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1. 豪州のエネルギー政策、石炭政策、エネルギー需給動向

1.3 エネルギー需給動向

1.3.2 エネルギー需給計画

ABARE(Australian Bureau of Agricultural and Resource Economics)が 2007年 12月 に発表したエネルギー長期需給見通し“Australian energy: national and state projections to 2029-30 130”によると、豪州の一次エネルギー消費の成長率(年平均伸び率)は、年を 経るに連れて低下する傾向にある。1960年代の一次エネルギー消費の年平均伸び率は5.0 % であったが、1970年代にはオイルショックもあり3.9 %に低下し、1980年代、1990年代は 共に 2.3 %に低下した。豪州の一次エネルギー消費量は、2005/2006年度131の5,688 PJか ら 2019/2020年度には7,332 PJへ、2029/2030年度には 8,298 PJへと、それぞれ年平均伸

び率 2.2 %、1.6 %で増加することが見込まれているものの、一次エネルギー消費の年平均伸 び率は今後も低下する傾向にある。以下に豪州のエネルギー需給計画について詳しく述べる。

(1) 豪州のエネルギー需給計画

2005/2006 年度から2029/2030年度に向けて、消費量の増加が最も大きいのは石油の 922 PJで、天然ガスの増加量もこれに匹敵する 918 PJであるが、これを年平均伸び率でみると 天然ガスが 2.6 %で石油の 1.6 %を上回る。同期間の石炭(ハードコールと褐炭の合計)の 消費量の増加は 568 PJで天然ガスに続くが、年平均伸び率は 0.9 %とかなり小さくなる。一 方、再生可能エネルギーは消費量の増加は 203 PJにとどまるが、年平均伸び率は 2.4 %と天 然ガスに次ぐ伸び率を示す(表 1.3.2-1)。

表1.3.2-1 一次エネルギー消費見通し

(出典:IEA, Energy Balances of OECD Countries 2009)

(2) QLD州とNSW州の石炭関連需給計画

石炭の輸出需要増大に伴い、主要な輸出港における滞船問題や輸送インフラ不足が顕在化 している。特に QLD州では Bowen Basinの中部と北部の Abbot Point港を接続する鉄道路

線および Surat BasinとGladstone港を接続する鉄道路線の未整備が課題となっている。こ

れらに対処するため、州政府などにより輸送インフラ整備計画が策定され、滞船問題の解消、

インフラ整備・拡充に向け取組中である。ただし、2010年末の豪雨等により、QLD 州では 洪水被害が拡大し、炭鉱生産の 73 %が停止し、輸送インフラも停止状態でBHP Billiton・

RioTinto など不可抗力条項を発動した。

よ り 積 出 港 の 分 散 が 図 ら れ て 、2010 年 に は 能 力 が 改 善 さ れ る 見 通 し で あ る 。NSW 州

Newcastle港でも新規コールターミナルが建設中であり、2010年には改善される。

豪 州 の 主 要 な 石 炭 積 出 港 に お け る 滞 船 問 題 と 輸 出 量 割 当 制 度 ( 出 荷 割 当 シ ス テ ム : Capacity Balancing System)の導入および DBCTにおけるインフラ設備事故は、2003年後 半からの石炭価格高騰の一因となった。過去の需要低迷期に、輸出インフラに対する投資が 遅れ、需要に見合う輸送体制になっておらず、鉄道や港湾能力が不足している。新規炭鉱の 建設と既存炭鉱の拡張により、需要に見合う生産能力は保有しているが、生産量は輸出イン フラの能力で制約されている(以下、JCOAL, 2010を参照)。

① NSW 州

・ Hunter Valley等の石炭輸出港は基本的に Newcastle港のみであり、鉄道の系統はシ ンプルである。

・ Newcastle港を中心とする石炭輸出関係者の総合的な調整機関として、HVCCT

(Hunter Valley Coal Chain Logistics Team)が組織され、鉄道輸送の効率化、貯炭 量の最適化、出荷量の最大化を図り、石炭輸送網全体の利益のために活動している。

・ HVCCTは港湾、鉄道(軌道・車両)等を保有する組織間 JVであり、国内向けおよび

輸出向けの最適な石炭輸送計画立案を行うとともに、インフラを改善するための機関 となっている。

② QLD州

・ 鉄道輸送と港湾は複数のシステムごとに異なった運用がなされており、HVCCTのよ うな総合調整機関はないが、各システム間の鉄道(QR)による接続が具体化してきて いる。

・ Newlands、Goonylla、Blackwater、Moura、West Moretonの各鉄道網の増強計画が 進行中である。

・ 他にMissing Linkの鉄道敷設プロジェクトが進行中である。

・ Northern Missing Link(州中部と北部にある石炭輸送用のNewlands・Goonyllaの 二大鉄道網を連絡し、Abbot Point港につなぐ70 kmの路線の建設)

・ Southern Missing Link(Surat Basinの開発を進めるため、Wandoan付近の炭鉱と

Banana付近のMoura鉄道網を接続する路線建設)

③ 主要港湾

・ポートケンブラ港(Port of Kembla)

(ⅰ) 積込能力№.1-6,600 tph×2、№.2-1,000 tph×1 (ⅱ) 貯炭能力85万 t

(ⅲ) 年間積込能力15百万 t (20百万 t拡張計画あり)

(ⅳ) 鉄道輸送能力10百万 t、鉄道距離(ベルマから)約80 km

・ニューキャッスル港(Port of Newcastle)

(ⅰ) 積込能力CCT-2,500 tph×3、KCT-10,500 tph×2 (ⅱ) 貯炭能力CCT-700千 t、KCT-1,900 千t

(ⅲ) 年間積込能力CCT-25百万t、KCT-50百万 t(拡張計画有)

(ⅳ) 鉄道輸送能力24百万 t、鉄道距離(Warkworthから)85 km

・グラッドストン港(Port of Gladstone)

(ⅰ) 積込能力Auckland Point Jetty-1,600 tph、RG Tanna-4,000 tph×2、

BarneyPointJetty-2,000 tph

(ⅱ) 貯炭能力AucklandPointJetty-300千t、RGT-2,500千 t、BPJ-400千 t (ⅲ) 年間積込能力APJ-3百万t、RGT-30百万(68 Mtpat 拡張計画有)、BPJ-5 Mtpa (ⅳ) 鉄道能力Auck1and Point Jetty・RG Tanna-15百万t、Barney Point Jetty-4.8 百万 t;鉄道距離 Auck1and Point Jetty・RG Tanna-(Yarrabeeから)約280 km

(Blackwaterから)約 323 km、Barney Point Jetty-(Mouraから)184 km

(South-Blackwater から)341 km

・ヘイポイント港(Port of Hay Point)

(ⅰ) 積込能力No.1-4,000 tph×2、No.2-6,000 tph×1 (ⅱ) 貯炭能力1,500千t

(ⅲ) 年間積込能力No.1-14 百万t、No.2-14百万t

(ⅳ) 鉄道輸送能力25百万 t、鉄道距離(Goonyellaから)200 km

・ダーリンプルベイ港(Port of Dalrymple Bay Coal Terminal)

(ⅰ) 積込能力7200 t/h (ⅱ) 貯炭能力2,000千t

(ⅲ) 年間積込能力35百万 t(85百万 tへの拡張計画を推進中)

(ⅳ) 鉄道距離(Blair atholから)280 km

・アボットポイント港(Port of Abbot Point)

(ⅰ) 積込能力4,600 tph (ⅱ) 貯炭能力500 千t (ⅲ) 年間積込能力12百万 t

(ⅳ) 鉄道輸送能力4百万t、鉄道距離(Newlandsから)180 km

(ⅴ) QLD(QLD港湾公社は、鉄道網の増強にあわせ年間積込能力を将来 50百万t

に拡張する計画推進中)

表1.3.2-1 港湾インフラ拡張計画

港 湾 名 2008 末能力 前年計画 2014 計画

NSW 州 Port Waratah Coal Services 102 120 113

NSW 州 Newcastle Coal Infrastructure Group

- 30 30

NSW 州 Port Kembla 18 18 18

QLD 州 Abbot Point 21 50 50

QLD 州 Brisbane 5 5 8

QLD 州 Dalrymple Bay 68 85 85

QLD 州 Hay Point 44 44 44

QLD 州 Gladstone 75 75 75

QLD 州 Wiggins Island 25

合 計 333 427 448

(単位:百万t/年、出典:DRET