PRNPower
5.5 動作確認
56 第5章 時刻比較用GPS受信機の開発
8 MHz
図5.14: RFフロントエンドL1帯域の出力スペクトル波形
戻して群遅延および搬送波位相を計算する.衛星の仰角が低い間は,伝搬距離が長くなり信号が 減衰することから,相関処理の積分時間を長くした方がS/Nが改善され追尾が行いやすい.ただ し,GPS C/Aコードには50 bpsの航法メッセージが重畳されており,20 ms以上積分を行うと 符号が反転してしまい相関振幅が弱くなる危険性が生じる.そのため,単純なコヒーレント積分 が行えるのは最大20 msまでとなる.
GPUで実装する際は,図5.7にあるようにメモリ間の転送がオーバーヘッドとして大きいため,
衛星数分のデータを1次元の配列に並べ,FFTや相関に必要な複製信号との複素共役によるかけ 算は配列上で全衛星まとめて行うように実装した.この方式で,GPUはL1,L2別にしているが,
16 MHzサンプリングの信号を最大14衛星(28チャンネル)まで同時に処理することを可能と
した.
5.6. まとめ 57
16 M
π/2
Delay Buffer
NCO
Correlation
LPF
LPF
Code Generator
In-phase
Quadrature
LPF LPF
FFTFFT IFFT Group delay
Carrier phase
To NCO Loop Filter
Σ Σ
図5.15: ソフトウェア相関器のブロック図
関処理を行っている.上記構成を図5.16に,使用した計算機の写真を図5.17 に示す.
また,運用段階では使用しないが,実際に衛星の補足が行えるか確認するために実装した二次 元FFTによる信号補足の結果を図5.18に示す.実際のサンプリングデータからPN31のL1信号 の検出を行った結果である.グラフは,群遅延,ドップラー周波数に対する相関値を示す.フィル タによる帯域制限のため若干相関関数に歪みがみられるが,きちんと相関ピークも検出されてお り,衛星の補足に成功していることがわかる.
5.6 まとめ
時刻比較用ソフトウェアGPS受信機の開発を行った.受信機は,擬似距離と同時に搬送波位相 も出力することにより,高精度な時刻比較でも使用可能な受信機である.また,L1 C/Aコードだ けでなくL2CMコードの相関も行えることから,民生用信号を使用した二周波観測にも対応して いる.
アナログ信号処理部では周波数変換によって搬送波位相の精度が劣化しないよう,外部基準信 号に同期したPLOを使用し位相雑音の増加を軽減した.また,デジタル信号に変換するための ADCは,外部から供給される10 MHzと1 PPSでサンプリングクロックを駆動するタイプであ り,周波数比較だけでなく時刻比較も可能とした.
ソフトウェアでデジタル信号処理を行う場合,ハードウェアと比較して処理速度が劣ることか ら,広帯域,多チャンネル処理が困難な場合が多い.ここでは,ゲーム用に開発されたGPUを使 用することでこの問題を克服した.GPUはFFTを高速に演算できることから,ソフトウェア相 関器には周波数領域での相関処理を採用することで処理の高速化を測った.周波数領域での相関 は,時間領域に比べ並列化できる部分が多いことから,GPUでは更なる最適化が行える相関アル ゴリズムである.L1 C/A,L2CMそれぞれにGPUを割り当てることで,16 MHzサンプリング データを使用した場合でも14機の衛星を連続して処理可能なことを確認した.
58 第5章 時刻比較用GPS受信機の開発
Ring Buffer
Main Routine (CPU)
L1 C/A Correlator GPU #1
L2CM Correlator GPU #2
GPS Almanac
Update
Visible Satellite Sampling
Observations
図 5.16: CPUとGPUの役割
実際のGPS衛星からの信号を受信し,その相関波形を確認した結果,動作上問題ない波形が確 認でき,衛星の補足が正常に行えていることを確認した.
5.6. まとめ 59
図5.17: 開発に使用したGPU搭載パソコン
-0.8 -0.6
-0.4 -0.2
0 0.2
0.4 0.6
0.8-100 -80
-60-40 -20
0 20 40
60 80 100 0.0
2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0 16.0
0 2 4 6 8 10 12 14 16
A m pl it ude (%)
τ - 211 us
Doppl
er + 1468 Hz
図 5.18: 動作確認時の相関結果
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