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第 6 章 共振器ポラリトンの超高速分光 85

6.3 結果と考察

90 第6章 共振器ポラリトンの超高速分光

1.5 nJ/pulse

Position

2.0 2.1 2.2 2.3

Photon energy [eV]

T ransmittance

6.3 サンプルの透過スペクトルの入射光強度依存性

6.0 nJ/pulse

Position

2.0 2.1 2.2 2.3

Photon energy [eV]

T ransmittance

6.4 サンプルの透過スペクトルの入射光強度依存性

エネルギーである.

次にポンプ・プローブ分光を行った結果について述べる.はじめに微小共振器中に含ま

ない裸のPIC/gelatine薄膜に対してポンプ・プローブ分光を行った結果を図6.5に示す.

これはポンプ光強度が6.0 nJ/pulseの時の2.14 eVにおける透過率変化∆T /T を表して いる.この時,緩和時間は400 fsであった.過去の報告でPICのポンプ・プローブ分光 を行い数100 fsの緩和時間を測定した報告があり [11],本研究の400 fsという緩和時間 は妥当な値だと考えられる.

次にPIC/gelatineを含む1次元フォトニック結晶微小共振器に対してポンプ・プロー

ブ過渡透過分光を行った結果について述べる.図6.6にポンプ・プローブ過渡透過分光の 結果を透過スペクトルで表したものを示す.この時ポンプ光強度は6.0 nJ/pulseであっ た.これはポンプ光とプローブ光の時間遅延毎の透過スペクトルである.正の時間はポン プ光が先に入射している時間領域で,ポンプ光によって変化したサンプルの状態を観てお り,負の時間はポンプ光の入射する前のプローブ光のみの透過スペクトルを表しており

6.3 結果と考察 91

0 1 2 3

0 0.05 0.1

Delay time (ps)

ΔT/T

6.5 PIC/gelatine薄膜のポンプ・プローブ分光の結果

2 2.1 2.2 2.3

0 1 2 3

Transmission (a.u.)

Photon energy (eV)

1.0 ps 0.1 ps 0 ps -0.1 ps -1.0 ps

6.6 ポンプ・プローブ過渡透過分光の測定結果-透過スペクトル

92 第6章 共振器ポラリトンの超高速分光

2 2.1 2.2 2.3

0 2 4

Δ T/T

Photon energy (eV)

1.0 ps

0.1 ps

0 ps

-0.1 ps

-1.0 ps

6.7 ポンプ・プローブ過渡透過分光の測定結果-透過率変化

0 1 2 3

0 0.5 1

Delay time (ps)

ΔT/T

6.8 ACシュタルク三重項の時間発展

サンプルに対して低い強度の光を入射した場合の透過スペクトルを観ているのと同義で ある.強いポンプ光が入射する前は,共振器ポラリトンに起因する 2つの透過ピークが

2.12eV と2.19eV に観測された.ポンプ光が入射した直後は2つの透過ピークの間から

新たに2.14 eV透過ピークが現れて,再度2つの透過ピークに戻っていく様子が観測され

た.より明確にこの変化を観るために,透過率変化 ∆T /T を図6.7に示す.2つの透過 ピークの間から新たな透過ピークが出現してその後,緩和していく様子が明確に観測でき る.この時の,緩和時間は1psを切る非常に速い緩和であった.

図6.8に図6.7のACシュタルク三重項に起因する新たな透過ピークエネルギーであ

6.3 結果と考察 93

る2.14 eVにおける時間発展を示す.ACシュタルク三重項に起因する新たな透過ピーク

は非常に速い緩和をしており,この時緩和時間は210fsであった.図6.5と比較として,

PIC/gelatine 薄膜単体のポンプ・プローブ過渡透過分光の結果とおよそ同程度の緩和時

間を示している.この結果から分かるように,ACシュタルク三重項状態はPIC J 会合 体単体の緩和時間とほぼ同じ時間スケールである.2倍程度の緩和時間の変化が観られる が,これは共振器の効果によって内部で電場強度が増大したため,コヒーレントな過程で あるACシュタルク三重項の緩和が速くなったと考えている.過去に無機物系でInGaAs 系量子井戸を含む微小共振器中においてACシュタルク三重項の観測がなされているが,

その報告においてはACシュタルク三重項の緩和には数psという時間を要していた [6]. この系でのACシュタルク三重項は無機系に比べて速い緩和をすることが示唆される.

最後にACシュタルク三重項状態を用いた光デバイスについて述べる.本研究の結果か ら有機物系でのACシュタルク三重項の緩和時間は210fsという非常に速い時間スケール で起こっていることが分かる.有機物を用いた系での共振器ポラリトンはACシュタルク 三重項への非常に速い緩和を用いて光を制御する光スイッチとして利用できると考えてい る.この光スイッチを用いて,光コンピューターを作製することが出来れば超高速な演算 を行うことが可能である.これは,共振器ポラリトンを使った新しい光デバイスへの応用 であると言える.

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