2.5 臨床に関する概括評価
2.5.4 有効性の概括評価
2.5.4.3 国内と外国での臨床試験における有効性の比較
外国で実施された臨床試験(D68P19,
D68P533, D68P542
及びD68P523)
,公表論文(第5.3.5.1.4
項~第
5.3.5.1.7
項)及び国内臨床第III
相試験(10038080試験)における患者の組み入れ基準,臨床効果及び細菌学的効果の判定基準を表
2.5.4.3-3
に示した.患者の組み入れ基準は,いずれの試験においても
FN
の診断基準に必要な好中球数と発熱によ り規定されており,外国で実施された成人患者を対象としたD68P19
では,顆粒球数/体温(以下 同様)が1000 /μL
未満/38°C超,D68P533
では500 /μL
未満(又は急速に減少している場合は1000 /μL
未満)/38°C超,D68P523では500 /μL
未満/38°C以上,第5.3.5.1.4
項では500 /μL
未満(又は1000 /μL
未満でも500 /μL
未満に減少することが予測される)/38.3°C
以上,第5.3.5.1.5
項では500 /μL
未満/38.5°C以上(24時間以内に38°C
以上が2
回)と規定されていた.また,小児FN
患者を 対象としたD68P542
では1000 /μL
以下(24~48時間以内に500 /μL
未満に減少することが予測さ れる)/38.5°C
以上(12時間の間に38°C
以上が2
回),第5.3.5.1.6
項では500 /μL
未満(又は1000
/μL
未満でも500 /μL
未満に減少することが予測される)/38.5°C以上(又は38°C
以上が1
時間続く),第
5.3.5.1.7
項が500~1000 /μL
(500 /μLに減少することが予測される)/38.3°C超(4時間以 内に38°C
以上が2
回)と規定されていた.成人及び小児FN
患者を対象としたいずれの試験も顆 粒球数や体温の値が一致していないのは,試験を実施した当時のFN
基準を用いて実施されてい たためである.更に,成人を対象としたD68P19,D68P533
及びD68P523
では,原因菌が治験薬 に感受性がある,又は感受性が予測される原因菌を有する患者を組み入れ基準としていた.一方,国内臨床第
III
相試験では,国内でFN
の適応を有するメロペネムとセフェピムの添付文書を参考 にFN
の基準(好中球数/体温:500 /μL未満,又は1000 /μL
未満で500 /μL
未満に減少することが 予測される/38°C以上,又は37.5°C
以上が1
時間以上持続)を設定した.以上のように,国内で 実施した成人及び小児FN
患者を対象とした臨床試験の組み入れ基準は,外国の臨床試験とほぼ 同様であった.有効性の判定基準は,外国で実施された成人患者を対象とした試験(D68P19,D68P533及び
D68P523)では「治癒,改善,再燃及び無効」の 4
段階,小児患者を対象とした試験(D68P542)では「有効,無効及び判定不能」の
3
段階で評価されていた.いずれの試験も“治癒”は完全な 回復(臨床症状やその徴候の消失)がみられること,“改善”は臨床症状やその徴候が投与前と比 較して改善がみられ,悪化していないことなどから“治癒”又は“改善”として評価されていた.また,公表論文の第
5.3.5.1.4
項では,解熱基準が38°C
未満に解熱し,48時間以上持続すること と定義されおり,他の公表論文では有効(治療成功)又は無効(治療失敗)で有効性を判定し,有効の場合は解熱が認められ,かつ,感染のすべての徴候と症状が消失した場合に有効(成功)
と判定されていた.
一方,国内臨床第
III
相試験の有効性の判定基準は,メロペネムの臨床第III
相試験28)を参考に 解熱基準と臨床効果の判定基準を下記のように定義した.解熱基準は1
日最高体温が37.5°C
未満 に解熱し,かつ投与開始前から0.5°C
以上解熱した場合と設定した.臨床効果の判定基準は,“著 効”が投与開始後3~5
日以内に解熱(1日最高体温が37.5°C
未満で,かつ投与開始前から0.5°C
以上解熱),更に2
日以上37.0°C
以下(小児については37.5°C
未満)が続き,感染症に伴う徴候 及び症状の消失や検査所見の改善がみられる場合,“有効”は投与開始後3~5
日以内に解熱傾向(投与開始前からの体温低下はみられるが,解熱基準は満たしていない状態)がみられ,治験薬 を継続しながら
7
日以内に解熱した場合(1日最高体温が37.5°C
未満で,かつ投与開始前から0.5°C
以上解熱)で,かつ感染症に伴う徴候及び症状や検査所見の改善がみられた場合と定義した.以上のように,外国で実施された臨床試験では成人及び小児
FN
患者に対する有効性の判定基 準は,解熱の状態と臨床症状の改善などから判定されており,国内臨床第III
相試験で用いた基準 とほぼ同様の基準を設けていたことから,臨床効果の判定基準に大きな差異がないものと考えた.一方,抗菌薬を臨床評価するうえで,臨床所見の変化を観察することに加え,原因菌の検出・
同定とその消長を検討することが重要である.そこで,外国の臨床試験と国内臨床第
III
相試験の 細菌学的効果の判定基準についても比較検討した.外国の臨床試験における細菌学的効果の主な判定基準は,“消失”が開始時の原因菌が消失し 新たな原因菌が認められない場合,“推定消失”が臨床効果の改善により培養検体が採取できない 場合,“存続”が開始時の原因菌が認められた場合,“推定存続”が転帰不良の患者において当初 の感染病巣からの検体を採取できなかった場合と定義されていた.
国内臨床第
III
相試験では,“消失”が治験薬投与後に原因菌が消失した場合,“推定消失”が 臨床症状の改善と共に,当初の感染病巣から検体採取が不可能となった場合,“無効(減少)”が 半定量で2
段階以上の減少や定量培養で当初の原因菌が1/100
以下に減少した場合,複数菌感染 の場合で治療によってその一部が消失した場合,“無効(菌交代)”が投与後に出現した菌が起炎 性を有していた場合,“無効(不変又は増加)”は上記以外と定義した.細菌学的効果の消失率や菌の消長を検討する場合は,原因菌の消失(推定消失を含む)の判定 が重要であり,その判定基準は,外国の臨床試験と国内臨床第
III
相試験で差異はないものと考え た.外国の臨床試験及び公表論文並びに国内臨床第
III
相試験における試験成績の概要を表2.5.4.3-4
に示した.成人及び小児
FN
患者に対する解熱効果や臨床効果の有効率は,外国の臨床試験,公表論文及 び国内臨床第III
相試験でほぼ同様な成績であった.細菌学的効果は,FN患者では原因菌の検出 力が低かったため比較することは困難であるが,国内臨床第III
相試験では検出されたすべての原 因菌が投与4
日目までに消失し,消失率(有効率)並びに菌消失率は100%であった.
各試験の
CSR
又はプロトコールに記載されている感受性標準をもとに,国内臨床分離株の感 受性率を算出し,国内試験と海外試験の感受性標準の違いが臨床分離菌の感受性率に及ぼす影響 を比較した.表
2.5.4.3-1
には,国内外の試験における感受性標準を示した.表
2.5.4.3-1
国内外の試験で用いられている原因菌の感受性標準(µg/mL,感受性域のみ記載)
菌種 D68P19 D68P533 D68P523* D68P542 10038080
Haemophilus, Neisseria ≦16 ≦8 ≦1 ≦1 ≦1
B. catarrhalis ≦16 ≦8 ≦16 ≦1 ≦1 1)
Pseudomonas spp. ≦64 ≦8 ≦64 ≦64 ≦16
腸内細菌科 - - - - ≦16
その他のグラム陰性菌 ≦64 ≦8 ≦16 ≦16 ≦4
Enterococci ≦8 ≦8 ≦16 ≦16 ≦4 2)
腸球菌以外の連鎖球菌属 ≦1 ≦8 ≦16 ≦16 ≦4
Staphylococci ≦16 ≦8 ≦16 ≦16 ≦8
その他のグラム陽性菌 ≦16 ≦8 ≦16 ≦16 ≦4
嫌気性菌 ≦64 ≦8 ≦16 ≦16 ≦32
その他の微生物 - ≦8 ≦16 ≦16 ≦4
引用 NCCN
M7-A(1985)
M2-A3(1984)
M17-P(1985)
NCCN
M7-A(1985)
M2-A3(1984)
M17-P(1985)
NCCN
M2-A3(1984)
M100-S2
(1987)
NCCN M100-S2
(1987)
CLSI M100-S24 EUCAST Ver.4 1) アモキシシリン/クラブラ ン酸感受性を参照 2)アンピシリン感受性 を参照
*:D68P523試験における感受性標準は,プロトコールより引用した.
表
2.5.4.3-1
に示すように,国内試験における感受性標準を海外試験それぞれの感受性標準と比 較すると,国内試験の感受性域がいずれの海外試験よりも低かったのは,その他のグラム陰性菌,その他のグラム陽性菌及びその他の微生物であり,その他の菌種に対する感受性域の標準は海外 試験の範囲であった.しかし,全般的には感受性域は国内標準で低い傾向にあり,試験によって は原因菌の本剤感受性が国内試験より高く表されている可能性は否定できず,海外各試験の感受 性率と国内の感受性率を直接比較することは正確さに欠けると考える.
そこで,各試験の感受性標準の違いが臨床分離菌の感受性率に及ぼす影響を比較する目的で,
海外試験での原因菌の本剤感受性(MIC)が不明なことから,海外試験で分離頻度の高かった菌 種の国内臨床分離菌の本剤感受性率を,国内試験と各海外試験の標準で算出し,表
2.5.4.3-2
に示 した.表
2.5.4.3-2
国内試験と海外試験の標準で算出した国内臨床分離菌1)の本剤感受性率菌種 菌株数 D68P19試験 D68P533試験 D68P523試験 D68P542試験 10038080試験
黄色ブドウ球菌 284 100 100 100 100 100 コアグラーゼ陰性ブドウ球菌 205 100 100 100 100 100 レンサ球菌属 273 97.1 100 100 100 99.3
腸球菌属 197 100 100 100 100 94.4
大腸菌 290 97.2 94.5 96.2 96.2 96.2
クレブシエラ属 207 99.0 94.2 98.1 98.1 98.1 インフルエンザ菌 265 100 100 100 100 100
緑膿菌 286 90.9 72.0 90.9 90.9 83.9
1) 2012年に分離された臨床分離菌
海外試験の標準で算出された感受性率が,国内試験の標準による感受性率より
5%以上高かっ
たのは,腸球菌属と緑膿菌(D68P533試験を除く)であり,その他の菌種では同様の感受性率で あった.腸球菌属の感受性率は国内試験の感受性標準においても94.4%と高く,国内外で腸球菌
属は本剤に対して高い感受性を示すと考えられた.一方,緑膿菌の感受性標準が国内外の試験で 最も厳格であったD68P533
試験(感受性域のMIC
は≦8 mg/mL)では,臨床分離緑膿菌の感受性 率は最も低い72.0%で,国内試験の標準による感受性率(83.9%)は,全試験の中間に位置してい
た.なお,D68P533試験で分離された緑膿菌は本剤に感受性であった.海外における緑膿菌の本剤感受性については,臨床分離の
924740
株を用いた検討により,1997
年から2009
年までほとんど変動がないこと35),国内においても緑膿菌は高い感受性を保持してい ること2)が報告されている.これらのことを勘案すると,海外試験で分離された緑膿菌の本剤感 受性率は,国内試験の感受性標準による感受性と直接比較はできないものの,国内と同様の感受 性レベルであったと推測される.これらのことから,国内外で実施された試験のFN
原因菌は,本剤に対して同様の高い感受性を示していたと考えられる.
以上により,外国で実施された試験の組み入れ基準や有効性の判定基準は,国内臨床第