第 8 章 2項分布 63
10.2 壷の問題
壷の中に r 個の赤玉と w 個の白玉が入っている.壷から一つの玉を無作為に取り出 し続ける.ただし,取り出した玉は壷に戻さないものとする.Xw 回目に初めて赤玉を 取り出すとするとき,母関数 fw(t) =E(tXw)を求める.
1回目に赤玉を取り出す事象を A とすると,
Xw = {
1 事象Aが起きた場合
1 +Xw−1 事象Aが起きなかった場合 したがって
fw(t) = r
w+rt+ w
w+rtfw−1(t) (10.1) また,X0 = 1 であるから f0(t) = t である.
漸化式(10.1) より,
f1(t) = 1
1 +r[rt+t2], f2(t) = 1
(1 +r)(2 +r)[r(1 +r)t+ 2rt2 + 2t3],
f3(t) = 1
(1 +r)(2 +r)(3 +r)[r(1 +r)(2 +r)t+ 3r(1 +r)t2+ 6rt3+ 6t4] 等が得られる.しかし,一般のfw(t)を閉じた式で表すことは難しいと思われる.とも あれ,fw(t) は t の w+ 1 次多項式である.
10.2.1 階乗モーメント
k 次階乗モーメント
µ(k)w =E(Xw(Xw−1)(Xw−2)· · ·(Xw−k+ 1))
70 第10章 母関数 に関する漸化式を導く.
k = 1 の場合.漸化式(10.1) を微分して,
fw′(t) = r
w+r + w
w+r (fw−1(t) +fw′−1(t)) そしてt = 1 と置くことにより,
µ(1)w = 1 + w
w+rµ(1)w−1
この解は容易に求めることができ(「条件付き期待値」の章を参照),
µ(1)w = w 1 +r + 1 であることがわかる(これは w の1次関数である).
k =2 の場合.漸化式 (10.1)を微分して,
fw(k)(t) = w w+r
[
tfw(k)−1(t) +kC1fw(k−−11)(t) ]
であるから,
µ(k)w = w w+r
(
µ(k)w−1+kµ(kw−−11) )
(10.2)
漸化式 (10.2) の解は,幸いなことに帰納的に発見することができる.その過程を記
すと長くなるので,ここでは結果だけを記そう.結果を述べるために,次の記号を用い ると便利である.1
任意の実数 x に対して,
[x]n=x(x−1)(x−2)· · ·(x−n+ 1), [x]n=x(x+ 1)(x+ 2)· · ·(x+n−1) と書くとき,
µ(k)w = k!
[1 +r]k (w+ 1 +r)[w]k−1 証明は数学的帰納法を用いればよい.
(w+r)µ(k)w −wµ(k)w−1
= k!
[1 +r]k {(w+r)·(w+ 1 +r)[w]k−1−w·(w+r)[w−1]k−1}
1ベルジュ『組合せ論の基礎』より借用する記号
10.2. 壷の問題 71
= k!
[1 +r]k (w+r){(w+ 1)[w]k−1+r[w]k−1−w[w−1]k−1}
= k!
[1 +r]k (w+r){[w+ 1]k−[w]k+r[w]k−1}
= k!
[1 +r]k (w+r){k[w]k−1+r[w]k−1}
= k!
[1 +r]k (w+r)(k+r)[w]k−1
= k· (k−1)!
[1 +r]k−1 (w+r)[w]k−1
= kw· (k−1)!
[1 +r]k−1 (w+r)[w−1]k−2
= kwµ(kw−−11)
階乗モーメントの表現を用いれば,特につぎを得る.
V ar(Xw) = r
(1 +r)2(2 +r)w(w+ 1 +r)
73
第 11 章 モンテカルロシミュレーション
11.1 硬貨投げのシミュレーション
例1 正しいさいころをn = 20 回投げる試行をシミュレーションする.そのためには つぎのようにするとよい.
1. セル A1 に式=INT(6*RAND())+1を入力 2. それをセル範囲 A2:A20にコピー
ここで
• 関数 RAND() は,0 以上1 未満の一様乱数を発生する.一様乱数とは,(0以上 1 未満の)どの小数が発生するしやすさも,同様に確からしい ことを意味している.
すなわち,たとえば 0 に近い小数が発生しやすいとか,0.5 に近い小数が発生し やすい,というような事はない.
• 式 6*RAND()により,0 以上6 未満の乱数が作られる.
• 関数 INT(x) は,数 x の小数部分を「切り捨てる」.たとえば,INT(3.14) = 3 となる.
• したがって,式 =INT(6*RAND()) により,0 以上6 未満の乱数の小数部分が切り 捨てれた結果,整数 0,1,2,3,4,5 が作られる.しかも,元々の一様乱数から作っ ているから,どの整数も同じ確率で作られる.
例2 表が出る確率が p = 23 の硬貨をn = 20 回投げる試行をシミュレーションする.
表が出ることは数字 1 が現れること,裏が出ることは数字 0 が現れることと見なすな らば,確率 23 で数字 1が現れ,確率 13 で数字 0が現れる乱数を発生させることになる.
そのためにはつぎのようにするとよい.
1. セル A1 に式=IF(RAND() < 1/3,0,1) を入力 2. それをセル範囲 A2:A20にコピー
問1 35校の小学校から 7校を無作為に選ぶにはどうしたらよいか.
問2 10人のお客様に,ランダムな順番でテーブルスピーチをしていただきたい.どの ようにして順序を決めたらよいか.
74 第11章 モンテカルロシミュレーション