一132一
C. 代名詞表現の記号化
以下は,対称代名詞,自称代名詞,助詞のそれぞれに ついて,記号化の方法を説明する。
記号化にあたっては,場面が異なっても対象が共通し ている(333図(B場面),335図(A場面),336図(O 場面)はいずれも対称代名詞を扱う)地図については,
記号化の方法を統一している。
C−1.対称代名詞(333図・335図・336図)
a.記号の色
まず,全体を大きく分類して,以下のように色を与え
た。
赤…アナタ類 緑…オマエ類 紺…その他類
b.記号の形・塗りつぶし方・補助記号
次にa.での分類を細分化して,以下のように形・塗り つぶし方・補助記号を与えた。
(1)アナタ類(赤色)
アナタ類…正三角形 アアタ類…二等辺三角形 アンタ類…長方形
一134一
語中に有声音を含むもの…ベタ的塗りつぶし 語末にサマを含むもの…1本線付き 語末にサン・ハンを含むもの…2本線付き
(2)オマエ類(緑色)
代名詞部分の母音がaeまたはeeもの…円形 代名詞部分の母音にεを含むもの…曲玉形 代名詞部分の母音にaiを含むもの…涙滴形 オマン・オマ類…涙滴記号(2本線付き)
語末にサマを含むもの…1本線付き 語末にサン・ハンを含むもの…2本線付き
(3)その他説(紺色)
「その他類」(紺色)については,同じグループと認 めた語形には適宜類似の記号を与えた。
C−2.自称代名詞(338図・340図・341図)
a.記号の色
まず,全体を大きく分類して,以下のように色を与え
た。
赤…ワタクシ類 榿…ワシ類 茶…ワレ類 緑…オレ類 紺…その他類
b.記号の形・塗りつぶし方
次にa.での分類を細分化して,以下のように形・塗り つぶし方・補助記号を与えた。
(1)ワタクシ類(赤色)
ワタクシ類…二等辺三角形 ワタシ類…正三角形 アタシ類…正方形
語中に有声音を含むもの…ベタ的塗りつぶし記号
(2)ワシ類(榿色)
形はすべて円形を与えた。
アシ類…円形内部に二重線の塗りつぶし方 ワチ類…円形内部にv印の塗りつぶし方
語末に「ウチ」「トコ」などの場所を意味する形が 付いているもの…1本線付き
(3)ワレ類(茶色)
ワレ…涙滴形 ワイ類…曲玉形 ワ・バ類…紡錘形 ア類…鍵穴形
(4)オレ類(緑色)
オレ・オラ・オリ類…小刀形 オガ…腰掛形
オイヤ・オリャ類…欠け正方形 オドン…傘形
オン…T形 オ類…Y形
(5)その他類(紺色)
「その他側」(紺色)については,同じグループと認 めた語形には適宜類似の記号を与えた。
C−3.助詞(334図・337図・339図・342図)
a.記号の色
はじめに現れる助詞に基づき,以下のように分類し,
色を与える。
赤…ノ・ナ類(n・Nで始まるもの)
緑…ガ類(おもにg・ηで始まるもの)
紺…その他類
b.記号の形
a.での分類ごとに,連続する助詞をもとに,以下のよ うに形を与えた。
(1)ノ・ナ類(赤色)
toおよびその変種(do・cu・soなど)を含むもの …正方形
gaおよびその変種(η・kaなど)を含むもの …正三角形
gaNおよびその変種(uaN・aNなど)を含むもの …二等辺三角形
上記以外のもの…円記号または曲玉形(曲玉形はN から始まるもの)
(2)ガ類(緑色)
toおよびその変種(do・cuなど)を含むもの …正方形
noおよびその変種(nON・naなど)を含むもの …円形
上記以外のもの…正三角形または二等辺三角形(二 等辺三角形はgaNおよびその変種を含むもの)
(3)その他類(紺色)
助詞なし…小刀形
。.補助記号
おおむね以下を目安に補助記号を与えた。
・格助詞(助詞に「傘」「物」などを意味する名詞が後 接するもの)…一本線付き
・準体助詞および格助詞+準体助詞で全体が構成される
もの…補助記号は付けない
10.2.各図の説明
333図 あなたの傘(B場面)
334図 あなたの傘(B場面)
〔語形の採用と統合〕
最初に採用・不採用が問題となった表現について記
す。
次の回答は話者が使用しない,もしくは使用があいま いなので,GAJ全体の方針に基づき採用しなかった。
6436.55[オタクノカサデスカ]<?>
648521[アナタノカサデゴザイマスカ]〈女の言い 方>
6600.34[omaesamanokasadattakaina:∫i]〈女性が使 う。〉
〃 [omaesamanokasakaina:∫i]〈ク>
7341.77[dannasannokasa3agozaima∫eηka]〈女性の 言い方〉
次の回答では,
7407.66[<ナマエ>san omannode:]〈姓を呼ぶ。
omannode:はほとんど使わない。〉
「姓を呼ぶのが普通であるが,omanという人称代名詞を 用いた語形も使うこともある」と解釈し,見出しを
〈omaN>(333図)とくno>(334図)として採用した。
以下の回答は,使用場面が,項目で設定した「この土 地の目上の人」から外れているので採用しなかった。
5623.94[otakusamanokasade∫o:ka]〈よそ者へ>
7503,32[otakunotot∫iηaimasuka]〈otakuのような代 名詞は,外来者に対して使う。〉
次の回答は採用条件に合わない同席者の回答なので採 用しなかった。
5670.47[omenokasagae](,忠地愛子氏の回答)
対称代名詞も助詞も含まれていない次の回答も不採用
とした。
371495 [kasades山ka]
また,5674.06ではく相手の名前を呼びかける。〉のよ うな注記のみが報告されていたが,これも不採用とした。
このような報告は,資料一覧ではくナマエ〉として挙げ ている。
次に333図の見出しを「その他」としたものの内容を
記す。ただし,その例は非常に多いので,おもなものに 関して,カタカナで示し,地点番号は省略する。
シェン江口,センシェーサン,ヒェンヒェ,センセ 一,ダンナサン,ダンナハン,オトッツァン,トッ ッァン,オクサン,カカサン,オジーサン,シチョ ーサン,チョーチョーサン,ソンチョーサン,ソン チョサマ,タイショー,カイチョーサン
このように「その他」として扱った5462.29では代名詞 相当部分がトッツァン・オクサン・カカサンで回答さ れ,〈村の中でうやまわれている男性をトッッァンと呼 ぶ。目上の女性はオクサンまたはカカサンと呼ぶ。目上 の人にアンタ,アナタとは言わない。〉という話者の説 明が注記されていたので注意したい。
〔語形の記号化〕
語形の記号化については,「10.L代名詞表現の概要と 記与化」の「C代名詞表現の記号化」に記した。
335図 あなたの傘(A場面)
〔語形の採用と統合〕
語形の採否について説明する。
次の回答は,話者が使用しないと考えられることによ り,不採用とした。
6548.53[antanokaN]〈女→女〉
〃 [omenokaN]〈女→女〉
次の回答は,採用条件に合わない同席者の回答なので,
不採用とした。
6277.12[aNtanokasane](同席者の回答)
次の回答は,条件に適合する同席者の回答なので,参 考話者の扱いで,採用した。
5662.78[ome:samanokasaka](同席者の回答)
7373.31[アタガカサカイタ](同席者の回答)
次の回答は,「近所の知り合いにむかって言う」とい う質問文の設定場面に適合しないと見られ,不採用にし
た。
5751.61[antanokasadesulka]〈名前も知らない人に〉
以下の回答は対称代名詞部分も助詞部分もないので,
採用しなかった(助詞相当部分は地図化せず)。なお,
2751.10の注記の同席者は採用条件には適合している。
2751.10[kasadagane](同席者の回答)
3714.95 [kasadaQtagae]
次の回答の「隣」や疑問代名詞は,対称代名詞から大
一136一
幅にずれると考えられ,採用しなかった。
5781.23 [tonarinokasaka]
6485.49[コレワダレノカサデスカ]
また,5674.06では,〈相手の名前を呼びかける。〉の ような注記のみが報告されたがこれも不採用とした。こ のような報告は,資料一覧ではくナマエ〉として挙げた。
代名詞相当部分に代名詞が用いられていないもの(例,
[ソノカサワトーサンノカ]における「トーサン」)につ いては,見出しを「その他」とした。以下に「その他」
の内容を記す(報告された内容の概略をカタカナ表記で
記す)。
トーサン 3772.61 カーサン 3772.61
オバサン,オッチャン 5693.05 オッチャン 5694.79
オクサン 6540.79
オバサン 6630.18,7401.80 オジサン 5595.89
オンジーサン 7350.54 オバーサン 6620.70,7400,15
シュー(「おじいさん」と注記) 2151.51 センセー 5731.34
〈ナマエ〉サン 1851.85,3770.33,4782.08,
4792.38, 5575.11, 5685.29, 5720.84, 5731.69,
5762.82, 6496.96, 7416.34 〈ナマエ> 2743.86,5679.69
次に,語形の切り方に関して問題となったケースにつ いて述べる。
次の回答は以下のように分割し(「→」の右の形で
「代名詞相当部分」,「助詞相当部分」の順で示す),「代 名詞相当部分」を335図に掲載した(助詞相当部分は地 図化せず)。
5568.14[アンタンドコカ]
→〈aNtaNdoko>,助詞なし
5684.26[〈ナマエ〉奥pinomonodesuka]
→その他,〈no−mono>
ク [〈ナマエ〉綾pinokasad司asuka]
→その他,〈no−kasa>
6431.76 [antantokonokasadegansukaino:]
→ 〈aNtaNtoko>, 〈no−kasa>
6536.18[antantokonokasakanamo]
→ 〈aNtaNtoko>, 〈no−kasa>
8303.39[konokasawaa:tad3anakadesuka]
→〈aata>,助詞なし
〔語形の記号化〕
語形の記号化については,「1αL代名詞表現の概要と 記号化」の「C.代名詞表現の記号化」に記した。
336図 あなたの傘(0場面)
337図 あなたの傘(O場面)
〔語形の採用と統合〕
最初に不採用とした語形について記す。
話者自身が使用しない表現と判断して不採用としたも のは以下のとおりである。
4609.53[omisankasadaka]〈女性>
5684.26[omelnomonok綾ja]〈老年の女性>
6358.43[omaenokasaka]〈自分は言わないが他の人 達はよく使う。>
6412.87[wa:gakasaka]<他人で言う者もある。>
6491.78[antano]〈上,女>
6559。45[antanokaN]〈女〉
また,次の回答は話者の使用があいまいと見て,採用 しなかった。
7336.71[omaenokasaka]〈オマエノとは言いにくい。〉
「親しい友達にむかって言うとき」という,この項目 の場面設定に反することから不採用とした表現は以下の とおりである。
5631.78[warekasaka]〈wareは子供に用いる。>
6620.15[warenokasaka]〈小中学生くらいまでの子 どもに言う。>
7219.50[o∫igats櫨a]〈自分の妻子に言う。〉
次の回答は,採用条件に合わない同席者の回答なので 不採用とした。
7308.37[oma閃ka=](同席者の回答)
次に,話者自身は使用しない表現であるが,「その地 点における他の話者の回答」として参考話者の扱いで
(ダガーマークをつけて)採用したものについて記す。
6531.61と7373.31の同席者は採用条件に適合している。
5471.49[nosigakasaka]〈古。80歳以上の老人が使 う。>
6531.61[omaenokasaka](同席者の回答)
7373.31[ヌシガカサカ](同席者の回答)
次の回答は,対称代名詞や助詞が用いられていないと