第5章 適応型ハイブリッド GA による信頼性最適化設計
5.2 信頼性最適化問題
信頼性最適化問題はユニットで構成された機能的なエンティティー、サブシステム、あ るいはユニットに分解できる。サブシステムが直列に接続されたシステム構成の場合,次 のように非線形整数計画問題の一般的な数学モデルに定式化することができる。なお,サ ブシステムは複数のユニットを並列に接続した並列冗長構成である。
n j
x x x
m i
b x g
x R f
U j j L j
i n
j ij j
j j n
j
..., , 2 , 1 , integer :
..., , 2 , 1 , ) (
t.
s.
) ( )
( max
1 1
=
≤
≤
=
≤
∏
=
∑
=x =
ここで, f(x)はシステムの信頼度である。xは決定変数のベクトルである。Rj(xj)は サブシステムjの信頼度である。gij(xj)は利用可能な非線形のリソースiのサブシステム j のリソースである。bjはシステムリソースの制限値である。たとえば,コストや重量で ある。xjは整数型の決定変数である。xLj とxUj は決定変数の取り得る範囲の下限値と上限 値である。iはリソースの番号,jはサブシステムの番号を表す。mはリソースの数,nは サブシステムの数を表す。
この最適化の目的は信頼性を評価基準として,サブシステムを構成するユニット数を決 定することである。
5.3 適応型ハイブリッドGA
この章では,適応型ハイブリッド GA (a-hGA)の基本的な概念とその探索アルゴリズム を説明する。a-hGA のアルゴリズムとの比較のために基本的なGAから順に説明する。最 初,基本的な GA の手続き説明する。 次に,最も良いと思われる局所探索技法を説明す る。最後に,交叉率と突然変異率を制御する3種類のa-hGAを説明する。このa-hGA の ひとつが提案するファジー論理制御によるハイブリッドGAである。
5.3.1 遺伝的アルゴリズム
GA の基本的な探索手順をなるべく具体的な手法(エリート戦略,一様算術交叉など)
を使って探索手順を説明する。手順は以下の通りである。
Step 1: 初期集団の生成など
最初の個体は制限範囲内でランダムな値で生成する。
Step 2: 遺伝的操作
交叉:一様算術交叉による操作[55]。
突然変異:一様突然変異による操作。ランダムに選んだ遺伝子を制限範囲内でラン
・・・・・・ (5-1)
・・・・・・ (5-2)
・・・・・・ (5-3)
ダムに値を設定する。
選択:親固体と子個体からエリート戦略[55]で次世代の親を選択する。他の個体は淘 汰される。
Step 3: 終了状態の判定
あらかじめ定められた最大世代数に達するか,あるいは最適な解が得られているな ら停止する。それ以外は,Step2を実行する。なお,この GA での最適な解とは,
解の平均値の変化が少なくなった状態の解とする。
5.3.2 局所探索技術
局所探索手順は GA の探索ループ(世代交代のループ)に組み込まれる。この局所探 索により新しい個体を生成する。この個体は交叉や突然変異で生成される子個体に追加さ れる。この局所探索技法には Michalewicz[58]によって提案された「Iterative Hill Climbing technique」を使用する。
5.3.3 3種類の適応型ハイブリッドGA
この章では,従来のヒューリスティックな2つの適応型ハイブリッド GA を提案する。
次に,ファジー論理制御(FLC)で1つの適応型ハイブリッドGAを提案する。これらの 3つの適応型スキームは,適合値に対応して交叉率と突然変異率を更新する。
(1) a-hGA1
最初の適応型ハイブリッドGAは Mak, Wong, and Wang[59]の研究で使われた発見的な スキームを GA 手続きに組み込む。 このアルゴリズムでは,交叉と突然変異を適応的に 制御するために,それぞれの世代の親個体の適合値と子個体の適合値の比率を採用する。
解空間における探索の拡散と収束のバランスを制御することで,GA による探索処理が局 所解に急速に収束することを防止する。この操作を実現するために,交叉率と突然変異率 を操作する。この交叉率と突然変異率の変化量(0.05,0.005)は実験的に定めた値であり,
モデル等により変わるものと思われる。このスキームの具体的なアルゴリズムは次の通り である。
Procedure: regulation of pCand pM using the heuristic method begin
if foffSize/ fpopSize ≥0.1 then
005 . 0 ) 1 ( ) ( , 05 . 0 ) 1 ( )
(t = p t− + p t =p t− +
pC C M M ;
if foffSize/ fpopSize ≤−0.1 then
005 . 0 ) 1 ( ) ( , 05 . 0 ) 1 ( )
(t = p t− − p t =p t− −
pC C M M ;
if −0.1<foffSize/ fpopSize <0.1 then
) 1 ( ) ( ), 1 ( )
(t = p t− p t =p t−
pC C M M ;
end
ここで,foffSizeは子個体の適合値である。
popSize
f は親個体の適合値である。p (t)
C とp (t)
M は
次 世 代 の 交 叉 率 と 突 然 変 異 率 で あ る 子 個 体 と 親 個 体 の 比 例 値 (
popSize offSize f
f / ) が
1 . 0
/ popSize ≥
offSize f
f あるいは / ≤−0.1
popSize offSize f
f である場合,交叉率と突然変異率を操作する。
それ以外の場合は操作しない。交叉率の調整範囲は,0.5から1.0,突然変異率の調整範囲 は0.00から0.10とする。
世代交代ごとに上の手続きが実行されて評価され,交叉率と突然変異率が更新される。
(2) a-hGA2
2番目の適応型アルゴリズムはGA手続きをSrinivas とPatnaik [60] の研究で使われた 適応型スキームをGAに組み合わせる。この適応型スキームはGAの集団の拡散と集中化 の双方を考慮に入れた手法である。このa-hGAの特徴は,交叉と突然変異の効果をバラン スさせることで制御する。最適解の探索が停滞する傾向にあるとき,この基本的なスキー ムにより,
pCと
pMは増加する。また,探索が解空間にばらついているとき,減少する。
最適解探索のばらつきを判定するための詳細なスキームは次の通りである。
⎪⎩
⎪⎨
⎧
≤
>
−
= −
avg cro
avg cro avg
cro
C f f
f f f
f f p f
,
), /(
) (
3
max max
1
α
α
⎪⎩
⎪⎨
⎧
≤
>
−
= −
avg mut
avg mut avg
mut
M f f
f f f
f f p f
,
), /(
) (
4
max max
2
α
α
ここで,fmaxと
favgは世代単位の適合値の最大値と平均値である。
fcroは交叉で生成され る個体の最大適合値である。
fmutは突然変異で生成される個体の最大適合値である。それ ぞれの状態を式4,式5の条件により
pCと
pMが更新される。 , , ,
3 2
1α α
α と
α
4の値はそれぞれ1.0,0.5,1.0と0.5である[60]。交叉率
pC の値は0.5から1.0の範囲,突然変異率 pMの 値は0.00から0.05の範囲とする。
(3) flc-hGA
提案する適応型ハイブリッドGAは Song およびその他のファジー論理制御(FLC)の 概念を採用する[61]。継続する2つの世代の平均適合値の変化量を FLC の入力とする。た とえば,最大化問題で,世代tにおける平均適合値の変化を,式7のように f (t)
Δ avg で表現
する。
) ) ( )
( ( )
(t f t f t
favg = parSize − offSize
Δ ( ) ( ))
( 1 1
offSize t f parSize
t
f kparSizeparSizeoffSize k parSize
k k
∑
∑
= − = + +=
ここで,parSize と offSize は親と子の集団サイズである。f (t)
parSize と f (t)
offSsize は世代tにおけ
る親と子の適合値の平均値である。Δf (t−1)
avg と f (t)
Δavg は次のように交叉率(pC),突然変異率
(pM)を制御するために使用される。
・・・・・・ (5-4)
・・・・・・ (5-5)
・・・・・・ (5-6)
Procedure: regulation of pCand pM using average fitness begin
if ε≤Δfavg(t−1)≤γ and ε ≤Δfavg(t) ≤ γ then
generation next
for and
increasepC pM ;
if −γ≤Δfavg(t−1)≤−ε and −γ ≤ Δfavg(t) ≤ −ε then
generation next
for and
decreasepC pM ;
if −ε <Δfavg(t−1)<ε and−ε <Δfavg(t)<ε then
generation next
for and increase
rapidly pC pM ;
end
ここで,εはゼロ付近の具体的な値を設定する。
γ
と−γ
はファジィ・メンバ関数(fuzzy membership function)の最大と最小の値である。5.4 適応型ハイブリッドGAの構成
この章では,3つの適応型スキームをハイブリッド遺伝アルゴリズム(hGA)へ適用す るための詳細な手続きを説明する。規準的なGAの手続きは5.3.1で説明した。次に,適 応型のハイブリッドGAの手続きは次の通りである。
5.4.1適応型ハイブリッドGA
最初の a-hGA(a-hGA1)はMak, WongとWang[59]の研究で使われた発見的手法を組み 合せたものである。その手続きは次の通りである。
Step 1: 初期集団の生成など
最初の個体は制限範囲内でランダムな値で生成する。
Step 2: 遺伝的操作
交叉:一様算術交叉による操作[55]。
突然変異:一様突然変異による操作。ランダムに選んだ遺伝子を制限範囲内でラン ダムに値を設定する。
Step 3: 山登り法(Iterative Hill Climbing Technique)を使用する。
Step 4: 遺伝的操作
選択:親固体と子個体からエリート戦略で次世代の親を選択する。他の個体は淘汰 される。
Step 5: 適合度を入力として適応型スキームを適用してGAパラメータを調節する。
Step 6: 終了状態の判定
あらかじめ定められた最大世代数に達するか,あるいは最適な解が得られているな ら停止する。それ以外は,ステップ2を実行する。なお,このGAでの最適な解と は,解の平均値の変化が少なくなった状態の解とする。
第2の適応型ハイブリッドGA(a-hGA2)の手続きはSrinivasとPatnaikの適応型スキ ーム[60]を使用する。a-hGA1のステップ5の部分にこの適応型スキームを適用する。
最後の適応型ハイブリッド GA(flc-hGA)の手続きは,Song 他の適応型スキーム[61]か ら案出した。flc-hGA の手続きは a-hGA1 のステップ5の部分にこの適応型スキームが組 み込まれる。
5.5 数値実験
この章では,ユニットを並列冗長構成にしたサブシステムを複数接続したシステムの信 頼性最適化問題を使用する。遺伝的アルゴリズムを検証するために,同じ条件で実験を実 施する。GA パラメータは,最大世代数:5,000,集団サイズ:20,初期の交叉率:0.5,
初期の突然変異率:0.1,山登り法の最小変化量:0.6を設定する。また,実行は,同じ初 期値(同じ初期個体と同じ率)を使い,各々20回を繰返し実行する。
2つの信頼性最適化問題は,①Rabi, MurtyとReddy [62]で使用した冗長設計問題(Test-1),
②Prasad and Kuo[63] で使用した冗長設計問題(Test-2)を用いる。
問題Test-1:サブシステムを直列に接続したシステムである。サブシステムは複数のユニ
ットが並列冗長に構成されている。決定変数はユニット数である。
max. ( ) {1 (1 ) }
15
1
xj
j j
r x
f =
∏
− −=
s.t. ( ) ( ) 400
15
1
1 =
∑
⋅ ≤= j
j
j x
c x
g
∑
=≤
⋅
= 15
1
2( ) ( ) 414
j
j
j x
w x
g
10
1≤xj ≤ : integer j=1,L,15
ここで, f(x)はシステム信頼度である。 g1(x)はシステムの総コストである。g2(x)は 重量等の物理的な値である。rjはサブシステムj の信頼度である。xjはサブシステム j のユニット数である。xjの取り得る範囲は1から10の整数値である。cjはサブシステム jのユニットのコストである。wjはサブシステム j の重量等の物理的な限界である。
問題Test-2:サブシステムをブリッジ状に接続したシステムである。サブシステムは複数
のユニットが並列冗長に構成されている。決定変数はユニット数である。
・・・・・・ (5-7)
・・・・・・ (5-8)
・・・・・・ (5-9)