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今後の課題

ドキュメント内 都市貧困層の社会運動への参加 (ページ 180-200)

第 6 章 都市貧困高齢者の社会運動への参加

4. 今後の課題

本論の最後に今後の研究課題として、以下の諸点を挙げる。ひとつは、ある特定の国や 地域を外国人など外部の者が研究する場合、不利な点と有利な点があるが、有利な点を活

107 O Estado de São Paulo, 29 de setembro, 2013.

かした研究を行うことである。筆者はブラジルという国を研究する日本人であり、地理的 な遠さや言語の違い、またそれらとともに、日本国内に類似した関心を持つブラジル研究 者が少ないこともあり、ブラジル国内の研究者が実施しているような大規模な調査を現地 で行うことができないという不利な点がある。

しかし、外部者であるということの利点もある。例えば、本論の結論で指摘した社会運 動団体内部の制度化であるポイント制は、ごく最近、現地のマスコミで報道されるように なったばかりであり108、現地ではほとんど研究の対象とされていない。社会運動のポイン ト制を現地の研究者も最近になり把握するようになったが、政治的な要因などから研究の 対象とすることや、それを「問題」として扱った研究成果を公に発表することには敏感に ならざるを得ない109。一方、その国や社会の正規の成員ではない研究者は、外部者である が故に、現地の研究者が危惧または看過してしまうような事象を「問題」として研究する ことに、現地の研究者に比べ障害となることが少ない。したがって、今後も自国ではない ブラジルなどの国や地域の研究を続けていく上で、この外部者である利点を活かした視点 やアプローチにより、研究を行っていきたいと考えている。

また、本論のようなミクロなレベルの研究に加え、メゾおよびマクロなレベルの研究へ と領域を広げて行くことも今後の課題である。メゾなレベルとしては、本論で社会構造の 事例として取り上げた参加型行政など、社会の中の構造や制度を対象とした研究が挙げら れる。またマクロなレベルとしては、本論の研究対象国であるブラジルなど、ひとつの国 家や社会のシステムを対象とした研究が想定し得る。本論のようなミクロなレベルの研究 を更に深める一方、メゾなレベルへも研究の領域を広げ、それらの研究を蓄積や統合して 高めることで、ひとつの社会システムが変動する要因、様態、方向性などを追究するマク ロなレベルの研究が可能になろう。このような研究領域の拡張を念頭に入れ、主にブラジ ルを対象国として、社会学的分析視座に基づき、社会の諸問題を究明する研究に今後も取 り組んでいこうと考えている。

さらに、ブラジルを対象国として研究を継続していくことから、ブラジルの文化や地域 性に着目した地域研究的なアプローチおよび視座を取り入れる必要性を指摘できよう。ま た、第6章で指摘した個別住民への民族誌的調査なども、具体的な今後の研究課題として 残されている。

108 2013年9月29日の記事などでO Estado de São Paulo紙は、政府の住宅政策の対象者が、

抗議デモや建物占拠をした社会運動のリーダーや功労者であるとともに、労働者党(PT)の選 挙キャンペーンを率先して展開する党員であると報じ、特定の政党と結びついた社会運動団体 が住宅政策の受益者になっている点や、その団体が政策実施の際に実質的に不動産業の役割を 果たし特定政党を利する仕組みになっている点を問題として指摘している。

109 2011年2月17日に実施したカンピナス大学(Unicamp)Luciana Tatagiba教授へのイン タビュー。Tatagiba教授は、社会運動団体内部のポイント制の存在やその機能を把握している が、その点を研究としてブラジル国内で発表することは、社会運動と政策実施当局である政府 や特定政党とのつながりを暴露することになるため、政治的な意図があると捉えられることに 加え、その影響などを考慮した場合、取り上げることが困難であると述べている。

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