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3 生体認証システム導入・運用事例

3.5 三井住友銀行

(1) 導入の経緯

三井住友銀行は、ATM(Automatic Teller Machine)における利用者確認のために 指静脈認証を導入した。

2003年、キャッシュカードのスキミング犯罪が多発し、国内の金融機関は金融商品 のセキュリティ向上への意識が高まった。そこで、三井住友銀行はキャッシュカード を、偽造が困難な ICカードにすることを決定し、さらに、本人確認も強化すること を検討した。

キャッシュカードの利用者は、子どもからお年寄りまで幅広く、特に年齢制限がな い。そのため新規に導入する本人確認は、誰もが直感的に利用できることが望まれた。

さらに、カード同様、偽造が困難な方法であることも望まれた。以上の条件を総合的 に判断し、最終的に生体認証を採用することを決定した。

(2) 認証システムの概要

三井住友銀行では IC カードをキャッシュカードとして用い、このカードを使用す るためには、カードへの生体認証情報の登録を必須とする商品を展開した。このカー ドを使用する際は、先ず、ATMへカードを挿入し、次に、ATMのタッチパネルの脇 に配置された生体認証センサに、指をかざす(図3-6 生体認証機能付きATM使用例)。

(Copyright 2008, 三井住友銀行)

図 3-6 生体認証機能付きATM使用例

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生体情報の登録は行員の説明のもとに本・支店窓口で行う。登録の際の本人確認は、

運転免許証等の公的な本人確認書類をもとに行う。登録する生体情報は生体認証機能 付きICキャッシュカードのICチップに記録される。認証時、ATMの生体認証セン サにより取得した生体情報はキャッシュカード内部に送り込まれ、カード内に記録さ れた生体情報とカード内で照合される。カードの外部には照合結果しか出力されない。

照合に成功したという結果は、ATM を経由して銀行のメインサーバに送信され、取 引を開始することができる。

生体認証機能付きATMは、全国で約5,800台配置されている。また、登録用とし ては全国の本・支店窓口に約1,000セットが配置されている。

(3) ユーザに配慮した点

三井住友銀行は、広範囲の年齢層の顧客に生体認証を理解してもらえるよう、サー ビスおよびシステムをシンプルに構築するよう努めた。そのため、生体認証機能付き IC キャッシュカードを利用するためには、カードへの生体認証情報の登録を必須と した。このカードを利用して残高照会や出金を行う際は、必ず生体認証を行うことと なるため、他行ATMとの相互利用や生体認証を備えたATMを多数設置することで、

生体認証を利用する顧客に不便を感じさせないようにした。

キャッシュカードの利用者が紛失等による再発行を行うケースは多くはないため、

生体認証機能付きキャッシュカードの長期的な利用を想定し、生体の経年変化がほと んどないことを確認のうえ、指静脈認証システムを採用することとした。

生体認証の利用方法についても、顧客に十分理解いただけるよう配慮している。す なわち、説明を行う行員が自ら生体認証に精通するよう、導入1ヶ月程度前から、ビ デオ映像などを用いた勉強会を開催し、実際に利用する演習も実施した。

また、生体認証機能付きキャッシュカード利用者の負荷軽減を目的の一つとして、

生体認証機能付きキャッシュカード等の即時発行サービスを、来店顧客の多い3店舗

(新宿西口支店、横浜駅前支店、難波支店)で、2012年2月から試行実施している。

生体認証機能付きキャッシュカードを通常発行する手続きでは、生体情報の登録を行 うために利用希望者が2回来店する必要があり、このような負荷を軽減することによ り生体認証機能付きキャッシュカードの申込増加や顧客満足度の向上に繋がるか等 を検証している。

(4) システム管理に配慮した点

三井住友銀行が採用する指静脈認証システムでは、赤外線センサを用いて指の静脈 情報を抽出するため、生体認証センサへの直接光に弱い。そのため、周囲の照明に配 慮した。

生体認証の認証精度に関する評価テストも、システムベンダと協力して実施してい る。

36 (5) 運用状況

現時点では、導入後、認証に支障を来たしたことはなく、良好に稼働している。

当初懸念された生体認証機能付き ATM の数についても、サービスの充実を目的と して既存のATMの生体認証機能付きATMへの転換を進めたことにより、生体認証 機能付きATMの配備が足りないという顧客の不満はほぼ解消している。

(6) システム導入の効果

生体認証機能付き IC カードを導入したことで、安全性の高いサービスを提供でき た。また、比較的早い時期に生体認証を導入したため、セキュリティへの積極的な取 組みについて、多くの顧客の理解を得ることができた。

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