• 検索結果がありません。

3.生活福祉とボランティアの位置づけ 多様な生活ニーズ

 人びとの日々の生活の営みの中でこんにち生じる生活課題は多様であり、家族、親族、

近隣、友人といったインフォーマル(非制度的)な従i域での相!1:扶助によりそ引らの課題 を解決することは、高齢者への介護支援を考えてみても明らかに困難になってきている。

社会福祉サービスや介護保険などの仕組みはこれらの課題へのフォーマル(制度的)な対 応であるが、さまざまな日々の生活のなかで生じる多様なニーズへの即応は難しい。

     図3−5 生活課題への対応とボランタリー・セクター 市場経済領域

 、 、   、   、    、    、     、      、       、       、 社会福祉制度による  活基盤

      共同消費生活基盤

   i・題、

       住宅・医療・教育等)

 そのニーズに応えていく仕組みとしてボランタリ…・セクターに位置する福祉ボランテ ィア活動の役割がある。活動フィールドとしての福祉は、制度的な福祉を中心にした社会 福祉の領域に関わるものだけではなく、当事者と共におll:いに支えあラ関係のもとで人間 の生活の営みにも関わりそこに生じる多様な課題の解消に取り組むものである。ここでは

「公的領域(=政府)、市場のいずれとも異なり、生活者=市民の生活∪)共同関係の中に」・1 体的・自発的に生み出された生活1菖1題解決のノ」策を総称するもの (朝倉)としての生活福 祉という観点から福祉ボランティアを位置づけたい。

 福祉コミュニティの形成には、①担い下としてのボランタリーな個人ないし集団・細織 の活動を通して、②多様な属性を持っ人びとの出会いの機会をもち、!3)相/1:理解と支援の 場の形成に向けた試行錯誤を通して、新た1:#i∫能性を探求し ゾ」けることが求められる.、

生活福祉の視点に、フ:ソならば、生活者=市民としての共1司関係のなかに生活課題の解決の あり方が探られなければならない。

第3節 生活支援の課題

1.社会的排除の視点

 こんにち社会福祉の分野においても内なる国際化の進展1こ伴ラ生活支援の活重ijJが求めら れている。ここでの分析の視点は社会的排除である。社会的排除はa)結果のみをではなく 排除されていく過程を問題にすること、b)低所得や失業などに限定されない多次元性を有 していること、c)家族関係、交友関係、コミュニティ内での関係といりた社会関係の剥奪 を伴うこと、d)社会的な統合とアイデンティティの構成要素となる実践と権利から人びと が排除されていくこと、e}経済と社会の変化の構造的なトレンドに関連して生じた現象で あることなどの特徴を持つものであるiln。

 わたしたちはこのような社会的排除という観点から第4亭:で述べる調査を実施した,、そ の調査の成果としては①外国人労働者を生活者として位置づけ、かAlらに関わる生活課題 の全体像とその生活支援の実態にっいて日系ブラジル人へのアンケート調査の成果などか

ら明らかにしたこと、②夕胴人労働者の生活課題の複合化の過程を仮説的1こ提示したこと、

③支援のためのコミュニティ形成に向けて、自治体、ボランタリー・セクター、企業、什 民などが果たすべき課題を提示したことがあげられる川}。

 一時的な「デカセギ」労働者と見られていた外国人労働者やその家族たらは増加し、滞 在も長期化レブvある。かれらは地域社会においては労働者であるとともに生活者である。

だがかれらは生活者としてよりは「デカセギ1の労働者とみなされ、生活者としてのかil 1 らがさまざまな生活ヒの困難を抱えて生活を営んでいることへの気づきは、IMg社会にお いて共有されていない。このことは社会福祉関係者にも当てはまる。外国人労働者をめぐ る生活課題への支援は、社会福祉の課題ではないのであろうか?

 秋元美世は、社会サービスという文脈における社会福祉の意義として1バルネラブルな 人々へのパーソナルな生活支援を、他の社会サービスとの関わりも踏まえながら行ってい くところにある」と述べている。社会福祉の対象としてのバルネラビリティは、具体的に は人々の生活困難に関わる問題であるとされ、社会福祉の役割を「そうした問題を抱える 人たちへの個別具体的な生活支援をすることである」としている11i。

115中村健ξ手(2005}『欧り・ll統合と近代国家の変容』昭和堂、 pp.326−27

11ti日本社会福祉学会第56回全国大会(2008)で研究会メンバーの朝倉美江、大井智香r−、尾里育1:、中 尾友紀によって4報告が行われた。

IIT H元美世(2007) 社会サービス・社会福祉 生活支援、古川孝順編『生括支援の社会福祉 ン:』有斐i閣、

 生活支援は、占川孝順によれば現代社会において生活問題が多様化、複雑化、高度化す る傾向にあるなかで:生活問題に対応し、その解決緩和を図ろうとする社会的施策群に関 わりを持っ概念」であるとされる11S。占川は社会福祉 }ζ:の領域で共生社会の課題にVいてltl・

い時期から指摘をしている。1997年刊行の『社会ト1,1祉のハラダィム転換』ではわが国のボ ーダレス化、グローバル化の進展にりいて触れている。冷戦構造の終焉以後、新しい社会 のあり方を意味してしばしば使われるようになりた1共生社会1の実態は、貧富の格差、

弱者差別、虐待等に呂二悩する社会、不寛容な社会でありたと指摘し、属性、能力、価値観、

文化的伝統の違いを受け入れることの困難さを改めて考えることの必要性を論じているc そして異質性を前提とする共生社会、異質 共生社会のありようを探ることを新しい社会 福祉課題として提起している119。

 すでにこの指摘から10年以ヒの年月を経てきているが、外国人労1動者の生活支援に対す る福祉関係者の関心は低いままに1ヒまっている。占川は[現代社会iこおける社会福祉やそ の背景にある生活問題の現実が、社会福祉に対して、その視点や活動をそ才 U 1体が白己限 定してきた領域に限定せず、広く社会的施策群の1》ノという視点に、 /1ち、社会的にバルネ ラブルな状態におかれた人々の生活問題に対して、関連する多様な社会的施策と連携協働 しっっ、包括的、総合的に対応することを要請している」と述べ、その例に「外国籍労 働者1をあげている120。ここではこの指摘にしたがりてわたしたちは、外国人労働Kを単な る「労働力」として見るのではなく、日本社会で生計を11/1てる1生活者」として捉え、今 求められている生活支援のあり方にりいて検討したい。

2.景気後退と定住者生活へのその影響

 こんにち外国人労働者たちの定住化傾向は進んでいる。日系ブラジル人たちの生活の現 状をブラジルの取材を含めてルポした杉山春による『移民環流』では、 ソ∫でのブラジル での生計維持の困難さ、他方での日本社会でのかれらの生活を送るヒでの課題の多さが具 体的に記述されている121。昨今の景気後退のなかでの派遣社員のリストラは、目系の労働 者たちの生活に大きく影響を及ぼしV)ある。

P.26

]1 ,s

關?F順(2007)「はしがき1【}r川孝順編『 k?,T,支援(/)社会福kJL :』イ]斐閣、 P. i

4古川孝順(1997)『ネ}二会福祉のハラダイム転換』有斐閣、pp.229−233

1/ 關?A前掲(2007)「はしがき」p.iii IL)1杉111.ij(2008)『移民環流』新潮社

 その影響は家族生活に現れてくる。派遣会社の寮を利用している場合には退去を迫られ る。また次第に増えLゾノある住宅購人者たちからはU一ンの返済の困難も語られている。

jLどもたちの就学にも影響を及ぼす。

 外国人労働者の集住地域である滋賀県の状況を1リヨ1新聞∪)人津支局が「現場で考える 定住日系ブラジル人、i の教育」というタイトルで紹介している。滋賀県愛荘町」ミ野のブ

ラジル人学校『コレージオ・サンタナ』を今年IJ]にやめた4VIIの少女(17)は典型例だ。

4歳で初来日し、7歳でブラジルに帰国。11歳に再来日した後も帰国と来Hを繰り返した。

最初に日本の幼稚園に入り、2回目の来日時でも日本の小学校に人りたが、バ葉がよく分 からないまま、先生にも友達にもなじめず、1年でブラジル人学校に転人した。しかし同 校もやめ、今は家でパソコンやテレビに向かラ。将来は『建築デザインのll:事がしたい』

と語り、私が『日本の学校に行く気は?』と問つと、首を横に振リた。親は近く帰国する といい、『帰リたら、もう戻らないと,「うけど、ゾラジルでうまくいかなきゃ、戻らないと 仕方ない』と寂しそうに笑う。日本の中学に通リても高校進学のハードルは高いが、現実 の厳しさに気付いていない親も多い。あるブラジル人中学生の親は[1   うちの臼ま日本語が できる。日本の教育を受けるチャンス』と訴えるが、1 sどもは私に[1授業は全然、分から へん』。高校合格は難しいと感じた私は、両親を前に暗然たる思いになvた。1(毎日新聞 2008年11月26日 大阪朝iilj)

 この記事からも日系外国人労働者の1㌘どもたちの置かれている不安定さをみてとること ができる。外国人集住都市会議の申し入れにたいする国の動きはようやくだが見られるよ

うにはなってきている。

 2006年3月の総務省による報告11}「地域における多文化共生の推進にlhlけて」では、具 体的な対応策などの提言が行われ、また現行の外国人登録制度を変更し、日本人の住民基 本台帳と同様の在留管理制度を導人する方針などが示されている。

 国の政策が地方自治体の政策にも大きな影響を及ぼすことはいうまでもないが、その動 きは遅い。今現実に30万人以11の日本で生活をするかれらへの生活支援に向けた対応策が 求められている。

関連したドキュメント