• 検索結果がありません。

6. 炭鉱メタンガス回収利用最適化技術の調査方法の提案

6.2 ガス貯留層サイズと排出量ポテンシャル

ガス貯留層のサイズは平面積 m2当たりのガス量 m3で計算されるのが最も一般的である。

ガス量は、採炭炭層からの一定距離、例えば、上位 100~200 mまで、下位 50~70 mの範 囲内にある個々の地層に含まれるガス量の総和である。これによって、LW採炭 m2当たりの 排出ガス量を推定することができる。例えば、炭層の総厚が 10 m、比重が 1.45 t/m3そして 平均ガス包蔵量が 5 m3/tであれば、残留ガスを含むガス貯留層サイズは、10×1.45×5=72.5 m3/m2と推定できる。

豪州におけるガス貯留層サイズを図 6.2-1に示すが、一般的に 5~90 m3/m2である。Bulli 層のように上位の Bulgo 砂岩層や下位の Wongawilli 層からのガス放出があるような地域で

は 150~200 m3/m2と高くなる。大きなバラツキは採掘深度でのガス包蔵量の範囲や採掘丈

の差を表している。

図 6.2-1 豪州炭鉱でのガス貯留層サイズ

(出典:Moreby R et al., 2010)

ガス排出量の単位(SGE m3/t)は採掘されたガス貯留層(炭層)トンから放出されたガス 量の割合を表していて、石炭生産量とガス排出量を関係付ける方法である。これらのガス貯 留層サイズから得られる特定のガス排出量は豪州の LW 炭鉱に関しては平均切削丈で ある 3.2 mに関係させることで推定できる。例えば、採掘丈が3.2 m、比重1.45 t/m3の場合では、

72.5 m3/m2を示す貯留層からの100 %ガス放出割合は 16.2 m3/t(72.5/(3.2×1.4))となる。

実際には、全ての貯留されたガスが生産中に放出されるわけではなく、生産が終わった後 でも多量のガスが排出される。観測された炭鉱での特定ガス排出量(m3/t)の範囲を図 6.2-2 に示す。表 6.2-1 には特定ガス排出量(m3/t)の違いと LW の生産量変動によるガス排出量

割合(m3/s)の変化を示している。表には年間の石炭生産量(Mtp)とガス包蔵量(m3/t)

の変化によって排出されるガスのレート(m3/s)が示されている。

表6.2-1 LWでのガス排出レート(単位:m3/s)

(出典:Moreby R et al., 2010)

豪州の温暖化ガス決定に関して、これらの計算と坑内炭鉱からの排出量の推定で適用され る CO2-e排出ファクターとの関係を理解することは重要である。ファクターは、高ガス炭鉱 では生産 t当たり0.302 tCO2-e、ガス炭鉱ではないところでは生産 t当たり0.008 tCO2-eで ある。例えば、高ガス炭鉱ではメタン包蔵量を 21.1 m3/t としてファクターを求めている。

メタン 21.3 m3は14.38 kg(21.1 m3×0.681 kg/m3)の重量であり、温暖効果係数を 21倍 にして CO2等価量を計算すると305 kgCO2-e(14.38 kg×21)となる(図6.2-3 を参照)。

図6.2-3 メタン包蔵量(単位:m3/t)と採炭 t当たりのCO2-eの関係

(出典:Moreby R et al., 2010)

こ れ ら の 数 値 は 生 産 さ れ た 石 炭 に 含 ま れ る 地 表 で の ガ ス も 含 む 全 炭 鉱 の 排 出 量 ( 掘 進 + LW+密閉)を代表したものと考えられている。明らかなように、この方法で得られた値 は

図 6.2-1に示された炭鉱の多くには適したものではない。

この広範な分析から考えられる 2つの明確な課題がある。一つは LW 採掘時に採掘領域に 入るガス排出量(m3/sまたは L/s)によって通気とガス抜きシステムの必要量を決定するこ

と。二つ目は生産時と生産後の影響を受けた領域からのガス排出総量によって捕集できない ガス排出量を決定すること。これに加えて、地上での貯炭や輸送中の石炭から排出されるガ ス量を決定することである。

しかしながら、多くの炭鉱では通気やガス抜きシステムの設計主体は生産中のガス排出量 の管理だけに集中されている。密閉地域からのガス排出量が排気流量から管理できるとした ならば、密閉地域または廃棄炭鉱からの総排気量は炭鉱管理上の心配事ではなくなる。もち ろん、異なるモニタリング方法や管理手法が必要となり、特に採掘前に貯留層のガス量から 炭鉱ガス排出量の全量を評価することが必要である。