第6章 貿易・物流円滑化に関連する課題と候補案件
6.1 基幹施設の課題
適化計画」や、2018年3月末に開始されたStanding Committee for Economic and Commercial Cooperation of the Organization of Islamic Cooperation(COMCEC)の調査で提案されている。
リン鉱石輸送及びコンテナ輸送が鉄道によって効率的に分担できる可能性があり、道路 網から大幅に貨物量を転換できる。鉄道輸送能力の改善なしでは、何百万トンもの貨物輸送 を道路により分担するため、全体的に輸送コストが高くなり、また、すでに悪化している主 要道路網の損傷も進むことになる。
(4) KHB国境、SHB国境、アカバ港における冷蔵施設の不足
現在、KHB 国境には冷蔵施設がなく、パレスチナからヨルダンへの新鮮な果物や野菜の 輸送が制限されている。これは、パレスチナの多くの荷送人が、ヨルダン、サウジアラビア、
およびアラブ諸国の市場にアクセスする際にKHBルートを利用しない理由の1つの要因で ある。さらに、ハイファ港を通じたヨルダンの果物や野菜の輸出は、シェイクフセイン橋
(SHB)での冷蔵施設の欠如により複雑になっている。イスラエルは、両方の場所での貨物
の Back-to-Back を主張しており、生鮮食品が検査・積卸中に暑い日に長時間さらされる事
で腐敗しやすくなる。
また、ヨルダンはEUと米国に加工肉を輸出する新規市場の開拓の可能性がある。しかし、
厳しいEUと米国の基準を満たすためには、アカバに冷蔵保管施設が必要である。これら施 設は、海外(ニュージーランドなど)からヨルダンに輸入された生肉を加工し、輸出するの に適している。JICAの支援可能性の1つとして、ヨルダンが加工肉の輸出を促進するため にアカバでの適切な冷蔵施設の提供が考えられる。
(5) クイーン・アリア国際空港(QAIA)での航空貨物制限
クイーン・アリア国際空港貨物ターミナルに適切な設備がないため、生鮮食品の空輸が制 限されている。主に3つの問題がある。
• 効果的な冷蔵設備がない。現在、生鮮食品はその他一般製品と同等の扱いである。
• 非効率的な物流プロセス。異なる業者からの複雑な税関プロセスがあり、時間を要 する。
• キャパシティが限られている。荷物積卸エリアが小さく、X 線機器は小型である。
保管場所も十分確保されていない。
これらの問題を克服するため、オランダ政府は現在、クイーン・アリア国際空港(QAIA)
で貨物施設を改善し、その他の物流上の問題を解決するために、フィージビリティ・スタデ ィを実施し、ヨルダン運輸省との契約条件について協議中である。フィージビリティ・スタ ディの結果に応じて、オランダ政府は助成金支援を検討している(最大20%)。資金の残り は、他の国際援助機関からの支援が必要となる。
(6) 国境施設の近代化の必要性
越境施設では、将来の交通需要に対応するための改善が必要である。輸送条件(積載、空 荷等)に応じてトラックをレーン分離するための手段、または税関チャンネル(緑、黄、赤)
に従った制御を行うと、通過が容易になる。国境貨物輸送を改善する施策として、駐車場や 倉庫を拡張するのではなく、交通流動の改善に重点を置いた簡素化による迅速な税関手続 きが推奨されている。特に、カラマ(イラク側)とジャベール(シリア側)の国境インフラ 施設は、建物だけでなく電力と水のインフラ施設についても改善が必要である。太陽光発電 システムは電力不足に対処できる。
ヨルダン税関について、サウジアラビアとのオマリ国境にある古いスキャナーの更新が 必要である。さらに、通過プロセスを効率化しサプライチェーンを改善するために、シェイ クフセイン橋(SHB)国境にも新しいスキャナー装置が必要である。また、スキャンされた 画像の評価およびスキャナーのメンテナンスに関連するトレーニングも必要である。この ようなスキャナーは、危険物除去や密輸防止に有用である。
6.1.2 パレスチナ
パレスチナの輸入者と輸出業者が直面している困難のほとんどは本質的に制度的なもの だが、輸送や物流の円滑化の障壁となる施設の課題も幾つか挙げられる。
(1) アレンビー/キング・フセイン橋(KHB国境)での車両渋滞
ヨルダンでも言及されたが、アレンビー/フセイン橋での車両渋滞の物理的制約はボト ルネックとなっており、イスラエルの安全保障と税関職員の支配下にあるこの国境の西岸 側も同様である。
(2) パレスチナの鉄道アクセスの欠如
イスラエルは、ハイファからBeit She’anを通り、パレスチナ(西岸)の北部のJeninまで の鉄道路線を建設することを計画している。また、ハイファ線をSHB国境に延伸させ、さ らにヨルダン北部・サウジアラビアの国境まで鉄道延伸・接続することを提案している。こ の提案路線は、東西回廊に沿った重要な回廊を確立することになる。
一方、ヨルダンはこの案を支持しておらず、ハイファからパレスチナを通過するような路 線が支援する価値があるとの見解を示している。ハイファからパレスチナ、ヨルダン、サウ ジアラビアに至るこの輸送計画の実現可能性に関するフィージビリティ調査はまだ実施さ れていない。
この計画路線は、ハイファ港とヨルダンとアラブ諸国への鉄道アクセスを提供すること でパレスチナに利益をもたらし、また、イスラエルはハイファ港での交通量増加による恩恵 を受け、ヨルダンは地中海の港から低コストの輸送ルートへのアクセスを得ることでトラ ンジット貨物からの利益を得ることが可能である。提案されたヨルダンの南北の鉄道リン クとの接続を通して、マフラックで開発中の新物流基地やヨルダンの北部都市イルビット、
アンマンは直接的にこの開発の恩恵を受けると考えられる。
(3) アレンビー/キング・フセイン橋(KHB国境)での冷蔵施設の欠如
KHB 国境での冷蔵施設の不足はヨルダン・パレスチナ双方にとって問題である。パレス チナのフォワーダにとっては、パレスチナからヨルダンへ、またはヨルダンから第三国への 果物、野菜等の生鮮品の輸出が妨げられている。KHB 国境を通過するすべての貨物は、積 み替え(Back-to-Back)を行う必要がある。また高温環境下での検査は、生鮮品が腐敗しや すくなる。 冷蔵施設があれば、パレスチナの生鮮品・食品輸出は、ヨルダンの輸出チャン ネルを通じて活性化されるものと予想される。
(4) パレスチナ内道路の渋滞
パレスチナの道路ネットワークは2車線道路で構成されている。しかし、ラマラの周辺で は、1時間以上の輸送遅延の原因となる重大な渋滞がある。この渋滞の一部はイスラエル軍 の安全確認によるものだが、この混雑を緩和するために都市部付近で道路拡張計画がある。
イスラエルのチェックポイントは継続する可能性が高いが、道路改善事業は輸送時間短縮 に貢献する可能性が高い。
パレスチナ国家交通計画の8年間のプログラムには、次のプロジェクトが含まれている。
(i)既存の西岸のバックボーン(ヘブロン・ジェニン)の改修、(ii)Ramallah-Tulkarmを中 心とした戦略的内部接続、及び各都市を結ぶ放射状道路システムのフィージビリティ調査、
(iii)西岸内の混雑した道路リンクを迂回するために主要都市周辺の新設道路の設置、(iv)
Nabi Musa-Hebron-Bethlehem道路ネットワークの部分的完成。
(5) JAIP専用道路の必要性
ジェリコ農産加工団地(JAIP)とヨルダン側のShuneh物流センター(3.1.3節参照)との 間には、専用道路の建設が予定されており、現在パレスチナ、イスラエル、ヨルダン間で議 論されている。 このプロジェクトは2つの開発計画(日本の平和と繁栄のための回廊、及 び、パレスチナの国家運輸マスタープラン)に関連しているが、このプロジェクトの実施に は上記3者間の合意が必要であり、達成には政治的な困難が多い。
Shuneh物流センターやKHB 国境(西岸側)の国境施設ターミナルの運営、JAIP物流セ
ンターの整備に係る関係者間の責任分担は、4者協議で今後議論される予定である。KHB国 境の運営はイスラエルが実施するが、パレスチナ側では現時点では不明である。