3 生体認証システム導入・運用事例
3.13 パワーリハ
(1) 導入の経緯
パワーリハでは、軽度の被介護者をターゲットとしたデイサービス事業を行ってい る。
介護事業では以前から、介護保険制度における不正受給が社会問題化しており、対 策が求められていた。また、被介護者がフィットネスマシンを利用する際に、重量や 椅子の高さなどの調整や、フィットネスマシンを使った運動量(例えば回数など)を 測定して記録を個々に行う必要があり、これらをスタッフが行っていた。この結果、
マシン1台に1人のスタッフが付きっきりとなるため、人的リソースを多く必要とす るとともに、業務効率の改善が求められていた。
そこで、被介護者の出欠管理も指静脈認証装置で行うとともに、指静脈認証装置付 きのフィットネスマシンとシステムを統合することで、不正受給問題の解決とスタッ フの負荷軽減を実現した。
(2) 認証システムの概要
指静脈認証装置は、入り口に設置された出欠管理システムとフィットネスマシンに 備え付けられている。
被介護者は、送迎バスで施設に来ると、入口に設置された出欠システムに備え付け られた指静脈認証装置に指をかざして認証を受ける。認証を行うと、サーバに保管さ れている生体情報と照合し、出席を記録する。
図 3-15 入口に設置された出欠管理システム
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フィットネスマシンを利用する際には、各フィットネスマシンに備え付けられた指 静脈認証装置に、利用者が指をかざして認証を行い、認証結果を基にサーバに記録さ れている設定(重量や椅子の高さなど)に基づいてマシンの調整が行われる。
利用者がマシンを利用して行った運動量は記録され、サーバ内のデータベースに蓄 積される。
図 3-16 フィットネスマシンを利用している様子
生体情報は施設の事務室に設置されているサーバで管理し、管理者がアクセスでき るようになっている。
(3) ユーザに配慮した点
フィットネスマシンが利用しやすくなるように配慮した。
フィットネスマシンに設置されている指静脈認証装置で認証を行うと、ユーザ毎の フィットネスマシンの設定がネットワーク経由で自動的に行われて待ち時間が削減 された。また、運動量も自動的にネットワーク経由で蓄積され、あとで見やすい形で 閲覧することができる。
(4) システム管理に配慮した点
会員の個人情報は本部のサーバで管理し、漏えい対策を十分に行うようにした。ま た、生体情報は出欠管理やマシンの調整などに用いるだけなので、各施設の事務室に 設置されたサーバ内で管理するようにした。
59 (5) 運用状況
安定的に運用されており、大きな問題はおこっていない。
(6) システム導入の効果
出欠管理システムや指静脈認証装置付きフィットネスマシンにより、被介護者の参 加率が正確に把握でき、不正受給に関する問題が解決した。
各フィットネスジムに配置されているスタッフの負荷が軽減されて、介護業務以外 の例えば営業などにスタッフが時間を割くことができるようになった。
生体認証付きのフィットネスマシンを導入したことで、被介護者の参加意欲が高ま り、フィットネスマシンの利用率が向上した。現在では会員の90%以上がフィットネ スマシンを積極的に利用するようになってきている。
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