• 検索結果がありません。

2. 豪州の石炭賦存状況、石炭埋蔵量、炭質他

2.1 石炭賦存状況

2.1.2 主要石炭鉱床の地質時代とその特徴

QLD 州では、一般炭の輸出量を多くするための計画があり、その早期の操業が期待されて いる。Wiggins 島の石炭埠頭となるGladstone港の建設は、この計画により石炭の輸出量を 増加させることを可能にすると考えられている。そのため、一般炭の生産量が 2020 年まで に 50百万tに達するよう増強する計画である。

また、NSW州ではGunnedah Basinの輸出石炭量が、2010年の5.2百万 tから2020年 には 23百万tに増加すると期待している。

図2.1.2-1 地質概略図

(出典:Geological Provinces Database(AGPD))

図2.1.2-2 豪州の時代別主要造山帯

(出典:Rutland,R.W.R et al.,1990)

(1) NSW州の石炭

Sydney Basin は、かつて豪州炭の主要生産地であった。採掘・出荷が容易な露頭炭層が

豊富で、早くから開発が進められた(図 2.1.1-2)。

この Basin内の石炭資源は、二畳紀初期または石炭紀末期から三畳紀に由来する。第四紀

の沖積層が古い堆積層の上に存在する場所もある。

二畳紀において、石炭資源が堆積した期間は 2回ある。二畳紀初期には、北部でGreta 夾 炭層が生成し、南部で Cly River夾炭層が生成した。二畳紀末期には、より広い範囲で夾炭 層が生成した。南部や西部では Illawarra 夾炭層が発達し、北部では Newcastle 夾炭層と Tomago夾炭層、Singleton 累層群が発達した。基本的にSydney Basinの変形は少ない。炭 層の傾斜もあまりなく、全体としてほぼ水平である。NSW 州の主要な石炭フィールドを図 2.1.2-4に示す。

a. 南部鉱区

南部鉱区の地域構造は、Sydney Basin の南側に広がる広範な向斜構造である。この主要 構造の上に、北西に向かう向斜構造と背斜構造が重なっている。炭層の傾きは、最大 5°程 度であるが、ほとんどは 2°以下である。最大 90 m の大きな断層が、北西方向に走ってい る。また、最大 15 m の断層が北東方向に走っている。この鉱区、特に夾炭層の東端と南端 には、三畳紀後から第三紀のシル状火成岩や岩脈が貫入している。貫入岩は基本的に粗粒玄 武岩であるが、西側では閃長岩が増加する。火山性の岩栓や角礫岩ダイアトリーム(火山ガ スの爆発的作用によってできた火道で、周りの岩石を破砕して一方向に伸びる)も存在する が、現在採掘が行われている地域には存在しない。

図2.1.2-4 NSW州の石炭フィールド

(出典:NSW, 2011)

b. Newcastle 鉱区

Newcastle鉱区は、Sydney Basinの石炭露頭の北東端に位置する。採掘は主にNewcastle で行われ、Newcastle港で船積みされる。

Newcastle夾炭層は二畳紀末の地層で、その上に石炭を含まない三畳紀のNarrabeen層群

がある。露頭は鉱区北部にある。この夾炭層は数多くの炭層を含んでいる。また、礫岩、砂 岩、微粒堆積層の夾みがある。Newcastle 夾炭層は、一般に鉱区東部で厚く、西に行くに従 って急激に薄くなり、炭層は合層する。層序は 14枚の主要炭層とその他の炭層からなるが、

稼行価値のある炭層の最上層は Wallarah炭層、最下層は Borehole炭層である。炭層毎に厚 さや物理的条件は異なっているが、基本的に、最上層の炭層は一般炭で下部の炭層は高揮発 分の原料炭であることが多い。

Newcastle夾炭層の下には、やはり二畳紀の Tomago夾炭層があり、そのまた下には海成

の Maitland 層群がある。この下に Greta夾炭層があるが、Newcastle 鉱区における深度は

1,000 m を超えていると考えられる。Newcastle夾炭層には粗粒玄武岩の岩脈が多いが、採 掘上、解決できないほどの問題とはならない。

この地域の特徴的な構造は、南に向かって緩やかに向斜している Macquarie向斜である。

東西方向に褶曲が発達しており、その結果、向斜構造と背斜構造に沿って、南北方向に浅い

円頂丘と Basin構造が発達している。断層は通常のタイプで、断層面に沿ったずれは6 m以

下であることが多い。断層の多くは岩脈と同じく北西方向に走っているが、断層が北向きに 走っている地域もある。

c. Newcastle 鉱区の Maitland-Cessnock-Greta 炭田

Maitland-Cessnock-Greta 炭田とは、Maitland、Cessnock、Greta 周辺の Greta夾炭層 の露頭から、可採深度にある全ての石炭を含む地域である。

この地域では、炭層の露頭から深度 400 m 程度の範囲で開発が行われている。Greta で 1868年に採掘が開始されて以来、採掘に適した地域は、全て石炭鉱山会社の所有かマイニン グリースが設定されている。

この地域で採掘が開始されて以来、深度 300 mまでの採掘が容易な石炭は、全て採掘され てしまった。埋蔵量は減少しつつあるため、今後は、300 m を超える深度の石炭を採掘する 必要がある。このように深い深度の石炭の採掘が経済的に見合うかどうかは、増加する生産 コストに見合うだけの需要が Greta夾炭層に対してあるかどうか次第である。

こ の 炭 田 の 特 徴 的 な 地 質 構 造 は 、Greta 夾 炭 層 が 地 表 に 露 出 す る 側 面 周 囲 に あ る

Lochinvar 背斜である。その他に、炭田の西端に向かう大きな断層があり、Greta 夾炭層へ

の ア ク セ ス が 一 部 妨 げ ら れ て い る 。 こ れ 以 外 に も 複 数 の 大 き な 断 層 が 発 達 し て お り 、 Maitland-Cessnock-Greta 炭田の露頭が炭田の北側にずれている。Greta Measuresは、厚 さ 100 m前後の比較的薄い層群で、その上側にはMaitland層群という最大1,350 mの海成 層と下側には Dalwood層群という最大 2,000 m の海成層がある。Greta 夾炭層の石炭は、

炭層が複雑に分岐し、その厚さが大きく変化するという特徴を有している。採掘が行われて いる炭層は、Greta炭層とHomeville 炭層、およびこれらの炭層から分岐した炭層である。

d. Hunter 鉱区

Hunter 鉱区は、Newcastle 鉱区の西、西部鉱区の東に位置する。北側と南側は、特徴的

な地形があり、境界となっている。Hunter 鉱区の夾炭層は、Hunter River 流域を中心に

Sydney Basin Wollombi

e. East Muswellbrook 鉱区

Hebden 炭層は、Muswellbrook背斜東側にあるSingleton累層群の中で、経済的価値を持 つ最下層の炭層であるが、その厚さが 2 mにも達しないため、まだ、商業生産の対象にはな っていない。ただし、最近、Singleton のすぐ西側で進められている多層露天採掘プロジェ クトにおいて、鉱山埋蔵量の一部として加えるようになった。

Barren炭層は、Howickの付近で、露天採掘が行われている。この地域における層厚は4 m

程度である。この炭層には夾みが多いが、選炭によって簡単に取り除くことが可能である。

ただし、夾みが大量であることから、上層の Liddell 炭層よりは経済的価値は低いと考えら れている。現在計画段階や開発段階にある新規の多層露天採掘プロジェクトや坑内採掘プロ ジェクトは、この Barrett炭層を中心に展開されている。

Liddell炭層は、Muswellbrook背斜の東側のあらゆる地層構造で、坑内採掘、露天採掘の

両方で大規模に開発が行われており、Singleton 累層群の中でも、最もよく調査され、デー タが豊富な炭層である。最も良質な部分は、Foybrook 累層付近にある。この地域では、層

厚は 6~10 m程度となっており、坑内採掘が行われている。ただし、採掘コストの関係から、

実際に採掘が行われている厚さは 3.6 m 以下となっている。Liddell 炭層の西で炭層は複数 の層に分岐しているが、Muswellbrook背斜の東側の広い範囲にわたって、層厚は2 m 程度 に保たれている。Liddll 炭層から産出された石炭の選炭品は、Foybrook 累層に属する他の 石炭とともに、日本向けに輸出されている。

Arties炭層は、基本的に夾みの多い経済的価値がほとんどない炭層である。層厚が 4~4.6

mに達するHowick累層近郊は例外であるが、最上部の3 mには大量の夾みが混入している。

上層のLiddll炭層と合層して、最大10 mの厚さをもつ炭層となっている地域も例外である。

Pikes Gully 炭層は、Liddll炭層の 70~80 m 上にある厚さ4 m程度の炭層である。この 炭層には夾みが多く、また、炭層頂部近くには、厚さ 0.3~0.6 mの分厚い頁岩層が混入して いる。Pikes Gully炭層の上には、非公式に Lemington炭層と呼ばれている頁岩の夾みを含 んだ数多くの層に分岐した炭層がある。現在のところ、これらの炭層は露天採掘鉱山で、埋 蔵量を増大させるために下層を採掘する場合にのみ採掘対象とされている。

f. Jerrys Plans 亜層群

Jerrys Plans亜層群の炭層には大量の石炭資源が埋蔵されており、Singleton地域で1970 年代末頃から石炭生産が急速に拡大する原動力となった。

Bayswater炭層は暗炭が厚く埋蔵された炭層であり、Jerrys Plans亜層群の中でも経済的

意味において、今まで中心的存在であり続けている。しかし、Bayswater炭層は断裂が激し い部分が多いため、その下盤のArcherfield砂岩を基準に Bayswater炭層かどうかが判断さ れている。典型的な Bayswater炭層は 6~10 m の分厚い暗炭である。最も開発されている 鉱区では上層に 1~2 mの輝炭に近い縞炭の層があるが、激しく分裂している鉱区では2 m 以下という薄い暗炭層しかない。

g. 西部地区

西部鉱区で石炭が発見されたのは1824年で、1868年から連続的な生産が開始された。1970 年代初頭までは探査も生産も小規模であり、既存の輸送ルート近くの露頭周辺でのみ行われ ていた。炭層上部の表土が薄いため、西部鉱区の炭鉱の採掘条件は非常によい。最近は露頭 から、より深度の深い部分へと開発が進んでおり、天盤の安定性が問題となっている鉱山も 出ている。鉱区の東へ向かうと表土厚は厚くなり、最終的には 300 mを超え、Wollemi国立 公園近くでさらに急速に厚くなって 500 mを超える。現在までのところ炭層メタンガスの問 題はあまり発生しておらず、過去にある程度行われた試験でも、Wollemi国立公園との境界 付近に至るまでの全範囲で、炭層ガスは今後とも大きな問題とはならないだろうとの結果が 得られている。地形は高低差があり、また、国立公園に近いため、深い位置にある石炭の採 掘は困難である。この鉱区では、Illwarra夾炭層に属する 6枚の炭層が確認されている。こ の厚さは、鉱区西端における 57 mが一番薄く、厚いところでは220 mを超えている。炭層 の位置関係は東に向かって沈降しているが、現在のところ詳細は判明していない。

炭層の傾斜は、東に向かって 1~2°と緩やかである。大規模な断層は非常に稀である。約 5 m以下の小規模断層が南北方向に走っており、炭層に影響を与えている地域もある。火成 岩の貫入が見られるのは、鉱区の中央部と北東部のみである。

h. Gunnedah 鉱区

Gunnedahの南では、Centenary炭鉱とBlack Jack炭鉱が 1890年に操業を開始した。当 時、この鉱区の炭鉱はこの地方の蒸気機関車用一般炭を供給していた。蒸気機関車からディ ーゼルへと鉄道の転換が進んだことから、最近までこの地域における生産量は低下し続けて いた。ごく最近になって輸出用石炭の探査が開始された。

Gunnedah鉱区は、Liverpool Rangeの北にあり、Sydney Basin北側の Bowen Basinに 向かって伸びている部分である。採掘対象となるのは次の 2 つの夾炭層である。Nandewar 層群はGunnedah地区とBreeza地区の地下にあり、深度が200 mを超えている部分が多く、

採掘対象となりうる炭層は 4枚である。Maules Creek累層はGunnedah鉱区の東側半分を 占めており、低灰分、高揮発分の一般炭と微粘結原料炭を大量に埋蔵している。炭層は 12 枚ほどであり、露天採掘の対象となる炭層と坑内採掘の対象となる炭層の両方が存在する。

(2) QLD州の石炭 QLD