3.5 高校選択の情報
3.5.2 学校説明会と入学後の印象相違度
本項では、学校説明会での印象と入学後の印象の違いから、高校選択に関する情報を分析 する。
表3—13は、「振り返り調査」の問(16)「現在通っている高校の学校説明会に参加しまし たか」に対し「1 参加した」と回答した生徒を対象に、「振り返り調査」の問(18)「高校 生活を過ごしてみて、現在通っている高校の学校説明会に参加したときの印象は、現在、想 像どおり正しかったと感じていますか」に対する回答の相違度を従属変数とし、「振り返り 調査」の問(19)「現在通っている高校の学校説明会に参加したときの印象を、現在どのよ うに感じていますか」に対する回答を説明変数として、重回帰分析した結果である。なお、
問(18)は学校説明会に対する総合的な印象であり、問(19)は個別の説明項目に対する評 価を表したものである。
従属変数については、問(18)の回答「1 とても正しかった」を1点、「2 やや正しかった」
を2点、「3 どちらとも言えない」を3点、「4 やや正しくなかった」を4点、「5 まった く正しくなかった」を5点の量的変数とし、説明変数については、問(19)の17項目それ ぞれについて「違っていた」を1とし、「正しかった」と「どちらでもよい」を0とするダミー 変数として扱った。多重共線性については、村瀬ほか(2007)に従い、VIF 69が2以上の説 明変数はなく、説明変数同士の多重共線性はない。
69 Variance Inflation Factor:分散拡大要因。
表3—13 学校説明会の印象と現在の印象の相違度を従属変数とする重回帰分析
出典:「振り返り調査」より筆者作成。
注:βは標準偏回帰係数、γは相関係数。***P<0.01、**P<0.05、*P<0.10。
表3—13から、入学後の印象が学校説明会での印象と「違っていた」とする説明変数を標 準偏回帰係数(β)の大きい順で示すと、「校則が自分にあう」、「個性を伸ばせる」、「先生 の感じがよい」、「伝統校風がよい」、「学力を伸ばせる」、「自分の学力にあう」、「やりたい部 活動ができる」、「学校の評判がよい」、「先輩の感じがよい」、「興味ある行事がある」である。
この「違っていた」原因は何であろうか。学校説明会で不正確な説明や印象を与えたのか、
学校説明会の説明内容として不十分であったのか、この点について、高校側の学校説明会の 目的から検討したい。
図3—6は、「情報提供調査」の問(1)「学校説明会に参加する中学生に対して、理解して ほしいと考え、学校説明会を実施していますか」の回答(いくつでも)について、回答数を 学校数で除した割合を示したものである。先述した表3—13で印象の相違度と有意な相関を 示した説明変数に対応する項目については◎印を付した。
◎印を付した項目には、説明する高校の割合の高い項目と低い項目がある。概ね50%以 上を目安に、割合の高い項目は、学校説明会で不正確な説明や印象を与えた可能性のあるも の、割合の低い項目は、学校説明会の内容として不十分であった可能性のあるものと考えた。
したがって、「校則が自分にあう」、「自分の学力にあう」は説明内容が不十分であった可能 性の高い項目、「学力を伸ばせる」、「やりたい部活動ができる」、「興味ある行事がある」、「個 性を伸ばせる」、「伝統校風がよい」、「先輩の感じがよい」、「先生の感じがよい」、「学校の評
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するダミー変数として扱った。多重共線性については、村瀬ほか(2007)に従い、VIF69が 2以上の説明変数はなく、説明変数同士の多重共線性はない。
表3-13 学校説明会の印象と現在の印象の相違度を従属変数とする重回帰分析
説明変数 β γ
自分の学力にあうダミー 0.06 *** 0.16 ***
学力を伸ばせるダミー 0.09 *** 0.28 ***
進学実績がよいダミー 0.01 0.20 ***
類型やコースがあるダミー -0.01 0.15 ***
選抜基準が自分にあうダミー 0.00 0.21 ***
学びたい科目があるダミー -0.03 0.17 ***
個性を伸ばせるダミー 0.12 *** 0.33 ***
やりたい部活動ができるダミー 0.06 *** 0.23 ***
興味ある行事があるダミー 0.04 * 0.26 ***
伝統校風がよいダミー 0.10 *** 0.32 ***
学校の評判がよいダミー 0.06 *** 0.30 ***
先輩の感じがよいダミー 0.06 *** 0.25 ***
先生の感じがよいダミー 0.11 *** 0.34 ***
校則が自分にあうダミー 0.13 *** 0.32 ***
施設設備がよいダミー 0.03 0.20 ***
通学に便利ダミー 0.02 0.12 ***
周辺地域の環境がよいダミー 0.01 0.18 ***
R2 0.25 ***
Adj.R2 0.25 ***
N 2103
※β:標準偏回帰係数 γ:相関係数 ***P<0.01 **P<0.05 *P<0.10 出典:「振り返り調査」より筆者作成。
注 :β は標準偏回帰係数、γ は相関係数。***P<0.01、**P<0.05、*P<0.10。
表 3-13 から、入学後の印象が学校説明会での印象と「違っていた」とする説明変数を 標準偏回帰係数(β)の大きい順で示すと、「校則が自分にあう」、「個性を伸ばせる」、「先 生の感じがよい」、「伝統校風がよい」、「学力を伸ばせる」、「自分の学力にあう」、「やりた い部活動ができる」、「学校の評判がよい」、「先輩の感じがよい」、「興味ある行事がある」
である。
この「違っていた」原因は何であろうか。学校説明会で不正確な説明や印象を与えたの か、学校説明会の説明内容として不十分であったのか、この点について、高校側の学校説 明会の目的から検討したい。
図 3-6 は、「情報提供調査」の問(1)「学校説明会に参加する中学生に対して、理解し てほしいと考え、学校説明会を実施していますか」の回答(いくつでも)について、回答 数を学校数で除した割合を示したものである。先述した表 3-13 で印象の相違度と有意な 相関を示した説明変数に対応する項目については◎印を付した。
69 Variance Inflation Factor:分散拡大要因。
��変�: 中央揃え
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��変�: 右揃え
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��変�: インデント : 最初の行 : 4 字
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判がよい」は学校説明会で不正確な説明や印象を与えた可能性の高い項目と考えられる。
また、学校説明会で不正確な説明や印象を与えた可能性の高い項目については、視点を変 えれば、入学後にその印象が「違っていた」印象に変化したものととらえることができ、教 育活動の中で改善するべき項目とも考えられる。
図3—6 学校説明会の目的の割合 出典:「情報提供調査」より筆者作成。
注:N=83、いくつでも選択、◎:表3—13における有意な説明変数。
「自分の学力にあう」については、改善すべき必要性を「3.5.1 高校選択の大切な要素と 役立った内容」で述べたので、ここでは、標準偏回帰変数が最も大きい「校則が自分にあう」
について検討する。具体的には、学校説明会の「校則が自分にあう」印象が入学後に「違っ ていた」と感じた生徒が多く在籍する高校の特徴を探りたい。
表3—14は、「振り返り調査」の問(16)「現在通っている高校の学校説明会に参加しまし たか」に対し「1 参加した」と回答した生徒対象に、問(19)「高校生活を過ごしてみて、
現在通っている高校の学校説明会に参加したときの印象を、現在どのように感じていますか」
に対する回答のうち「14 校則が自分にあっている印象は」の回答「正しかった」、「違って いた」、「どちらでもない」と偏差値3段階のクロス表である。偏差値- 48 - 3段階については、「3.3.1
「伝統校風がよい」、「先輩の感じがよい」、「先生の感じがよい」、「学校の評判がよい」は 学校説明会で不正確な説明や印象を与えた可能性の高い項目と考えられる。
また、学校説明会で不正確な説明や印象を与えた可能性の高い項目については、視点を 変えれば、入学後にその印象が「違っていた」印象に変化したものととらえることができ、
教育活動の中で改善するべき項目とも考えられる。
※N=83、いくつでも選択、◎:表3-13における有意な説明変数。
図3-6 学校説明会の目的の割合
出典:「情報提供調査」より筆者作成。
「自分の学力にあう」については、改善すべき必要性を「3.5.1 高校選択の大切な要素 と役立った内容」で述べたので、ここでは、標準偏回帰変数が最も大きい「校則が自分に あう」について検討する。具体的には、学校説明会の「校則が自分にあう」印象が入学後 に「違っていた」と感じた生徒が多く在籍する高校の特徴を探りたい。
表3-14 は、「振り返り調査」の問(16)「現在通っている高校の学校説明会に参加しま したか」に対し「1 参加した」と回答した生徒対象に、問(19)「高校生活を過ごしてみ て、現在通っている高校の学校説明会に参加したときの印象を、現在どのように感じてい ますか」に対する回答のうち「14 校則が自分にあっている印象は」の回答「正しかった」、
高校選択の決定時期と学力判断」における表3—4の偏差値3段階と同様に設定した。
「違っていた」と感じた生徒は、上位群→中位群→下位群の順に多くなっている。「1.1 問題意識」の「図1—2 平成21年度 中途退学者の理由別割合」で、中途退学の最も多い 理由が「学校生活・学業不適応」(52.7%)であることからも、生徒にとって学校生活の規 制である「校則が自分にあう」については、「自分の学力にあう」とともに、学校説明会で 十分に説明するべき項目であると考えられる。
表3—14 「校則が自分にあっている」という印象と偏差値3段階のクロス表
出典:「振り返り調査」より、「偏差値」はスクール21(2011)より筆者作成。
注:χ2(df=4,N=2207)=153.310、Cramer’s V=.186、P<.01。
以上から、学校説明会で十分に説明する必要のある項目は「校則が自分にあう」、「自分の 学力にあう」で、より正確な説明や印象を必要とする項目は、「学力を伸ばせる」、「やりた い部活動ができる」、「興味ある行事がある」、「個性を伸ばせる」、「伝統校風がよい」、「先輩 の感じがよい」、「先生の感じがよい」、「学校の評判がよい」であることが判明した。特に、「校 則が自分にあう」という印象が「違っていた」生徒が多く在籍する偏差値下位群の高校の学 校説明会では、「校則が自分にあう」について十分に説明をする必要がある。
なお、「自分の学力にあう」は、「3.4.1 高校選択の要素と役立った内容」で、学校説明会 での効果が低く、学校説明会での改善の必要のある項目であることを指摘したが、学校説明 会の印象相違度からも、同様の改善の必要性が明らかになった。