第 7 回 (11/9) 波 (2)
4. ニュートン力学の変更
2017/11/30 入門物理学B
2017/11/30 入門物理学B 4
4-2 固有時間 (相対論的な時間)
・力学の法則 (ニュートンの運動方程式) は F=ma 日本語で書くと(力)=(質量) (加速度)
ただし、(加速度)=(速度変化) / (時間)
例. 2 秒間で速度が 1 m/s から 3 m/s になったら、
加速度は、 (3m/s - 1 m/s)/ (2 s)=1m/s 2
・ただし、特殊相対性理論では時間は見る人によって変わってしまう。
ニュートン力学を相対論的力学にするには、
ローレンツ変換で変わらない、時間に対応する不変量が必要。
・二次元時空間における短い間隔を (cΔt, Δx) とすると、
相対性理論の作り方から (cΔt)2(Δx)2 はローレンツ変換で変わらない量。
これを (cΔτ)2と書き、Δτを固有時間と呼ぶ。(cΔτ)2 =(cΔt)2-(Δx)2
(※)Δ(デルタ) は英語の D に対応するギリシャ文字。
ΔA で「微小な Aの変化」の意味を表す。τ(タウ)は英語の t に対応するギリシャ文字。
2017/11/30 入門物理学B
4-3. 4 元速度 (相対論的な速度)
・(cΔτ)2 =(cΔt)2(Δx)2 の両辺を(cΔt)2 で割る。
すると、
したがって、
速度の 4 次元時空への拡張として u = (cγ,cβγ) を 4 元速度と呼び、
cγをその時間成分、cβγを空間成分と呼ぶ。
日常の世界 (非相対論) では、 なので、u =(c, v) となり、
後ろの v は普通の速度に対応した量になる。
また、(cΔτ)2 =(cΔt)2-(Δx)2 の両辺を(Δτ)2 で割ると、
… (※)となり、
これはローレンツ変換をしても変わらない量。
!∆τ
∆t
"2
= 1 −
#1 c
∆x
∆t
$2
= 1 −
%v c
&2
= 1 − β2 ∴ ∆τ
∆t = !
1 − β2
∆t
∆τ = 1
!1 − β2 = γ ∆x
∆τ = ∆x
∆t
∆t
∆τ = vγ = cβγ
c2 =
!c∆t
∆τ
"2
−
!∆x
∆τ
"2
= (cγ)2 − (cβγ)2
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γ ! 1
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4-4. 4元運動量 (相対論的運動量・相対論的なエネルギー)
・ニュートン力学における物体の運動の勢いを表す量
(運動量 p) = (質量 m) (速度 v) p = mv
(運動エネルギー K) = (1/2) (質量 m) (速度 v)2 K = (1/2)mv2
(単位は [J]=[kg・m2/s2] [Joule, ジュール])
運動量の 4 次元時空への拡張として、
mu = (mcγ, mcβγ) を 4 元運動量と呼び、
mcγをその時間成分、mcβγを空間成分と呼ぶ。
非相対論 ( ) では mu = (mc, mv) 4 元運動量の1番目の量 mcγ を用いて、
E/c = mcγとして相対論的エネルギーが導入される。 したがって、
E を v が c に比べ小さい時に計算すると、(詳細は大学の数学の知識が必要)、
E = mc2+(1/2)mv2 + (小さな項) となる。
E = (静止エネルギー)+(ニュートン力学での運動エネルギーK)+(小さな項)
γ ! 1
E = mc2γ = mc2 1
!1 − β2 = mc2 1
"
1 −
#v c
$2
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4-4. 4元運動量 (相対論的運動量・相対論的なエネルギー)
(続き)物質は止まっていても、E = mc2 のエネルギーを持っている。
E = mc2 は、質量が実はエネルギーの形を変えたものであったことを表す。
原子核反応(太陽エネルギー、原子爆弾、原子力発電)によるものが有名 原子核の種類が変わることによって、質量が消え (質量欠損)、
代わり莫大なエネルギーが生み出される。
より一般的なエネルギーの表式は、5 ページの(※)式をm2倍。
(mcγ)2(mcβγ)2 = (E/c)2 p2 = m2c2 (ローレンツ変換における不変量) c2 を両辺にかけて整理すると、 E2 = m2c4+p2c2
2017/12/7 入門物理学 B
入門物理学 B
第 11 回 (12/7) 原子説への道 [古代・中世の化学]
1. 万物の根源、古代原子説、四元素説 2. 錬金術の時代とその揺らぎ
3. ラボアジエと化学革命
第 12 回 (12/14) 原子から原子の中へ 4. 原子・分子・周期表
・ドルトンの原子説
・アボガドロと分子 ・メンデレーエフと周期表 5. 電子の発見と電気素量
第 15 回 試験日 (1/18) 詳細は次回
法政大学 市ヶ谷リベラルアーツセンター兼任講師 福川 賢治 (https://sites.google.com/site/kfukukawa00/hosei2017)
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参考文献
1. 「科学の発見」S. Weinberg 著、文藝春秋、(2016年、2106円) 1 - 3 章、9章 2. 「化学の歴史 I」W.H. ブロック著、朝倉書店 3, 4, 9 章
入門物理学 B 2017/12/7
原子説 1. 万物の根源(アルケー)
神話と詩の世界 (ミュトス, mythos)
◎ ホメロス(紀元前 8世紀 ?、詩人の異名を持つ)
・「イーリアス」トロイア戦争 (ギリシャとトロイアの戦争、紀元前 1200 年中期 ?) を記述
・「オデュッセイア」トロイア戦争後のオデュッセウスの貴種漂流譚を記述
◎ ヘシオドス (紀元前 700 年頃) 「神統記」ギリシャ神話的宇宙観の原典
自然哲学 (経験的事実による世界の記述, ロゴス (理性や論証) の尊重)
◎ ミレトス学派 (ミレトスはギリシャの対岸にあるトルコの地名) 1. タレス (B.C. 624 頃 ̶ B.C. 546 頃)
万物は単一の基本的物質(アルケー)で構成されているという説を初めて唱えたとされる 「アルケーは水」
2. アナクシマンドロス (B.C. 610 頃 ̶ B.C. 547頃) タレスの弟子 「アルケーは無限(定)なもの」
有限なものは無限なものから生じ、罪の償いを受けて無限のものに帰する 3. アナクシメネス (B.C. 585頃̶ B.C. 525頃) アナクシマンドロスの弟子 「アルケーは空気」
ミレトス (ミレトス学派) は古代ペルシアによって征服され衰退
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◎ ピタゴラス (数学者、宗教家、哲学者, B.C. 570頃 ̶ B.C.496頃) 「万物は数によって秩序づけられる」
2つの音の振動数が簡単な整数比になること
(例えば 1オクターブは振動数が 2:1 の二つの音の比)や、
ピタゴラス(三平方)の定理で有名。
◎ ヘラクレイトス (B.C. 540 頃 ̶ B.C. 480頃)
動的自然観「万物は流転する」火は万物の変化の原因 「万物の根源は火」
◎古代原子説
1. レウキッポス (古代ギリシア 、B.C. 5世紀) ほぼ資料が残存しない
2. デモクリトス (レウキッポスの弟子、古代ギリシア、B.C. 460 頃̶ B.C. 370頃) 無神論 (科学と宗教の分離)、前ソクラテス期の最後の哲学者
倫理学、自然科学、数学、音楽についての断片的資料が現存
「いかなることによっても偶然によっては起こりえない」
「真実存在するのはアトモスと空虚のみ」
アトモス (=a (~できない)+tomos(分割)) ̀̀分割できないもの” 原子(atom) の語源 (※) 当時の原子論は科学的な実証 (19世紀以降)によるものではない。
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◎ 四元素説
1. エンペドクレス (B.C. 490頃 ̶ B.C. 430頃、伊シチリア島アグリジェント) 「水、土、空気、火 」の愛憎 (離合集散)で万物が構成される。
2. プラトン (ソクラテスの弟子、B.C. 427̶ B.C. 347) 元素は正多面体の形をした粒子
[火 (正四面体)、土 (立方体)、空気 (正八面体)、水(正二十面体)]
正十二面体は宇宙を表す
3. アリストテレス (プラトンの弟子 B.C. 384 ̶ B.C. 322)
四元素は四性質「熱・冷」「湿・乾」の組み合わせでできている。
火 (熱・乾)、土 (冷・乾)、 空気 (熱・湿) 、水 (冷・湿)
さらに天空 (月より遠い世界) に円運動をする第五元素 「エーテル」がある この四元素説が古代ギリシャ・ローマ、イスラム世界、ヨーロッパでも
原子説の現れる前まで姿を変えながら信じられていた
(錬金術や医学と結びつき、中世における支配的な物質観に)
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アリストテレスは中心から 土・水、空気、火の順に
物質が存在しやすいと考えた 画像は Wikipedia より引用
四元素説における元素の関係図
画像は Wikipedia 「四元素」から引用,
Picture by Mhss (Own work), (20th ,November, 2011), CC-BY-3.0 SA ライセンス
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2 錬金術 (Alchemy)
古代・中世における化学化学的手段を用いて非金属から貴金属 (特に金・銀)を精錬する試み
古代エジプトに起源。Alchemy の 語源は Al-Kimiya 「エジプトの術」
(Kimiya は「エジプト」の意味の Khem の転じたもの)
Al はアラビア語の 定冠詞 (例. Algebla (代数), Alkali (アルカリ)、Algorithm) 四元素説によって、基礎づけを与えられる。
金 (完全な存在) と「熱・冷」「乾・湿」の性質が 全く一致する性質を作れば、金ができるのでは?
→ 実際には「金・銀に似たものができるに過ぎない」
[Albertus Magnus (独, 1193-1280 )「鉱物論」]
アラビアの三原質 「硫黄・水銀・塩」(四元素説の新解釈)
パラケルススの主著「オプス・パラミルム」(1531年)の中で展開) 硫黄 可燃性・腐食性等の能動的役割
四元素説での土・火に対応
水銀 揮発性・可溶性等の受動的役割 四元素説での空気・水に対応
塩 両者の中間にあり、物質を固定化する役割 第五元素エーテルに対応
Paracelsus
(スイス、1497-1541) 医師・化学者・錬金術師 画像は Wikipedia より引用
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錬金術の成果
ジャービル・イブン・ハイヤーン (アラビア、721?- 815?) イスラム科学の祖であり、中世の錬金術における権威
業績
・蒸留、昇華、溶解、結晶化の技術を開発→ 現在の化学工業の基本的技術
・幾つかの有機化合物 (酢酸、クエン酸、酒石酸)の発見、アルカリの概念 塩酸 (HCl)、硝酸(HNO3)、硫酸(H2SO4)、王水(NOCl)の発見
・王水の生成 HNO3 + 3HCl → NOCl + Cl2 + 2H2O 濃硝酸 + 濃塩酸 → 王水 + 塩素 +水
王水は金を溶かす
Au + NOCl + Cl2 + HCl → H[AuCl4] + NO
金 + 王水 + 塩素 + 塩酸→ テトラクロリド金(III)酸 + 一酸化窒素
その他にも、錬金術は火薬の発明(中国)等
主に化学に大きく貢献 中世に描かれた蒸留器
画像は Wikipedia より引用
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錬金術の揺らぎから化学革命へ
1. 錬金術の目的は金銀の生成だが、千年以上経っても金銀は作れない
→ 本当に四元素から金銀はできるのだろうか?
ロバート・ボイル
「懐疑的化学者」(1661年)
この本の中で「元素は他のものから作ることができないもの」と定義 四元素よりも、もっと多くの数の元素があって良いはずであり、
これらはさまざまな微粒子からできていると主張
ガリレオ、デカルト等の機械論的自然観 (もっぱら物質の大きさや形、運動などから [主に力学的に]自然現象を説明しようとする立場) からの影響
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熱力学におけるボイルの法則 温度が時間的に変わらない時、
(圧力 P) (体積 V)=(一定) 画像はWikipediaより引用
Sir Robert Boyle (英, 16271691)
「近代化学の祖」
貴族、自然哲学者、化学者、
錬金術師、物理学者、発明家 英王立協会の設立に貢献
(王立協会フェロー)
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