3.3 パーソナルキャスト・サポートサービス
3.3.8 サービス評価
3.3.8.1 事業性
(1)新規性・訴求ポイント
このパーソナルキャスト(以下 P-Cast)サポートサービス事業基盤の高信頼性を兼ね備えた、安定的運営・
透明度のある運営を実現出来ることは、ブロードバンド社会において始めて本格的個人事業におけるドットコ ムビジネスの到来を意味するもの、個人レベルの娯楽があらゆる意味でデバイド無き形で定着するケースと 期待している。
特に e-Japan 計画でも言及されているようにナローバンドのインターネットの様に都市部・高所得者・若年層・
男性偏重気味の社会から地域・性別・年齢を問わず万人へのサービス普及を目指すには、誰しもが最も身近 に存在するコンテンツを容易に安価に享受(発信・受信・加工を問わず)出来るサービスの普及が非常に大き な意味を持つことになる。
この点で家族、コミュニティ、サークル、個人事業といった生活空間に根付く本サービスをブロードバンド環境 下で快適に提供しようとする試みは大きな価値を持つものと期待している。
ここでサービス訴求ポイントとして出てくるキーワードとしていくつかを羅列してみたい。
① 快適性
② 容易性
③ 安心感
④ 認知性
⑤ サービス価格
せっかくの万人向けのサービスを議論するのであるから、ここでは余り形式的な難しい語彙を避け、誰もが取 り付きやすい語彙でそのキーポイントを議論したい。
① 快適性:これはつまりそのコンテンツを消費する側にとっての感受性の問題であるが、一方ここがまた大 きなサービス普及を検討する上でのキーモチベーションとなっている。 例えばBSデジタル放送用の通信 機器を購入する動機として当初はそのチャンネル内容の魅力が動機の1番と予測されていたが、実際に市 場では家電リサイクル法の施行という後押しも手伝い、番組・コンテンツの充実よりも先行気味に精細画像対 応の画像処理能力がその選定基準として高価なTV受像装置が売上を伸ばしたことがあげられる。
即ち、14インチのTVが21インチになり、29インチになり、それがワイド、フラット、高精細となり、つまりはコン
テンツを消費することが中心の嗜好から、コンテンツ消費の快適性への変化が市場に見受けられているので はないだろうか。
通信インフラを介した映像配信という点に立てば、今までにも ISDN インフラを利用したナローバンドでの映像 配信、また最近では ADSL を利用した高速インターネットでの画像配信も登場しているが、依然コンテンツの 配信はせいぜい数百Kレベルの品質であり、このレベルではTV受像機器の快適性を前提にした発展とは明 らかな差がでてしまうことになる。
指標としてやはり高精細画像を15インチ程度のスクリーンでフル画像で見るレベルのコンテンツを前提にし て行かないと、やはり快適性をきっかけとした普及という点で満足な結果を得られないのではと推測する。PC の画面で映画を 1 本通しで見るという生活が今の状況で快適と言えるであろうか? とてもそうとは思えない が、STB を介して TV 画面でそれが見られれば、または液晶プロジェクタなどで見られればそれは明らかに快 適な娯楽と言えよう。
これを指標化すれば最低でも6Mbps 以上の速度を各家庭や日本全国のアップリンクの場に常時提供出来る インフラ、そのコンテンツ(無論個人的な視点では無く、ピーク視聴時でも十分に万人が接続出来る環境)を 十分に処理できる流通ネットワーク、端末機器(ゲートウェイ含め)、自宅内または視聴場所でのネットワークと いうものがその要求条件として取り上げられることになる。 これらの快適性を備えたサービス基盤の達成に、
後述の「利用者にとってごくあたりまえに普及可能なコスト」でP−Cast サービスが提供されることで、あらゆる 層の国民誰もが TV 並みに享受出来る国民的快適新メディアサービスの誕生を生むものと予想する。
② 容易性:これは万人へのサービスという点で絶対的な条件になると考える。 セミプロ的な発信者はともか く、家族の映像を田舎の自宅で視聴しようという祖父母、そこまでは行かなくとも、デスクトップに設定されたP Cのアイコンを使いブラウザでインターネットを楽しむ程度の知識しか無い一般的視聴者やデジタルビデオカ メラユーザにとって容易性とは本サービスの国民的普及への最大ハードルと見ている。
特に映像を見るという行動が、TVのスイッチを入れチャンネルを合わせる、ビデオのスイッチを入れ再生処 理を行うといった程度の利用で実現されている現代の常識において、PCを利用し最新のブラウザを設定し、
指定URL を入力し視聴ソフトをダウンロードして ID、パスワードを入力してやっと視聴の形が整うといった具合 ではとても万人向けサービスとは言えなくなるのではないだろうか? やはり例で示したような電源スイッチ さえ入れれば自動的にブラウザが立ち上がり、あたかもチャンネルを操作するような勘弁なリモコン操作で URL が選択可能で、全ての必要な視聴ソフトは面倒な確認手順の必要無くコンテンツと一緒にダウンロードさ れる仕組み作りという点は避けて通れないのではなかろうか?
この点で言えば、まだ本サービスは十分にその容易性を示しているとは言えず、これから実際のサービスを 検討するにあたっての課題として意識しておくことが必要である。
勿論、視聴の容易性だけでなく、コンテンツ発信・クリエイトが専門業者向けで無いというサービス特徴を考え れば、その容易性が重要であることは言うまでも無く、高価なクリエイト費用を支払い専門の SI 業者に依頼す る必要無く、デジタルビデオカメラを購入すると PC 上で編集作業が出来るような GUI ソフトが組み込まれてい るなどの簡便さが必要である。
抽象的な指標と言われるかもしれないが、単身赴任のお父さんが居る家庭で、子供とお母さんが学校の行事 をビデオで撮影し編集したものを、あたかもビデオ端子を TV につなぐような操作の容易さで P-Cast サービス を利用してお父さんや親類に配信する位の容易性が実現出来れば本サービスの裾野は大きなものになり、
超高速ブロードバンドサービスの普及に大きく近づくのではないだろうか。 このような容易性が実現されて こそ、本当の意味での新規性を備えたサービスという領域に踏み込んで行くと理解する。
③ 安心感:先に簡便な言葉でということでこのような余りにも安易な表現をしてしまったが、安心感という言葉 の中には個人のプライバシ保護、モラル維持、著作権保護、肖像権保護、決済等に関するセキュリティ維持、
個人情報保護など多彩な内容が盛り込まれており、インターネット社会の問題点を包括した項目を議論する ことになる。
まず映像発信者の立場に立てば、家族(特に子供など)映像のように、特定受信者をターゲットにした映像配 信の場合、そのプライバシが確実に守られるという安心感が根付かない限り積極的利用は極めて困難なもの となるであろう。 その方法と保証制度が具体化されることが本サービス普及の鍵になる。
またこの先、コストなどでの議論になるが万人が容易に手軽に利用できるコストでサービスを提供する事を目 指す反動として、モラルの無い利用が社会的問題に発展する可能性も秘めている。 個人の抽象的な映像、
わいせつ画像などを流し双方向チャット機能などのオプションを利用することで風俗的な利用に供されること も意識しなくてはならない。 このような形を避ける上でも厳重な発信者アカウント管理、映像の審査、映像カ テゴリによる閲覧制限などを基準として作り上げることが重要になる。 アカウント管理や映像カテゴリによる視 聴者制限などは P-Cast 事業者で可能になるが、映像の審査という点を事業者が踏み込んで査察するか、特 定機関が代行するかなどについて十分な議論が必要である。 写真の現像という世界(現像業者のモラルに 依存)に多少類似している所があるが、映像の場合発信者の顔と P-Cast 事業者の顔が接しない分問題が拡 大する可能性が高くなることが予測される。
利用シーンでも紹介している通り、スクープ映像などの売買を目的としての利用の場合には、その肖像権、著 作権といった権利保護が重要な要素となることが考えられる。
ビデオテープを持ち込みその場で買い取り交渉をする場合と違い、配信した映像がそのまま違法コピーまた は繰り返し視聴される可能性もあり、権利保護が実現されるための手段が明確に示されると言う点と、コンテン ツの扱い履歴などを記録出来るサービスなども考えなければならない。
決済システムの安心感もまたサービス普及の大きな鍵となる。 当然の事ながら今のインターネットショッピン グで問題となっているようなクレジットカードの不正利用などが発生するようであってはアカウント登録する利 用者が足踏みすることとなる。 CATV や BS、CS 有料放送のように、個人アカウントを銀行口座と連結決済し、
その利用明細を郵送するなどの工夫、ワンストップアカウントのシステムなど毎回利用する度にクレジットカー ド番号を必要としないシステムや、個人アカウントの厳重な管理や認証を明確に示したサービスになることを 期待すると共に、ポータル事業者の役割がこの部分においてクローズアップされることになる。
もう1点、安心感の大きな目安として視聴端末の指定という大きな課題がある。 つまり、配信するコンテンツを 視聴するにはどのような端末が必要かという指標の明確化である。 BS 放送、CS 放送、CATV などはその視 聴方法や必要機器が明確であるが、PC のような受像端末を利用する場合、CPU、メモリ、視聴ソフトなどの 様々な要因が複雑に絡み合って視聴の可否が決まるため、それらをどのようにカテゴライズするかで自分自 身の端末で視聴が可能なコンテンツか否かを見極められることが、視聴者がコスト負担する場合、発信者がコ スト負担する場合の双方で重要な利用決定のための安心感として議論されることになる。 このような標準化 が可能になれば、今までグレーであったソフト、コンテンツ利用可否が明確化され、P-Cast サービスに限らず ネットソフトサービス普及にとって1つの大きな壁を崩すことになる。
④ 認知性:認知性とはサービスの存在を広く万人に知らしめることであり、当然そのためにはマーケティング コストという物が発生する。 P-Cast サービスを事前に知っており、デジタルビデオカメラを購入しようという利 用者だけでなく、利用シーンで記述したような形で本サービスを利用すれば何が出来るのかを広く知らしめ て、本サービスを国民レベルのサービスにするという大きな課題がある。 特にこのサービスがTVなどのマス メディアサービスで無く、パーソナル向けの嗜好中心でのコミュニティ向けサービスであることを考えると、そ のためには雑誌、新聞、TV、ラジオ、広告看板、電車の中吊り、インターネット広告、そして販売店での人海 戦術や口コミ、懸賞によるマーケティングなど様々なマーケティングによりどの客層にどのような利用の定着を 実現するかがポイントとなる。
このため、利用シーンを特徴別に分けて利用者層をあるグループに分け、その利用者層に合わせたマーケ ティングキャンペーンのコストを算出することが必要になろう。
当然、このキャンペーンには P-Cast 事業者、デジタルビデオカメラ製造業などの連携が必要であり、家電メ ーカ(撮影機器、視聴機器)、インフラ事業者、コンテンツ流通事業者などの業界横断でのサービス普及への マーケティング計画を実現したいものである。