第1章 背景,先行研究,問題の所在
2.2 本研究の計画
3.3.7 考察
3.3.7.2 低学年における児童の観察と記録の可能性
成長・変化していく動植物に比べて児童の感情を揺さぶる事が少ないとも言 える岩石を事前の知識は提供せずに小学校第2学年児童に示し,それらを観 察・記録する授業を実施した。「文節数」や「項目数」(21 種類のチェック項目・
3つの観点)でその記録文の記載量および記載内容を調べたところ,「より思考 が働いた観察」である観点Cの割合が増えるなどの変化から,学習指導要領の
「科学的な見方・考え方の基礎」への期待にこたえる学習が小学校第2学年で 可能であると考える。ただし,その可能性の程度や方法については本実践研究 では明らかになっていないので,今後の課題である。
絵による記録を実施した授業では,児童は標本の外形・輪郭の記録まではス ムーズであったが,そのあとの観察には個人差が大きく,写実画のように表面 模様をそっくりにしようと作品としての絵を描こうと用紙に集中したように見 えた。文字による記録を実施した授業では,記録する言葉が浮かぶたびに記載 する姿がよく見られ,対象物に集中したように見えた。これらは,文字による 記録では,観察の対象物を識別することに多くの神経を向けることができ,詳 細な観察や思考のはたらきが期待されることを示すものであろう。さらにこれ は,言語活動の充実が求められていることと同義であり,高野(1964)の「メ モ効果」,西川・古市(1997)の「メモを積極的に併用することが有効」との報 告と整合する。高野(1965),吉川ほか(1994)が指摘する「観察能力が連続的 に発達」すること,および吉川ほか(1994)が「観察能力は小学校低・中学年 時期に飛躍的に発達」することもあわせ考えれば,低学年において文字(言語)
による観察記録を積極的に取り入れることは,理科への円滑なつながりの視点 から有意義と考えられる。
図 33-1 児童それぞれ観察(粗粒花崗岩):「観察2粗粒」
図 33-2 児童の記録例:「観察2粗粒」
図 33-3 各児童,観点Cの「文節数」の割合
:「文節数」(記載量)の結果
図 33-4 学級全体の「項目数」
:「項目数」(記載内容)の結果
図 33-5 観点A,B,Cの「項目数」の割合
:「項目数」合計を 100 としたときの割合の結果
図 33-6-1,図 33-6-2,図 33-6-3
「文節数」(記載量)と観点A〜C各観点「項目数」(記載内容)
図 33-7 グループⅠ①(言葉が発達した児童,A児・B児)の「項目数」(記載内容)
図 33-8 グループⅠ②(言葉が未発達な児童,C児・D児)の「項目数」(記載内容)
図 33-9 グループⅡ①(観察に興味・関心がある児童,E児・F児)の
「項目数」(記載内容)
図 33-10 グループⅡ②(観察に興味・関心が少ない児童,G児・H児)の
「項目数」(記載内容)
図 33-11 グループⅢ(いわゆる普通の児童,I児・J児)の「項目数」(記載内容)
図 33-12 グループⅠ〜Ⅲに抽出されなかった児童(K児)の「項目数」(記載内容)
表 33-1 記載内容検討用の 21 種類のチェック項目と3つの観点
3.4 小学校第1学年 砂の観察:「すなのかんさつ」
(③小学校低学年の観察記録の検討)