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第 7 回 (11/9) 波 (2)

7.  光の粒子性

2017/12/21 入門物理学 B

2017/12/21 入門物理学 B

プランクによるエネルギー量子の発見 

(続き) 

プランクは電磁波の放射の分布が、       の形であれば、 

実験を完全に説明できることに気づいた。 

彼は、当時新しい学問であった統計力学を使って、光のエネルギー E が  E = nhν (n = 1,2 …) と表せるならば、上の形を取ることを示し、 

        と上の a, b の値も決定できることを示した。 

h: プランク定数     6.626070040 10-34 J・s (プランクが得た値、6.55 10-34 J・s)  (振動数の単位 [Hz]=[1/s] をかけると、エネルギーの単位 [J]になる) 

k: ボルツマン定数   1.38064852 10-23 J・K-1(プランクが得た値 1.346  10-23 J・K-1 c :光速

青破線: ヴィーンの公式  黒実線: プランクの公式 

画像は九州大学実験核物理研究室  インターネットセミナー第3部4頁 

「プランクの公式」より

エネルギーは飛び飛びの値を取る !  

→エネルギーの最小単位としてのエネルギー量子の発見

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U(ν, T) = 8πh c3

ν3

ehν/kT 1

U(ν, T ) = 3 ebν/T 1

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画像は Wikipedia 「黒体放射 (英語 版)」より引用, Photo by Poke2001,  (11th October 2015), 

CC-BY-SA 4.0 ライセンス

星の色は近似的に黒体放射として  理解できる。

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7-2. 光電効果 

物質に光をあてると、電子 (光電子) が飛び出してくる現象 

1839 年 アレクサンドル・エドモン・ベクレル(仏、1820 - 1891)が         光を電極にあてると電流が流れることを報告 

1900年代の初め レーナルトによる実験  (独、1862-1947)  0. 光電子の正体は陰極線中の電子と同じものである 

1. 金属表面から出てくる電子の持つエネルギーの最大値は強さではなく、 

    光の振動数νによって決まる。 

2. 振動数がある決まった振動数ν0以下になると光を強めても、光電子は出てこない  3. 光の強さ(明るさ)を増やすと、光電子の数が増える 

古典論 (光の波動論) では、光の強さが強くなれば光のエネルギーが増すので、 

電子は光を吸収するとその分エネルギーを増すはず→ 実験結果 1, 2 に反する なぜ?

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7-3.アインシュタインによる光量子仮説

  

(1905年 ,1921年ノーベル物理学賞)  

黒体放射の式から、光はエネルギー E = hν の粒子 (光子)   としての性質も持つのではないかと発想。 

光電効果の説明 

1. 金属の表面から電子が出るのに必要なエネルギーを W (仕事関数

   とする。W は金属の種類によって決まる。電子が持てる最大のエネルギー    eVmax は eVmax= hν-W となり、 

   これは実験結果 1 を説明する (1916年、ミリカンにより直接実証)。 

2. W=hνとすると、eVmax=h(νーν0)となる。 

 ν>ν0の時のみ電子が表面から出てくる 。これは実験結果 2 を説明する 

3. 光の強さを増やす→光の粒を増やす→エネルギーを受け取る電子の数を増やす 

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入門物理学 B 

第 14 回 (1/11) 光と粒子の二重性・電子軌道  7. 光の粒子性 (前回の続き) 

8. ボーアの原子模型  9. 電子の波動性 

10. 電子軌道 

11. 放射線 (時間が余れば)  第 15 回 (1/18) 学期末試験 

法政大学 市ヶ谷リベラルアーツセンター兼任講師 福川 賢治  (https://sites.google.com/site/kfukukawa00/hosei2017)

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7-4. コンプトン効果 

(1922 年、1927 年ノーベル物理学賞) 

光が波でもあり粒子であることの証明

X線等の高エネルギーの光を電子に当てた時、X 線の波長が伸びる現象  X 線の波長λ→λʼ になると、ν= c/λ→ νʼ=c/λʼ なので、 

光の振動数(エネルギー)は小さくなる。 

逃げたエネルギーは電子が持ち去ると考えると、このズレを説明できる。

光子(波長λ)

光子(波長λʼ) 電子 θ λʼ>λ

縦軸: X 線の強さ 横軸: X線の波長 

画像は九州大学実験核物理研究室インターネットセミナー第3部7頁「コンプトン効果」より

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その他の光の粒子性に関する証拠  

単一光子によるヤングの干渉実験(浜松ホトニクス、1982年)   https://www.youtube.com/watch?v=ImknFucHS̲c 

1個ずつの粒子はデタラメに飛んでいくが、 

その場での波の強さがその場所に粒子を見つけ出す確率を与える(確率解釈)。

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8. ボーアの原子模型 

(1913 年, 1922年ノーベル物理学賞) 

各原子は特有の波長 (=色) の電磁波を放出・吸収する。(第7回の講義) 

1885年 ヨハン・ヤコブ・バルマー (スイス、1825 - 1898) 

      水素のスペクトルの波長の間に以下の関係が成り立つ頃を発見 

           (n2=3, 4, 5,…) リュードベリ定数 RH=1.097…   107m-1  1890年: リュードベリが上の式を一般化  

       

      (n= n1+1, n1+2, n1+3, …) 

      バルマーの場合は n1 = 2の場合  n1  = 1 (ライマン系列、1906 年),  

n= 3 (パッシェン系列、1906 年)  n1 = 4 (ブラケット系列、1922 年),   n1=5 (プント系列、1924 年)…

1

λ = RH

! 1

22 1 n22

"

1

λ = RH

! 1

n21 1 n22

"

水素原子のバルマー系列 

画像はWikipedia 「バルマー系列」より引用

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Niels Bohr「量子力学の父」 

(デンマーク、1885-1962)  コペンハーゲン大学 

(途中でイギリスに留学) 

→ニールス・ボーア研究所  コペンハーゲン学派を形成  サッカーの腕前もプロ級  画像は Wikipedia より引用

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ボーアの原子模型 

(続き) 

ラザフォードの原子模型の問題。 

問題1. 原子の大きさ (約 10-10 m) を理論的に決定説明できない →      プランク定数 h が何か理論的に関係している。 

問題2. 電磁気学によると、円運動する電子はエネルギーを失う。 

    その結果、電子は原子核にすぐに引き寄せられ、原子はつぶれる。 

ボーアはバルマーの公式とプランクの発見から問題 1の解決を着想 

光のエネルギーに最小単位があれば、電子にあっても良いのでは?」  以下の 2 条件を置いて、問題 1 を解決 

1. (量子条件) 電子軌道半径 r, 電子の速度 v, 電子の質量を mとすると、 

         (主量子数 n=1, 2 ,3 …) と仮定する。r,v はこの式と  (原子核と電子の間に働く電気力)=(電子にかかる遠心力) 

 という力学的関係から決定。 

 半径やエネルギーは nを使って表され、勝手な値は取れない。→ 電子軌道の概念   n が大きいほど、半径やエネルギーは大きくなる。 

 n = 1の水素原子の半径 r (ボーア半径) … 0.53   10-10 m

mevr = n h

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ボーアの原子模型 

(続き) 

2. (振動数条件) 電子が量子数 n (エネルギー En) の軌道から  量子数 nʼ (エネルギー E) の軌道に移る時、 

En > E (n>nʼ)であれば光を放出し、E< E (n<nʼ)であれば光を吸収する。 

その光の振動数νは hν=|En-E| で与えられる。 

水素原子から放出される光のスペクトルを完全に再現

(左図) 水素原子の軌道イメージと放出・吸収  される光の波長 

画像はWikipedia 「水素スペクトル系列」より引 用、Photo by Szdori, (19th March 2009),  CC表示2.5ライセンス

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水素原子中の電子のエネルギーは  電子が原子核から離れた時の 

エネルギーを 0 として 

En = ­13.6/n2 [eV] で与えられる。 

eV (電子ボルト)は 1個の電子を  1V の電圧で加速した際の 

電子のエネルギーであり、 

1 [eV] = 1.6 10-19 [J] である。

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9. 電子の波動性  

(ド・ブロイ1924年、1929年ノーベル物理学賞)  ラザフォード模型の問題2「電子は何故、原子核とくっつかないのか?」 

アインシュタインのエネルギーの式  E= m2c+ p2cを光子について考える。 

(E: エネルギー、m: 質量、p: 運動量 [=mv]、c: 光速度)  光子の質量は m = 0 なので、E= p2c2    E = pc 

プランクの公式 E = hν= hc/λ= (h/λ)c と組み合わせると、 

p = h/λ  λ=h/p (ド・ブロイ波長)と書ける。 

「この式は物質でも実は成り立つのでは?」 

電子の運動量 p= mev を用いて、ボーアの量子条件         は   per = n [h/(2π)]   2πr = n(h/pe) = nλ 

「電子波」があるとすると、 

「軌道の円周」=「波長の整数倍」になる   (一周した時波の位相が揃う)。 

量子条件は電子が波として安定するために必要な条件を与える。 

電子も波としての性質と粒子としての性質を持つ。 

電子も二重スリット実験により干渉模様が現れる  (外村彰 (日立製作所等、1942-2012) 、1989年)。

mevr = n h 2π

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(上) 電子の物質波のイメージ         (n=7 の場合) 

画像は Wikimedia Commons より引用

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(右) 透過型電子顕微鏡。 

電子線が光線の役割をし、磁場がレンズの役割をする。 

物質波の波長は非常に短いので、「光の波」ではなく、 

「電子の波」を用いて極めて細かいところ(原子レベル)   まで見分けられる。 

画像はともに Wikipedia より引用 

(左) Louis de Broglie   (仏、1892 - 1987) 

紹介した業績は彼の博士論文

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