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第 1 章 導入

第 2 節 英語イントネーションを記述するための ToBI

2. トーン層

2.2. 句トーン

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アクセント (scooped accent)」という名称で紹介されており、それらが表すピ ッチイベントは Pierrehumbertや Silverman らが定義したそれとほぼ同じで ある。H*は話者の声域の中でも高い部分のピッチで発せられるストレス音節に 付与されるもので、声域の中間くらいの高さまで下がっていることはあっても 低い帯域のピッチでの発話は決して含まれない。L*は話者の声域の中でも低い ピッチで発せられているストレス音節に付与される。L+H*はストレス音節の 直前に話者の声域の中でも低いピッチで発せられた音から比較的急激に上昇 (relatively sharp rise) して高いピッチの頂点に達するものとされ、同じく上昇 調であるL*+Hはストレス音節内の低いピッチの直後で比較的急激に上昇して 高いピッチの頂点に達するピッチイベントを示している。この5種類のうちで、

H*が「デフォルト」のアクセントタイプであり、ピッチが頂点に達する前の F0がどの程度低いか不明な場合、例えば発話冒頭付近にL+H*があるのではな いかと思われる場合など、ラベラーはL+H*ではなくH*と記入すべきだとされ ている。

新たに登場している H+!H*には名称の設定はないが、ここで「 ! 」はダウ ンステップを示す記号である。これはストレス音節の前のストレスなし音節で ピッチが明らかに高く、そこからストレス音節へ向けてはっきりと下降があり、

その最初の高いピッチが先行する句末の句トーン H やピッチアクセント H で は説明され得ない場合のピッチアクセントであると説明されている。その条件 が満たされていない場合は、つまり先行する高ピッチからの下降が先行する句 のピッチアクセント H や句トーン H の影響であった場合は、当該ストレス音 節と結びつくピッチアクセントは単純に!H*であると解釈される。

上記の他、ピッチ変化が時間的に早いことや遅いことを表すための「>」や

「<」、ラベラーがピッチイベントの存在を認識しつつもその分類に確信が持て ない場合に記す「 ? 」、ピッチイベントの存在のみを示し種類が未記入である ことを表す「 * 」など、いくつかの特殊記号も設定されている。

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もので、そこから当該 ip または IP の終端まで波及するトーンである。

Pierrehumbert (1980) では句の単位として IP しか認めていなかった12が、

Beckman and Pierrehumbert (1986) では句にはipとIPがあるという見解に なったため、句アクセントの定義にも違いが生じている。Silverman et al.

(1992) もipとIPの存在を認めている。

ip と IP についてはさまざまな定義の仕方があるが、本論文においてはある ひとつの句や文において句末や文末の最終ピッチアクセントがある韻律句を

「イントネーション句 (IP)」と呼び、それより左にある韻律句を「中間句 (ip)」 と呼ぶ。

句アクセントを構成するトーンもピッチアクセントと同様H と L の 2 種類 であり、英語の句アクセントには以下のバリエーションが認められている。い ずれも単独トーンから構成されており、句アクセントに複合トーンは認められ ていない。句アクセントにはトーンの直後にオーバーバー「 ‾ 」やハイフン

「 - 」が書かれることもある。Pierrehumbert (1980) では複合トーンからな るピッチアクセントの場合にストレス音節と結びついて * が付与されたトー ンとつなげて書かれるもうひとつのトーンにつけていたのと同様、句アクセン トにも ‾ をつけていたが、Beckman and Pierrehumbert (1986) ではつけな くなっている。

句アクセント:H-( ‾ ), L-( ‾ )

句アクセントH- はipまたはIP 内の最後のストレス音節の直後からその句 が終わる右端にかけてピッチが上昇することを表し、一方句アクセント L- は ip または IP 内の最後のストレス音節の直後からその句が終わる右端にかけて ピッチが下がっていることを表す。

境界トーンは IP の終端に生じるトーンであり、英語には句アクセントと同 様単独トーンからなる2種類の境界トーンがあるとされている。境界トーンは トーンの後にパーセント「 % 」の記号をつけて表記される。

12 ただし句境界の設定の仕方について厳密な論を提起することはしないとことわっ ている。(Pierrehumbert 198019

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境界トーン:H%, L%

H%が表すのは、IPの中でも句アクセントのさらに後の部分の上昇ピッチで ある。そして L%は、句アクセントのさらに後の部分が下降ピッチであること を表している。

また、境界トーンには頭境界トーン (initial boundary tone) も提案されてい る。発話が話者の声域の中でも比較的高いピッチで始まる場合、当該文や句の 頭に%H を書き入れる。これは、そのようなピッチイベントが知覚されたとき のみ表示されるもので、はじめの高いピッチがその次の音節のH*やH+!H*と いったピッチアクセントのせいである場合や低いピッチで始まる普通の発話の 場合は無標として何も書き込まれない。

以上により、IPの終端には以下の4種類の句トーンパターンのいずれかが生 じる可能性がある。

L- L%:最後のピッチアクセント後が句アクセント L- で終わって、境界トー

ンL%で話者の発話声域の中で低いピッチへ落ちていくIP末の句トーン。ア メリカ英語の標準的「平叙文」アクセント曲線。

L- H%:最後のピッチアクセント後が句アクセント L- で終わり、境界トーン

H%が続くIP末の句トーン。「継続の上昇 (continuation rise)」。

H- H%:最後のピッチアクセント後が句アクセントH- で終わり、境界トーン

H%が続くIP末の句トーン。典型的な (canonical) 全体疑問文に現れる。句 アクセントH- はそれに続く境界トーンにおいてupstep13を引き起こすため、

H-上昇の後のH%は非常に高い音にまで達する。

H- L%:最後のピッチアクセント後の句アクセント H- が L%を話者の声域の

中間くらいにまで引き上げる (upstep) IP の句トーン。発話末は平板 (plateau) になる。

これらの句トーンの実現例を Pierrehumbert (1980) から抜粋して以下に例

13 本節4.2.参照

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示とする。

図12:p.255の図1.1Aより 図13:p.255の図1.1Bより L- L%の例 L- H%の例

図14:p.255の図1.1Eより 図15:p.255の図1.1Cより H- H%の例 H- L%の例

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