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一118一

ドキュメント内 方言文法全国地図解説 6 : 付資料一覧 (ページ 125-131)

B−4.地図化しない部分

 質問では「珍しい本ですね」の部分を尋ねているが,

ねらいのところで述べた通り,採用するのは「本ですね」

の部分だけで,「珍しい」はこれに相当する琉球方言の

〈pirumasii>も含めて,地図化の対象にはしない。

 逆に,「珍しい」にあたる語形が始めからなかったり,

「珍しい」以外の前野部分をもっていても,「本ですね」

の部分があれば採用する。

 まず,次に挙げるのは「珍しい」にあたる語形が始め からなかったが,採用した例である。

《261−B》

  6548.53 [hondesune:]

  4698.94[ホンデヤスナム]

《261−A》

  6548.53[hondane:](メズラシイが得られず。)

 「珍しい」以外の前門語には「いい」「変わった」「滅 多にない」「立派な」などがある。例文をいくつか挙げ

る。

《261−B》

  1868.21[smbarasi:i:hondes田ne](メズラシイが得ら    れず。)

  2765.13[m1dagodonehoNdad3a]

  4667.22[omo∫εhondane∫i]

  6711.35[i:hondesulne:](ゆ)〈メズラシーは使わな    い。>

  7324.56 [i:hon3a:antana:]

  7420.76[ripmahondesuna:]〈多>

  7659,31[dokqpimonakkehondeod3ariitasowano:]

《261−A》

  4667.22[omo∫εhondane]

  6711.35[i=hondane:]〈メズラシーは使わない。>

  7324.56 [i=hon3ano:]

  7344.26[メッテーネーホンジャタナー]

  7420.76 [e:hondesuna:]

  7659.31[dokqpimonakkehondeod3arowano:]

 「珍しい」にあたる語の前に,感嘆を表す「なんと」

や,「珍しい」にかかる副詞,指示語「これは」がある 回答もあったが,この部分についても,同様に地図化の 対象とはしなかった。例を挙げておく。

《261−B》

  1801.80[korehaz田ibulnmez田ra∫iihondes田wa]

  6527.20[korewarippanahoNdesunee]

《261−A》

  3702.37[nanbomendz{血ras山hoNdes山ba]

  5463.73[nantomedzura∫i:hondana:]

C.留意すべき注記について

 採否には関わらないが,待遇表現を扱うため,留意し ておきたい注記がある。その語形を使用する場面・状況 に関する補足的注記,および話者による両場面の比較に ついてなど,下図の説明において取り上げるべき注記に ついて,ここでは方針のみ述べておく。

 まずは,併用回答などに多いが,同じ場面の中でも待 遇度の程度や細かな違いについての注がある。話す相手 について,各場面で指定されている相手(「この土地の 目上の人」「近所の知り合いの人」)の設定より詳しい説 明や種類分けが述べられている場合,これを①とする。

またその言語形式のもつ待遇度や印象を直接説明してい る場合,これを②とする。

 他に,同地点で終助詞のみ異なる回答が得られ,その 終助詞の違いについて説明しているものもある。これを

③とする。

 さらに,待遇度が高い場面では共通語形をもってこれ に当てていることがある。共通語であるという注の他に,

新しい言い方であるという説明があることもある。これ らを④とする。また,他の待遇場面との違いを説明して いる注がある。これを⑤とする。

 以上の①〜⑤は注意事項として各図の説明で列挙する ことにする。

 本項目では⑤に当たるものとして,B・A二つの場面 に待遇差がないという注記が目立つ。A場面・B場面の 設定は,話し相手が違い,また待遇度も「ややていねい に」と「ひじょうにていねいに」で違うとはいえ,丁寧 な表現を聞いている点で共通しているために差は小さい と認識されるのであろう。待遇差があるという注は,③ の終助詞の使い分けに見られる。待遇表現を担う助動詞 などの部分より,終助詞の使い分けに話者の意識は向く 傾向があるようである。しかし,実際の回答は,地図を 比べて分かるように,328図と330図,すなわち終助詞 の差異より,助動詞部分を含む327図と329図の方の差 異が目立つ。

D.地図の分割方針

D−1.前半と後半の分割

 ここでの語形の例示は,地図化の対象にしない「珍し い」に相当する部分は示さない。

 地図化は,B・A両場面共通の方針で行う。

 回答語形は前半・後半の二つに分割する。後半を終助 詞部分とし,それ以外を前半とする。前半にはデス・マ ス・ゴザイマスに相当するような待遇に関わる表現形式 が含まれる。そして,前半を327・329図「本ですね」

(以下「前半図」),後半を328・330図「本ですね」(以 下「後半図」)として地図化を行う。前半図ではおもに 助動詞などによる待遇表現の違いを,後半図では終助詞 による待遇表現の違いを見ることができる。後半図に続 く形がある場合,前半図の見出し末尾にハイフンをつけ,

後半(終助詞)が続かない形と区別する。

 分割に迷ったものとしては次のような回答があった。

下線を引いた部分[ta][t∫a]は終助詞とも考えられる が,第3答の[d3a]に相当すると見て,前半に含めた。

断定の「ジャ」「ダ」が「チャ」「タ」という無声音にな る可能性を考えたものである。

《261−A》

  5586.56 [hontana:] → 〈hoNta一〉 〈naa>

   〃   [hont∫ana:] → 〈hoNcja一〉 <naa>

   〃   [hond3ana:] → 〈hoN勾a一〉 〈naa>

 他に分割に迷ったものとして〈Nnaa>などのくN>が

ある。

・〈N>を前半に含めた例

《261−B》

  8352.61 [ho33anne:] → 〈hoN勾aN一〉 <nee>

《261−A》

  8311.63 [hoN3anna] → 〈hoN勾aN一〉 〈na>

  8320,28 [ho33anna] → 〈hoN勾aN一〉 〈na>

・<N>を後半に含めた例

《261−B》

  5565.12[ホンヤンネー]→〈hoNj a一〉〈Nnee>

  5680.23[honda㎜a:]→〈hoNda一〉<Nnaa>

《261−A》

  5565.12[ホンヤンナー]→〈ho珂a一〉〈Nnaa>

  5623.94 [hoNdヒjasunna:] → 〈hoNdejasu一〉 〈Nnaa>

  5670.47[honda㎜a:]→〈hoNda一〉<Nnaa>

  5680.23 [hondanna:] → 〈hoNda一〉 〈Nnaa>

前半に含めた例の地点は九州である。九州地方では くNna>などの終助詞の記述が先行研究に見あたらず,

このようにくzjaN>の一部と考えて〈N>を前半につけ た。後半に含めた例の地点は長野県と石川県である。長 野県・石川県は〈Nnaa>のように〈N>を後半に入れた。

『長野県史方言編』には「一ンネ」という終助詞の記述 がある(570ページ)ことを参考にした。

 次の鹿児島県枕崎市の回答は,この地域の先行研究を 参照した結果,[dara]までを断定辞と判断して前半に

し,[n6:コのみを終助詞として後半にした。

《261−A》

  8361.42 [hondarano:] → 〈hoNdara一〉 〈noo>

 八丈島方言の末尾にくる[wa]は,[wa]を含めて終 止形という一つの形になっているとして前半に入れるこ とも考えられるが,本来終助詞であったことを考慮して 後半図にいれた。

《261−B》

  7659,31[hondeod3ariitasowano=]

      →〈hoNdeo勾ariitaso一〉〈wanoo>

《261−A》

  7659,31[hondeod3arowanα]

      →〈hoNdeo勾aro一〉〈wanoo>

 また,前半末尾が後半の終助詞と融合している回答が ある。仮想形を想定して分割した。例えば,

《261−A》

  5527.81[ホンデッソ]→〈hoNdes一〉〈so>

これは,融合前の仮想形を[desu−so]と考え,[so]よ り前を前半に,[so]は後半に分割することにする。

 鹿児島県にみられる[〜gowansana(:)]は以下のよ うに分割した。

《261−B》

  831295[hoOgowansana:]→〈hoNgowaNsa.〉〈naa>

  8332.42[hongowansana:]→〈hoNgowaNsa一〉〈naa>

  8361.42[honηowa2 sana]→〈hoNηowaNsa一〉<na>

 問題となるのは「ゴワ(ア)ンス」を仮想形として,

後続の終助詞[na(:)]と融合したとするか,「ゴワス」

を仮想形として終助詞の[sana(=)]と融合して,末尾 が焼野化したとみるかである。これによって[sa]を前 半・後半のいずれに分割するか変わってくる。後藤和彦

(1994)『鹿児島方言の語法研究』には丁寧な断定の助動 詞として「ゴアス」をあげ,変化形に「goaNsaa」を示 す。この形はそれ自体に敬意を含み,敬意感をもつ終助 詞とともに用いられるという。ここでは,この記述をも とに,〈〜gowaNsa一〉までを前半に,それ以後を後半に することで統一する。

 ただ,8332.42には次の併用回答があり,これは,

《261−B》

120一

  8332.42[hongowandona:]

       →〈hoNgowaN一〉<donaa>

のように分割した。これは「ゴワス」の末尾が後に続く

「ド」のために擾音化したと考えられる。

 融合している回答例としては他に次のものがある。

《261−B》

  6591.47 [hondekedo] → 〈hoNde一〉 〈kedo>

これは[desukedo]が融合した形で[kedo]は逆接の接 続詞から終助詞化したものと見て,後半に分割した。

 また,[〜daNna(=)]は[dasuna(:)]の融合と考え

る。

《261−A》

  6563.30 [hondan=a=] 〈hoNdaN一〉 〈naa>

  6572.14 [hondanna] → 〈hoNdaN一〉 〈na>

  6573.32 [hondan:a:] → 〈hoNdaN一〉 <naa>

  6583.30 [hondan=a:] 〈hoNdaN一〉 〈naa>

 次の例は[〜desunaa]の融合として扱った。

《261−A》

  6542.64,[hondenna=] → 〈hoNdeN一〉 〈naa>

  6552.80 [hondenna=] 〈hoNdeN一〉 〈naa>

 前半・後半の問に促音が入る回答は,前後半の分割点 を促音の後においた。

《261−A》

  8248.18 [ho可addo] → 〈hoNjad一〉 〈do>

  8351.75 [hoi3addona:] → 〈hoNZjad一〉 〈donaa>

 「〜コト」「〜モノ」の類がつくときの分割は,「形容 詞表現」と同様にする。「コト」「モノ」が末尾にきて,

その後何も続かないときはこれを終助詞相当とみなして 後半に入れる。「コト」「モノ」の後にさらに何か形式が 続く場合は前半に含める。例を挙げる。

・後半に入れる例

《261−B》

  3716。48 [hoNdesthkoto] → 〈hoNdesu一〉 〈koto>

  3735.77 [gohondesl血奪。工。] → 〈gohoNdesu一〉 〈godo>

  4701ユ3 [hondes血lgodo] → 〈hoNdesu一〉 〈godo>

《261−A》

  3772.61 [hondagoto] → 〈hoNda一〉 〈goto>

  4701.13 [hoNdagodo] → 〈hoNda一〉 〈godo>

・前半に入れる例

《261−B》

  3766.24 [hoNdeth些odone] → 〈hoNdesugodo一〉 〈ne>

  3780.65[hondamondesulne]

       →〈hoNdamoNdesu一〉〈ne>

  4659.79 [hondagodona∬1] → 〈hoNdagodo一〉 <nassi>

  4669.44 [hondagodona:] → 〈hoNdagodo一〉 〈naa>

《261−A》

  3780.65[hondamondesulne]

       →〈hoNdamoNdesu一〉〈ne>

  4609.27[hondamondano]→〈hoNdamoNda一〉〈no>

  4669.44 [hondagodona:] → 〈hoNdagodo一〉 〈naa>

  4706.43 [hondagodoa:] → 〈hoNdagodo一〉 〈aa>

D−2.前半の分割

 前半の語形は,「前部」「中部」「後部」に分ける。「前 部」「中部」はさらにそれぞれ「前前部」「前後部」・

「中前部」「中後部」に分ける。「前前部」は「本」に相 当する体言部分,「中部」はそれ以降の「デス・デゴザ イマス」などの丁寧表現に相当する部分とする。過去を 表す「タ」や否定を表す「ナイ」は,それが「中部」よ り前にあればそれを「前後部」,「中部」より後にあれば

「後部」とする。記号化は,「前後部」も「後部」も同じ 方法で行う。次の回答例は,この「前後部」と「後部」

が共にある例である。分割する位置に「/」を入れてあ

る。

《261−B》

  6513.24 〈hoN{jatta/desyta一〉

 「中部」は「デス・マス・ゴザイマス」など丁寧形式 に相当する部分とする。この「中部」には共通する部分 をもつ語形がある。例えば「ゴザイマス」と「マス」が あり,両者には「〜マス」が共通している。「ゴワス」

と「ゴザンス」と「ガス.」では「〜ス」が共通している。

このように共通する部分をもつ語形同士を記号化上で関 連づけたいと考えた。そこで,「中部」のうち「〜デ ス・〜マス・〜ス・〜モース」など共通する末尾部分を

「中後部」とし,それ以前を「中前部」とした。この分 割を行うと「形容詞表現」ともかなりの部分の記号を合 わせることができる。異なるのは「前前部」が名詞「本」

か形容詞「寒い」であるかという点で,本項目と「形容 詞表現」の「中前部」「中後部」,および「前後部」「後 部」の分割の方法は共通し,また現れる形式も同じもの が多い。

 また,「B−1.「本」に相当する語」で述べたように,

〈ho>の後に〈N>と有声破裂音が続いて〈hoNd〜〉な どになる場合,〈N>の前までを「前部」とする。B場面 で8見出し14回答,A場面は4見出し13回答ある。

ドキュメント内 方言文法全国地図解説 6 : 付資料一覧 (ページ 125-131)