較して小さくなるものと考えら れる。覆工周方向成分の加速度に基づく進行性指標についても,STEP8~STEP9 間を除 いて,STEP4~STEP5 の間,STEP6~STEP7 の間,STEP7~STEP8 の間で,測定点 1-2 間 を含む測定点の進行性指標が,測定点 1-2 間を含まない測定点間と比較して小さな値 を示す傾向が傾向がある。STEP4~STEP5 間では測定点 1-2 間であらたなひびわれが生 じており,STEP6~STEP7 間では測定点 1-2 間のひびわれが進展し,STEP6~STEP7 間で は,このひびわれの開口幅が開いている。しかし,STEP7~STEP8 間では,測定点 1-2 間のひびわれが拡大していても,進行性指標に測定点による違いは小さい。この STEP 間では,天端位置の覆工背面側のひびわれの進展や天端から 33 度位置でのあらたなひ びわれの発生があり,これらの変状の進展の影響が大きく影響して,進行性指標の測 定点間の違いがあらわれなかったものと考えられる。
加振方向や測定点間の取り方を変えた場合は,進行性指標を評価する測定点間と変 状進展位置の相対的な関係によって,進行性指標が異なる。これは,複数の測定点を 設置して,加振方向と測定点間の進行性指標の違いを考慮することで,変状が進展し た箇所を特定できる可能性があること示唆している。
図 5.4.33 と図 5.4.34 に示す進行性指標は,8,000Hz までの高い周波数までを考慮 して求めている。進行性指標を評価するときの対象周波数の範囲について検討するた めに,考慮する周波数を変えて進行性指標を求めた。図 5.4.37 は,比較的大きな進 行性指標を示す,覆工面外方向の振動成分を対象とした,載荷 STEP4~STEP5 の進行性 指標の考慮する周波数との関係を示したものである。考慮する周波数を 200Hz とした 場合には,測定点間 2-3 や測定点間 2-4 を除く測定点間の進行性指標は 0 に近い値と なっている。測定点間 2-3 や測定点間 2-4 の進行性指標は,測定点 1-2 間のひびわれ が生じたことによる影響が見られるが,200Hz までの進行性指標の値は,それ以上の
150
図 5.4.33 隣接する STEP 間の進行性指標(覆工周方向の振動成分)
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1
進行性指標
載荷STEP 測定点1-2間
測定点1-3間 測定点1-4間 測定点2-3間 測定点2-4間 測定点3-4間
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0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1
進行性指標
載荷STEP 測定点1-2間
測定点1-3間 測定点1-4間 測定点2-3間 測定点2-4間 測定点3-4間
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表 5.4.2 振動計測の STEP と変状の対応表
載荷STEP 3 4 5 6 7 8 9 10 11 天端沈下量
(mm) 0.9 1.9 5.0 10.0 15.0 20.0 30.0 40.0 50.0 内面 ひびわれ
0.06
ひびわれ 0.35
ひびわれ 2
ひびわれ 5
ひびわれ 7
ひびわれ 12
ひびわれ 13
ひびわれ 17
ひびわれ 天端 23
背面 - - - 圧ざ発生 圧ざ拡大 同左 同左 同左 同左
内面 - - - - 表面
はく離
はく離
拡大 同左 同左 同左 天端から
57度
背面 - - ひびわれ 1.5
ひびわれ 4
ひびわれ 6
ひびわれ 7
ひびわれ 12
ひびわれ 14
ひびわれ 15 内面 - - - - - - - - - 天端から
44度
背面 - - - - - ひびわれ 0.3
ひびわれ 0.3
ひびわれ 0.3
ひびわれ 0.25
内面 - - - - - - - - -
天端から 33度
背面 - - - - - - ひびわれ
0.05
ひびわれ 0.01
ひびわれ 0.3
図 5.4.35 STEP11 における変状展開図
図 5.4.36 STEP5 における測定点 1-2 間のひびわれ状況
154
図 5.4.37 載荷 STEP4~STEP5 間の進行性指標の考慮する周波数の影響
(覆工面外方向の振動成分)
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2
0 2000 4000 6000 8000 10000 周波数(Hz)
進行性指標
測定点1-2間 測定点1-3間 測定点1-4間 測定点2-3間 測定点2-4間 測定点3-4間
(2) 変状進展に伴う進行性指標の変化
前節での検討によれば,変状の進展度合いが小さい,隣接する載荷 STEP 間での進 行性指標は,予備載荷のときのように変状が生じない場合は 0 に近く,変状が生じ た場合や進展した場合は,0.2 以上の値を示していた。ここでは,連続的に変状が 進展した場合の進行性指標の変化について検討した。図 5.4.38 と図 5.4.39 には,
載荷を始める前の状態の STEP1 を基準とし,このフーリエスペクトル比に対して,
変状が進展した状態の各載荷 STEP のフーリエスペクトル比との関係から,STEP5 ま での進行性指標の変化を示したものを示す。これらの図においても,進行性指標を 算定するのに考慮した周波数帯は,8,000Hz までとしている。変状がない STEP1,2 に対して,天端内面のひびわれ幅が 0.6mm 以上の STEP3 以降では,覆工周方向の振 動成分を対象とした場合は,すべての計測点間で進行性指標の値が急激に増加して いる。しかし,覆工面外方向の振動成分を対象とした場合は,測定点 2-4 間と測定 点 3-4 間の進行性指標は,STEP4 から STEP5 にかけて低下している。このように基 準となる STEP から変状が進んだ STEP において進行性指標の低下がみられるのは,
図 5.4.40 や図 5.4.41 に示す STEP3 を基準としたときの STEP5 以降の進行性指標,
図 5.4.42 や図 5.4.43 に示す STEP4 を基準としたときの STEP5 以降,図 5.4.44 や 図 5.4.45 に示す STEP5 を基準としたときの STEP8 以降でもみられる。
このような進行性指標の低下は,覆工試験体表面にひびわれ幅が広がっていると きだけでなく,はく離している範囲の拡大が生じている時にも見られる。図 5.4.46 と図 5.4.47 は,天端背面で圧ざが生じた STEP6 を基準としたときの進行性指標の 変化を示したものである。覆工の天端で生じた圧ざの範囲が拡大するとともに,隣 接箇所で表面剥離が生じて,その範囲が拡がる STEP7,8 にかけて,進行性指標の値 がすべての計測点間で増加している。しかし,STEP8 以降では,ひびわれ幅やはく 離している範囲の拡大,STEP9 で新たなひびわれの発生があるにもかかわらず,進 行性指標の増加は見られない。このような進行性指標の低下には規則性が見いださ れない。進行性指標の低下の原因は,進行性指標に相関係数を利用している点にあ る。相関係数は二変数間の線形関係の強さをあらわしており,二変数間の関係を直 接的に求めているものではない。そのため,ある程度相関性が無くなった場合には,
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る STEP からのわずかな変状の進展を進行性指標で検知することが可能である。した がって,要監視対象箇所の変状の程度によらず,進行性指標を活用して変状の進展 を把握できるものと考えられる。
実際の変状進展性の評価では,変状が大きく進展する前に補修等の措置を施すこ とになることから,変状の大きな進展を捉える必要はなく,潜在的なものも含めて 変状の進行性の有無の把握が重要と考えている。したがって,本論文で定義してい る進行性指標は,要監視対象箇所の状態監視に有用であると言える。
図 5.4.38 STEP1 に対する進行性指標(覆工周方向の振動成分)
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1
1 2 3 4 5
進行性指標
載荷STEP 測定点1-2間
測定点1-3間 測定点1-4間 測定点2-3間 測定点2-4間 測定点3-4間
0.4 0.6 0.8 1 1.2
進行性指標
測定点1-2間 測定点1-3間 測定点1-4間 測定点2-3間 測定点2-4間 測定点3-4間
158
図 5.4.40 STEP3 に対する進行性指標(覆工周方向の振動成分)
図 5.4.41 STEP3 に対する進行性指標(覆工面外方向の振動成分)
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
3 4 5 6 7
進行性指標
載荷STEP
測定点1-2間 測定点1-3間 測定点1-4間 測定点2-3間 測定点2-4間 測定点3-4間
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
3 4 5 6 7
進行性指標
載荷STEP
測定点1-2間 測定点1-3間 測定点1-4間 測定点2-3間 測定点2-4間 測定点3-4間
図 5.4.42 STEP4 に対する進行性指標(覆工周方向の振動成分)
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
4 5 6 7 8 9 10 11
進行性指標
載荷STEP
測定点1-2間 測定点1-3間 測定点1-4間 測定点2-3間 測定点2-4間 測定点3-4間
0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4
進行性指標
測定点1-2間 測定点1-3間 測定点1-4間 測定点2-3間 測定点2-4間
160
図 5.4.44 STEP5 に対する進行性指標(覆工周方向の振動成分)
図 5.4.45 STEP5 に対する進行性指標(覆工周方向の振動成分)
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9
5 6 7 8 9 10 11
進行性指標
載荷STEP
測定点1-2間 測定点1-3間 測定点1-4間 測定点2-3間 測定点2-4間 測定点3-4間
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
5 6 7 8 9 10 11
進行性指標
載荷STEP
測定点1-2間 測定点1-3間 測定点1-4間 測定点2-3間 測定点2-4間 測定点3-4間
図 5.4.46 STEP6 に対する進行性指標(覆工周方向の振動成分)
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1
6 7 8 9 10 11
進行性指標
載荷STEP
測定点1-2間 測定点1-3間 測定点1-4間 測定点2-3間 測定点2-4間 測定点3-4間
0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1
進行性指標
測定点1-2間 測定点1-3間 測定点1-4間 測定点2-3間 測定点2-4間
162
図 5.4.48 STEP8 に対する進行性指標(覆工周方向の振動成分)
図 5.4.49 STEP8 に対する進行性指標(覆工面外方向の振動成分)
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1
8 9 10 11
進行性指標
載荷STEP 測定点1-2間
測定点1-3間 測定点1-4間 測定点2-3間 測定点2-4間 測定点3-4間
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1
8 9 10 11
進行性指標
載荷STEP 測定点1-2間
測定点1-3間 測定点1-4間 測定点2-3間 測定点2-4間 測定点3-4間