第6章 多目的 GA による多目的システムの信頼性最適化設計
6.4 数値実験
提案手法の有効性を明らかにするために,多目的非線形整数計画 (mo-nIP) 問題に定式 化されるシステム信頼性の最適設計問題を取り上げ,ペナルティー評価関数を導入した
GA,ペナルティ評価関数と改訂シンプレックス探索法(LS の一手法)を組み合わせた
GA (hGAと呼ぶ)と,提案するflc-hGAとの比較実験を行う。選択にはパレート保存戦略を
用いる。また,パレート解は実行可能解をパレート最適解の定義にしたがい子染色体を候 補として更新する。
各手法(GA, hGA, flc-hGA)により求められたパレートの精度に対する比較・分析にお いては,MDI法による正の理想解とのユークリッド距離の平均を用いる[77]。
ここでは,多目的非線形整数計画問題の例(Ex I)として,次のような15個の決定変数,
1個のシステム制約条件,2個の目的関数を伴う直列-並列型システム[67]の信頼性最適設計 問題を取りあげ,比較数値実験を行う。
なお,各サブシステムのユニットは同じ信頼度を備えている。ユニット数は1以上 10 以下とする。システムの信頼度R(x)を最大化しながら,コストC(x)は最小化する。ここで,
決定変数xjは,各サブシステムのユニット数であり,また,jはサブシステム,rj はサ ブシステムjのユニットの信頼度,cjはコスト,wjは制約値(サイズや重量など)である。
Ex. I
15 ..., , 2 , 1 integer, :
10 1
) ( t.
s.
) ( min
} ) 1 ( 1 { ) ( max
15
1 15
1 15
1
=
≤
≤
≤
=
=
−
−
=
∑
∑
∏
=
=
=
j x
W x w W
x c C
r R
j
s j
j j j
j j j
x j
j
x x x
このシステムの構成は図4のような,サブシステムを直列に配置した信頼性最適化モデ ルである。各,サブシステムのユニット数を決定変数として,2つの目的関数(コストと 信頼性)をバランスさせるパレート解を求める。
・・・・・・・・ (6-19)
・・・・・・・・ (6-18)
表6-2 数値例(Ex.I)におけるシステム設計データ Table 6-2 System design data in Ex. I
j 1 2 3 4 5
rj 0.90 0.75 0.65 0.80 0.85
cj 5 4 9 7 7
wj 8 9 6 7 8
j 6 7 8 9 10
rj 0.93 0.78 0.66 0.78 0.91
cj 5 6 9 4 5
wj 8 9 6 7 8
j 11 12 13 14 15
rj 0.79 0.77 0.67 0.79 0.67
cj 6 7 9 8 6
wj 9 7 6 5 7
システム設計に必要とするデータは表2で与えられる。
この数値例に対し,集団サイズを10,初期の交叉率を 0.4,突然変異率を 0.1,最大世
代数を500,鏡映係数を1,拡張係数を2,収縮係数を0.5,制約値Wsを414として実験
を行ったところ,図6-5のパレート解が得られた。さらに,MDI技法より選ばれた最良妥 協解は次のようになった。
Fig. 6-4 Mixed Series-Parallel System of Ex.I 図6-4 数値例(Ex.I)のシステム構成
最良妥協解 世代数:218
染色体:x* = [ 2 3 3 2 2 2 3 3 3 2 2 2 3 2 3 ] 評価関数値:1.367945
目的関数値:R(x* ) = 0.653441, C(x* ) = 241
図6-5は提案したflc-hGAとGA,hGAを同一のパラメータ設定下で実行して得られた パレート解を示している。また,表3にGA, hGA, flc-hGAのそれぞれの10回試行によっ て得られたパレート解の数を示す。GA でのパレート解は,局所探索を行わないため,進 化世代数を大きくするなどして,多数の解候補を生成しないと良いパレート解は得られな い。
次に,それぞれのパレート解と正の理想解とのユークリッド距離を計算し,平均を求め ると表6-4のようになる。これは,提案手法flc-hGAとhGAが改訂シンプレックス探索法 による局所探索を行うことで,パレート解の全ての領域に対してより精度が高いパレート 解を求められることを明らかにしている。つまり,複数の目的をバランスさせるような解 の生成を進化過程で助長する仕組みが重要である。
表6-3は同じ計算時間で得られるパレート解の数をGA, hGA, flc-hGAの3方法で求めた ものである。回数は10回試行したパレート解の平均値である。
150 200 250 300 350 400
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1
U nreliability
Cost
G A h G A f lc - h G A
150 200 250 300 350 400
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1
U nreliability
Cost
G A h G A f lc - h G A
Fig. 6-5 Pareto solutions in Ex I 図6-5 数値例(Ex I)に対して得られたパレート解
表6-3 パレート解の数
Table 6-3 Number of Pareto solutions
Technique GA hGA flc-hGA
Maximum 50 101 99
Minimum 39 73 69
Average 44.7 85 84.4
このパレート解の数から,提案手法flc-hGAとhGAはGAに対して約2倍程度探索効率 が向上していることがわかる。
正の理想解とユークリッドの距離の比較を表4に示す。次に,最良妥協解が得られるま での計算時間を3つのGAについて比較する。各 GAを 10回試行したときの平均計算時 間は表5のようになる。flc-hGAは構造が複雑なため,一世代の計算時間が大きいがhGA より短い時間で解を得ることができる。これからFLCの有効性がうかがえる。
表6-4 正の理想解とのユークリッド距離 Table 6-4. Euclid Distance with positive ideal solution
Technique GA hGA flc-hGA
Distance 0.7002 0.7397 0.7402
表6-5 シミュレーション計算時間 Table 6-5 Simulation processing time
Technique GA hGA flc-hGA
Processing
time [s] 1.1324 2.2162 1.8732
FLCによる制御は図6-6と図6-7で示すように,進化過程の中でflc-hGAが,評価関数 の平均値の変化量に基づいて,交叉率と突然変異率を得られ解の変化に対応して調節でき たからである。世代が進化するにつれ,2つの確率がどちらとも平均的に減少していくの がわかる。つまり,世代の進化と共に,パレート解に沿って局所探索が行われ,確率を小 さくすることで広域探索が抑制されていることがわかる。
現在のFLCの課題は,交叉確率と突然変異率の制御を同じ評価関数で行っているが,交 叉と突然変異の機能が異なるため他の指標を用いることが考えられる。また,適応係数は 試行実験で調整するため,調整に多くの時間を必要とする。
Fig. 6-6 Behaviors of crossover rates 図6-6 交叉率の変化
Fig. 6-7 Behaviors of mutation rates 図6-7突然変異率の変化