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6. 炭鉱メタンガス回収利用最適化技術の調査方法の提案

6.6 ガスタービンおよびガスエンジンのGHG削減・排出に係わる経済性評価

この例において、ガス貯留層内の総ガス量(Q1+Q2+Q3)の約 70 %は採掘後の残留圧力 に基づいて排出される。この放出される 70 %の内、80 %が生産中に排出され、20 %が生産 後に排出される。LW 生産量が増大すると(速度が上がると)、離れた炭層からの脱離速度によ って多くのガスは密閉域に送られる。これによって生産中の特定ガス排出レートを低減する ことになる。炭鉱の総排出ガス量に大幅に寄与するものは生産中の排出ガスである。

生産中に排出されるガスの 50 %は切羽面の200 m以内で排出され、切羽面から500 m以 内となると 70 %が排出される。これらのことから、開式採掘跡坑井を使った切羽近傍のガス 捕集が困難であることが分かる。特に、LW の採炭進行方向がメタン成分の高いガスのある ところでガスは上昇し、CO2成分が高いところで下降する場合にガス捕集は困難になる。

多くの豪州炭鉱で見られる複数炭層においては空隙岩石も含めてガス発生源が複数になる。

有効な採掘前ガス抜きのために必要なガス抜き坑井を得るコストが高くなり、ガス抜き坑井 の位置を決めるのも問題となる。

炭鉱メタンガス湧出・回収・利用量のモニタリングを行う上で、ガス発生源の認識に関し て豪州炭鉱で直面している基礎的な問題は、上下盤にある炭層からのガス排出を推定するモ デ ル の 精 度 を 確 認 す る た め の 研 究 や デ ー タ 取 得 が 不 足 し て い る こ と が あ る 。 ガ ス 排 出 量 は 日々大きく変化しているので、モデル結果と観測されるガス排出量をヒストリーマッチする ことは適切とはいえない。離れた炭層または空隙岩石から脱離したガスによって、実際に観 測されたガス量が予測よりも高くなる場合がある。この分野での理解を深めるために、採掘 後の流体圧力の状況や非採掘対象層のガス包蔵量の包括的なモニタリングが必要となる。

大気放出される炭鉱ガス量を削減するプロジェクトにおいて、この情報なしで進める時の 主なリスクは、ガスの発生源に関する間違った仮定に基づき、実際には主要なガス源ではな い炭層に不適切で高価な採掘前ガス抜きを実施することである。採掘後の流体圧力とガス包 蔵量はガス貯留層が密閉域や廃棄炭鉱へ輩出されるガス量の決定に使用されるため、炭鉱メ タンガス湧出・回収・利用量のモニタリングを行い、シミュレーションにより精緻なガス排 出を推定するモデル構築することである。ガス湧出量の予測には、例えば財団法人石炭エネ ルギーセンター(JCOAL)が開発したCOSFLOWやMFG3-Dといったシミュレータがある。

設備も有する装置であり、VAMの経済的な削減に有効な技術である。この表5.1-3 の場合で あると、温室効果ガス削減量は 75,000(tCO2e/年)となる。

豪州現地調査において訪問した CSIRO(NSW)では、豪州の Carbon Tax の内容は公表 されていないが、開始時期は 2012 年7月 1 日と決まっているとのことであった。排出され る GHG に対して税が課せられるが、価格に転嫁できる電気等に関しては最終的に消費者が 支払うことになる。Carbon Taxが A$20/tとするとKHIガスタービンで削減できるCO2等 価トン数が年間 75,000トンであれば、年間 A$1.5Mのコスト削減になる。3年程度でのペイ バック年数であれば受入れ易いし、VAM削減に加えて発電できる点も関心を引くだろうとの ことであった。

オーストラリア政府は近々に新資源税(Carbon Tax)を導入することを検討しており、

CSIROの見解では企業側がA$0-10/T -CO2に対し、政府が A$15-25/T -CO2と考えていると みている。さらに、各訪問先よりKHIシステムの価格の問い合わせがあったが、まだ開発中 のシステムであり、Carbon Taxを A$20/T -CO2と仮定すると KHIシステム(KHIシステ ム全体(発電装置+浄化装置、表 5.3-1)で 4.5億円程度)を導入すると約3年で回収可能で あると考えられている。

EDLは、Low Emission, Renewable and Remote areaに関するエネルギー供給者であり、

年間 10.6Mtの CO2等価温暖化ガスを削減している。CMM からの発電はグリーンエネルギ

ーとして認知され州政府から補助を受けている。一般の売電価格が$30/MWh とすると補助

を受けて$60/MWh の売電価格となる。条件として国内電気配電網への売電が必要であり、

直接炭鉱へ販売することはできない。これは QLD州、NSW 州でも同じもので、Carbon Tax が導入されると類似州制度は廃棄される。

また、EDLのKHIガスタービンの理解は、このシステムの発電効率が低いため、VAM処 理による GHG 削減の主要な設備として利用でき、必ずしも発電には拘らなくても良く、既 存の VAM処理設備と比較してもVAM処理能力に遜色なく、なおかつ、発電できる点は評価 できるとのことであった。ただし、問題は上述したとおり Carbon 市場が存在していないこ とである。

そこで、GHG排出削減量について表 6.6-1のように試算した。

表6.6-1 温室効果ガス排出削減量

(1)稼働率

年当たり操業時間 (hr/yr) 8,000

稼動率 (%) 90

(2)温室効果ガス排出削減量

メタン濃度

(平均値) 100% CH4 カロリー値 温室効果ガス排出削減量

(m3/min) (M-m3/yr) (%) (M-m3/yr) (Kcal/m3) (CO2e-ton/yr)

VAMを含むCMM 23,250 254

VAM (800m3/sec) 48,000 23,040 0.4% 92 34 1,194,209

掘削前ガス 158 76 90% 68 7,740 884,461

掘削跡ガス 280 134 70% 94 6,020 1,219,089

掘削ガス合計 438 210 77% 162 6,640 2,103,550

総計 3,297,759

ガス流量

これは、KHI ガスタービンシステムの稼働率、現地での VAM、掘削ガス等の数値を KHI システムの処理量を考慮して試算したものである。表 6.6-1 での温室効果ガス排出削減量は 約 330万 CO2-t/yである。この場合、Carbon Taxを A$20/tとするとKHI ガスタービンで 削減できる CO2等価トン数が約330万CO2-t/yであれば年間 A$66M、Carbon Tax を半分の

A$10/tとしても年間 A$33Mのコスト削減につながる。

(2)経済性評価

Anglo社のGrasstree 炭鉱では上述のとおり、炭鉱はEDLにガスを購入してもらい、EDL が一般グリッドへ売電している。GHG を削減する Green 電気として売電価格は通常より

$30/MW 高く、Green 電気として認定されるために、一般グリッドへ売電する必要があり、

炭鉱への直接売電はできない。なお炭鉱の使用電力は 20MW程度であるとのことであった。

炭鉱は提供できるガス量を EDLへオファーし、EDLが引き取ることができない場合には、

他の業者を使う。ガス量に関する契約については、炭鉱によって契約内容が異なっている。

例えば、Moranbah North炭鉱では10TJ/日を引き取るか、引き取らない場合には、差を支 払うという契約である。Carbon Taxが導入されれば、炭鉱はフレアーからの CO2と VAMに 関して責任を負い、EDLは発電で発生するCO2に責任を負うことになる。2009年以前の炭 鉱にはプロテクが適用されので、新規炭鉱よりも Taxの影響が小さい。発電による収益はそ れほど大きなものではなく、Carbon Tax による負担の方が遥かに大きいため、VAMを処理 できる装置には発電システムがなくても構わないようである。

Grasstree 炭鉱(Anglo社所有)の売電コストは A$35 /MW程度、すなわち日本円に換算 すると 3~3.5円/kWとなり、非常に安価であることが分かった。GrasstreeはEDLに CMM ガスを売り、EDL は National Network に電気を売っている。この金額が売電よりも高い

A$60/MW(グリーン電力)であるという。ただし、発電電力の全てを National Networkに

売電することが条件である。よって、Anglo 社は自ら発電することなく、炭鉱の操業に専念 できるような状況である。Grasstree 炭鉱のガスタービンは定期的にメーカーによるメンテ ナンスが必要であり、KHIシステムをオーストラリアに導入することとなれば、サイトの近 くにメンテナンス拠点が必要となる。よって、メンテナンス拠点も作るとなると、現状ガス タービンを導入していないサイトのほうが多くの台数を導入できるため、実施できる可能性 は高くなる。Grasstree 炭鉱の VAM風量は非常に大きく 400m3/sec もある。KHI考案のシ

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州政府は、どの程度の協力が必要か要望書を提出して頂きたい、EDL では、KHI とある種 の合意が得られれば、実証サイトとして Appin炭鉱での EDL ガスタービンとの交換として 直にでも場所を提供できる等のコメントがあった。

豪州炭鉱では一般にメタンが 100L/sec あれば1MWの発電と言われている。KHI のガス タービンの場合では、23,000Nm3/hr の 2%メタン(純メタン換算で 128L/sec)で 0.85MW の発電となる。発電効率は低いものの KHIのシステムは VAMの経済的な削減に有効な技術 である。内容にもよるがCarbon Tax 導入の際に、VAM削減に特化したシステムとして利用 可能である。

表 6.6-2 現状ガスエンジンとKHIガスタービンの比較

現状のガスエンジンおよびVAM酸化燃焼を行った場合 1.ガス抜きガスでの発電(1MWガスエンジン)

 *発電効率 36%

 *MWh発電に必要メタン量(m3/hr) 278

 *発電容量(MWh) 73.0

 *年間発電量(GWh) 584

2.VAM酸化燃焼

 *処理能力(m3/min) 900

 *必要台数 53

KHIガスタービンの場合

 *1台当り必要 100%CH4ガス量(m3/hr) 460  *1台当り処理量 2%CH4ガス(m3/hr) 23,000

0.4% VAM(m3/hr) 0.98 22,520

77% CMM(m3/hr) 0.02 480

浄化装置0.4% VAM(m3/hr) 30,814

 *850KWeガスタービン導入台数 54

 *年間VAM処理量(M-m3/yr、全量処理) 23,040

 *年間ガス抜きガス処理量(M-m3/yr) 207

 *年間発電量(GWh) 367.2

現状ケース KHIケース 比較 発電設備

 発電機台数 73 54 ▲ 19

 年間発電量(GWh) 584 367 ▲ 217

 年間メタン処理量(M-m3/yr) 162 162

VAM処理設備

 処理機械台数 53 36 ▲ 17

 年間メタン処理量(M-m3/yr) 92 92