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第2章 既存の貿易と物流の現状

2.3 主要物流経路等の現況

ここでは、対象地域における主要物流経路、国境、主要拠点について、調査団の訪問調査 に基づいた評価、課題とともに現況を示す。ここで取り扱った物流経路等の地域的な位置づ けは下図にも示した。

2.3.1 主要経路

(1) デザート・ハイウェイ(最長の南北幹線)

デザート・ハイウェイは、総延長352 km、ヨルダン国道15号線として位置づけられ、シ リアとのジャベール国境からアカバ港まで接続し、首都アンマンを経由する。全線4車線以 上であり、交通量が多く8、舗装状態も十分ではない。QAIAからマアンまでの220 kmの道 路再舗装事業が承認されており、2018 年初頭から事業開始予定である。事業資金の170百 万USDは、サウジ開発基金が2015年11月より供与している9

デザート・ハイウェイは、ヨルダンにとって、アカバ港に陸揚げされた原油をザルカ製油 所に輸送する生命線である。ザルカ製油所はアンマンから北東30 kmに位置する。また、殆 どの輸出入貨物はこの道路を経由し、アカバ港からの他国へのトランジット貨物もこの道 路を通過する。但し、現状、シリア及びイラクの国境閉鎖に伴うトランジット貨物の取り扱 い量の減少は、ヨルダン経済に負の影響を及ぼしている。

これに加えて、アンマンから東方面、サウジとのオマリ国境と接続する道路の改修につい てもサウジから資金供与がある。

デザート・ハイウェイに並行して、King’s Highway(国道35号)及び Valley Road(国道 65号)の2路線がある。これらは何地点かで東西に連結されており、はしご状のネットワ ークを形成している。

8 Ministry of Transportに交通量データ提供を依頼したが、得られなかった。調査団による短時間の観測によ

れば、1日辺り交通量がアンマン都市周辺で2万台を超えるような交通量が観測された。

9 http://invest-export.brussels/documents/16349/1140680/Jordan+-+Infrastructure+pojects+2016/a7035624-6c98-410 f-98b6-a08a5b6588f9.

出所:Wikimedia commons、調査団

2.11 ヨルダンの道路ネットワーク

(2) ヨルダンの既存鉄道(Hedjaz Railway:ヒジャーズ鉄道)

ヨルダン国内の鉄道路線は、シリア・ダマスカスからアンマンを経由し、サウジのメディ ナまでを接続する、20世紀初頭に建設されたヒジャーズ鉄道の一部である。軌間は1050 mm である。イスラム教の聖地巡礼客を目的とした鉄道であり、貨物輸送を目的としたものでは ない。サウジ国内の軌道はオスマン帝国末期にほぼ破壊されたが、ヨルダン国内の軌道は残 された。1972年にリン鉱石輸送のため、マアンからBhatn El Ghoulまでを接続する支線が 建設され、アカバ鉄道会社(Aqaba Railway Corporation)により運営が開始され、現在に至 る。その他の路線では、アンマン周辺にて観光目的の旅客運行が行われており、平均して月 に8便程度である。

出所:Global Logistics Cluster

図 2.12 ヨルダンの鉄道ネットワーク

(3) ハイファを起終点としたイスラエル~サウジの東西横断経路 背景及び概要

ハイファを起終点とした東西横断経路のコンセプトは、シリア内戦によるシリア港湾機 能の閉鎖、それに伴うヨルダンを経由した湾岸諸国への代替ルートとして2013年頃から具 体化された。欧州から対象地域への輸送ルートとして、ハイファ港を起終点とした輸送が試 みられた。現在では、週あたり25~30台の大型貨物車(ルーマニアやトルコの貨物車)が、

トルコ港湾からフェリー(RO-RO船 10)でハイファ港に上陸し、イスラエルを通過し、シ ェイク・フセイン橋(SHB 国境)で積み替えを行うことなく通関され、ヨルダンを経由し て、ザルカ自由貿易地区(Zarka Free Trade Zone)に入る。ザルカ自由貿易地区で貨物が一旦 下ろされ、整理されて湾岸諸国へ配送されている。

本経路は、2017年10月のイスラエル運輸大臣来日時の報道において、ヨルダンを経由し たイスラエルからサウジへの東西横断鉄道の建設計画が提示されたため注目を浴びている。

この建設計画は、イスラエル国内において既に建設済みのハイファ~Beit She’an の標準軌

鉄道約 200 km の延伸であり、サウジ国内の横断鉄道(オマリ国境に近接するサウジ

10 Ro-Ro船とは、フェリーのように船舶荷室に自走貨物車両をそのまま乗り入れる形式の船舶である。フ

ェリーは一般的に旅客を含むが、Ro-Ro船は貨物専用である。

Hadithaから、港湾都市Ras Al-Khairまで、標準軌鉄道)と接続し、ヨルダンの南北鉄道と も接続する構想である。この構想は具体化までに数年かかると目されており、ヨルダンを含 む各国の政治的な協力が必要である。

備考:SHB = Sheik Hussein Bridge 出所:Nikkei Asian Review

2.13 ハイファを起終点としたイスラエル~サウジの東西横断経路

本ルートの現状

ハイファを拠点とする物流企業であるTiran社が、2012年11月にシリアルートの代替と して、ハイファを起終点としたヨルダン向け貨物の、一般貨物車によるDoor-to-Door配送を 開始した(コンテナ車ではない一般貨物車によるDoor-to-Door輸送)。多くの貨物はヨルダ ン国内向け(ザルカ自由貿易地区への配送)であるが、中にはサウジやイラクまで配送する ものもある。帰路はほぼ空荷でトルコや欧州に戻る。

現状、本ルートの一般貨物車の輸送は週に25~30台程度だが、これに加え、80~100TEU のコンテナ輸送がこの経路で行われている。但し、コンテナ貨物はSHB国境において、コ ンテナを開いて積み替えを行う必要がある。

ハイファからのコンテナ貨物は主にトレーラによる配送が行われているが、イスラエル 国鉄はハイファ港からBeit She’an駅(SHB国境から10 km地点)までのシャトル輸送を試 験的に開始している。

このような動きは、近年のイスラエルとサウジの非公式な接近に関係するものと考えら れている。サウジがこの横断鉄道建設事業に対して資金提供するという憶測も出ている。

サウジ~ヨルダン~イスラエルを接続する横断鉄道が具体化された場合、ハイファ港は ヨルダンや湾岸諸国を短絡する経路の起終点となる。また、ヨルダンの南北鉄道路線とも最 終的には接続される。しかし、本計画は未だ構想段階であり、事業規模も不明である。ヨル ダン政府内の運輸関係者は本構想について理解しているものの、本路線がパレスチナ地域

やジェニンを通過すべきなどの意見もあり、纏まっていない。また、マフラック・ロジステ ィクスゾーンの運営主体の一つである米系企業US Safe Ports社に拠れば、ハイファ港拡張 部分を建設・運営する中国の上海国際港湾グループ(SIPG)が、Beit She’anからSHBを通 過しマフラックまでの鉄道建設に関心を示しているという11

交通需要とコスト

ハイファ港~SHB区間では、週あたり200~250台のSHB国境を通過する貨物輸送があ り、うち、25~30 台がトルコを経由したヨルダンに通過する貨物車である。国境を通過す るコンテナは80~100TEU 相当だが、ヨルダン国のアカバ港保護規定があり、SHB国境で 積み替えを行う必要がある。これに並行して、ハイファ港からBeit She’an駅を経由してSHB 国境までを鉄道とトラックで接続する輸送方法も試験的に行われており、これは道路のみ で輸送するよりも80USDほど安いサービスになる。

道路輸送費用:ハイファ港からSHB国境までの貨物車輸送は、港湾や国境の通過コスト を含めて片道約450USDであり、両方向で同額である。ハイファ港からSHB国境までの道 路でのコンテナ輸送は、港湾及び国境での通過コスト含めてコンテナあたり1500USDであ る。逆向きのSHB国境からハイファ港までは950USDである(一般的に海運側で港湾通過 コストを負担するため、これにはハイファ港での通過コストは含まない)。

鉄道輸送費用:ハイファ港からSHB国境まで、80USDほど安く、1420USDである。

SHB 国境からアンマンまでの貨物車輸送は 550-650USD である。加えてヨルダン国内で はトランジット費用が賦課されるが、イスラエル国内ではトランジット費の負担は不要で ある。

本ルートによる輸送時間は、トルコを月曜夜に出発し、アンマンに木曜に到達する。

トルコ発ヨルダン向け貨物の

ハイファ港(Ro-Ro船によるDoor-to-Door)輸送とアカバ港利用のコスト比較

(i) ハイファ港利用(一般貨物車)

トルコ→ハイファ港:USD1,300/台、ハイファ港→SHB国境:US$450/台、SHB国境→

アンマン:USD 422/台、合計USD2,172/台。輸送日数:3日。利点として、全行程を通 して貨物は載せ替える必要が無い。

(ii) アカバ港利用(コンテナ利用)

トルコ→アカバ港:US$1,405/40フィートコンテナ、アカバ港通過費用(ターミナルチャ ージ、通関コスト):USD250、アカバ港→アンマン道路輸送:US$564。合計USD2,219。

輸送日数18 ~25日間。

貨物輸送費はほぼ同額であるが、日数はハイファ港利用の方が格段に短縮できる。

出所:調査団

11 ヨルダンは、コンテナ輸入はアカバ港以外の入境を禁止する法律がある。但し、パレスチナからのコン テナトランジット貨物は除外される(1991 Cabinet Decision, with an exception for Palestinian goods across

the KHB granted in 2016)。マフラック・ロジスティクスゾーンに参画する米 Safe Ports社は、イスラエル

からマフラックへのトランジット貨物を対象にこの除外協議を進めているが、協議結果は確認されてい ない。