たがって,[sa]まで前半にする。
前半の末尾に「〜デス」「〜マス」「〜ハス」「〜ゴワ ス」など丁寧の助動詞がきているとき,後半の終助詞と の接続上,「ス」の音節が撲音化していることがある。
撲音化は終助詞の影響ではあるが,この場合は擾音まで を前半にいれる。例を挙げる。
《244B》
6563.87 [sabuhan:a:] → 〈sabuhaN一〉 〈naa>
6572.14[samuide㎜a]→〈samuideN一〉〈na>
6552.80[osamugowanna=]→〈osamugowaN一〉〈naa>
《244−A》
6459.96[サムオマンナー]→〈samuomaN一〉〈naa>
6572.14[samuidenna]→〈samuideN一〉〈na>
6563.30[samuihan:a:]→〈samuihaN一〉〈naa>
8332.42[samigowandona:]
→〈samigowaN一〉〈donaa>
次の例は「〜マスル」のルが外陣化したものであろう。
《244−B》
7340.42[giemassunnata:]→〈hiemassuN一〉〈nataa>
上述の8343.28には他にも後半の終助詞と融合してい る回答がある。次のように分けた。
《244−B》 ・《244−A》
8343.28[samigoa2saena:]→〈samigoaNsa一〉〈enaa>
ここで問題となるのは[sa]である。「ゴワンス(ゴア ンス)」を仮想形として,後続の終助詞[na(:)]と融 合したとするか,「ゴワス」を仮想形として終助詞の
[sana(:)]と融合して,末尾が外回化したとみるか。
これによって[sa]を前半・後半のいずれに分割するか 変わってくる。ここでは,〈samigoaNsu>に終助詞が付 いたと考え,前半くsamigoaNsa>,後半くenaa>とする。
最後に,八丈島方言の末尾にくる[wa]についてで あるが,[wa]を含めて終止形という一つの形になって いるとして前半に入れることも考えられるが,本来終助 詞であったことを考慮して後半にいれた。
《244−B》
7659,31[koge蓼ari:tasowano=]
→〈koge(類ariitaso一〉〈wanoo>
《244−A》
〃 [koge:tasowano:]→〈kogeetaso一〉〈wanoo>
《244−0》
〃 [koge=rowano:]→〈kogeero一〉〈wanoo>
D−2.前半の分割
前半の語形は,「前部」「中部」「後部」に分ける。「前 部」「中部」は,さらにそれぞれを「前前部」,「前後部」
および「中前部」,「中後部」に分ける。
「前前部」は形容詞「寒い」,あるいはそれに対応す る語として採用した「ヒヤイ」「サムクナル」「シバレル」
などの形容詞や動詞部分とし,それに続く「コト」「タ」
「デ」や否定表現部分を「前後部」とする。
「中部」は「デス・マス・ゴザイマス」など助動詞を 含む丁寧形式に相当する部分とする。この「中部」には 共通する部分をもつ語形がある。例えば,「ゴザイマス」
と「マス」があるが,両者には「〜マス」が共通してい る。他に,「ゴワス」と「ス」では「〜ス」が共通して いる。このように共通する部分をもつ語形同士を記号化 上で関連づけたいと考えた。そこで,「中部」のうち
「〜デス・〜マス・〜ス・〜モース」など末尾部分を
「中後部」とし,それ以前を「中前部」とした。この分 割を行うと「名詞述語表現a(肯定)」ともかなりの部 分の記号を合わせることができる。
「中部」の後に続く部分があればこれを「後部」とす る。具体的には,これも,「タ」「ヤ・ジャ」「コト」や 否定表現であるものが多いので,「前後部」と「後部」
は形式的には同じ語形があることがある。したがって,
後に述べるように,この二つの部分「前後部」と「後部」
に対する記号化は同じにする。つまり,次のような見出
しは,
〈samuu/なし/gozaN/si/te一〉:「後部」にくte>
〈samuigot/te/なしδasu/なし一〉:「前後部」にくte>
(分割する位置に/を入れてある)
分割される位置が異なるが,同じくte>を持つので,同 じ記号要素(右下向き補助線)をあてる。
分割の具体例を挙げる。ハイフンは後半に続く形があ ることを示す。
・前前部が「サムイ」
前前部 osamUU samui samui samui
sabii sabii
samuga sabui
前後部 なし なし kotode kot de de ttappe 勾anee一
中前部 gozai desu−
gozai なし gowa なし なし なし
中後部 maSU なし maSU
teSU
SU−
jaSU−
si
なし
写しししししししし 後なななななななな
samu
sabi
samukat samui sabui saNbi
nai−
eNta−
ta
de なし なし
・前前部が「サムイ」以外 前前部
samunari sibare simiru hieru−
h勾oona「i piisa pii団aa pi幻aha piisla D−3.
前後部 なし
da−
denee一 なし なし なし なし なし da尊aN一
前半の部分統合
なし なし なし gohe OSU なし
中前部 なし なし なし なし なし jai
rooru droo一 なし
なし なし desu一
なし なし SU
中後部 masi
なし なし なし masi
bii一
なし なし なし
なし なし なし
N−
janai−
te一
部 ししし しげしし 後いななな妊な㏄なな
前半「寒いです」にあたる部分を扱った321・323・
325図において部分統合を行った。部分統合は,その部 分の相違が当該項目で特に注目する必要のない部分であ
り,また原則として他の図を参照することでおよそ推定 することができるなどの条件を満たす場合に,凡例の煩 雑さを避けるために行うものである。GAJの他の図で
「寒い」という形容詞を扱っている図はない。したがっ て部分統合する上記の条件に当てはまらないが,見出し 数削減のため統合を行うことにした。
統合対象は「サムイ」という形容詞を使った表現の,
語頭から数えて第二子音までで,おおむね語幹にあたる。
例外は「サブイ」の[b]の入り渡り鼻音が擬音になっ たとみられる〈saNb〜〉〈saNm〜〉で, b・mまでを 統合する。統合される部分を以下に列挙する。
sam, saam, sab, saab. saNb, saNb, saNm
サムイに接頭辞がついて「オサムイ」となっている場 合も同様に部分統合した。統合される部分は接頭辞から
とした。統合したのは次のものである。
osam, osab
ただし,接頭語の有無は待遇表現に関わる重要な要素で あるので,見出しとしてはくsam>と<osam>は別見出 しとした。
具体的,に統合した見出し例を示す。前半の語形のみ を挙げる。
[sami一]
[saami一]
[sabi一]
[saNbi一]
[samuug・zaNSU]
[SabUUgOZaNSU]
[SaNbUUgOZaNSU]
[OSamUUgOWaSU一]
[osabuugowasu一]
〈(sam, saam, sab, saNb)i一〉
〈(sam, sab, saNb)uugozaNsu>
}〈(・・a皿・・ab)・…w・ 〉
琉球方言で「サムイ」に相当する語であるヒーサン類 についても同様に,語頭から数えて第二子音までに対し 部分統合を行う。第二子音に半母音jがある場合は,そ こまでを統合対象とする。
his, h童is, hwiis, hwii, piis, piiO, pii釘, pi周, piih, p司
[hiisaibiiN一]
[hwiisaibiiN一]
〈(hiis, hwiis, piis, piiθ)aibiiN一〉
[piisaibiiN一]
[piiθaibiiN一]
「B−1意味的な観点からの採否の方針」の項で,採用 することにしたヒヤイ類,カンガイイ類,ヒヨーナル類,
サムクナル類,カンズル・カンジル類,コゴエル類,シ バレル類,シミル類,ヒエル類,イテル類は部分統合し
ない。
このうちサムクナル類は,「サムイ」を含む語形であ る。しかし,語頭から第二子音以後にも語形のバリエー ションがあり,回答数もそれほどは多くないことから,
部分統合しなかった。
以上,統合した部分の形の地理的分布は,地図の上か らは分からない。参照できる他の地図もないので,各図 の説明で,統合前の形と地点を列挙する。
統合された形のうち,おもに対立するのは,第二子音 が[m]か[b]かという点である。後者の[b]を用い る地点数を見ると,B場面→A場面→0場面の順に次の ように多くなっている。
B→A→O
sab一: 78→83→185 saab一: 1 → 2 → 3 saNb一: 7 →13→18 saNb一: 1 → 4 → 2
このように,待遇度が低い場面では[b]を用いる傾向 がある。地域でいえば,[sab一]は非常に地点数が多い が,おおむね,青森県・秋田県の東北北部,および長野
一98
県・富山県・石川県の北陸中部を中心に分布し,[saNb一]
は青森県・秋田県に分布している。接頭語がついたうえ に第二子音が[b]である[osab一]は,14地点と少ない が,近畿地方に分布している。
D−4.後半の分割
後半は「前部」と「後部」に分割する。第二子音以下 があった場合,その部分を「後部」とする。第二子音以 下がない回答は「前部」のみから成る。
前部 ee naoi
NnoO
ja jaa ne no dai kai ga
目ししし 後ななな
naa ssaa
訂㎏担 aaaann
この「前部」「後部」の組み合わせで記号化する。た だし,前部・後部に分割しない回答もある。「F−3,後半 の記号化方針」で後述する⑤ナモシ類・⑥ザ行・⑦チャ 類・⑨アンタ類・⑬バ類・⑭ワ類・⑮コト類・⑯その他 である。⑨のアンタ類は,〈aNtanaa>→〈aNta>〈naa>
のように前後に分けられそうな語形もあるが,〈nonta>
〈naataa>のように分割が難しいものがあるため分割せ ず語形全体に対して記号化する。
E.記号化の基本方針
記号化はB・A・0の全場面共通の方針で行う。記
号自体も方向や補助記号に至るまで,同じ語形には同じ 記号を与え,各地図を直接比較できるようにした。また,「名詞述語表現a(肯定)」とも,終助詞のついた待遇表 現という点で共通する項目であるので,同じ語形である 所は記号を共通化している。特に終助詞部分を扱う後半 322・324・326図「寒いですね」と328・330図「本で すね」とは完全に同じ方針で記号化を行っている。
E−1.321・323・325図「寒いですね」の記号化
方針321・323・325図は前半の地図である。前半は「前 前部・前後部・中前部・中後部・後部」の5つの部分に 分けたが,まず待遇表現の中心的な語形を担う「中前部」
の種類や有無によって次の①〜⑥の系に分類し,これに
【色】を与える。
①ゴザイ・ゴザリ・ゴザン系:榿
②ゴワ・ガン系:赤
③此前手なし・中後部あり系:茶
(中後部にデス・マス・オス・ハス・ヤス・スがくる)
④琉球の中前部なし・中後部あり系琉球:緑 (中後部にビーン・オールンがくる)
⑤中前部・中後部ともなし系:水
⑥その他:紺
⑥の「その他」には,〈nantosamui一〉のような感嘆形,
〈samuhutesamuhute>のような繰り返し表現がはいる。
各系の中は【塗りつぶし】で区別する。まず大まかに は塗りつぶしの多いべた的記号と少ないぬき的記号で,
おおよその区別をしている。
①榿 ゴザイ・ゴザリ:べた的記号 ゴザン:ぬき的記号
②赤 ゴワ:べた的記号 ガン:ぬき的記号
③茶 中後部がデス・マス:ぬき的記号 中後部がオス・ハス・ス:べた的記号
「中後部」は以下のように【形】を与え,更に区別が 必要な時はその記号の【塗りつぶし方】で表現する。
・マス・オマス・オス・ハス:円形・楕円形
・ヤス・ヤンス:曲玉形
・デス:正三角形
・ドス・ダス:二等辺三角形
・モース:リボン形
・シ・ス・ヒ・ル(ン);長方形・平行四辺形・正方形
・オールン:分銅形・爪形
・ヤイビーン・デービル:紡錘形
例えば〈〜gozaimasu>は中前部が「ゴザイ」なので榿 のべた的記号,中後部が「マス」なので円記号になる。
また,もう一つ例を挙げると,①に属する
〈samugozaNsu>と③に属する〈samuisu>は「中前部」
の相違が色(榿と茶)で現れるが,「中後部」はくsu>
で同じなので形は長方形で共通する。
「中前部」「中後部」がない⑤のとき,および,「寒い」
にあたる「前前部」が「サムイ」以外の回答である場合 は「前前部」で【形】を決める。これは「中後部」によ って決まる形より優先される。
a サムイ類:線・細平行四辺形・鍬形(⑤のときのみ)