睡丙ii)一雄四国回国靱鵬匝函1圃圏1囮
図3−7 空間一社会構造図(1947(昭和22)年頃)
これを前節の(4)で把握した髭沢地区の現状分析における地域景観の基本的 単位ごとに比較すると、i)集落内生活景観、伝統的な建築様式が失われたもの の、そのまとまりは概ね継続している。ii)一次産業景観、カッパ・蕎麦畑のカ ラマツ植林化により景観及び社会的活動が大きく変化した。さらに、1947(昭和 22)年当時は、i)集落内生活景観、ii)一次産業景観、の活動の担い手は概ね地 縁的共同体あり、これら二つの基本形成単位は、現在以上の連続性、一体感が
高く、広範囲に広がっていた。しかし、それと同時に、地縁的共同体内には、
結い、火入れ等の共同作業、家屋新築、改築等の普請、講、山の神等の多様な 活動が含まれており役割分担等も各々明確であった。つまり、i)集落内生活景 観、ii)一次産業景観、の内部構造は、現在以上に重層化されていた。
他方で、iii)行政管理の景観を見ると、髭沢地区では河川整備、新たな村道 整備により増加したことが分かる。また、旧開田村全体を想定した場合、新憲 法下の地方自治法の公布を受けた再編により行政的な所有・管理の枠組みは大 きく変化したことが想定される。
以上に見た変化は、iV)境界領域の景観、の形成に大きな影響を与えている。
境界領域は、現在では複数の基本形成単位が重層した複合的な領域として存在 しているが、1947(昭和22)年当時には、地縁的共同体、地域内住民自治組織の 活動等、地域の共同体的活動のなかに埋没し、領域的な独立性は低かった。
さらには、V)祭事に関連する神社・祠等による景観は、かつては活発に祭り や講等の活動が行われていたことから、現在以上の重要性を持っていた。また、
地域内の外部企業の施設や広告物はほとんど存在せず、国や県の直接的な関与 も少なかったことからVi)村外管理の景観、現時に比較し格段に少なかった。
ただし、V)制度関連による景観に関しては、本調査では詳細を把握できなかっ
た。
以上の分析を踏まえ、以下に1947(昭和22)年から2009(平成21)年に至る変遷 の特性を整理する。
1947(昭和22)年においては、i)集落内生活景観、ii)一次産業景観、が連続 的、一体的に広がっており、iii)行政管理の景観、Vi)村外管理の景観、は格段 に少なく、iV)境界領域の景観、がほとんど存在しなかった。しかし、その一 方で、2009(平成2玉)年に比較してi)集落内生活景観、ii)一次産業景観、の活 動領域は広範囲に渡り、その内部には、2009(平成21)年に比較し遥かに多様な 活動や、明確な役割分担が働いていた。つまり、基本形成単位間の構成は単純 な構造から複雑化していく一方で、i)集落内生活景観、ii)一次産業景観、の 内部に存在していた多様性や役割分担による重層的な構造は単純化され、i)集 落内生活景観、ii)一次産業景観、の範囲自体も縮小していったと捉えられる。
3−2−4.相互関係の構造における基本形成単位の抽出・整理
(i)基本形成単位の抽出・整理
前述の第2節2,3項で整理した2009(平成21)年と1947(昭和22)年の各年にお ける相関分布の特性分析等を踏まえると、髭沢地区における地域景観の空間構 成要素と社会的活動諸相の相互関係の構造から、以下の基本形成単位を導き出 すことができる。
すなわちi)集落内生活景観、ii)一次産業景観、iii)行政管理の景観、iV)境 界領域の景観、V)制度関連による景観、Vi)村外管理の景観、Vii)祭事に関 連する神社・祠等による景観、である。
(2)基本形成単位から捉えた地域景観の視覚的特性
髭沢地区の地域景観を視覚的観点から見ると、前項のii)一次産業景観は、
地域景観の地模様を描く「地」となり、i)集落内生活景観とiii)行政管理の 景観、は「図」として認知される。Vii)祭事に関連する神社・祠等による景 観は、視覚的に極端に目立つ存在ではないが、集落を表徴する祠はイチイ等の 樹木を介してアクセント的に認知される。そして、iV)境界領域の景観は、「図」
と「地」を緩やかに繋ぐ絵画的には「ぼかし」のような存在として、また、段 丘崖・山裾等の地形的境界では樹木等を伴ってVii)祭事に関連する神社・祠 等による景観、をさりげなく包み込みながら、ほとんど従属的に認知される。
これに対して、Vi)村外管理の景観、は異物として認識されるか、あるいはま ったく意識されない場合も想定される。そして、V)制度関連による景観は、視 覚的に直接認知することはできない。
一方で、これを、社会的活動諸相を含めた基本形成単位を用いて捉えた場合、
i)集落内生活景観、ii)一次産業景観、Vii)祭事に関連する神社・祠等による 景観は、地縁的共同体内部で相互の機能を連携させつつ歴史的に一体的に構築 されてきたものであると捉えられる。その後、iii)行政管理の景観、の再整備 が加わり、さらにそこにVi)村外管理の景観、が加わったのは、概ね戦後にな ってからのことである。その過程で、iV)境界領域の景観、の存在が社会的活 動主体間の関わり合いのなかで明確化してきた。
この比較における重要な点は、視覚的に捉えられる景観と、社会的活動諸相
との関係から捉えられる景観とは、その特性に大きな差異がある、という点で ある。ここに見られる差異は、操作論的立場を前提に、視覚のみに頼った景観 調査やその結果を基にした施設・構造物の景観デザインを行う場合、地域の社 会的活動諸相から生じる景観認識と齪鯖が生じる可能性を示唆している。
3−3.地域景観の内的システムの生成・発現実態と、地域社会や自治の形成に 与える影響に関する考察
3−3−1.相互関係の構造に起因する景観の内的システムの生成
本項では、前節(第2節)で確認した相互関係の構造に起因し、地域景観に は、そこに関わる人々の社会的活動が蓄積され、基本形成単位の特性に応じた 内的システムが生成されることについて、アフォーダンスや文化人類学的知見 を援用し、旧聞同ヨ村で生じている事実や住民心情を素材として考察を加える。
(1)環境への行為による景観の内的システムの生成
生態学的視覚論の提唱者であるギブソンによれば、環境の「アフォーダンス」
とは、「動物と環境の相補性を包含しており」、それは、どこに住むか(where)
より多く、いかに住むか(how)に関連している11)。ギブソンの考察を踏まえ て佐々木12)は、「知覚情報には自分以外の「外部」についての情報と、自分の 身体についての情報という、二つのことが、切り離せない形で共存している」
とし、「行為によって「環境を変えていく」とき、行為によって環境の見えが変 わる。行為はこの行為がつくった変化によって予期的につくられている」と指 摘する13)。この指摘は、環境の見え(景観)には、個体の行為(社会的活動諸 相)との相互作用(景観を変えていく行為がつくった変化をあらかじめ予期し、
行為がつくられるという関係性自体)が、その活動の特性(基本形成単位)に 応じた身体的感覚として蓄積されることを示唆している14)。
こうした示唆に基づき事例(髭沢地区)を振り返ってみると、例えば、ii)一 次産業に関わる景観、の構成要素である水田、畑、森林等は、個人・家族によ
る日々の作業や集落における共同作業等の様々な活動により成り立っている。
前述の指摘を踏まえると、これらの活動は、なにがしかの形で地域景観と住民 の関係性として体感的に蓄積されることになる。それに加え、過去の活動もま た、同様に蓄積されているはずである。
ところで、髭沢地区の、ii)一次産業景観、は本章第2節3項で見たように大 きな変遷を示している。産業的な変遷に起因し、集落背後の山麓・山腹のみな らず、谷のはるか奥の方まで拡がっていた広大なカッパ(採草地)や蕎麦畑は、
昭和20年代からカラマツの植林地に変化し、現在は、そのほとんどが喪失した。
このカッパ(採草地)には、木曽馬の放牧や集落共同で行われる火入れ、薪拾 い、さらには「山の口があく」と呼ばれる採草の解禁目に、共同地権者が先を 争って採草を行うというような様々な記憶や、作業に伴う移動距離、そこから 認識される現在よりはるかに広い空間領域が、体感的に染みついている。かっ てカッパ(採草地)の存在した場所や、集落外のカッパの縦縞模様等の景観に 関する克明な記憶をもとに、当時を述懐する住民の言葉からも、そのことは裏
付けられる15)。
このような行為的背景を持っ景観内の蓄積は、かつての景観を知っている住 民や、親などから伝え聞いた人々にとって、現在においても大きな体虚的意味 を持つことになる。例えば、ヒアリングの対象者の多くから、「山が汚れた」と いう言葉が発せられている16)。この言葉からは、森林化したという物理的理解 を超えて、「汚れた」という体感的なイメージが強く感じられる。
森林化に伴う腐植土化により、野焼きすら延焼が危ぶまれる状態となり、結 果として、人間の社会生活のエリアヘ動物が侵入する鳥獣被害が増大した。さ
らには、道路周辺へ木々の枝が被さることで交通安全(凍結)、防犯上の危険性
(見通しの悪さ)等の実害が生じた。こうした状況への理解が、「汚れた」とい う体感性を伴う言葉に端的に表現されている。そして、この表現は本質的に、
現在の景観を対象としつつも、過去の景観との比較の上で成立しており、景観 に蓄積された社会的活動への体感を伴った評価が、内的にシステヘ化17)されて いることを物語っている。このシステムは、ii)一次産業景観、だけに限定され るものではなく、原理的には景観の基本形成単位ごとに、その社会的活動特性 の差異を反映しつつ内在する。例えば、i)集落内生活景観、の代表的構成要素 である石置きの切り妻大屋根家屋は、かつては入会地から共同で切り出し加工