2.5 臨床に関する概括評価
2.5.6 ベネフィットとリスクに関する結論
FN
患者を対象とした本剤の臨床第III
相試験,外国での臨床試験成績と使用状況及び国内外のFN
診療ガイドラインにおける本剤の位置付けなどから,本剤を日本人のFN
患者に使用したとき のベネフィットとリスクについて検討した.2.5.6.1 ベネフィット
FN
患者を対象として国内で実施した臨床第III
相試験では,成人では1
回4.5 g
(力価)を,小児では
1
回90 mg/kg(力価)を 1
日4
回投与し有効性を評価した.成人では,投与
4
日目,投与7
日目及び投与終了/中止時の解熱効果の有効率は,それぞれ50.0%
(47/94例),54.8%(51/93例)及び
61.7%(58/94
例)であった.解熱効果発現までの日数(平均 値±標準偏差)は3.7±2.1
日であった.臨床効果の有効率は,投与7
日目及び投与終了/中止時で はそれぞれ79.6%(43/54
例)及び59.1%(55/93
例)であった.投与開始前に検出された原因菌15
株は,いずれも投与4
日目までに消失した.小児では,投与
4
日目,投与7
日目及び投与終了/中止時の解熱効果の有効率は,いずれの評価時点も
62.5%(5/8
例)であった.解熱効果発現までの日数(平均値±標準偏差)は3.9±2.9
日であった.臨床効果の有効率は,投与
7
日目及び投与終了/中止時でそれぞれ57.1%(4/7
例)及び75.0%(6/8
例)であった.小児ではいずれの患者からも原因菌が検出されなかったため,細菌学的効果は評価できなかった.本試験では,小児患者での
TAZ
及びPIPC
のPK
を検討し,小児一 般感染症患者及び成人FN
患者(外国人)と顕著な違いは認められなかった.これらの成績を外国で実施された成人と小児を対象とした臨床試験及び
FN
診療ガイドライン で本剤が推奨される根拠となったエビデンス(論文)と比較した.成人FN
患者を対象とした5
試験のうち3
試験における本剤の用法及び用量は4.5 g 1
日4
回投与であり,評価項目は国内で実 施した臨床試験と同様に解熱と感染症状の回復であった.これらの試験における本剤の有効率(投 与終了時)は37.3%~51.5%であった.また,小児 FN
患者を対象とした3
試験における用法及び用量は
90 mg/kg 1
日4
回投与で,臨床効果の有効率(投与終了時)は52.6%~60.0%であった.
一方,国内において
FN
の適応症を取得している抗菌薬はセフェピムとメロペネムであり,メ ロペネムは国内の成人及び小児のFN
患者を対象に臨床試験を実施している28).成人における試 験成績は,投与4
日目及び投与終了時/中止時の解熱効果の有効率がそれぞれ40.0%及び 49.0%,
投与終了/中止時の臨床効果の有効率は
47.3%であったと報告されている.また,小児では,投与
4
日目及び投与終了/中止時の解熱効果の有効症例数はそれぞれ4/6
例及び3/6
例,投与終了/中止 時の臨床効果の有効症例数は3/4
例であったと報告されている.以上のように,外国試験と同じ用法及び用量で実施した国内試験における成人及び小児の
FN
患者での臨床成績が外国試験の成績と同様であったことから,外国のFN
患者での本剤の有効性 が日本人のFN
患者でも確認できたと考えた.更に,日本人での本剤の
PK
と国内での最新の臨床分離菌の本剤感受性によるPK-PD
解析の結 果,成人(4.5 g 1日4
回投与)と小児(90 mg/kg 1日4
回投与)の用法及び用量の妥当性が確認 できたことから,今回の臨床試験で既承認薬の国内臨床試験成績と比べて大きく異ならない有効 性が得られたことは,本剤が日本人のFN
患者に対しても有効に使用できることを示唆するもの と考えられた.本剤は,2014年
8
月現在,成人及び小児に対して呼吸器感染症,尿路感染症,腹腔内感染症,FN
を含む9
適応症について112
ヶ国で承認され,成人FN
患者に対する用法及び用量は4.5g 1
日4
回投与,小児では90 mg/kg 1
日4
回投与である.また,欧米のFN
診療ガイドライン5, 12, 13, 14, 16)及び教科書17)では,FN治療の第一選択薬として推奨されており,2012年に日本臨床腫瘍学会か ら発行された発熱性好中球減少症(FN)診療ガイドライン4)では,本剤は国内で適応を有してい ないが,十分なエビデンスの集積のある薬剤として単剤での初期治療薬に推奨されている.本剤 を国内の
FN
患者に適応することのベネフィットとして,以下のことが期待できると考えた.(1)
本剤はβ-lactamase
産生菌を含む広範な抗菌スペクトルを有しており,原因菌が特定できない重篤な
FN
患者での有効性が期待できる.(2)
これまでのFN
治療薬に加えて,抗緑膿菌作用を有するペニシリンという新たな 選択肢を提供でき,耐性菌対策としても有用である可能性がある.(3)
小児FN
患者にも有効性が期待できる治療薬を提供できる.(4) FN
治療における世界的な標準的治療薬を国内の患者にも提供できる.2.5.6.2 リスク
本剤は国内で
2008
年7
月に敗血症,肺炎,腎盂腎炎及び複雑性膀胱炎を適応症として承認さ れて以来,小児患者を含む約200
万人(2013年12
月現在)の患者に使用されたと推定される.外国では
1993
年に承認されて以来,2008
年までに2700
万人(AMR cost/patient data,Pfizer)
,2009
年から2012
年の間には3,523,035~9,864,497
人の患者に使用されたと推定されており,本剤の既 承認効能の患者における安全性プロファイルは確立していると考えられる.国内で実施した臨床第
III
相試験では,成人FN
患者の副作用は51
例に70
件発現し,その発現率は
43.6%であった.2%以上発現した副作用は,下痢(13/117
例,11.1%),肝機能異常(10/117例,8.5%),γ-GTP増加(8/117例,6.8%),低カリウム血症(7/117例,6.0%),発疹及び血中クレ アチニン増加(各
4/117
例,3.4%),腎機能障害及びALT
増加(各3/117
例,2.6%)であった.副作用のグレード別の発現例数は,グレード
1
が21
例,グレード2
が13
例,グレード3
が16
例,グレード4
が1
例であり,グレード1
が最も多く,グレード5
の副作用はなかった.グレー ド3
以上の副作用は,肝障害(1例)及びγ-GTP
増加(1例)を除き,いずれも治験薬の中止,又 は薬物療法などの治療で回復又は軽快した.本試験において発現した副作用を,本剤の既承認の適応症である一般感染症(敗血症,肺炎,
複雑性膀胱炎,腎盂腎炎,腹膜炎,腹腔内膿瘍,胆嚢炎及び胆管炎)を対象とした国内臨床試験 の成績と比較したところ,
FN
患者を対象とした臨床試験での副作用発現率が一般感染症の患者における発現率を上回ることはなく,発現事象も一般感染症の患者と大きく異なることはなかった.
また,臨床検査値の変動でも
FN
患者に特有の事象は認められなかった.本剤については,平成
21
年1
月1
日から3
年間で収集目標を3000
例とした使用成績調査を実 施しており,平成25
年7
月15
日までに投薬例として3685
例が登録され,安全性は3642
例で評 価されている.副作用は285
例(320件)に認められ,副作用発現率は7.83%(285/3642
例)であ った.副作用の内容は,下痢が88
例(2.42%),肝機能異常が63
例(1.73%),肝障害が27
例(0.74%), 発疹が19
例(0.52%),腎機能障害が11
例(0.30%),血清クレアチニン増加が10
例(0.27%),ALT
増加が9
例(0.25%),白血球数減少が8
例(0.22%)などであった.また,海外提携会社(Pfizer社)及び海外文献学会情報から平成
22
年7
月~平成25
年7
月の 調査単位期間中に入手した情報のうち,因果関係の高い特定の有害事象や更なる注意喚起が必要 な副作用はないと考えられた.これらのことから,現時点では使用上の注意の改訂などの特別な 措置を講ずる必要はないと判断している(第7
回安全性定期報告,2013
年9
月13
日提出,第5.3.6.1
項).また,外国の添付文書においても,本剤をFN
患者に投与するにあたり,特異的な副作用の 発現や特別な注意は記載されていない(第1.6.1
項).小児
FN
患者を対象として実施した試験における安全性の評価は,治験薬投与例12
例を安全性 評価採用例として解析を行った.副作用は2
例に3
件発現し,その発現率は16.7%であった.
副作用のうち臨床検査値異常変動は
1
例に1
件発現し,その発現率は8.3%であった.発現した
副作用は下痢(2/12例,16.7%),血中尿酸減少(1/12例,8.3%)であり,副作用のグレード別の 発現例数及び発現件数は,グレード1
が2
例2
件,グレード2
が1
例1
件であり,グレード3
以 上の有害事象はなかった.小児患者の死亡及び重篤な有害事象は認められなかった.小児の一般感染症を対象とした臨床試験では,小児に特異的な副作用は認められなかったが,
下痢の副作用発現率が
45.5%と高値であった(第 5.3.5.1
項).本剤の臨床使用にあたっては下痢の 発症を考慮する必要があると考え,添付文書の使用上の注意の慎重投与の項に「乳・幼児(2歳 未満)については下痢,軟便が発現しやすい」と記載し,小児等への投与の項に「乳・幼児(2 歳未満)については下痢,軟便が発現しやすいので慎重に投与すること.[下痢,軟便の副作用発 現率は2
歳未満で57.7%(15
例/26例),2歳以上6
歳未満で40.6%(13
例/32例)であった]」と 記載している.特定使用成績調査 -小児における安全性および有効性の検討-(使用成績調査の小児例を含 む)では,平成
25
年7
月15
日までに546
例が登録され,538例を安全性評価対象とした.副作 用は88
例に認められ,副作用発現率は16.4%であった.副作用の内容は,下痢が 63
例(11.7%)と最も多く,肝機能異常,発疹が各
7
例(1.3%),肝障害が4
例(0.7%),蕁麻疹,発熱,ALT増 加,アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)増加,好中球数減少が各2
例(0.4%)な どであり,成人と比べて小児に特異的な副作用は認められていない.また,成人と同様に,外国提携会社(Pfizer社)及び外国文献学会情報から平成
22
年7
月~平 成25
年7
月の調査単位期間中に入手した情報のうち因果関係の高い特定の有害事象や更なる注意 喚起が必要な副作用はないと考えられた.これらのことから,小児においても使用上の注意の改 訂などの特別な措置を講ずる必要はないと判断している(第7
回安全性定期報告,2013
年9
月13
日提出,第5.3.6.1
項).また,外国の添付文書において,本剤を小児FN
患者に投与するにあたり,特異的な副作用の発現や特別な注意は記載されていない(第