第6章 貿易・物流円滑化に関連する課題と候補案件
6.2 制度的な課題
(3) 運輸部門の効率化の改善の必要性
近年改善は見られるものの、ヨルダンの運送業は断片化しており、競争力がないままであ る。低い収益性はビジネスの継続に障壁となるため、業界の合理化を進める必要がある。国 家輸出戦略2014~2019年は、トラック産業の構造と競争力を向上させる活動を提案してお り、運輸セクターへの投資誘致と技術の向上にインセンティブを提供している。長期的には、
運輸セクターでの過剰供給を適正化するために、トラック運転手の転職訓練、転職機会の提 供などが考えられる。
(4) 国境を越えた物流および輸送促進サービスのアップグレードの必要性
国家輸出戦略2014-2019は、関連する民間企業(通関業者、貨物運送業者等)の能力を向 上させることによって、公共部門における改善を補完するよう求めている。活動内容として は、次の施策が考えられる。①研修の提供、基準の改善、およびクリアランスエージェント のライセンスの導入、②貨物運送業の専門化の促進、③支援サービスのための貿易協会の強 化、④貿易および物流の促進に関する訓練の提供。
(5) 鉄道セクターの制度強化の必要性
ヨルダンは現在620 kmを越える鉄道網を有しているが、今後の拡張計画に応じて、鉄道 セクターの制度強化が求められる。2つの既存の鉄道会社(Hedjaz鉄道公社とアカバ鉄道公 社)は、運輸省による規制下での運営であるが、大規模な鉄道拡張計画を管理するためには、
規制を緩和し、例えば民間部門の鉄道運行への参加、競争原理の導入等を推進することが重 要である。この点に関して、AFD によるプレ・フィージビリティー調査(ヨルダン国鉄の 最適化計画)では、財務分析を行い、11%の財務的収益率を確認した。それに伴い、トラン ザクション・サービス・コンサルタントの支援の下、コンセッショネア選定プロセスの実施 を提案している。
6.2.2 パレスチナ
(1) 2014-2019年の国家輸出戦略の貿易・物流円滑化に関するフォローアップの必要性
2014年9月に正式にパレスチナ自治政府が正式承認した本戦略は、貿易・物流円滑化の 要素が含まれている。その1つが、事業者にとって最も効率的で費用効果の高い輸出プロセ スと経路の開発である。具体的な活動として、総合的ソリューションの確立(荷送人や運送 業者の需要マッチングサイトの開発、ウェブベースのソフトウェアの開発、輸出業者にとっ て有利な価格を達成するための効果的な競争政策の確立等)、貿易フローの効率向上のため の民間部門への投資促進(集約的な保税地域の設立等)輸出業者への物流支援策(物流拠点 の設立、生鮮商品のための冷蔵施設の提供等)。
(2) 貿易・輸出先の多様化
2015年の「貿易取引コスト調査」は、GAFTA諸国との貿易を促進するためにパレスチナ の自主性を高めることを推奨した。具体的には、GAFTA 諸国とのパレスチナ貿易の促進、
KHB越境輸送の促進措置の実施等である。例えば、現在パレスチナ製品の88%が単一の市 場(イスラエル)向けであることを考慮し、カルテット事務局は、パレスチナの輸出業者に 対し、新規市場の開拓を支援している。
(3) アレンビー/キング・フセイン橋(KHB国境)の円滑化
輸送サービスの円滑化が不可欠である。両国間の貿易は、Back-to-Back積み替えを基本と している。自動車による国境通過が禁止されており、Door-to-Doorシステム実現の妨げとな っている。
パレスチナ・ヨルダン間の唯一の国境であるKHB国境の輸送円滑化は、4カ国の関係者
(イスラエル、パレスチナ、ヨルダン、日本)による調整委員会によって検討され、 「win-win-win」の解決策を模索する必要がある。例えば、輸送手段による国境通過を許可するこ
とによるBack-to-Backの排除、国境通過措置の促進、リスク管理、許可された輸送事業者の
優先通行、ワンストップ国境通過手続き及び国境管理、車両・貨物のスキャンなどの最新技 術の導入等が挙げられる。
イスラエルとのチェックポイントでの輸送の円滑化も検討可能である。カルテット事務 局によると、KHB 国境に新しく改良された技術(新しいスキャナー等)を導入することに より、パレスチナ西岸とイスラエル間の貨物(および旅客)の越境時間の短縮が実現された と報告している。
また、KHB 国境の輸送円滑化に係る問題の議論や適切な関係機関への報告のために、ユ ーザーグループの形成も検討する必要がある。日本やオランダなどの開発パートナーによ る積極的な参加が考えられる。
(4) パレスチナとイスラエルの相互認証の推進
「貿易取引コスト調査」は、特定の製品の基準の相互認証を促進するために、Palestinian Standards Institution(PSI)とStandards Institute of Israel(SII)間の協力関係構築を推奨した。
施策として、農業貿易におけるPSIのインフラと人的能力の構築、SIIと協力した基準の構 築が挙げられる。具体的な提言としては、貿易業者の時間と資金を節約し、イスラエル当局 が質・量ともに十分な管理が実施できるように国境に農産品基準適合試験所を設置するこ と、またイスラエルの標準化の要件と手続きの情報への透明性とアクセスの改善化が挙げ られる。
6.2.3 地域
(1) ワンストップボーダーポスト・協調国境管理
アラブ諸国の国境を越えた国境管理の強化を目的とした独自のプログラムの一環として、
Aid for Trade Initiative for Arab States(AfTIAS)は、2箇所の国境(ヨルダンとサウジアラビ
ア間のオマリ国境を含む)にて共同通関手続の開発とパイロット取り組みを提案した。この 取り組みは時期尚早であると判明したが、ヨルダン側だけではあるが、協調した国境管理に 向けた取り組みが開始された。JICA はアフリカやアジア等でこのような取り組みを支援し た経験が豊富であり、税関だけでなく他の政府機関も含めて、関係者全ての利益を最大化す るための措置の推進、支援が可能である。
(2) 国際道路運送要件の調和
西アジア国連経済社会委員会(UNESCWA)及びアラブ連盟の後援を受けて、ヨルダン、
パレスチナ、および周辺諸国を含む、地域内の道路牽引要件の調和のためのイニシアチブが 存在する。考えられる問題には次項が挙げられる。(i)軸重荷重限界、車検制度、車齢制限 等の、トラック設計と運転基準の調和、(ii)国際貿易に携わるトラックのライセンス、(iii)
運転手の一時的なビザ。