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第2章 ラオスの概要

第 3 節 主要な指標からみた社会経済状況

表2-3-1 ラオスの主要経済指標(2016年)

出所:World Bank, World Development Indicatorsの各指標を参照して筆者作成。

但し、対ドル為替レートは、Asian Development Bank, Key Indicator for Asia and the Pacific Lao PDR 20162015年の平均レートを参照。

表2-3-1は、ラオスの直近の主な経済指標を整理したものである。2016年のGDPは、

159億 3百万ドルで、1人あたりGNIは、2,150ドルであった。2005年のGDPは 27 億ドル、1人当たりのGNIが460ドルであったので、国家の経済規模、国民所得ともに 大きく増大している。また、2015年の輸出額が46 億 6千 6百万ドル(GDP29.3%)で、

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輸入額が、62億 2千万ドル(対GDP39.1%)であった。2005年と比較すると輸出額が約 9億ドル(対GDP34.2%)、輸入額が約13億ドル(対 GDP46.5%)であったので、こちらも 大きく増大している。ただし、貿易収支は、2005年の4億ドルの輸入超過に対して、

2016年は15億 5千万ドルの赤字と貿易赤字が拡大している。

表2-3-2は、ラオスの産業別のGDPの割合を2005年と2014年とで比較したもので

ある。2005 年の産業別 GDP の割合は、農業が 36.2%、工業が 24.6%、サービス業が 39.2%であったが、2014 年のその割合は、それぞれ 27.7%、31.4%、40.9%と変化して いる。農業の割合が減少し、工業、サービス業の割合が増大している。ラオスでは、2000 年代に入り、豊富な水資源を利用した電力や鉱物資源の開発が本格的な生産活動を開始 し、それらの輸出が増加したこと、さらに2003年にSEZ設置と外資誘致による積極的 な工業開発が行われ、それにともない製造業が伸長していることから産業構造が変化し てきている。但し、工業のうち、製造業の割合が2005年と2014年とでは減少している 点が気になるところではあるが、SEZに関連する基盤整備が整い始めたことから、今後 ラオスへの外資による製造業の進出が促されるとするならば、生産活動が活発化し輸出 増大に繋がっていくと期待される。

表 2-3-2 産業別GDPの割合(%)

出所:World Bank, World Development IndicatorsGDPデータより筆者が算出して作成。

表2-3-3 ラオスの財政および開発援助受入額、為替レート(2015年)

注:LAK: Lao Kip、ラオスの通貨単位ラオスキップ。

出所:Asian Development Bank, Key Indicator for Asia and the Pacific Lao PDR 2016の現地通貨 建で表された各指標を米ドル換算して筆者作成。

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表2-3-3は、2015年のラオスの財政および開発援助受入額をまとめたものである。ラ オスでは、恒常的な貿易赤字とともに課題とされているのが、財政赤字の問題である。

2015年の歳入は27億8千 8百万ドル、歳出が32億7千 1百万ドルで、約4億 8千万 ドルの赤字であった。過去7年間を見ても歳出が歳入を上回った状態が続いており、特 に 2013 年以降財政赤字が増大している。この財政赤字の最大の要因は、不安定な歳入 によるところが大きく、2013年には会計年度が始まった10月からの第1四半期の段階 で税収の大幅な欠陥が明らかとなり、第 2四半期以後の各省庁の予算の大幅な削減が行 われ、行政運営や公共事業の実施に大きな影響が出た。ラオスの財政赤字を補填してい るのが外国からの開発援助であり年々受入資金額が増大し、2015年には無償資金受入額 が 5億5千 7百万ドル(対歳入比20.0%)となった。また、対米ドル換算レートは、近 年比較的安定しており1ドル=8,000キップ台で推移している。

近年のラオス経済の概況から明らかなことは、GDP、および GNI の増大、輸出入の 増大とともに、貿易収支の赤字と財政赤字の拡大という問題に直面している。経済成長 にともない経済規模が拡大し、歳出の拡大や輸入の拡大が現れることは当然のことであ るが、輸出の拡大と歳出の抑制というバランスのとれた経済政策もまた求められるとこ ろである48

第 2 項 保健・教育指標

表2-3-4にラオスの主要な保健指標をまとめた。ラオスの出生時平均余命は66.1歳で、

乳児死亡率は50.7人/1,000人、5歳未満児死亡率が66.7人/1,000人である。タイの乳 児死亡率は10.9人/1,000人、5歳未満児死亡率が12.6人/1000人で、出生時平均余命は 74.4歳であり、比較するとすべての指標で大きな差があり、保健分野の開発が遅れてい ることがわかる49

表 2-3-4 ラオスの保健指標

出所:World Bank, World Development Indicatorsの各指標を参照して筆者作成。

48 ラオスの経済および産業構造については第3章で詳述する。

49 World Bank, World Development Indicators.

1

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2 . 9

2 . 9

表2-3-5は、ラオスの主な教育指標をまとめたものである。15歳以上成人識字率は、

女子が72.8%、男子は87.2%であった。一方、15歳以上24歳以下の若年層識字率を見

てみると女子は87.3%、男子が93.1%となっている。近年の教育政策により、就学率、

特に初等教育の就学率が改善されたことで若年層の識字率が向上したことが要因である。

教育指標についてもタイと比較してみると、タイの識字率は 90%を越えており、15歳 以上24歳未満の若年層識字率は女子で99.0%(2015年)、男子も98.3%(2015年)である ので、ようやくタイに追いついてきたといったところである50。教育の向上は人的資源 の育成に重要な課題であり、さらに教育の向上が期待されるところである。

表 2-3-5 ラオスの教育指標

出所:World Bank, World Development Indicatorsの各指標を参照して筆者作成。

第 3 項 都市部と農村部における開発格差

ラオス政府は、社会経済開発5カ年計画において解消すべき課題として都市部と農村 部の開発格差の是正について取り上げている51。都市部と農村部とは、ヴィエンチャン 都や各県の人口集積地である県都周辺とそれ以外の遠隔地という意味で、両者の間に所 得、就業機会、識字率や就学率、各種死亡率において差があるということを意味する。

2015年ラオス人口・住宅国勢調査の暫定報告書に、ラオスにおける都市部と農村部の 分類規定が記載されている52。規定によると、以下5つの項目のうち3項目から5項目 に該当する場合、都市部と規定すると書かれている。

1. その村が郡、または県の中心地に位置している。

50 World Bank, World Development Indicators.

51 NSEDPⅦ (2011-2015)44-50頁、および88-91頁、NSEDPⅧ (2016-2020)10頁、45-52頁、お よび89-97頁。

52 Lao Statistics Bureau, 2015, Lao Population and Housing Census 2015 Provisional Report, Ministry of Planning and Investment Lao PDR, p10.

1 0- 45 6

0- 5 6

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9 5 6 %

2 3 87 %

2 87 ( %

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2. 村内に存在する世帯のうち70%以上の世帯が電気を利用している。

3. 村内に存在する世帯のうち70%以上の世帯が水道を利用している。

4. その村が、年間を通じて道路で通行可能である。

5. 村内に終日利用可能な常設市場が存在する。

報告書には、農村であるかどうかについて道路によるアクセスの有無を重要視してい る記載がなされており、ラオス政府が行う世帯調査などでは道路の有無について言及さ れている場合が多い。

報告書によると、2015年 3月現在国民の 33.0%が都市部に居住しており、10年前の 調査と比較すると都市部の居住者は6.0%増加している。最も都市化が進展しているのは、

2015年時点でヴィエンチャン都であり、人口の78.0%が都市部に居住しているとされて

いた。2005年には82.0%が都市部居住とされていたので、ヴィエンチャン都における居

住者の割合が減少している。

一方、ヴィエンチャン都に次いで都市居住者の割合が多かったのがサイニャブリー県

の 40.0%、そして、アタプー県、サイソンブン県、ボケオ県、およびヴィエンチャン県

では概ね33.0%から36.0%の人々が都市部に居住していた。サワンナケート県やチャン

パーサック県では都市部居住者の割合は変化していなかった。この報告書では、ヴィエ ンチャン都の都市人口割合の減少と、その他の都市人口割合が増大している県について、

その原因については触れられていないが、おおよその原因については推察が可能である。

北部地域のサイニャブリー県やボケオ県では、SEZの開発とメコン川架橋などの影響で 就 業 機 会 が 増 加 し て い る か ら で あ る 。 ま た 、 南 部 の ア タ プ ー 県 は 、 経 済 三 角 地 域

(Economic Triangle Area)に位置しており、コーヒーや紅茶、木材などの国境貿易の促

進と社会基盤の整備が進んだことなどが考えられる。そして、サワンナケート県やチャ ンパーサック県も、SEZの設置や社会基盤整備が進んでいた地域であり、県都を中心に 都市化が進んでいた地域である。

このように、ヴィエンチャン都以外の地方においても開発が促進され、SEZの開発な ど働く場所が創出され始めたため、地方に残る人々が増えたことなどが推察される。一 方で、サラワン県、ポンサリー県、フアパン県では、都市部居住者の割合は 20.0%以下 であり、道路アクセス不可能な村がフアパン県では34.0%、セコーン県では24.0%存在 するとしている。加えて、都市部の居住者の割合が増大している一方で、道路アクセス 可能な村の割合が減少しているという重要な結果が出たとしている。そして、その示唆 として、道路アクセス可能な地域では開発の手が届いているが、反面道路アクセス不可 能な地域には開発が行き届いていないことを挙げている。

表2-3-6は1975年から2015年までのラオスの都市部と農村部との面積および人口動

態推移をまとめたものである。ラオスで都市部とされる面積は1,019平方キロメートル、

農村部の面積は22万7千 856平方キロメートルで、全国土面積の95.5%が農村部とな