3.8 詳細調査の方法
3.8.3 地盤特性を把握する調査
表 3.8.1に示した地盤特性を把握する調査について,各調査の概要を以下に述べる。
(1) 現地踏査
現地踏査は,地形,地質,土質,湧水,植生,土地利用及び地すべり,崩壊,土石 流等の土砂災害の状況を調査し,既存資料の収集および空中写真判読による検討結果 の確認と亀裂や変状など問題となる箇所の発見及びその問題の大きさを把握するため に実施する。更に現地踏査の結果は,詳細調査の計画立案の基礎資料として活用する。
(2) 弾性波探査
弾性波速度はゆるい堆積物や間隙の多い岩盤中では遅く,また,地層境界や割れ目 等の弾性的境界面等で屈折や反射を生じる。したがって弾性波の伝播走時や反射波の 分布・形態から表層の厚さ,断層・破砕帯等の地質構造上の弱層の位置及び規模,地 山の岩石の割れ目の程度等を推定することができる。図 3.8.8 に弾性波探査の測定概 略図を示す。
なお,弾性波探査をはじめとする物理探査によって得られる情報は,それぞれの探 査手法による物理的特性から得られる地下構造を示すものである。物理探査の実施に あたっては,まず探査目的を明確にし,それに対する各物理探査の適用性とその限界 を把握して適切な探査方法を選定し,地表踏査やボーリング調査等の各種情報を組み 合わせて総合的な地質解析が必要になる。
図 3.8.8 弾性波探査測定概略図21)
(3) 電気探査
電気探査には多くの手法があるが,
土木分野では比抵抗法がよく用いら れる。比抵抗法には,地盤の深度方 向の変化をとらえるための垂直探査 と,水平方向の変化をとらえるため の水平探査が従来から用いられてい る。また,垂直・水平の両方の変化 を把握するための二次元解析手法と して比抵抗二次元探査法も利用され ている。斜面の探査では地形や地質 が複雑であるため,二次元解析の適用 性が高い。地盤の比抵抗は,粘土分や
水分が多いほど一般に低くなるので,比抵抗法は風化や変質帯,破砕帯,崖錐堆積物 や崩積土の分布,あるいは地山の含水状態や地下水分布の把握に適する。探査精度や 深度は,設置する電極の間隔や地盤の比抵抗に依存する。また,配筋構造物による被 覆や送電線や鉄道等が近接していると精度が低下する。図 3.8.9 に測定の概略図を示 す。
(4) 電気検層
電気検層は,ボーリング孔壁周辺の 電気的性質を測定するものであり,土 木分野では主に比抵抗検層が用いられ る。比抵抗検層は地盤の比抵抗をボー リング孔中に降下した電極により測定 するもので,地層の相対的な粒度,風 化や変質,破砕帯の位置,含水状態等 を把握するのに用いる。図 3.8.10 に概
略図を示す。 図 3.8.10 電気検層概略図 21) (5) 速度検層
速度検層は,ボーリング孔と地表の間,
またはボーリング孔間,あるいは単一のボ ーリング孔内の 2 箇所において,P 波およ び S波の伝播速度を求めるものである。図 3.8.11 に概略図を示す。
(6) ボーリング(標準貫入試験)
ボーリングは地盤構造と地質・土質の判 定,岩石・土質試験用の試料採取,標準貫 入試験等の各種原位置試験,すべり面の位 置の調査のために行う。採取された試料を 直接肉眼で観察して,その性状を把握でき
図 3.8.9 電気探査測定概略図 21)
図 3.8.11 速度検層概略図 21)
図 3.8.14
簡易動的コーン貫入試験機の例21) る反面,点の調査であるため,面的に調査を行うためには多くのボーリングが必要に なる。このため,ボーリングの位置,深度,あるいは物理探査など面的な調査との併 用等について十分に検討すべきである。未固結層や風化相当の軟質な地質では標準貫 入試験を実施する。図 3.8.12 にボーリングマシンの一般図を,図 3.8.13 に標準貫入 試験の一般図を示す。
図 3.8.12 ボーリングマシンの一般図 21) 図 3.8.13 標準貫入試験の一般図 21)
(7) サウンディング
サウンディングは土層構成や性状を簡易に調 査する方法で,適用可能な地盤が限られ,ボー リングのように直接コアは観察できないが,簡 易で比較的安価に調査でき,ボーリング孔間を 補完する調査法として実施される。スウェーデ ン式サウンディング試験やポータブルコーン貫 入試験などがあるが,斜面の調査には簡易動的 コ ー ン 貫 入 試 験 が 用 い ら れ る こ と が 多 い 。図 3.8.14に試験機の例を示す。
(8) ボアホールテレビ
テレビカメラをボーリング孔内に入れて孔壁 を観察する手法である。一般に地山の地質状態 はボーリングコアの観察で評価できるが,割目 の開口幅や挟在物の詳細等を把握することは難
しい。ボアホールテレビ等を用いると,乱される前の地山状態が直接観察できる。こ のため,斜面安定上重要な弱層やすべり面の方向,挟在物の性状,割目の開口状況等 が問題になる場合は有効である。図 3.8.15にボアホールテレビの概要を示す。
図 3.8.15 ボアホールテレビの装置と視野 22)
(9) 地下水位観測
のり面・斜面の安定性は地下水位に大きく 影響され,地下水位変動と降雨との関係など を把握しておくことは重要である。地下水位 は年間を通じて降雨・融雪等により変動する ことが多い。そのため,年間を通じて観測す ることが望ましい。通常は,掘削が完了した ボーリング孔にストレーナー加工を施したパ イプを設置して地下水位観測孔とし,パイプ 内に水位センサーを設置して水位観測を行う。
図 3.8.16 に地下水位観測孔の設置例を示す。
(10) 地下水検層
地下水検層は,地下水の流動層の位置お
よび流動状況を深さ方向に調査するためのもので,一定濃度の電解物質を溶解させた 地下水に,新たな地下水が流入した場合,この電解質が希釈されるために,地下水の 電気比抵抗値が変化する性質を利用したものである。電解質として食塩を用いる方法 が一般的である。調査結果は,横ボーリングの設置深度の検討などに利用することが できる。図 3.8.17に検層結果の例を示す。
図 3.8.16 地下水位観測孔の例
(11)多点温度検層
地下水検層同様に,地下水の流動層の位置および流動状況を深さ方向に調査するた めのもので,トレーサ-に温水を使用し,新たな地下水が流入した場合,孔内水の温 度が低下する性質を利用したものである。孔内水がない場合でも試験が可能である。
図 3.8.18 に検層結果の例を示す。
(12) 孔内水平載荷試験
ボーリング孔内において孔壁を加圧し,
その圧力と孔壁の変位との関係から地盤 の変形係数,降伏圧力及び極限圧力を求 めるものである。載荷方式により等分布 荷重方式と等分布変位方式に大別される。
図 3.8.19 に概念図を示す。
(13) 室内試験
のり面や斜面を構成する地質の物理的 性質や力学的性質を室内試験によって直 接把握するものであり,特に粘着力や内
部摩擦角はのり面の対策工設計において非常に重要なパラメータである。
これらのパラメータを求めるための室内試験では,不撹乱でのサンプリングが必要 になるため適用が困難な場合もあるが,可能な限り土質試験を実施し,直接これらの パラメータを求めて設計を行う必要があると考える。
粘着力や内部摩擦角を求めるための土質試験は,三軸圧縮試験や一面せん断試験で,
設計に用いるパラメータを設定するためには,土質・地質の不均一性を考慮し,でき るだけ多くのデータがあることが望ましい。また,これら力学試験の試験条件や拘束 圧の設定については,当該のり面・斜面の状況に応じた試験内容の決定が必要になる。
図 3.8.17 地下水検層結果の例 23) 図 3.8.18 多点温度検層結果の例 23)
図 3.8.19 孔内水平載荷試験の概念図 23)