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 割引債の償還差益に対する課税ついては、これ まで割引債の発行時に源泉徴収を行い、個人につ いては他の所得と分離して源泉徴収のみで課税が 終了する源泉分離課税とされ、その譲渡所得は非 課税とされていましたが、今回の改正において、

割引債を含む公社債の譲渡による所得を課税する こととされたことに伴い、割引債の源泉徴収につ いては発行時ではなく、利付債(利子が支払われ る公社債)の利子と同様に償還時(支払時)に行 うこととされました。

⑴ 内国法人及び外国法人に対する納税義務

① 納税義務

 内国法人で一定のもの又は外国法人は、割 引債の償還(買入消却及び分離利子公社債に 係る利子の支払を含みます。)により平成28 年 1 月 1 日以後に支払を受けるべき次に掲げ る償還金(外国法人にあっては、イに掲げる 償還金に限ります。)に係る差益金額につい て所得税を納める義務があるものとし、その 差益金額に対し15%の税率による源泉徴収に より所得税を課することとされました(措法 41の12の 2 ①)。

イ 国内において支払われる割引債の償還金

(買入れの方法による消却が行われる場合 にあっては、その買入れの対価)及び分離 利子公社債に係る利子

ロ 国外において発行された割引債の償還金

(国外において支払われるものに限ります。

以下「国外割引債の償還金」といいます。)

で国内における支払の取扱者(以下「国外 割引債取扱者」といいます。)を通じて交 付を受けるもの

② 対象となる内国法人の範囲

 普通法人に対しては毎事業年度末に保有し ている割引債の評価益に対して法人税が課税 されているため(法法61の 3 、法令139の 2 )、

上記の償還時における所得税の源泉徴収は行 わないこととされています。このため、割引 債について所得税が課される一定の内国法人 は、原則として、公社債の利子に対して源泉 徴収がされる法人で法人税において収益事業 のみに課税されるものが対象となっており、

具体的には次に掲げる法人です。

イ 一般社団法人及び一般財団法人(公益社 団法人及び公益財団法人を除きます。)

ロ 人格のない社団等

ハ 法人税法以外の法律によって法人税法の 公益法人等とみなされている次に掲げる法 人

イ 地方自治法に規定する認可地縁団体 ロ 建物の区分所有等に関する法律に規定

する管理組合法人及び団地管理組合法人 ハ 政党交付金の交付を受ける政党等に対 する法人格の付与に関する法律第 7 条の

2 第 1 項に規定する法人である政党等 ニ 密集市街地における防災街区の整備の

促進に関する法律に規定する防災街区整 備事業組合

ホ 特定非営利活動促進法に規定する特定 非営利活動法人

ヘ マンションの建替えの円滑化等に関す る法律に規定するマンション建替組合

③ 国外割引債取扱者の意義

 この特例により国外割引債の償還金の源泉 徴収義務者となる国外割引債取扱者は、国外 割引債の償還金の支払を受ける者のその国外 割引債の償還金の受領の媒介、取次ぎ又は代 理(業務として又は業務に関連して国内にお いてするものに限ります。)をする者がこれ に該当します(措令26の17②)。具体的には、

銀行や金融商品取引業者等の金融機関が源泉 徴収事務を行うことになります。

⑵ 割引債の差益金額に対する源泉徴収

 この特例では、割引債の種類及びその支払方 法等によって、 3 つの源泉徴収に関する制度を 定めています。

① 原則

 平成28年 1 月 1 日以後に個人又は内国法人 若しくは外国法人に対して国内において割引 債の償還金の支払をする者は、その支払の際、

その割引債の償還金に係る差益金額に15%

(他に個人住民税 5 %)の税率により所得税 を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10 日までに、これを国に納付しなければなりま せん(措法41の12の 2 ②)。ただし、次の② の特定割引債取扱者を通じて支払われる特定 割引債の償還金については、その特定割引債 取扱者が源泉徴収義務者となるため、その支 払をする者は上記の源泉徴収を行う必要はあ りません。

 これは、国内において発行された割引債で 特定割引債に該当しないものの償還金や、銀 行や金融商品取引業者等を通じて支払われな い特定割引債の償還金について適用されます。

② 特定割引債取扱者を通じて交付される特定 割引債の償還金

 平成28年 1 月 1 日以後に個人又は内国法人

若しくは外国法人に対して国内において支払 われる特定割引債の償還金の国内における支 払の取扱者(以下「特定割引債取扱者」とい います。)は、その個人又は内国法人若しく は外国法人にその償還金の交付をする際、そ の交付をする特定割引債の償還金に係る差益 金額に15%(他に個人住民税 5 %)の税率を 乗じて計算した金額の所得税を徴収し、その 徴収の日の属する月の翌月10日までに、これ を国に納付しなければなりません(措法41の 12の 2 ③)。

イ 特定割引債の意義

 特定割引債とは、割引債のうち上場株式 等に係る譲渡所得等の課税の特例(措法37 の11)の対象となる上場株式等に該当する ものをいいます。なお、特定割引債であっ ても、特定割引債取扱者を通じて交付を受 けないものは、上記①により、その償還金 の支払者が源泉徴収義務者となります。

ロ 特定割引債取扱者の意義

 この特例により特定割引債の償還金の源 泉徴収義務者となる特定割引債取扱者は、

特定割引債の償還金の支払を受ける者のそ の特定割引債の償還金の受領の媒介、取次 ぎ又は代理(業務として又は業務に関連し て国内においてするものに限ります。)を する者であって、社債、株式等の振替に関 する法律に規定する口座管理機関であるも のとされています(措令26の17③、措規19 の 5 ①)。

③ 国外割引債取扱者を通じて交付される国外 割引債の償還金

 平成28年 1 月 1 日以後に居住者又は内国法 人に対して支払われる国外割引債の償還金の 国内における国外割引債取扱者は、その居住 者又は内国法人にその国外割引債の償還金の 交付をする際、その交付をする国外割引債の 償還金に係る差益金額に15%(他に個人住民 税 5 %)の税率を乗じて計算した金額の所得 税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月

10日までに、これを国に納付しなければなり ません(措法41の12の 2 ④)。

 なお、国外割引債の償還金について源泉徴 収をする際に、国外割引債の償還金の支払の 際に徴収される外国所得税の額があるときは、

源泉徴収の対象となる差益金額は、その差益 金額から外国所得税の額に相当する金額を控 除した後の金額に対して上記の税率を乗じて 源泉徴収税額を計算することとされています

(措法41の12の 2 ⑤)。

(注) 上記の外国所得税の額には、外国税額控 除(所法95①)の対象となる外国所得税の ほか、外国の法令に基づき外国又はその地 方公共団体により国外割引債の償還金を課 税標準として課される税で所得税法に規定 する源泉徴収に係る所得税に相当するもの の額も含まれます(措令26の17④)。

⑶ 対象となる割引債の範囲

 この特例の対象となる割引債は、譲渡益課税 の対象となる公社債のうち次に掲げるものをい います(措法41の12の 2 ⑥一)。

① 割引の方法により発行されるもの

② 分離元本公社債(公社債で元本に係る部分 と利子に係る部分とに分離されてそれぞれ独 立して取引されるもの(ストリップス債)の うち、その元本に係る部分であった公社債を いいます。)

③ 分離利子公社債(公社債で元本に係る部分 と利子に係る部分とに分離されてそれぞれ独 立して取引されるもの(ストリップス債)の うち、その利子に係る部分であった公社債を いいます。)

④ 利子が支払われる公社債でその利率が著し く低いもの(低クーポン債)

(注) 上記④の利率が著しく低い公社債は、確 定利率により利子が支払われる公社債でそ の利率が、その発行の日から償還期限まで の期間が15年以上のものにあっては年0.5%

未満、その期間が10年以上15年未満のもの

にあっては年0.4%未満、その期間が 8 年以 上10年未満のものにあっては年0.3%未満、

その期間が 7 年以上 8 年未満のものにあっ ては年0.2%未満、その期間が 7 年未満のも のにあっては年0.1%未満のものとされてい ます(措規19の 5 ①)。

 ただし、上記①から④までに掲げる公社債で あっても、その償還の時において特定口座にお いて管理されているものは、特定口座制度に基 づいて源泉徴収又は確定申告が行われることか ら、また、外貨公債の発行に関する法律に規定 する外貨債については所得税の源泉徴収を行わ ないこととされていることからこの特例の対象 となる割引債の範囲からは除くこととされ、こ の特例による源泉徴収は要しないこととされて います(措法41の12の 2 ⑥一)。

⑷ 差益金額の意義

 源泉徴収の対象となる差益金額とは、次に掲 げる割引債の区分に応じそれぞれ次に定める金 額をいいます。

① 割引債(分離利子公社債を除きます。)の うち発行の日から償還の日までの期間が 1 年 以下であるものその割引債の償還金の額 に0.2%を乗じて計算した金額(個人・法人 とも適用)

② 割引債(分離利子公社債を除きます。)の うち発行の日から償還の日までの期間が 1 年 を超えるもの及び分離利子公社債その割 引債の償還金の額に25%を乗じて計算した金 額(個人・法人とも適用)

③ 割引債のうち、その割引債の償還金の支払 を受ける内国法人がその割引債の振替口座簿 への記載若しくは記録又は保管の委託をして いる金融商品取引業者等でその償還金に係る 国内における特定割引債取扱者又は国外割引 債取扱者であるものと締結した割引債の取得 に要した金額の管理に関する契約(以下「割 引債管理契約」といいます。)に基づき、そ の割引債の取得に要した金額が管理されてい