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第 6 章 ラットにおける潜在性鉄欠乏状態からのマルトビオン酸の早期
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2-2 マルトビオン酸Caの調製
飼料中に用いたマルトビオン酸Caは,第2章 第2節 2-2準じて調製した。
2-3 実験飼料の調製
試験飼育の飼料組成を Table 6-1 に示した。飼料は AIN-93G 飼料組成を一部改変 し,貧血誘導期間の飼料として AIN-93G 標準飼料(Control 飼料;Control 群)およ
びControl飼料から鉄を除いた(鉄欠乏飼料)の2種類を調製した。そして鉄欠乏か
らの回復期間中の試験試料として Control 飼料(MBCa-0 群),Control 飼料にマルト ビオン酸Caを3%添加した飼料 (MBCa-3群),マルトビオン酸Caを6%添加した飼料 (MBCa-6群)の計3種を用いた。なお3種の回復飼料の鉄含量は,AIN-93G標準飼料の 100%相当になるように調製した。
2-4 動物実験方法
8週齢のラットを平均体重が等しくなるようにControl群(n=7)と鉄欠乏群(n
=21)に群分け後,11日間飼育を行い,鉄欠乏群については潜在性鉄欠乏状態へ誘導 した。次に回復期間に移行し,鉄欠乏群は血清鉄濃度(SI)が等しくなるように MBCa-0群,MBCa-3群,MBCa-6群に群分け(n=7)し14日間飼育行った。なお,飼育期間中 の飼料は自由摂食とし,飲料水はイオン交換水を与えた。回復期間開始0日目,4日 目,11日目, 15日目を採血日とし,尾静脈より500 µL 採血を行った。
2-5 解剖
ラットは本飼育開始後15日目の8:00 am にソムノペンチル(共立製薬,東京,日
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本)麻酔下で開腹後,ヘパリン処理したシリンジを用いて腹部大動脈から採血後,頸 椎脱臼により安楽死させ,脾臓および肝臓を採取し重量を測定した。肝臓は生理食塩 水にて潅流を行い肝臓内の血液を除去した。
第3節 各サンプルの調製法および分析方法 3-1 血液学的パラメーターの測定
尾静脈より採取した血液の一部はエデト酸二ナトリウムを1.5 mg/mL blood添加し てヘモグロビン濃度(Hb),ヘマトクリット値(Ht)を採血当日に分析した。また残り
の血液は4℃,2,000×gで20分間遠心分離後し,得られた血清はSI,不飽和鉄結合
能 (UIBC)を採血当日に測定した。Hbは,SLSヘモグロビン法(Oshiroら 1982),Ht については,血液をマトクリット遠心機(KUBOTA 3220)で12,000 rpm,5分間遠心 分離後,全血液量に対する赤血球量の百分率を測定した。SIはNitroso-PSAP法(Beale ら 1962),UIBCはバソフェナントロリン法(Ramsay 1997)を用いて分析を行った。
なお,TIBCおよび TSATは以下の式を用いてそれぞれ算出した。
TIBC (µg/dL) = SI (µg/dL) + UIBC (µg/dL) TSAT (%) =100× [SI (µg/dL) / TIBC (µg/dL)]
3-2 肝臓中鉄量および見かけの鉄吸収率の測定
粉砕処理した糞0.1gまたは,肝臓0.5 gをテフロンビーカーに秤り取り,濃硝酸11 mL,70%過塩素酸10 mL,6 M塩酸7 mLをそれぞれ加え,ホットプレートにて140℃,
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390分間加熱し湿式灰化した。肝臓中または糞中の鉄の定量はICP-OES(Optima7300DV,
Perkin Elmer,米国)にて行った。
なお見かけの鉄の吸収率は糞中への鉄の排泄量から次式により算出した。
見かけの鉄吸収率(%)=100×{(鉄摂取量-糞中鉄量)/(鉄摂取量)}
第4節 統計解析
データは平均±標準誤差で表した。統計処理は先ず Student の t-検定を用い,
Control 群と MBCa-0%群間での検定を行った。Control 群に対して有意差が確認され た場合に,MBCa-0群にアスタリスク(*)を付して示した。そして鉄欠乏群である3 群(MBCa-0群,MBCa-3群,MBCa-6群)のデータについてバートレット検定により等 分散の場合は一元配置の分散分析を行い,続いてTukeyの多重検定により解析を行っ た。等分散でない場合は,ノンパラメトリック検定およびクラスカル・ウォリス検定 を行い,続いてSteel-Dwassの多重検定により解析を行った。有意差記号にはアルフ ァベットを用いて,同じ記号を含まない群間において有意差ありとした。以上の検定 はすべて危険率 5%未満(p<0.05)にて有意差ありと判断した。解析には,エクセル 2010およびエクセル統計2012(社会情報サービス,東京,日本)を用いた。
第5節 結果
5-1 成長パラメーター
最終体重,体重増加量,飼料摂取量,飼料効率をTable 6-2に示した。各項目とも 群間に差は見られなかった。
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5-2 血清鉄濃度,血漿トランスフェリン飽和度
試験期間中のSIをFig. 6-aに示した。SIは回復開始時点において,Control群で は231 µg/L に対し,鉄欠乏食群(MBCa-0群,MBCa-3群,MBCa-6群)は,約84 µg/L まで低下し,Control群とMBCa-0群との比較では,MBCa-0群は試験11日目まで有意 な低下が確認された。鉄欠乏群間での比較では MBCa-0 群に対して,試験 4 日目は MBCa-6群において有意な上昇が観察され,試験11日目および15日目において MBCa-3群で有意に高い値であった。
TSATは回復開始時において,Control群では57%に対し,鉄欠乏食群は,18%まで低 下し,Control 群との比較では,MBCa-0 群は全ての期間で有意な低下が確認された (Fig. 6-b)。鉄欠乏群間での比較では,MBCa-6群は試験4日目および11日目, MBCa-3群は試験4日目以降でMBCa-0群に対して有意に高い値であった。
5-3 肝臓重量,脾臓重量および肝臓中鉄含量
肝臓重量,脾臓重量および肝臓中鉄含量をTable 6-3に示した。肝臓重量,脾臓重 量については全群間に差が見られなかった。肝臓中鉄含量は Control 群と比較して MBCa-0群は有意な低下を示した。鉄欠乏群間での比較では,MBCa-0群と比較し MBCa-6群で有意に高い値を示した。
第6節 考察
第6章では,潜在性鉄欠乏状態における,マルトビオン酸の早期回復効果について
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検証を行った。 鉄欠乏誘導期間終了時において,Control群と比較して鉄欠乏食群は,
SI,TSATが有意に低下した。よって鉄欠乏食群は,潜在性鉄欠乏状態であることが確 認された。そして回復開始 4 日目以降のSI およびTIBC は MBCa-3群,MBCa6 群とも に有意に高い値を示した。更に体内の潜在的な鉄欠乏の状況を比較するための指標と して肝臓中の鉄含量を測定した。MBCa-6群はMBCa-0群と比較して肝臓中の鉄含量は 有意に高く,Control群と同程度まで回復していた。
鉄は主として十二指腸で吸収され,食餌鉄は非ヘム鉄とヘム鉄の二種類あり,それ ぞれ吸収のメカニズムが異なっている。非ヘム鉄は,金属トランスポーターである divalent metal transporter 1により腸上皮細胞内に取り込まれる(Gunshinら 1997)
が,腸管内の鉄は可溶化している必要がある。しかし,十二指腸から先へ進むほど膵 液や腸液により胃酸は徐々に中和され,pH の上昇に伴い共存するリン酸などと難溶 性の塩を形成し,難吸収性となる(WardとCoates 1987)。今回の試験飼料として用 いたクエン酸鉄の溶解性は低く,pHの上昇に伴い不溶性の塩を形成する。一方で腸管 内にマルトビオン酸が存在することで,腸管内のCaやMgを可溶化し吸収増進に寄与 することを第3章において確認しており,鉄においても同様の効果がもたらしたこと で,潜在性鉄欠乏からの早期回復に寄与したと推察された。
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Table 6-1 Composition of the experimental diets for Exp. 5 (gram per 100 g of diet) Control 3) Iron-deficient 3) Control 3) MBCa-0 3) MBCa-3 3) MBCa-6 3) Gelatinized starch53.4353.4553.4353.4350.7648.09 Casein20.0020.0020.0020.0020.0020.00 Sucrose10.0010.0010.0010.0010.0010.00 Soybean oil7.007.007.007.007.007.00 Cellulose powder5.005.005.005.005.005.00 L-Cystine0.300.300.300.300.300.30 Choline bitartrate0.250.250.250.250.250.25 AIN-93 Vitamin mixture1.001.001.001.001.001.00 AIN-93G calcium, iron-free mineral mixture1)1.751.751.751.751.751.75 Calcium carbonate1.251.251.251.250.920.59 Maltobionic acid calcium salt 2) ― ― ― ―3.006.00 Ferric citrate 0.02 ―0.020.020.020.02 1) The concentration of the AIN-93G-based calcium, iron-free mineral mixture was doubled, as compared to that of the AIN-93G mineral mixture. 2) The calcium content of maltobionic acid calcium salt is 4.4% (w/w). 3) The iron content per 100 g of diet: Control diet, 4.50 mg; Iron-deficient diet, 0.14 mg; MBCa-0 diet, 4.47 mg; MBCa-3 diet, 4.52 mg; MBCa-6 diet, 4.45 mg.
IngredientsExperiemtal dietPreliminary diet
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Table 6-2 Growth parameters,food intake and feed efficiency of rats fed the experimental diets during recovery period (Exp. 5)
Final body weight (g) 347 ±3 347 ±9 347 ±9 337 ±6
Body weight gain (g/day) 3.84 ± 0.31 3.47 ± 0.36 3.69 ± 0.33 3.06 ± 0.26
Food intake (g/day) 19.6 ± 0.3 19.9 ± 0.4 19.7 ± 0.9 19.1 ± 0.4
Feed efficiency 1) 0.195 ± 0.014 0.173 ± 0.015 0.186 ± 0.010 0.160 ± 0.013 Rats were fed the experimental diets listed in Table 6-1 for 15 d. Values are expressed as mean±SE values (n=7).
1) Feed efficiency = body weight gain/food intake
Groups Iron-deficient
Control
MBCa-0 MBCa-3 MBCa-6
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Table 6-3 Weight of spleen and liver, and iron concentration in liver of rats fed the experimental diets (Exp. 5)
Weight of spleen (g) 1) 0.660 ±0.020 0.634 ±0.031 0.633 ±0.025 0.644 ±0.036
Weight of liver (g) 1) 11.4 ± 0.2 11.1 ± 0.3 11.8 ± 0.3 10.9 ± 0.3
Iron concentration (mg/g liver) 47.8 ± 8.9 15.3 ± 2.9 * b 22.8 ± 3.6 ab 43.2 ± 6.7 a Rats were fed the experimental diets listed in Table 6-1 for 15 d. Values are expressed as mean±SE values (n=7).
* Significantly different from the Control group at p<0.05 as determined by Student's t-test.
Means in the same row not sharing the same superscript letter are significantly different at p<0.05 as determined by one-way ANOVA followed by Tukey's multiple comparison test.
1) Wet weight
Groups Control Iron-deficient
MBCa-0 MBCa-3 MBCa-6
)LJXUH䚷6HUXPLURQFRQFHQWUDWLRQDDQGWUDQVIHUULQVDWXUDWLRQERIUDWVIHGWKHH[SHULPHQWDOGLHWV([S
5DWVZHUHIHGWKHH[SHULPHQWDOGLHWVVKRZQLQ7DEOHIRUG 䕿&RQWURO䕦0%&D䠈䕔0%&D䖃0%&D
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