• 検索結果がありません。

子どもの読書活動推進(岩崎れい)

ドキュメント内 こちら (ページ 128-136)

4. 先行研究レビュー

5.2. 子どもの読書活動推進(岩崎れい)

子どもの読書活動推進の行政施策として要となるのは,2001年に制定された「子ど もの読書活動の推進に関する法律」(平成

13

12

12

日法律第

154

号)の制定とそ れに伴う

2002

年の「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」の閣議決定であ り,この法律や計画に伴って,各都道府県・市町村がそれぞれの子どもの読書活動推 進計画を策定している(文部科学省

2007a)。また,2008

2

月には「子どもの読書活 動の推進に関する基本的な計画(案)【第二次】」が発表され,2月

28

日までパブリッ クコメントを募集し,2008年

3

11

日には,「子どもの読書活動の推進に関する基本 的な計画」(第二次)が閣議決定された。

本節では,「子どもの読書」を主とした法整備・施策を軸に,行政がその他の側面で 子どもの読書の重要性や推進の必要をどのような観点から捉えているかを整理する。

5.2.1. 「子どもの読書活動の推進に関する法律」と関連施策

日本では,

2000

年の「子ども読書年」を皮切りに,子どもの読書に関する近年の行政 の動きは活発になった。

1997

年には学校図書館法が改正されたことも,ひとつのメル クマールと言えるが,社会的な関心はむしろ

2000

年に経済協力開発機構(OECD)に よって実施された

PISA

の結果に集まったといえるのではないだろうか。この調査の 柱のひとつは読解力(reading literacy) に関するものであり,その結果,「楽しむための 読書をしない」と分析された

15

歳の割合は,

OECD

加盟国の中で日本がもっとも高く,

唯一

50%を越えていたことが,衝撃的な事実として新聞でも取り上げられ,また, 2001

年に制定された「子どもの読書活動の推進に関する法律」でも,この点に言及されて いる。この法律の制定に伴い,2002 年には,「子どもの読書活動の推進に関する基本 的な計画」が閣議決定され,これをもとに各都道府県・市町村で,順にそれぞれの子 どもの読書活動推進計画を策定することとなった。閣議決定から

5

年が経過した

2008

年には,「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」の第二次案が

2

月に提示さ れ,パブリックコメントが募集された。これに対し,日本図書館協会が意見を明示し ている(日本図書館協会

2008)。3

11

日には,「子どもの読書活動の推進に関する 基本的な計画」(第二次)が閣議決定され,文部科学省のウェブサイトで公開されてい る。

第二次計画では,2002年に策定された基本計画の取組として,以下の

5

点が挙げら れている。①全都道府県において「都道府県子ども読書活動推進計画」が策定された こと,②公立図書館と連携する学校が大幅に増加したこと,③12学級以上の学校のほ とんどで司書教諭が発令され,また,ボランティアとの連携が進んだこと,④学校図 書館における図書数のある程度の増加と目録データベース整備の促進,⑤2002~2006 年度(平成

14~18

年度)に「子どもゆめ基金」により,子どもの読書活動を支援する

1,685

団体への助成が行われたことである。成果としては,①不読者の減少傾向,②

公立図書館における児童書の貸出冊数増加・児童の帯出者数増加,児童室のある図書 館の増加,③全校一斉の読書活動の増加,の

3

点が挙げられている。これらをもとに,

第二次計画では,新たな課題として次の

4

点を挙げている。①小学校,中学校,高等 学校と学校段階が進むにつれ,不読者が増加すること,②地域差が顕著であること,

③学校図書館資料の整備が不十分であること,④子どもたちの読解力の低下が見られ ること,である。また,改定の内容として,家庭における取組,地域における取組(子 どもの読書環境の地域格差の改善,公立図書館の情報化の推進,公立図書館に係る人 材の養成),学校における取組(学校段階に応じた読解力の向上,学校における条件整 備)などが挙げられている。

案の段階で,日本図書館協会は意見を表明しているが,そこで出された大きな修正 意見は,閣議決定された案でも明確に採用されているものはほとんど見られない。例 を挙げると,第一に,財源確保については,第

4

章の「財政上の措置」で「国は,本計画 に掲げられた各種施策を実施するため,必要な財政上の措置を講ずるよう努めるとと もに,地方公共団体が地域の実情に応じて自主的に実施する子どもの読書活動の推進 に関する施策のための費用について,必要な財政上の措置を講ずるよう努める」という 記述に留まっており,財源の明示はない。第二に,第

5

章の「地域における子どもの 読書活動の推進」で取り上げられている「公立図書館における子どもの読書活動の推進 のための取組」で,公立図書館の人材について,日本図書館協会は,ボランティアでは なく専門職の必要性を示すとともに,計画案に見られた,ボランティアを

10

万人に,

という数値目標に疑義を呈しているが,この点について,第二次計画では,ボランテ ィア

10

万人案のままである。第三に,第

5

2

節「学校における子どもの読書活動の 推進のための取組」の(1)児童生徒の読書習慣の確立・読書指導の充実で,「卒業まで に一定量の読書を推奨するなどの目標」のように読書冊数を競うことに対する疑義が 提示されているが,これについても子ども自身の読書量に関する目標を設定すること は閣議決定された第二次計画にそのまま盛り込まれている。

また,第一次計画と類似しているものの内実が変化している点では,両方とも

PISA

の結果について言及しているが,第一次計画では

2000

年の

PISA

の結果をもとに「楽 しみのための読書をしている

15

歳の割合」が

OECD

加盟国の中で最低であったことに 言及しているのに対し,第二次計画では

2006

年の

PISA

の結果をもとに,読解力の低 下に言及している点である。

5.2.2. 各種法律・答申等における子どもの読書への言及

この

2000

年からの動向の中で,他の法律や各種答申における読書への主な言及を整 理しておく。

主なものとして,2004年には文化審議会答申「これからの時代に求められる国語力 について」が出され,2005年には「文字・活字文化振興法」(平成

17

7

29

日法 律第

91

号)1 が制定されている。

「これからの時代に求められる国語力について」では,諮問理由には読書についての

言及は見られないものの,理由説明では,「これからの時代に求められる国語力を身に 付けるための方策」として,図書館の充実と読書環境の整備を通じて言語環境を整備す ることが挙げられている(文部科学大臣

2002a,2002b)。初めの 1

年間ほどは文化審 議会国語分科会のみが実施され,その後国語教育等小委員会と読書活動等小委員会に 分かれて幾度か会議が開催され,

2004

2

月に文化審議会答申が出された。この答申 は「I これからの時代に求められる国語力について」と「II これからの時代に求められ る国語力を身に付けるための方策について」の二部構成となっている。

I

章では,国語とは,個人にとっては「知的活動の基盤」「感性・情緒等の基盤」「コミ ュニケーション能力の基盤」であり,社会全体にとっては「国語は文化の基盤であり,

中核」であり,「社会生活の基本であるコミュニケーションは国語によって成立する」

としている。さらに,価値観の多様化や少子高齢化などの社会の変化や国際化・情報 化の進展の中で,国語は重要な役割を果たすものとしている。また,国語力とは何か についての説明において,国語力とはその中核をなす「考える力」などの統合体として の言語を中心とする情報を「処理・操作する能力」とその基盤となる「国語の知識」など の

2

領域に分けて考えることができるとし,その能力を育成するための「聞く力」「話す 力」「読む力」「書く力」のそれぞれについて身に付けるべき能力の具体的目標が示され ている。この前半部分では,読書についての言及は,以下の

3

箇所である。

1

つ目は,

社会変化としての情報化の進展の中で,インターネット上の断片的な情報を体系的に 活用する力の育成のために,国語の運用能力や読書などによって培われた「大局観」が 根幹となるとしている。2つ目に,社会的・文化的な価値観の確立の中で「情緒力の形 成に欠くことのできない」読書が特に大切であるとしている。

3

つ目に,国語力の低下 の一因として,中学生以降の年代における読書量の低下を挙げている。これらの言及 はいずれも,国語の役割や向上が求められる理由として挙げられているものであり,

国語力を構成する能力や育成する国語力の項目など,具体的な内容を示す部分では読 書についての具体的な言及はない。また,

I

章において図書館への言及は一度もない。

II

章では,国語力を身に付けるための方策として「国語教育」と「読書活動」の

2

点を 主眼に整理している。「国語教育」については,情緒力・論理的思考力・語彙力が重要 であり,読書はその育成における中核であるとしている。また,発達段階に応じた国 語教育が重要であるとし,その中で,3歳~11・12歳の基礎作り期には言葉の数を増 やしたり,言語と事物との関係を明確にしたりするために,読み聞かせや読書体験が 重要であり,13歳以上の発展期においては,情緒力・想像力・論理的思考力・語彙力 の総合的な発達を促進するために豊富な読書体験が重要であるとしている。3 歳まで のコミュニケーション重視期については読み聞かせなど本とのかかわりについての言 及は見られない。また,学校における国語教育に関する節では,読書や図書館への言 及はなく,家庭や社会における国語教育に関する節では,家庭内における「読み聞かせ」

「お話」「読書」が国語力の育成に役立つことに言及されているのみであり,ここでも図 書館への言及はない。それに対し,「読書活動」については学校教育についても家庭・

社会における取組についても,読書だけではなく,図書館の果たす役割についても具 体的に言及されており,学校図書館や公共図書館は子どもたちの読書活動を支える重

ドキュメント内 こちら (ページ 128-136)