第2章 生産空間の観光化とルーラリティ再編
第1節 土地利用の分類
農村観光の発展による観光施設の拡大に伴い、伝統的な農業用地の利用が多様化してい る。農村観光による土地利用の変化について、服部ほか(1976a)はスキー場開発に伴い伝 統的な民宿が拡大し、農業生活が激しく変化した長野県白馬村を例として、自然的土地利 用から施設型利用への変貌およびそれに伴う自然環境・生活環境の破壊を、土地所有・土 地利用の変化を通じて明らかにしている。その研究では土地利用類型を田畑と宅地、山林・
原野に区分し、観光開発による民宿の拡大を契機に田畑の宅地化および旅館、店舗の増加 のため、田畑と山林・原野が減尐したことを論じている。この分類は、自然的な用地が宅 地へと変化したことを解明したが、それ以外の変化、とくに山林・原野からスキー場への 変化については、反映できなかった。
農村地域における土地利用変化には、研究の蓄積が見られる。菊地・堤(1998)は前橋 市元総社地区を事例として、農業的土地利用の持続性と変移性を分析する際に、農村土地 利用を田と普通畑、桑畑、果樹園、森林、荒地、建物用地、幹線交通用地、その他用地、
水域に分類して考察している。また菊地(2012)は横浜市青葉区寺家地区におけるルーラ リティの商品化を究明するため、ルーラリティの生態的基盤である土地利用変化を山林・
公園・緑地等と農地(畑地、樹園地、水田)、宅地・造成地の 3 種類を区分して考察してい る。具体的には寺家地区の丘陵地が住宅地や住宅団地、あるいは大学などへ土地利用が変 化し、それを契機とする丘陵地の森林縮小が谷地の源涵養林の減尐に繋がり、谷地におけ る水田は田畑や樹林地、および都市的土地利用に転化され、水田が著しく縮小したことを 述べている。この研究では、ルーラリティ的な特徴である土地利用は山林・公園・緑地等 と農地であり、都市的な土地利用は宅地・造成地であることが認識されている。
中国において、席ほか(2011)は河北省野三坂旅游区苟各荘村を事例とした研究がある。
中国では村レベル区画の土地利用分類が不完全であるため、国家分類基準の「土地利用現 状分類」(標準番号:GB/T21010-2007)と「村鎮規劃標準」(標準番号:GB/T21010-2007)
を参考にし、現地調査による農村地域観光用地の特徴に基づいて、土地利用を耕地と林地、
商業サービス用地、住宅用地、公共管理用地・公共サービス用地、交通運輸用地、水域・
水利施設用地、その他などの 8 種類に分類したうえで、商業サービス用地をさらに観光買 い物用地と観光宿泊用地、観光飲食用地、観光娯楽用地に分類している。苟各荘村には観 光農園など農的な観光が発達していなかったため、耕地と林地に展開している農村観光に
よる土地利用変化が確認できなかった。
本研究には、以上の研究における土地利用の分類を参考にし、観光の機能を考慮しなが ら、研究対象の現状に合わせて、以下の分類(表 2-1)を考案した。これに基づいて、前 衛村における土地利用の変化实態を分析する。
表 2-1 土地利用の分類
農的 土 地 利用
耕地
水田と畑、果樹園を含め、食糧作物や野菜、果物、花卉を栽 培する用地。
観光利用 観光利用されている耕地。本稿ではイチゴ狩り、ブドウ狩り、
香草花園の用地を指す。
林地
林木が立つ土地。農産物を保護するための防風林、堤防を保 護するための防食林、経済林を指す。
観光利用 観光利用されている林地。本稿ではキャンプ場として利用さ れている林地を指す。
養殖・飼育場 魚など水産物を養殖する生簀と豚や鶏を飼育する飼育場。
観光利用 観光実のために作られた魚釣施設用地。
水域 生産活動(水産物)が行われていない川や湖などの自然水域。
都 市 的土 地 利 用
観光施設用地
観光者のために作られた観光専用の施設敷地。宿泊施設と観 光対象になっている民俗展示館と博物館、遊園地、騎馬場、野 外研修基地、テニス場、動物園、科学普及教育基地、観光サー ビスセンター、駐車場などの施設用地。
公共用地 村の公共事業のための土地。村役場、倉庫、メタンガスプー ルおよび村民たちが利用するレジャー広場の用地。
工業用地 工業生産のために使用されている土地。
宅地 村民が住んでいる家屋の敷地。
その他 工業や観光業の停滞によって廃棄された施設が再開発され ないまま、放棄されている土地。
農村観光の発展による土地利用変化のプロセスと特徴を把握するため、2014 年 3 月と 2015 年 3~4 月に現地調査を实施した。前衛村における土地利用現状を把握するために村民 を対象とした聞き取り調査を行い、各施設の設立年月、設立前の土地利用状況について把 握し、1980 年から現在までの土地利用変遷過程を定性的に把握した。そして Google Earth の衛星画像を下図に、GIS を用いて、時期ごとに各種用地の面積を計測し、土地利用の類型 変化を定量的に分析する。以下では、その結果を説明する。