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ラット空腸結紮ループによるマルトビオン酸 Ca の吸収性評価

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ラットは5連の個別ゲージに入れ,実験環境に慣らすために3日間,AIN-76標準飼 料と水道水を自由摂取させた。そして解剖 24 時間前に,絶食させ,水道水のみを与 えた。なお,飼育室の温度は,23±1℃,明暗12時間サイクル(明期 AM6:00~PM6:00)

とした。

ラットはソムノペンチル麻酔下で開腹後,トライツ靭帯からその下方10 cmまでの 空腸を探り,腸管膜を破損することのないように注意しながら軽くつまみ外へ引き出 した。空腸内に内容物が残っている場合は回腸側へ押しやり,側近を平行に走ってい る血管を共に結紮しないように一端を完全に絹糸で結紮した。結紮部位から 6.5 cm のところから,37℃に温めた20 mM マルトビオン酸Ca溶液(pH 6.81)を 空腸内に 注射針を用いて0.6 mL注入した。注射針を抜くと同時に6 cmの位置であらかじめ軽 く縛っておいた絹糸で完全に結紮し,内液0.6 mLを含む長さ6 cmの空腸ループとし た。空腸ループ内へ注入後,0分,15分,30分,60分,120分,180分後に,直ちに ループを摘出し,生理食塩水でループ内を洗い流して内液を回収した。実験はそれぞ れn=6で行った。なお,空腸ループはTo-oら(2003)の方法を一部改変し作成した。

2-3 空腸ループ内液中の全糖量およびCa量の測定

空腸ループ内液中のマルトビオン酸量はフェノール-硫酸法(DuBoisら 1956)を用 いて全糖量として求め,Ca量はOCPC法にて測定を行った。各空腸ループ摘出時間に おける内液中の全糖量およびCaの減少率から,それぞれのマルトビオン酸およびCa の残存率を算出した。

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第3節 統計解析

データは平均±SE で表した。統計処理は Student の t-検定を用い,各時間におけ るマルトビオン酸残存率と Ca 残存率間での検定を行った。マルトビオン酸残存率に 対して有意差(p<0.05)が確認された場合に,Ca 残存率にアスタリスク(*)を付 して示した。解析には,エクセル2010およびエクセル統計2012(株式会社社会情報 サービス,東京)を用い,有意な確率水準を5%未満とした。

第4節 結果

空腸ループ内に残存した,マルトビオン酸とCaの残存率の経時的変化をFig. 5に 示した。マルトビオン酸は,空腸ループに注入後60分で約90%,120分で約80%,

180 分で約 70%の残存率であり,多くは腸管吸収されず腸管内に残存した。一方 Ca

は,空腸ループに注入後60分で約65%,120分で約30%,180分で約15%の残存率 であり,ほとんどが吸収された。

第5節 考察

第3章,第4章のin vivo試験,第5章のin vitro試験において,マルトビオン 酸のCaおよびMg吸収促進効果は,小腸上部での可溶性に優れ,この部位で吸収が速 やかに進むためと予測した。そこで,第5章では,空腸ループによるin situ消化管 内動態について検討した。その結果,マルトビオン酸CaのCa部分は,180分で約15%

の残存率であり,ほとんどが吸収されたのに対し,マルトビオン酸部分は,約70%の

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残存率であり,多くは腸管吸収されず腸管内に残存していることを明らかにした。

以上の結果より,マルトビオン酸CaのCa部分は,速やかに吸収されること,マル トビオン酸部分は,殆どが消化管内に留まることが明らかになった。こうした Ca の 吸収促進効果は,牛乳を摂取した場合のカゼインホスホペプチド(CPP)の効果と似て いると考えられる。内藤(1986)は,CPPについて比較的弱いCa2+イオンの結合性は,

リガンドとしての CPP から遊離して輸送系に取込まれるために非常に好都合である ことを指摘している。

今回の空腸ループ実験において管腔内 Ca 残存量が経時的に急速に低下した様相か ら,マルトビオン酸 Ca の主要な吸収部位は小腸上部であると考えられた。一方,マ ルトビオン酸部分については,管腔内に多くが残存した状態になっており,小腸から 大腸に向かうと考えられる。今回の実験からは,Ca摂取量が多く,大腸内に到達した マルトビオン酸が吸収を免れたCaに対して効果を持つかどうかは不明である。もし,

大腸内においても Ca 吸収促進効果を発揮する場合には,マルトビオン酸が腸管内で Caの可溶化状態を維持したことで,管腔内のpH条件に依存することなく腸管全体で 効率良くCa吸収を行う可能性がある。こうした点については,マルトビオン酸Caの 消化管での吸収部位をさらに別の実験により特定したり,盲腸における Ca 吸収の寄 与を除いた条件での効果を見るなど,別のアプローチによりさらに検証が可能である と考えられる。少なくとも本実験では,マルトビオン酸Caは,空腸におけるCa吸収 を亢進させることが明らかにできた。

以上の結果をまとめると,マルトビオン酸Caが小腸で吸収を受ける際,Ca部分が 選択的に吸収され,一方でマルトビオン酸の大半は小腸での吸収を免れ大腸に到達し,

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大腸内発酵に寄与することが明らかとなった。

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第 6 章 ラットにおける潜在性鉄欠乏状態からのマルトビオン酸の早期