• 検索結果がありません。

ムチラン参加者の具体像

ドキュメント内 都市貧困層の社会運動への参加 (ページ 118-125)

第 5 章 社会運動への参加に関するフィールド調査

5.2. ムチラン参加者の具体像

本節ではアンケート調査の中で、住民組織の内部と外部的な関係性に焦点を当て、人間 関係と社会運動に関する調査結果をまとめる。そして前節の結果も踏まえながら、ムチラ ン住民組織に参加する都市貧困層の具体的なプロフィールを明らかにする。

5.2.1. 人間関係に関するアンケート調査の結果

人間関係に関する質問事項の中で、回答者の所属住民組織73を含む、ジャルジン・セレ スチというコミュニティ全体に対する満足度に関して(表5.2.1)、セレスチⅡの94.1%、

セレスチⅣの91.2%が満足と回答している。その理由は、両住民組織ともに「コミュニテ ィ建設のために皆で協働」したことが最も高く、次が「皆が知り合い」であった。なお、

先述した市政府との関係悪化から、不満の理由に挙げられると想定された「土地正規化な どの計画の遅れ」は、両住民組織とも一回答のみだった。

「何かしらの助けが必要な時に誰を頼るか」という質問に対しては(図5.2.1.A)、「所属 住民組織で最も親しい人」、「所属住民組織のリーダー」、「全ジャルジン・セレスチ74で最 も親しい人」、「出身地区の住宅運動75の人」と回答した割合が、2 つの住民組織でほぼ同 じだった。ただし「全ジャルジン・セレスチのリーダー」と回答した割合は、セレスチⅡ

が6.6%だったのに対し、セレスチⅣは0.0%であった。つまり、「社会運動に携わる人」を

意味するこれらの項目の合計が、両住民組織とも半数以上に達するが、セレスチⅡ(66.3%)

の方がセレスチⅣ(57.1%)より高くなっている。一方、家族・親戚やジャルジン・セレ スチ以外の隣人など、「社会運動に携わらない人」を意味する「その他」の割合は、セレス チⅡ(33.7%)よりセレスチⅣ(42.9%)が高かった。

これらの結果から2つの住民組織とも、自身が居住する地区のジャルジン・セレスチと いうコミュニティに対し非常に満足しているとともに、助けが必要な時にコミュニティま たは社会運動の関係者を半数以上の人が頼りにしていることがわかる。このことは、ムチ ランを通して良好な人間関係が構築されていることを意味している。また、セレスチⅣに 比べムチランへのコミットのより強いセレスチⅡが、プロジェクトおよび地区レベルの関 係者を頼る割合が高いことは、社会運動への参加を通して信頼できる人間関係をより構築 できていると理解できる。

73 セレスチⅡまたはセレスチⅣ。

74 セレスチⅡとセレスチⅣが所属する上位組織。

75 本論における「地区レベルの社会(住宅)運動団体」で、ジャルジン・セレスチと同じサン パウロ市南東部にあり、回答者が以前住んでいた地区。

表5.2.1 住民組織に対する満足状況 (単位:世帯)

セレスチⅡ セレスチⅣ

世帯 割合 世帯 割合

満足 144 94.1% 62 91.2%

理由

(2 つ まで)

皆が知り合い 73 27

様々な地域活動がある 4 2

コミュニティ内は安全 20 9

コミュニティ建設のために皆で協働 89 38

その他 3 2

不満 9 5.9% 6 8.8%

理由

(2 つ まで)

近所付合いが難しい 3 1

コミュニティの活動や義務が過多 0 0

ファヴェーラに囲まれている 4 2

土地正規化などの計画の遅れ 1 1

その他 2 1

不明 10 4

(出所)筆者作成

(注)割合は不明件数を含まず。

図5.2.1 助けが必要な時に頼る人

(注)回答2つまで可。データラベルのはじめの数字(カンマの前)は回答数で、次の%表記 が全体に対するその割合。「JC」はジャルジン・セレスチ。

5.2.2. 社会運動に関するアンケート調査の結果

社会運動については、主に「参加」に関連する質問を行った。本項では、家族の中で社 会運動に参加する人の有無、参加しない場合の理由および参加する場合の動機、頻度、社 会運動の形態、活動の種類に関する調査結果を以下にまとめる。

社会運動への参加の有無について(図 5.2.2.A)、参加する人の有無自体をまず質問し、

次に、家族の中で参加者が複数(2 人目)いるか否かを訊ねた。その結果、ムチランを通 じた社会運動への関わりが深いセレスチⅡでは77.0%が参加すると答えたのに対し、個別 の自助建設を導入したセレスチⅣでは52.9%にとどまった。ただし、本論で説明したよう にムチランで住居を獲得するためには、社会運動に積極的に参加し、無償で協働の住宅建 設作業を完遂しなければならないが、参加度の高いセレスチⅡでさえ、住宅獲得という目 的の達成後は社会運動への参加度が低下している。

2 人目の参加者については、セレスチⅡが17.1%、セレスチⅣが11.8%で、セレスチⅡ の方が若干高かったものの、2つの住民組織とも参加者が1名である割合は8割以上だっ た。このことから、家族の中ではほぼ特定の誰か1人が社会運動に参加する傾向が強いと いえる。

図5.2.2.A 家族の中で社会運動に参加する人

(注)セレスチⅡとセレスチⅣは家族の中で社会運動に参加する人がいるか否か、セレスチⅡ (2人目)とセレスチⅣ(2人目)は家族の中で2人目の参加者がいるか否かに関する回答。

社会運動に参加しない理由は(図 5.2.2.B)、両住民組織とも多忙なことが一番だが(セ レスチⅡ:60.0%、セレスチⅣ:42.4%)、セレスチⅡの方がその割合が高かった。必要性 がないとの回答の割合は、セレスチⅡ(17.1%)よりセレスチⅣ(27.3%)が低く、関心 がないとの回答は両住民組織とも低かった(セレスチⅡ:2.9%、セレスチⅣ:6.1%)。

このことは、セレスチⅡはセレスチⅣより貧困であるため、社会運動の必要性に対する 認識は低くないが、生計を支える経済や日常の活動に従事せざるを得ない状況にあること を表していると推測できよう。

図5.2.2.B 社会運動に参加しない理由

(注)回答2つまで可。データラベルのはじめの数字(カンマの前)は回答数で、次の%表記 が全体に対するその割合。

社会運動に参加する動機については(図 5.2.2.C)、2 つの住民組織とも「関心分野の情 報入手」が過半数を超えて一番だった(セレスチⅡ:52.9%、セレスチⅣ:62.3%)。知り 合いや友達を増やすことが、セレスチⅡ(15.2%)で2番目の動機だったのに対し、セレ

スチⅣで3.8%と少数派に止まった。ただし、セレスチⅣ(11.3%)の2番目の動機だった

「関心分野に関する知識、技術、経験の習得」は、セレスチⅡ(12.6%)でも高い割合を 占めた。

これらのことは、社会運動が果たす役割や参加者が社会運動に期待する機能を表してい るといえる。先述したように、ジャルジン・セレスチでは市政府との間で土地の権利の正 規化やプロジェクト資金の返済に問題が生じていることもあり、それらの解決や改善など

に社会運動が重要な役割を果たしている状況が、本調査結果に現れていよう。また、人間 関係を重視するか否かに関する両組織の回答の差異は、セレスチⅡがムチランを通じて社 会運動をより多く経験してきたことに起因するものと考えられよう。

図5.2.2.C 社会運動に参加する動機

(注)回答2つまで可。データラベルのはじめの数字(カンマの前)は回答数で、次の%表記 が全体に対するその割合。

社会運動に参加する頻度に関しては、両住民組織とも「月に1回」(セレスチⅡ:75.3%、

セレスチⅣ:72.3%)が最も多く、次が「月に 2・3 回」(セレスチⅡ:23.4%、セレスチ

Ⅳ:25.2%)、「より頻繁」(セレスチⅡ:1.3%、セレスチⅣ:2.1%)の順であった。参加 する社会運動団体の形態については、両組織とも「ジャルジン・セレスチ地区の住民組織」

(セレスチⅡ:79.3%、セレスチⅣ:71.7%)が最も高かった。2番目と3番目は順番が異 なったが、「出身地区の住宅運動」(セレスチⅡ:10.4%、セレスチⅣ:8.7%)と「サンパ ウロ南東部・州・全国レベルの社会運動」(セレスチⅡ:7.9%、セレスチⅣ:13.0%)で、

大きな差異はなかった。ただし、「出身地区の住宅運動」でセレスチⅡが高い理由として、

地域レベルの住宅運動をベースとするムチランの政策的特色が考えられる。

参加する社会運動の活動の種類に関しては(図 5.2.2.D)、2 つの住民組織とも「会議、

ミーティング」の割合が6割強と最も高かった。ただし、「デモ行進、土地・建物の占拠」

と「文化・スポーツ活動、フェスタ(イベント・お祭り)」への参加が、セレスチⅡでそれ

ぞれ27.3%と4.5%と相対的に多かったのに対し、セレスチⅣでは19.0%と1.7%に止まっ た。その一方、「その他(住民組織以外のものも含む)」の割合はセレスチⅡ(2.5%)より セレスチⅣ(10.3%)の方が高かった。

これらのことから考えられることは、住民組織メンバーの多くが、自身の抱える問題の 解決や改善という実利を主眼にして、それを実現してくれると考える社会運動の、それに 結びつくような活動に、可能な範囲内で参加している、という点である。また、参加する 社会運動と活動に関する両住民組織の違いから、ムチランにより深く関わることが、ひと つは住民個人に必ずしも直結しない問題をめぐる活動、もうひとつは自身の出身や所属の コミュニティをめぐる活動について、その関心を増大させる誘因となり得る点も指摘でき よう。

図5.2.2.D 参加する社会運動の活動の種類

(注)回答2つまで可。データラベルのはじめの数字(カンマの前)は回答数で、次の%表記 が全体に対するその割合。

5.2.3. ムチランに参加した都市貧困層のプロフィール

本アンケート調査の結果から、ムチランで住居を獲得した都市貧困層のプロフィールに ついて、次の 5 点を指摘できる。それらは、ブラジル全体との比較でより貧困である点、

主にサンパウロ大都市圏との比較から都市の貧困層であるという点、多くの人がムチラン により満足度の高い居住環境を獲得した点、実利的な観点から社会運動に関わっている点、

ドキュメント内 都市貧困層の社会運動への参加 (ページ 118-125)