• 検索結果がありません。

多自由度系の振動

ドキュメント内 構造と連続体の力学基礎 (ページ 31-50)

9.2.1 2自由度系の振動 (1) 運動方程式

1自由度系の節では振動問題の最も重要な「固有振動数」という概念を誘導し,設計に少しだけ関連付けな がらその意味を示した。もちろん,社会基盤構造を1質点系で近似するのはかなり乱暴な行為であることは容

易に想像できるが,読者の多くは既に有限要素法を知っていて,任意の初期値境界値問題が多自由度系の問題 で近似できることも知っているだろう。ここではその基礎として,複数の質点から成る多自由度系を対象とし て「固有振動モード」というもう一つの重要な概念について説明する。そのためには,まず運動方程式を誘導 する必要があるが,この方程式を求めるという訓練をする場は教育現場にはほとんど無いのが現実ではないだ ろうか。文献[182]では,義務教育以来国語という科目があって多くの文章を書かされて採点されるにもかか わらず,その書き方技術の教育の場が一切存在しないことを問題視している。運動方程式や支配方程式を誘導 する技術教育も,我が国ではこの国語における文書作成技術教育とほぼ同じ状況にある。運動方程式の誘導は

Newtonの法則の非常に簡単な応用に他ならない22ので,できるだけ答を見ないで各自努力して欲しい。これ

は,東北大学の北原道弘先生が振動の授業で学生に期待した修得目標の一つである。

k1 k2

c2

c1 m1 m2

f1(t) f2(t)

u1(t) u2(t)

f1

c1u˙1

k1u1

c2( ˙u2u˙1) k2(u2u1)

f2

図9.28 2自由度系の振動 二組のバネとダッシュポットを挟ん

で二つの質点が直列に並んでいる図 9.28の系は,二つの質点が連成(連立)

しながら,しかし自由に動くことがで きるので2自由度系と呼ばれる。同じ 図の右側に描いた力のダイアグラムか

ら,質点1に作用している右方向(変位u1方向)の力の総和は

f1k1u1c1u˙1+k2(u2u1)+c2( ˙u2u˙1) である。一方,質点2の場合は

f2k2(u2u1)−c2( ˙u2u˙1) である。したがって,2質点のNewtonの法則はそれぞれ

f1k1u1c1u˙1+k2(u2u1)+c2( ˙u2u˙1)=m1u¨1, f2k2(u2u1)−c2( ˙u2u˙1)=m2u¨2

となる。1自由度系の運動方程式と同じ順番になるように整理すると

m1u¨1(t)+(c1+c2) ˙u1(t)−c2u˙2(t)+(k1+k2)u1(t)−k2u2(t)= f1(t), m2u¨2(t)−c2u˙1(t)+c2u˙2(t)−k2u1(t)+k2u2(t)=f2(t)

が2自由度系の連立した運動方程式である。これを行列表示すると

Mu(t)¨ +Cu(t)˙ +K u(t)= f(t) (9.74) となる。ここにuを変位ベクトル,fを外力ベクトル,Mを質量行列,Cを減衰行列,Kを剛性行列と呼び

u(t)≡ ⌊u1(t)u2(t)⌋t, f(t)≡ ⌊f1(t) f2(t)⌋t, (9.75a, b) M



 m1 0 0 m2



, C



 c1+c2c2

c2 c2



, K



 k1+k2k2

k2 k2



 (9.75c, d, e) のように定義した。式(9.74)は時間に関する二つの未知関数u1(t),u2(t)の2階の連立微分方程式なので,初期 条件が四つ必要になる。それは二つの質点の,それぞれの初期位置と初速の合計四つでいいから

u(0)=u0, u(0)˙ =u0 (9.76a, b)

と表すことができる。u0,u0は式(9.75a)の変位ベクトルに対応した初期位置ベクトルと初速ベクトルである。

22とは言いながら,著者も微分方程式の誘導は苦手だ。毎年の定期試験でも3自由度系までの運動方程式の誘導で数名の学生が間違う。

力の向きのミスから現れる剛性行列等の対角項の負の成分を気にしないし,次元の違いも確認しないのだ。

(2) 非減衰自由振動

最も基本的な振動特性を調べるために,最初は非減衰の自由振動を考え,Cf を無視した運動方程式

Mu(t)¨ +K u(t)=0 (9.77)

を対象にしよう。1自由度系の振動解と同じように(ただしベクトルなので)

u(t)=Aexp (iωt), A≡ ⌊A1 A2t (9.78a, b) と置こう。A1,A2がそれぞれの質点の振動振幅で,Aを振幅ベクトル(この式では一時的には複素数と考えて おく)と呼ぶことにする。式(9.78a)を式(9.77)に代入すると

(K−ω2M)

Aexp (iωt)=0 が任意の時刻tに成立するためには

(K−ω2M)

A=0 (9.79)

でなければならない。これはA1,A2(これ以降は実数)に対する連立方程式(数学の言葉では固有値問題)だ が,右辺が零なので,もし係数の行列が正則であれば振幅ベクトルは零である。それは単なる静止状態を意味 し,もちろんそれも答の一つだが,自由振動問題の欲しい答ではない。したがってこの2式は1次従属の関係 になければならないことから

det(

K−ω2M)

=0 (9.80)

を満足しなければならない。これが固有振動数ω(数学の言葉では固有値)を決定する振動数方程式(特性方 程式)である。つまり

det



 (k1+k2)−m1ω2k2

k2 k2m2ω2



=0 から

{(k1+k2)−m1ω2} (

k2m2ω2)

k22=0 → m1m2ω4− {m1k2+m2(k1+k2)}ω2+k1k2=0 あるいは

ω4− {(k2

m2

) +

(k1 m1

) +

(m2 m1

) (k2 m2

)}

ω2+ (k1

m1

) (k2 m2

)

=0 (9.81)

が固有振動数ωを決定する。そしてその解は ω2=1

2





{(k2 m2

) +

(k1 m1

) +

(m2 m1

) (k2 m2

)}

±

√{(k2 m2

) +

(k1 m1

) +

(m2 m1

) (k2 m2

)}2

−4 (k1

m1

) (k2 m2

)>0 あるいは

ω2=1 2



{

ω202201+m0ω202

√{

ω202201+m0ω202}2

−4ω201ω202



>0 (9.82) と得られる。ここに

m0m2

m1, ω01

k1

m1, ω02

k2

m2 (9.83a, b, c)

と定義した。ω2の二つの解ω2121共に正の実数なので,その平方根±ω1,±ω2も実数だ。自由度が2になっ たので2種類の固有振動数が存在することを意味する。振動数は小さい方から順にω12(0 < ω1 < ω2)と記 す。よくω101202と勘違いする人がいるが,そうではないので注意すること。

式(9.79)は1次従属な連立方程式だったのでAは唯一には決定できず,それぞれの固有振動数に対してA1A2の比を求めることができるだけだ。例えば第2行の式を用いてA1 =0ではないことを期待(いつもそう なるとは限らないので注意。特に意地悪な教員の定期試験では。呵呵。)すると,その比が

dA2

A1 = k2

k2m2ω2 (9.84)

となるので,それぞれの固有振動数に対して二つの比は d1= k2

k2m2ω21, d2= k2 k2m2ω22 と表すことができる。したがって,二つの質点の変位の一般解は

u1(t)=D1 sinω1t+D2 cosω1t+D3 sinω2t+D4 cosω2t,

u2(t)=d1 (D1 sinω1t+D2 cosω1t)+d2(D3 sinω2t+D4cosω2t) と求められる。あるいは

u(t)1 (D1 sinω1t+D2 cosω1t)2 (D3 sinω2t+D4 cosω2t) あるいは (9.85a) u(t)=a1ϕ1 sin (ω1t−α1)+a2ϕ2 sin (ω2t−α2), ここにϕ1=

 1 d1



, ϕ2=

 1 d2



 (9.85b, c, d) 等と表すこともできる。D1D4あるいはa1,a212が積分定数で,初期条件式(9.76)で決めることがで きる。このϕn(n =1, 2)は,二つの質点の各固有振動数毎の成分の任意時刻の相対的な位置関係を表している ので固有振動モード(数学の言葉では固有ベクトル)と呼ばれている。小さい方の振動数に対応したモードを 1次モードと呼び,大きい方が2次モードと呼ばれる。

では一例としてk=k1=k2,m=m1 =m2の場合を解いてみよう。ただし,初期条件式(9.76)は

u(0)=u0=⌊u0 0⌋t, u(0)˙ =u0=⌊0 0⌋t (∗) と簡単にしておこう。式(9.80)の振動数方程式は具体的に

ω4−3ω20ω240 =0, ω0

k

m であるから,固有振動数はそれぞれ

ω1=

√ 3− √

5 2 ω0=

√5−1

2 ω0≃0.6180ω0, ω2=

√ 3+√

5 2 ω0=

√5+1

2 ω0≃1.618ω0

と求められる。それぞれのモード比dnは式(9.84)より d1= 2

√5−1 ≃1.618, d2= −2

√5+1 ≃ −0.6180

23求められる。d1が正なのに対し,d2が負であることには注意しよう。図9.29の左上に,その二つの質点 の相対的な位置関係,つまり振動モードを簡略に表示した。ω1に対応したモードは,二つの質点が常に同じ方 向に運動していることから同位相モードと呼ばれる。一方ω2に対応したモードはお互いに逆に向いて運動して

23毎年何人かの学生さんが宿題で,一つ前の式の2重の平方根の段階で小数にする。電卓による弊害の一つだ。さらに電卓持込禁止の期 末試験でも平方根を小数にする(p.1015)人がいる。不思議だ。

ϕ1 ϕ2

1

1 c1

c2

ω1

ω2

5 10 15

−1 1 u1

u0, u2

u0

ω0t 1

2 O

5 10 15

−0.2 0.2 u1

u0

, u2

u0

ω0t 1

2 ω1

O

5 10 15

−1 1 u1 u0

, u2 u0

ω0t 1

2

ω2

O

図9.29 2自由度系の振動例

いるので逆位相モードと呼ばれる。簡単のためにD1D4を用いた解の表現を用い,それを初期条件式(∗)に 代入すると

D2+D4=u0, d1D2+d2D4=0, ω1D12D3=0, d1ω1D1+d2ω2D3=0 となるから

D1=0, D2= d2u0

d2d1, D3=0, D4 = −d1u0

d2d1 と求められる。したがって解を

u1(t) u0

= d2 d2d1

cosω1td1 d2d1

cosω2t, u2(t) u0

= d1d2 d2d1

(cosω1t−cosω2t)

と得る。図9.29の左下の図が2質点の変位の様子である。2種類の振動数で揺れているので,1自由度系より 複雑な動きに見えるかもしれない。そこで,それぞれの質点の変位を二つの振動数毎に分けて描いたのが右側 の二つの図である。まず小さい振動数のω1の図(右上)を見ると,二つの質点が同じ符号で1/d1の比で運動し ているのが明らかである。これが同位相モードである。一方大きい振動数のω2の図(右下)を見ると,お互い がそっぽを向いて1/d2の比で運動している。これを逆位相モードと呼ぶのである。この例では,左側の図から あるいは右2図の縦軸を比較すれば明らかなように,逆位相の2次モードが卓越しているが,それは初期条件 の影響(質点2を止めたまま質点1のみを右にu0移動した状態で手を離したから)を強く受けたためである。

といった物理的な考察ができないと現場では役に立たないよ。

(3) 減衰自由振動

次に,減衰を含む自由振動の場合を考えてみよう。式(9.74)で外力を無視すれば,運動方程式は

Mu(t)¨ +Cu(t)˙ +K u(t)=0 (9.86) になる。非減衰の場合と同じように

u(t)=Aexp (iωt), A≡ ⌊A1 A2t (9.87a, b) と置く。この場合は振幅ベクトルAは複素数である。というのも,式(9.87a)を式(9.86)に代入すると

(K−ω2M+iωC)

Aexp (iωt)=0

となるからだ。これが任意の時刻tに成立するためには (K−ω2M+iωC)

A=0 (9.88)

でなければならない。よって振動数方程式は det(

K−ω2M+iωC)

=0 (9.89)

となる。1自由度系の結果からも当然なように,この方程式の解は複素数である。ただこの方程式は線形代数 で習う標準的な固有値問題にはなっていないことから,自由度が大きくなると固有振動数を求めることは困難 になる。つまり2自由度系の式(9.89)はωの複素係数4次方程式であることから,それが,電卓と手計算で解 を求めることができる限界だろう。したがって,このような減衰振動については別の工学的アプローチを用い ることにするが,それについては多自由度系の第9.2.2 (6)節で説明する。

(4) 非減衰強制振動—多自由度系の共振曲線

w(t) u1(t) u2(t)

k1(u1−w) k2(u2u1) 図9.30 非減衰強制振動 減衰系については多自由度系の第9.2.2 (6)節で取り扱うことにし,こ

こではもう一つの基本的な状況として,正弦波状の外力が作用したときの 強制振動を解いて,2自由度系の共振曲線を求めておく。図9.28の系で は外力を直接質点に作用させていたが,ここでは支点が正弦波で強制変位 させられる図9.30の問題の方を解いておこう。図に示した力のダイアグ ラムから,二つの質点に作用する右向きの力はそれぞれ

k2(u2u1)−k1 (u1−w), −k2 (u2u1) なので,運動方程式はそれぞれ

m1u¨1+k1 (u1−w)−k2 (u2u1)=0, m2u¨2+k2 (u2u1)=0 となる。1自由度系の場合と同様に,相対変位を

v1(t)≡u1(t)−w(t), v2(t)≡u2(t)−w(t) (9.90a, b) と定義して,上の運動方程式を書き直すと

m11+(k1+k2)v1k2v2=−m1w,¨ m2¨v2k2v1+k2v2=−m2w¨ を得るので,行列表示すると

Mu¨(t)+Ku(t)= fw(t), u(t)≡ ⌊v1(t)v2(t)⌋t, fw(t)≡ −w¨(t)⌊m1 m2t (9.91a, b, c) となる。MKは前述の定義式(9.75c) (9.75e)と同じである。

ここでは支点の変位がsine関数で与えられ

w(t)=w0 sinpt (9.92)

で動くものとすると,強制振動解もsinptで振動するだろうから

u=Asinpt (9.93)

1 2 3 5

10

|A1| w0

p ω0

ω1

ω0

ω2

ω0

O 1 2 3

5 10

|A2| w0

p ω0

ω1

ω0

ω2

ω0

O 図9.31 2自由度系の共振曲線 と置く。式(9.92) (9.93)を式(9.91a) (9.91c)に代入すると

(Kp2M)

A=p2w0



 m1 m2





を得る。具体的に書くと







k1+k2

m1p2k2

m1

k2 m2

k2 m2

p2









 A1

A2



=p2w0



 1 1







 ω201+m0ω202p2m0ω202

−ω202 ω202p2





 A1 A2



=p2w0



 1 1





である。ここでは式(9.83)の記号を用いた。これを解くと



 A1

A2



= p2w0

∆( p2)



 ω202p2 m0ω202 ω202 ω201+m0ω202p2





 1 1



= p2w0

∆( p2)

 ω202+m0ω202p2 ω201202+m0ω202p2





と求められる。ここの分母は

∆( p2)

p4−(

ω202201+m0ω202

) p2201ω202

と置いたが,この式は,式(9.81)の振動数方程式(特性方程式)の左辺のωをpに置き換えた式と全く同じな ので,固有振動数をω12とすると,これは

∆( p2)

=( p2−ω21

) (p2−ω22

) のように因数分解できる。したがって,振幅は







A1

w0

A2

w0





= p2

(p2−ω21) (

p2−ω22)

 ω202+m0ω202p2 ω201202+m0ω202p2



 (9.94)

と求められる。分母から明らかなように,外力の振動数pが二つの固有振動数のいずれかに一致したときに振 幅が無限大になる。つまり共振点が二つ存在することになる。

ドキュメント内 構造と連続体の力学基礎 (ページ 31-50)