第4章 暑中環境で施工される構造体コンクリートの強度管理に関する研究
4.2 実験内容
4.2.2 使用材料及び調合
表 4.2および表 4.3に各試験体の使用材料および調合を示す。実験に用いた材料はいずれも福 岡地域で一般的に用いられる範囲のものである。調合は普通ポルトランドセメント単味の「普通 27-18-20N」を用いた。
表 4.1 実験概要
試験体 寸法 コンクリート温度の
目標値(℃) 養生方法 検討項目
柱 1.0×1.0× 1.0m
35(極暑中期&
軽微な暑中期)
20(標準期)
材齢7日に型
枠脱型 フレッシュ性状:温度,スランプ,空気量,
単位容積質量を測定
内部温度:材齢7日まで10分間隔
圧縮強度:材齢7,28,91日に上面から鉛直 方向にコア抜きし測定,管理用供
試体も同時に実施
含水率1):所定の材齢に含水率センサで測定
結合水率1):材齢7,28,91日に抜いたコア
に対して測定
細孔量1):材齢91日に測定 無脱型1)
管理用 φ10×20cm
35(極暑中期&
軽微な暑中期)
20(標準期)
標水12) 標水22) 現場水中 現場封緘 現場気中 1) 極暑中期のみ採用
2) 生コン工場における生産管理と,施工現場における管理を想定し2種類の水中養生を設定
表 4.3 コンクリートの調合(普通 27-18-20N)
W/C
(%) S/a
(%)
単位量(kg/m3)
C W S G 混和剤
50 45.5 368 184 852 947 4.05
表 4.2 使用材料
種類 物性等
セメント 普通ポルトランドセメント 密度:3.15g/cm3
水 地下水
細骨材
福岡県朝倉産砕砂 絶乾密度:2.70g/cm3
吸水率:0.64%
粗粒率:2.70
粗骨材
福岡県朝倉産砕石 絶乾密度:2.74g/cm3
吸水率:0.60%
実積率:59.5%
混和剤 AE減水剤(遅延形Ⅰ種) AE減水剤(標準形Ⅰ種)
図 4.1 柱試験体の概要 図 4.2 温度の測定位置とコア抜き位置(平面図)
4.2.3 養生方法
柱試験体の湿潤養生の方法は,JASS 5.8.2「湿潤養生」のa項に示される種々の方法のうち「透 水性の小さいせき板による被覆」を採用した。以後,湿潤養生の終了時期として「せき板の脱型 時期」あるいは単に「脱型時期」を用いる。脱型時期は内部温度測定が終了する材齢 7 日とした。
また,暑中期実験の場合は,脱型による表面乾燥の影響を検討するために無脱型試験体を追加し た。管理用供試体の養生方法は,標準養生(20℃水中)2 種類,現場水中,現場封緘,現場気中 養生とし,柱試験体から得られる構造体コンクリート強度と比較した。標準養生においてはレデ ィーミクストコンクリート工場における生産管理,および施工現場における強度管理を想定し,
それぞれ試験体を作成した。すなわち「標準養生 1」は工場で練混ぜ直後に試験体を採取し,約 20℃の試験室内に材齢1日まで静置後,脱型して20℃水中養生を開始した。「標準養生2」は打 込み現場にて採取し,材齢1日まで現場に静置後,翌日脱型して20℃水中養生を開始した。他の 試験体は,標準養生2 と同様,材齢1 日まで現場に静置後,現場水中および現場気中養生用試験 体は脱型してそれぞれ曝露室に設置した水槽内ならびに曝露室内に静置した。現場封緘養生用試 験体は,打込み直後より曝露室内に静置した。管理用供試体はいずれも各々9体で,材齢7,28,
91日で強度試験を行い,柱試験体との比較を行った。
4.2.4 測定項目及び方法
以下に各測定項目及び方法を示す。
1)内部温度
柱試験体においては,図 4.1及び図 4.2に示す位置でコンクリート温度の経時変化を材齢7 日 まで測定した。温度測定にはT熱電対を使用し,10分間隔で自動測定した。
2)圧縮強度
柱試験体は,材齢7,28及び91日でコア抜きし,圧縮強度およびヤング率を測定した。コア抜 き位置を図 4.2 に示す。図上のコア番号①~③においては構造体コンクリートの表面部,コア④
~⑥においては内部と想定し,強度に及ぼす表面乾燥の影響を検討した。コア抜きは上面から鉛 直方向に行い,得られたφ10×100cm のコアから,上下端のそれぞれ 15cm 程度を切除した約 70cmの残部から,φ10×20cm 試験体を 3 本作成した。また,この 3 本に挟まれる 2 本の 10×
4cm の試験体を作成し,次節に示す結合水率などの測定を行った。管理用試験体の圧縮強度の測 定は,材齢 7,28, 91 日で行った。コア,管理用いずれも強度試験においては載荷時の上下面 は軽微な研磨仕上げを行った。また,載荷試験に先立ち密度の測定を行った。
3)含水率
構造体コンクリート強度に及ぼす温度の影響を部材内部における水分の挙動から検討するため に,柱試験体の中心部から表層にかけての含水率を測定した。柱試験体内部に表層から 0.5cm,
2.5cm,5cm,7.5cm,10cm,20cm,30cm,40cm,50cm の位置に取り付けた埋め込みセラミック
センサ4-3)の電気抵抗値を携帯型測定器で測定し,これをインピーダンス測定器(LCR メータ)によ る電気抵抗に変換し,含水率を求めた4-4)。センサの設置位置を図 4.3および写真 4.1に示す。測 定は材齢1日から91日まで実施した。
4)結合水率
先に述べた鉛直方向コアから切り出した試料を用いて結合水率の測定を行った。まず,試料を 酸化させないように注意して粉砕作業を行い,アセトン中で水和反応を停止させ保管した。次に,
この試料を105℃の電気炉内に約24 時間入れて絶乾状態にして質量(質量1)を測定した後,電 気炉内で500℃まで熱して約 20分間保ち,温度が下がった質量(質量2)を測定した。得られた 質量の差(質量1-質量2)から結合水率の値を出した。
5)細孔量
細孔量測定用試料は,材齢 91 日に抜いたコアの所定の位置で破砕したコンクリートから得た モルタル分を2.5~5.0mmの粒度に調整した後,アセトン処理及びD-dry処理を行って作製した。
これを水銀圧入式ポロシメータにより試験体の細孔空隙の分布を測定した。
100
C.L.
500
100 100 100
25 25 25 1010 5
50
50
50
50
100
C.L.
500
100 100 100
25 25 25 1010 5
50
50
50
50
図 4.3 含水率センサの設置位置 写真 4.1 含水率センサの設置状況
セラミックセンサ
500
隅角部のセンサ は 一 箇 所 のみ
4.3 実験結果及び考察
4.3.1 フレッシュ性状
表 4.4 に練上がり時及び荷卸し時におけるコンクリート温度,スランプ,空気量,単位容積質 量の測定値をそれぞれ示している。環境条件による日平均気温と日最高気温は,それぞれに対し て,極暑中期では30.0,35.5℃,軽微な暑中期では27.8,29.9℃,標準期は17.5,22.8℃程度で,
第 3 章の測定値と同様の水準であった。極暑中期,軽微な暑中期,標準期いずれも大きなエアロ スはみられなかったが,極暑中期のコンクリートにおいて,練上がりから荷卸しまでの間にスラ ンプロスがみられた。また,それぞれのコンクリートの単位容積質量が違う。この要因としては,
暑中期の実験においては,荷卸温度の目標値を満たすために練混ぜ時に,熱した水をポンプ圧送 し,手動により計量器に注水したためと考えられる。
表 4.4 フレッシュコンクリートの性状
打込み時期 コンクリート温度
(℃)
スランプ
(cm)
空気量
(%)
単位容積質量
(kg/ℓ)
外気温(℃)
日平均気温 日最高気温
極暑中期 2013.08.06 34.0
35.5 13.5
7.0 4.0
4.2 2.39
2.39 30.0 35.5
軽微な
暑中期 2014.08.01 34.0
35.3 18.5
18.0 4.9
5.0 2.49
2.32 27.8 29.9
標準期 2013.11.06 20.0
22.0
19.0 17.0
5.8 5.9
2.29
2.28 17.5 22.8
*上段:練上がり時,下段:荷卸し時
4.3.2 温度性状
図 4.4と図 4.5に,図 4.1に示す位置で測定した温度の変化である。極暑中期においては中心 部の最高温度は 80℃程度まで上昇し,最高温度に達する時間は約 17 時間であった。また,中心 部と表面部の最高温度の温度差は20℃程度となった。軽微な暑中期の場合は,図は省略するが,
中心部の最高温度は約 70℃,表面部は約 60℃となっており,極暑中期と比べて表面部の最高温 度は同程度であるが,中心部の最高温度は10℃程度低いことが確認された。標準期においては,
中心部の最高温度は 60℃程度であり,暑中期に比べて 10~20℃程度低く,最高温度に達する時 間も少し遅くなる。また,特に標準期において顕著なように,いずれの試験体も表面に近づくに 従い外気温の変動に影響を受け,温度上昇の幅も小さくなっている。
図 4.4 温度性状(極暑中期)
図 4.5 温度性状(標準期)
4.3.3 圧縮強度
図 4.6 に極暑中期実験の管理用供試体及び柱試験体から抜き取ったコアの強度発現性状を示す。
極暑中環境における管理用供試体では,「現場気中」の強度が最も低く,長期での増進もほとん ど見られない。91日の強度値は「標水1」と比べて約 17N/mm2低く,いずれの管理用供試体の7 日強度よりも低い値となった。他の管理用供試体では,「標水1」の強度が最も高く,「標水2」 と「現場水中」はほぼ同程度,「現場封緘」それらより若干低い値となった。
極暑中期実験の構造体強度では,いずれの試験体においても管理用供試体のうち,「現場気中」
と同程度または少し高い値であり,材齢に伴う強度増進も小さい。まず,材齢 7 日に脱型した試 験体においては,表面部(①,②,③)よりも内部(④,⑤,⑥)の強度が若干高くなった。暑 中コンクリートの長期強度増進の鈍化について,本実験では温度が高くなることと脱型後の表面 乾燥の二つの要因を挙げられるが,実験結果から表面部は温度の影響よりも,乾燥・水分蒸発が 影響していると考えられ,温度よりも表面乾燥による強度低下が大きいことが確認された。これ は,表面部コアの密度が内部コアに比べて低くなって,強度低下を引き起こしている結果である。
すなわち,表面部は乾燥・水分の蒸発により,水分を失い,水和反応が停滞し,強度が低下し,
材齢にともなう強度増進も鈍化すると推測できる。
反面,表面乾燥及び水分蒸発が起こさないように配慮した無脱型試験体においては,表面部の 強度が内部の強度よりも高くなった。これは,せき板による養生の効果と推測される。また,試 験体の中心部と表面部の最高温度の差が20℃程度であったことから,乾燥がない条件ではコンク リート温度が高温になるほど長期強度に悪影響を及ぼすことが確認された。つまり,暑中環境で 施工されるコンクリートは温度コントロールと養生の両方から品質管理をする必要があると考え られる。脱型有無による強度性状は,91日強度の平均値がそれぞれ31.6 N/mm2と 31.7 N/mm2で 一致している。無脱型試験体においては,表面乾燥により強度低下を抑制して 7 日脱型試験体よ り高い強度を期待したが,本実験結果ではそのような傾向は見られなかった。これは締固め状態 などの他の要因を挙げられるが,試験体ごとにコア内部と表面部の強度性状を考察することには 問題ないと思われる。
図 4.7 に軽暑中環境における強度発現性状を示す。「現場封緘」供試体は標準水中養生を行っ た供試体と同等の強度を示し,軽暑中環境の管理用供試体においては保水養生でもその効果が十 分であることが認められた。「現場気中」供試体の強度は最も低くなっており,91日材齢におい て他の試験体との強度差は最大約15N/mm2で極暑中期の実験結果と同様の傾向を見せた。しかし,
構造体コンクリートの強度において,極暑中期実験では「現場気中」供試体の強度と同程度であ ったが,軽微な暑中期では表面部,内部いずれも「現場気中」供試体より 7N/mm2程度大きくな っている。これは,同じ暑中環境でも比較的気温が低い軽微な暑中期に施工された場合の強度発 現性が大きいことを意味する。コアの位置については,表面部と内部の強度が一致している。こ のことから,軽微な暑中期においては,表面部の乾燥や内部の高温化による強度低下のリスクが 極暑中期よりも小さいことが認められた。つまり,コンクリートの内部温度が約70℃程度まで上