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ラットにおけるマルトビオン酸のミネラル吸収促進効果に関する研究

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Title ラットにおけるマルトビオン酸のミネラル吸収促進効果に関する研究( 本文(Fulltext) ) Author(s) 末廣, 大樹 Report No.(Doctoral Degree) 博士(農学) 乙第156号 Issue Date 2020-03-13 Type 博士論文 Version ETD URL http://hdl.handle.net/20.500.12099/79378 ※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

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ラットにおけるマルトビオン酸のミネラル吸収促進

効果に関する研究

2019年

岐 阜 大 学 大 学 院 連 合 農 学 研 究 科

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ラットにおけるマルトビオン酸のミネラル吸収促進

効果に関する研究

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i

次 ⅰ

略号一覧 ⅳ 第1章 緒論 1 第 2 章 ラットのカルシウム吸収に対するマルトビオン酸の 有効性評価実験(Exp. 1) 第 1 節 緒言 5 第 2 節 動物実験方法 5 第 3 節 各サンプルの調製法および分析方法 7 第 4 節 統計解析 14 第 5 節 結果 14 第 6 節 考察 16 第 3 章 ラットのカルシウムおよびマグネシウム吸収に対する マルトビオン酸の有効性評価実験(Exp. 2) 第 1 節 緒言 24 第 2 節 動物実験方法 24 第 3 節 各サンプルの調製法および分析方法 26 第 4 節 統計解析 28 第 5 節 結果 28 第 6 節 考察 30

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ii 第 4 章 ラット腸管反転サック法によるマルトビオン酸の カルシウム吸収増進効果の検証(Exp. 3) 第 1 節 緒言 38 第 2 節 動物実験方法 38 第 3 節 統計解析 39 第 4 節 結果 40 第 5 節 考察 40 第 5 章 ラット空腸結紮ループによるマルトビオン酸カルシウムの 吸収性評価(Exp. 4) 第 1 節 緒言 43 第 2 節 動物実験方法 43 第 3 節 統計解析 45 第 4 節 結果 45 第 5 節 考察 45 第 6 章 ラットにおける潜在性鉄欠乏状態からのマルトビオン酸による 早期回復の検証(Exp. 5) 第 1 節 緒言 49 第 2 節 動物実験方法 49 第 3 節 各サンプルの調製法および分析方法 51 第 4 節 統計解析 52

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iii 第 5 節 結果 52 第 6 節 考察 53 第 7 章 ラットにおける鉄欠乏性貧血状態からのマルトビオン酸による 早期回復効果の検証(Exp. 6) 第 1 節 緒言 59 第 2 節 動物実験方法 59 第 3 節 各サンプルの調製法および分析方法 61 第 4 節 統計解析 61 第 5 節 結果 62 第 6 節 考察 63 第 8 章 総括 70 結論 74 謝辞 75 参考文献 77

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iv

略語一覧

Ca calcium Fe iron GLC gas-liquid chromatography Hb hemoglobin Ht hematocrit

ICP-OES inductivity coupled plasma optical emission spectrometer Mg magnesium

OCPC o-cresolphthalein complexone SCFA short-chain fatty acid

SE standard error

SI serum-iron concentration Tg glass transition temperature TIBC total ironbinding capacity TSAT transferrin saturation

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1

1 章 緒論

栄養素の供給の多寡はヒトの健康に少なからず影響することから適切な摂取が望 まれる。日本人の食事摂取基準では,年齢階層別に食事摂取基準が設けられ,ライフ ステージ毎に目標が定められている(厚生労働省 2015)。こうした目標の達成状況は, 国民栄養調査により窺い知ることができるが,多くの栄養素の摂取状況が良好な中で, ミネラルであるカルシウム(Ca),マグネシウム(Mg),鉄は殆どの年齢階層において 食事摂取基準を満たしておらず,ヒトの寿命が延びる一方で,健康寿命を脅かす要因 の一つとなっている。 Ca は,有機物を構成する炭素,水素,酸素,窒素に次いで人体に 5 番目に豊富な元 素であり,体内において歯や骨の形成,血液凝固,神経筋興奮,酵素活性などの生理 的に重要な営み,作用に関わっている。ヒトの寿命が延びる一方で,Ca 栄養不足に伴 う老年期の骨粗鬆症は主要な公衆衛生問題となっており(Cumming と Nevitt 1997, Welten ら 1995),日本でのその患者数は 1,300 万人と推測されている(Yoshimura ら 2009)。特に,若い世代における絶対的な骨量の低下は同世代における Ca の確保が不 十分な状況を反映しており,こうした世代が高齢化を迎えた時にはより深刻な状況を 生むと考えられる(Ohta ら 2016)。従って,早い時期から Ca 栄養状態を良く保つこ とが健康寿命の増進に重要である(Nakamura ら 2009)。 Mg は,約 50~60%が Ca とともに骨に貯蔵され,約 40%が筋肉などの他の組織に分 布している。細胞内の Mg は神経伝達の制御,血圧調節,血糖調節などの生理機能の 制御において重要な役割を果たしている。一方で Mg 不足は糖尿病,高血圧,片頭痛

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などの関連が指摘されている(Nanri ら 2010,Guerrera ら 2009,Kokubo ら 2018)。 鉄は,酸素の運搬,酸化還元反応,核酸合成など多くの生命活動に利用されている (Hentze ら 2010)。鉄欠乏性貧血は世界中で頻発しており,各国で様々な対策講じら れている栄養素欠乏症の一つである(Coad と Pedley 2014)。日本においても 1,000 万以上の日本人が鉄欠乏貧血にあると推測されている(Hayashi ら 2008)。特に若年 者の貧血は増加し続けており,鉄欠乏性貧血のみならず,潜在性鉄欠乏を含めた割合 が高いことが問題となっている(Kusumi ら 2006)。鉄欠乏性貧血では,組織の低酸素 状態によって倦怠感,頭痛,動悸などの上昇が発生する。また鉄欠乏の症状は貧血だ けにとどまらない。長期にわたる鉄欠乏状態は,下乳頭萎縮,口角炎などを引き起こ すことが知られている(Lee 1999)。加えて神経症状や精神症状との関連も報告され. 例えばむずむず脚症候群が鉄欠乏貧血と関連するという疫学的な証拠が示されてい る(Algarín ら 2013)。 一般に食品中のミネラル成分の多くは不溶性塩の形で存在しており,そのままの形 では吸収されず,胃酸などによってミネラルがイオン化された後に主に小腸より吸収 される。例えば,溶解度の高い Ca 塩ほど吸収増進効果を有するとの報告があり (Levenson と Bockman 1994,Spencer ら 1966,Hämäläinen 1994),従って水に対す る溶解度は非常に低い炭酸 Ca は Ca 吸収性に乏しく Ca 強化素材としては課題が残る。

以前は,食物繊維の負の作用としてミネラルに対する吸収阻害作用があるものと信 じられてきた(Schrijver と Conrad 1992)。しかしながら食物繊維を含む多くの難消 化性糖類がむしろミネラルの吸収に対して促進的に働いていることが近年の研究で 明らかとされている。食物繊維やオリゴ糖をはじめとする難消化性糖類は,大腸にお

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3 いて腸内細菌により発酵を受け,酢酸やプロピオン酸,n-酪酸などの短鎖脂肪酸 (SCFA),あるいは乳酸やコハク酸を産生し,管腔を酸性化して可溶性 Ca を増やすこ とで Ca 吸収を亢進させる。また,大腸発酵による Ca 吸収の促進は,可溶性 Ca の増 加だけではない。ヒト結腸に Ca 溶液を投与した場合,その吸収は SCFA の同時投与で 増加すること(Trinidad ら 1996),難消化性オリゴ糖を摂取していたラットの大腸粘 膜の Ca 吸収速度は,摂取していないラットの粘膜よりも速いことが示されている (Mineo 2006)。これらの報告では,Ca イオンを使うために可溶化とは無関係であり, 大腸粘膜面積の増大が吸収亢進の大きな要因であることを示唆している。発酵産物の 一つである酪酸には消化管粘膜増殖の促進作用が知られており(Sakata 1987),また, 酢酸においても大腸内発酵の促進による盲腸組織の肥大に伴う,腸管上皮細胞の表面 積の増大が報告されている(Kishi ら 1999)。 グルコン酸にグルコースが α-1,4 結合したマルトビオン酸(4-O-α-D-グルコピラ ノシル-D-グルコン酸:Fig. 1)は蜂蜜に存在する難消化性の二糖類であり,分子内に 複数の水酸基と一個のカルボキシル基を有しているため,糖質としての性質と,酸と しての性質を併せ持っている。マルトビオン酸は,無機カチオンと安定な塩を形成す る特徴を持ち,マルトビオン酸に Ca が付与されたマルトビオン酸 Ca は,水に対する 溶解度が既存の Ca 素材と比較して極めて高い(Table 1)。マルトビオン酸 Ca の物性 面の特徴として,Ca 特異的苦味が極めて弱いこと、ガラス転移温度(Tg)が高く (anhydrous Tg = 145℃)相対湿度の高い条件下でも非結晶性であることが判っている が(Fukami ら 2016),生理機能特性に関する知見は殆どない。そこで,本研究におい ては,マルトビオン酸のミネラル吸収促進効果について検討することを目的とした。

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Figure. 1 Structure of maltobionic acid

Table 1 Solubility of several calcium sources in water

(g / 100 mL) (g Calcium / 100 mL)

Calcium carbonate 40.0 0.0014 0.00056

Calcium citrate (tetrahydrate) 21.1 0.096 0.002

Calcium lactate (pentahydrate) 13.0 8.1 1.05

Calcium gluconate (monohydrate) 8.9 2.9 0.26

Calcium maltobionate 5.3 130 < 6.9 <

Each calcium salt was gradually added to 100 ml of distilled water under stirring at 25℃ until solubility limit.

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2 章 ラットの Ca 吸収に対するマルトビオン酸の有効性評価実験

Exp. 1)

第1節 緒言 日本において食品中のミネラルは不溶性塩の形態をとっており,消化管で如何に可 溶 化 ( イ オ ン 化 ) さ れ る か が , そ の ミ ネ ラ ル の 吸 収 率 お よ び 生 体 内 利 用 性 (bioavailability)を決定することになることが知られている。従って,溶解度の高 い無機塩ほど吸収増進効果を有するとの報告がある(Levenson と Bockman 1994, Spencer ら 1966,Hämäläinen 1994)。そこで本章では,水に対する溶解度が非常に優 れるマルトビオン酸 Ca と,食品中に Ca 強化目的で広く用いられている,リン酸 Ca, 炭酸 Ca およびグルコン酸 Ca との生体内利用性の違いについて検討した。 第 2 節 動物実験方法 2-1 実験動物 実験動物は,6週齢の Wistar/ST 系 Clean 雄ラット(体重 160~180 g)を日本エ スエルシー株式会社から購入した。なお本動物実験は,「岐阜大学動物実験指針」なら びに実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準(平成 18 年 4 月 18 日環 境省告示第 88 号)に則り,岐阜大学動物実験委員会の承認(承認番号 10002)を得 て実施した。 2-2 マルトビオン酸 Ca の調製

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6 マルトビオン酸(純度 99%・サンエイ糖化株式会社)を蒸留水で終濃度 40%(W/W) 溶液 500 g となるよう調製し,炭酸 Ca(和光純薬株式会社)27.9 g を添加後,50℃ で 2 時間撹拌した。反応終了後の溶液を 0.2 ㎛メンブレンフィルター(株式会社アド バンテック)で濾過後,凍結乾燥(東京理化器械・FDU-1110)し,マルトビオン酸 Ca の非晶質粉末サンプル 200 g(Ca 含有量:5.3%(W/W),水分含有量:2.5%(W/W))を 調製した。 2-3 実験飼料の調製 試験飼育の飼料組成を Table 2-1 に示した。飼料中の Ca 源として,AIN-76 ミネラ ル混合で用いられているリン酸水素 Ca(コントロール群)を対照に,炭酸 Ca,グル コン酸 Ca,マルトビオン酸 Ca の計 4 種を用いた。また飼料中の Ca 含量は日本人にお ける Ca 不足を想定し,今回は通常飼料の 59%量とした。すなわち飼料中のマルトビ オン酸 Ca の添加量は 5.40%(マルトビオン酸として 5.00%(W/W))とし,リン酸水 素 Ca(ナカライテスク株式会社)1.20%,炭酸 Ca(ナカライテスク株式会社)0.70%, グルコン酸 Ca(扶桑化学工業株式会社)3.13%(グルコン酸として 2.74%(W/W))と した。また,飼料成分のうち,スクロースおよび大豆油はナカライテスク株式会社, 重酒石酸コリンは和光純薬工業株式会社,その他飼料素材はオリエンタル酵母工業株 式会社製を使用した。 2-4 動物実験方法 ラット(24 匹)はステンレス製個別ゲージに入れ,実験環境に慣らすために 7 日

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7 間,AIN-76 標準飼料を用いて予備飼育を行い,各実験群の平均体重が等しくなるよう に群分け(n=6)を行い,21 日間試験飼育を行った。なお,各群の Ca 摂取量を合わ せるためにペアフィーディングを行い,飲料水はイオン交換水を与え自由摂水とした。 飼育室の温度は,23±1℃,明暗 12 時間サイクル(明期 6:00 am~6:00 pm)とした。 試験期間中の体重および飼料摂取量は毎日測定した。実験飼料投与後 3~5 日目(1 週 目),10~12 日目(2 週目),17~19 日目(3 週目)の 3 日間,計 3 回糞尿を回収し, 糞は凍結乾燥後,ミルサー720G-W(Iwatani)で粉砕し,尿は 1,500×g,4℃にて 15 分間遠心分離した後上清を採取し,それぞれ Ca の測定に供した。 2-5 解剖 ラットは本飼育開始後,22 日目の 9:30 にエーテル麻酔下で開腹し,ヘパリン処理 したシリンジを用いて腹部大動脈から採血し脱血死させた。次に,肝臓を採取して重 量を測定後,盲腸の両側を内容物が漏れ出さないように絹製縫合糸で縛り摘出し,総 重量を測定して内容物を採取した後に生理食塩水(0.90% NaCl)で洗浄をして,余分 な水分はキムワイプを用いて拭き取り,盲腸組織重量を測定した。なお盲腸内容物重 量は両者の差異から求めた。盲腸内容物はガスクロマトグラフィー(GLC)による SCFA の分析に供した。 第 3 節 各サンプルの調製法および分析方法 3-1 盲腸内容物の分析法 3-1-1 盲腸内容物中の SCFA の測定

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盲腸内容物は Rémesy と Démigne(1974)の方法に従い,その中の SCFA 量を GLC に て以下のように定量した。 3-1-1-1 盲腸内容物サンプルの調製法 ①試 薬 ・99% エタノール ・40 mM クロトン酸 以上の試薬はナカライテスク株式会社より購入した。 ②方 法 盲腸内容物 0.5 g を中試験管(ψ12.5 mm×105 mm)に採取し,盲腸内容物 0.5 g に対し,エタノール 2.5 mL および,内部標準として 40 mM クロトン酸 125 µL を加 えた。それは HITACHI HG30 型ホモジナイザーにてホモジナイズした後,2,000×g, 4 ℃で 15 分間遠心分離した。 3-1-1-2 盲腸内容物中の SCFA 量の測定 ①試 薬 ・0.2 M 水酸化ナトリウム ・25% リン酸 以上に用いた試薬はすべてナカライテスク株式会社より購入した。 ②測定方法 ネジつき試験管(ψ16.0 mm×100 mm)に盲腸内容物のエタノール抽出液 1 mL と 0.2 mM NaOH 20 µL を加え,よく攪拌し,ロータリーエバポレーターにより 20℃で濃

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9 縮乾固した。GLC による分析の数分前に,濃縮乾固したサンプルに,100 µL のイオン 交換水を加えて十分に溶解した。カラムに注入する直前に、,5%リン酸 33 µL を加え, よく攪拌した後,メンブランフィルター(ナカライテスク株式会社,コスモナイスフ ィルター W,0.45 µm,直径 13 mm)でろ過し,直ちにその 1 µL を GLC 分析に供した。 以上の操作を Scheme 2-2 に示した。 3-1-1-3 SCFA 標準物質の比感度の測定 ①標準物質 標準物質として酢酸,プロピオン酸,iso-酪酸,n-酪酸,iso-吉草酸、n-吉草酸, n-カプロン酸を用い,内部標準物質として,通常では盲腸中に存在しないクロトン酸 を用いた。なお,これらの試薬はすべてナカライテスク株式会社より購入した。 ②標準物質の調製法 酢酸,プロピオン酸,iso-酪酸,n-酪酸,iso-吉草酸,n-吉草酸,クロトン酸は 40 mM となるように調製し,n-カプロン酸は溶けにくいため 10 mM となるよう調製した。 酢酸,プロピオン酸,iso-酪酸,n-酪酸,iso-吉草酸,n-吉草酸,クロトン酸をそれ ぞれ 100 µL,n-カプロン酸を 400 µL を試験管に採取し,0.2 M NaOH 20 µL を加えよ く混合した。以後の操作は盲腸内容物中の SCFA 測定に準じて行った。各ピーク面積 をもとに各 SCFA のクロトン酸に対する比感度を測定した。酢酸,プロピオン酸, iso-酪酸,n-酪酸,iso-吉草酸,n-吉草酸,n-カプロン酸のクロトン酸に対する比感度の 平均(n=4)は,それぞれ 0.276,0.442,0.830,0.899,1.045,0.963,1.134 であっ た。

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10 3-1-1-4 GLC の分析装置 ガスクロマトグラフは島津 GC-14 A (FID)を,データ処理装置は島津 C-R6 A CHROMATOPAC を使用した。 3-1-1-5 GLC 分析条件 GLC の分析条件は以下の通りである。

Column :CBP20-M25-025 25 m×0.25 mm ψdf0.2 µm,Fused silica Column Temp. :100℃→2℃/min→ 120℃ (10 min)

Injector Temp. :200℃

Carrier Gas :N₂ 60 mL/min Make up Gas :N₂ 25 mL/min Detector :FID

Split Ratio :1:50 Injection Mode :Split

3-1-2 盲腸内容物中の pH 測定

盲腸内容物をイオン交換水で約 5 倍容に希釈した後,HORIBA,twin pH B-212 にて pH を測定した。

3-2 乾燥糞のサンプル調製および分析方法 3-2-1 凍結乾燥糞サンプルの調製法

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チェック付ポリ袋へ回収した糞を-20℃で凍結乾燥を行うまで,予備凍結を行った。 予備凍結糞をろ紙(ADVANTEC,Grade 50)で作成した封筒に入れ,予冷した凍結乾燥 機(ANELVA,BIO FREEZE DRYER)にて-40℃で 48 時間凍結乾燥した。凍結乾燥後,食 品ミル(Iwatani,MILLSER,IFM-600DG)を用いて粉砕した。これをスピッツ管にとり, 分析に供するまで-20℃で凍結保存した。 3-2-2 糞中 Ca 量の測定 3-2-2-1 凍結乾燥糞の湿式灰化方法 ①試 薬 ・70% 過塩素酸 ・14 M 硝酸 ・6 M 塩酸 ・0.1 M 塩酸 以上に用いた試薬はすべてナカライテスク株式会社より購入した。 ②湿式灰化方法 粉砕処理した糞は,デジケーター内で解凍後,0.1 g をテフロンビーカーに精秤し た後 14 M 硝酸を 10 mL 入れ,時計皿でフタをして,ドラフト内に設置したホットプ レート(SANYO,HPS-HT1)にて 120℃ 60 分間加熱を行い,そこに 70% 過塩素酸 10 mL を加え 60 分間加熱後,更にフタをとり 60 分間加熱した。そして,6 M 塩酸を 1 mL 加え,フタをして 120 分間加熱後,6 M 塩酸 1 mL 入れフタをとった状態で 120 分間 加熱した。最後に,6 M 塩酸 5mL と 14 M 硝酸 1 mL を加え 60 分間加熱し放冷後,

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0.1 M 塩酸で 50 mL にメスアップした。なお,試薬を加える前に,突沸を防ぐため 10 分間室温で放冷した。

3-3 Ca の定量方法

Ca の定量は Harold ら(1966)の方法に従い,o-Cresolphthalein Complexone(OCPC) 法にて行った。 ①試 薬 ・除タンパク液(pH 5.2) 酢酸 0.3 mL と 1 M KOH 0.38 mL を混合し,純水で 100 mL に定容した。 ・エタノールアミン・ホウ酸緩衝液 ホウ酸 1.8 g を超純水 5.0 mL に加えよく混和してからエタノールアミンを 2.5 mL 加えた。更に攪拌して,エタノールアミンを 2.5 mL ずつ加え、50 mL にメスアッ プした。 ・0.08%(W/V)OCPC 液

Milli-Q 水 25 mL に 1 M KOH 0.5 mL 加え混合し,そこに OCPC 80 mg を攪拌して 溶解し,さらに純水 75 mL と酢酸 0.5 mL を加えた。 ・オキシキノリン液 8-ヒドロキシキノリン 5 g を 95% エタノール 100 mL に溶解した。 ・発色試薬 エタノールアミン・ホウ酸緩衝液 5 mL,オキシキノリン液 1.5 mL,0.08%(W/V) OCPC 液 5 mL を混合し純水を加えて 100 mL にメスアップした。

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13 ・1,000 ppm Ca 標準液 以上に用いた試薬はナカライテスク株式会社より購入した。 ②サンプルの調製および分析法 試料 0.2 mL に除タンパク液 1.8 mL を加えて混和し沸騰水浴中で 3 分間加熱した。 その後,ただちに 1,500×g,25℃,10 分間遠心分離(TOMY 精工,RS-20IV)した。そ してこの上清 0.5 mL を,分析に供する直前に発色試薬 5.0 mL を加えて混和し,570 nm における吸光度を測定した。 ③標準サンプルの調製法 1,000 ppm Ca 標準液を 5 倍(200 ppm),10 倍(100 ppm),20 倍(50 ppm),40 倍 (25 ppm)と純水で希釈し,検量線作成に使用した。 ④検量線の作成方法 段階希釈した Ca 標準液は,遠心分離を行わずに,灰化サンプルと同様の操作を行 い,検量線を作成した(2 連)。 3-4 尿中 Ca 量の測定 尿中 Ca 量は灰化を行わず,各週に採取した 3 日分の尿を解凍し,濃度を均一にし た上で 1 mL を取り,第 2 章 第 2 節 3-3 に準じて OCPC 法で Ca 含有量の測定を行っ た。 3-5 Ca 出納試験 3-5-1 飼料中の Ca 含有量の測定

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14 実験飼料中の Ca は第 2 章 第2 節 3-3 に準じて測定を行った。 3-5-2 Ca の消化吸収率および体内保留率の測定 Ca の見かけの吸収率および体内保留率は以下の式を用いて計算した。 見かけの Ca 吸収率(%)=100×{(Ca 摂取量-糞中 Ca 量)/(Ca 摂取量)} Ca 体内保留率(%)=100×{(Ca 摂取量-糞中 Ca 量-尿中 Ca 量)/(Ca 摂取量)} 第 4 節 統計解析 データは平均±標準誤差(SE)で表した。4 群のデータについてバートレット検定 により等分散の場合は一元配置の分散分析を行い,続いて Tukey の多重検定により解 析を行った。等分散でない場合は,ノンパラメトリック検定で行い,クラスカル・ウ ォリス検定を行い,続いて Steel-Dwass の多重検定により解析を行った。各群間で有 意差が生じた場合,アルファベットの小文字を平均値の右肩に記し,同じ文字を共有 しない群どうしにおいて有意差有りとした。また,高値を示した群から順に,アルフ ァベットの文字を適用した。解析には,エクセル 2010 およびエクセル統計 2012(株 式会社社会情報サービス,東京)を用い,いずれも有意な確率水準を 5%未満とした。 第 5 節 結果 5-1 成長パラメーター 最終体重,体重増加量,飼料摂取量,飼料効率を Table 2-2 に示した。各項目とも 群間に差は見られなかった。

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15 5-2 盲腸重量,盲腸内容物中の短鎖脂肪酸量,盲腸内 pH 盲腸組織重量,盲腸内容物湿重量,盲腸内容物 pH,盲腸内容物中の SCFA 量を Table 2-3 に示した。盲腸組織重量,盲腸内容物湿重量ともにコントロール群および炭酸 Ca 群に対して,マルトビオン酸 Ca 群で有意な増加が認められた。グルコン酸 Ca 群では, 盲腸組織重量は有意に増加したが,盲腸内容物重量は,有意な増加は確認されなかっ た。盲腸内容物 pH は各群間に有意な差はなかったが,マルトビオン酸 Ca 群が一番低 値を示した。盲腸当たりの総 SCFA 量は,コントロール群と比較し,マルトビオン酸 Ca 群で有意な高値を示し,酢酸,プロピオン酸,n-酪酸それぞれの盲腸当たり SCFA 量についても有意な増加が認められた。グルコン酸 Ca 群において,酢酸とn-酪酸で はコントロール群に対して有意な増加が見られたが,マルトビオン酸 Ca 群よりも低 い値であった。一方,炭酸 Ca 群では,コントロール群と変わらなかった。 5-3 試験期間中の Ca の見かけの吸収率,体内保留率の推移 試験期間中の Ca の見かけの吸収率の推移を Table 2-4 に,体内保留率の推移を Fig. 1 に示した。見かけの吸収率,体内保留率ともに,コントロール群と比較してマルト ビオン酸 Ca 群は全期間を通じて有意な高値を示した。またグルコン酸 Ca 群との比較 では飼育期間を通じてマルトビオン酸 Ca 群では高値を示し,第 2 週目においては, 有意に高かった。

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16 第 6 節 考察 食物から取り入れられた Ca は,胃酸によって可溶化され,イオン化した Ca は,十 二指腸および空腸上部では,主に Ca 結合タンパク質(calbindin D9k)が介在した能 動輸送経路にて,空腸下部および回腸では拡散輸送にて主に吸収される。しかしその 間に膵液や腸液により胃酸は徐々に中和され,pH の上昇に伴い共存するリン酸など と難溶性の塩を形成し,難吸収性となる。志賀ら(1987)は,ラットの各消化管内容 物の pH が,胃では pH が 約 3.5 まで低下したのに対し,回腸にまで達すると pH が 約 8.2 まで上昇することが報告している。従って小腸での Ca 吸収は,その腸管部位 における溶解性が大きく関係している。本試験において,今回用いた Ca 素材のうち, リン酸水素 Ca,炭酸 Ca の溶解性は低く,アルカリ pH 条件下では不溶性の塩を形成す る。従って,Ca 吸収率は低いと予想された。実際にこれらを投与した群では,Ca の 見かけの吸収率,体内保留率は,他の 2 群と比べて低いものであった。一方,Ca 可溶 化に優れるとされるグルコン酸 Ca や,マルトビオン酸 Ca を投与した群では,Ca の見 かけの吸収率,体内保留率ともに,コントロール群,炭酸 Ca 群に対して有意な高値 を示した。更に溶解度がグルコン酸より上回るマルトビオン酸 Ca 群の見かけの吸収 率,体内保留率はともに,全体としてグルコン酸 Ca 群を超えており,第 1 週と第 2 週においては,有意に高い値であった(Table 2-4,Fig. 2-1)。なお Ca 吸収率が全 体的に高いことについては,軽い制限給餌下において生体の Ca 要求性を満たすため に,腸管からの Ca 吸収率が自由摂食と比べて高くなったことが要因の一つであると 考えられる。 水溶性食物繊維やオリゴ糖をはじめとする難消化性糖類は,大腸において腸内細菌

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17 により発酵を受け,酢酸やプロピオン酸,n-酪酸などの SCFA,あるいは乳酸やコハク 酸といった有機酸を産生し,管腔を酸性化して腸内液体相の溶解 Ca 量を増加させる ことで,腸管吸収を促進することが報告されている(太田ら 1993,Yanahira ら 1997)。 また胃切除ラットを用いた,胃酸による可溶化を阻止したモデルにおいて,大腸内発 酵を促進し大腸内での可溶化を促進することで Ca 吸収の低下を軽減させることが難 消化性糖類であるフラクトオリゴ糖(Ohta ら 1998)や DFAⅢ (Shiga ら 2006),ポリ デキストロース(Mineo ら 2006)などで示されている。こうしたルミナコイド摂取時 には,小腸における Ca 可溶化自体を促進するわけではなく,Ca 吸収促進効果につい ては,盲腸以遠での Ca 可溶化促進がその作用メカニズムとして働いている。今回, マルトビオン酸 Ca の摂取による盲腸内 pH の有意な低下は見られなかったことから, こうしたルミナコイドのように盲腸以遠での寄与は小さいと考えられる。特に,マル トビオン酸 Ca の溶解性は,Table 1 に示したように Ca 供給素材の中でも圧倒的に高 く,ポジティブコントロールのグルコン酸 Ca よりも格段に高い。よってマルトビオ ン酸が腸管内で Ca の可溶化状態を維持したことで,管腔内の pH 条件に依存すること なく腸管全体で効率良く Ca 吸収を行った可能性がある。 また,マルトビオン酸 Ca 摂取群では,盲腸組織重量や盲腸内容物重量の有意な増 加が認められた。こうした挙動は,一般に盲腸内発酵が高い難消化性糖類を摂取した 時に見られる特徴である。小腸から大腸に移行したマルトビオン酸は,盲腸内発酵に 貢献し,盲腸内酢酸,プロピオン酸,n-酪酸量の有意な増加が認められた。n-酪酸に は消化管粘膜増殖の増進作用が知られており(Sakata 1987),マルトビオン酸 Ca の マルトビオン酸部分も大腸内発酵増進効果によるや大腸内環境の維持にも貢献する

(25)

18 と考えられる。 以上の結果をまとめると,マルトビオン酸に Ca を付与したマルトビオン酸 Ca は, ラットを用いた投与実験において非常に優れた Ca 吸収増進効果を有することが明ら かとなり, マルトビオン酸が腸管全体で Ca の可溶化状態を維持したことで,効率的 な Ca 吸収が行われたためと推測された。

(26)

19

Table 2-1 Composition of the experimental diets (g/100 g diet) (Exp. 1)

Ingredients Control 1) Calcium carbonate 1)  Calcium gluconate 1) Calcium maltobionate 1)

Casein 20.00 20.00 20.00 20.00 DL-Methionine 0.30 0.30 0.30 0.30 Choline bitartrate 0.20 0.20 0.20 0.20 Sucrose 50.55 49.83 47.40 45.13 α-Cornstarch 15.00 15.00 15.00 15.00 Cellulose powder 5.00 5.00 5.00 5.00 Soybean oil 5.00 5.00 5.00 5.00

AIN-76 Vitamin mixture 1.00 1.00 1.00 1.00

AIN-76 Ca-free Mineral mixture 2) 1.75 1.75 1.75 1.75

Dicalcium phosphate 1.20    ―    ―    ―

Calcium carbonate    ― 0.70    ―    ―

Calcium gluconate    ―    ― 3.13    ―

Calcium maltobionate    ―    ―    ― 5.40

Dipotassium hydrogenphosphate    ― 1.22 1.22 1.22

1) The content of calcium in each experimental diet was 59% level as compared to AIN-76 diet. The level was set as the maximum inclusion of calcium maltobionate which dose not cause diarrhea in rats.

(27)

20

Table 2-2 Growth parameters,food intake and feed efficiency of rats fed on the experimental diets (Exp. 1)

Control Calcium carbonate  Calcium gluconate Calcium maltobionate

Final body weight (g) 295±4 294.0±7 289±4 285±5

Body weight gain (g/day) 6.15±0.22 6.03±0.23 5.77±0.17 5.68±0.14

Food intake (g/day) 19.0±0.3 19.5±0.4 19.3±0.4 19.3±0.3

Feed efficiency 1) 0.324±0.010 0.308±0.007 0.300±0.004 0.295±0.004

Rats were fed the experimental diets in Table 2-1 for 21 days. Values are means±SE (n =6).

(28)

21

Table 2-3 Weight of cecal tissue and cecal content, pH of cecal content and amount of short-chain fatty acids

       in cecum of rats fed on the experimental diets (Exp. 1)

Control Calcium carbonate  Calcium gluconate  Calcium maltobionate

Cecal tissue (g) 0.68±0.01 c 0.73±0.02 b 0.83±0.04 a 1.11±0.05 a Cecal content (g) 1) 2.83±0.11 b 2.85±0.19 b 4.04±0.18 b 5.68±0.76 a pH of Cecal content 7.45±0.13 7.52±0.09 7.50±0.13 7.20±0.19 Acetate  (μmol/cecum) 200±20 b 206±26 ab 271±29 a 436±119 a Propionate (μmol/cecum) 75.2±6.4 b 78.9±7.9 b 88.6±15.8 b 172±44 a n -Butyrate (μmol/cecum) 24.3±3.8 b 25.1±2.8 b 58.2±8.3 a 66.7±1.9 a

Total SCFA 2) (μmol/cecum) 300±26 b 309±29 b 418±43 ab 675±171 a

Rats were fed the experimental diets in Table 2-1 for 21 days. On the final days of the test period, cecums were excised and short-chain fatty acids in each cecal content were analyzed by GLC as noted in Materials and Methods.

Values are means±SE (n =6).

Means in the same column not sharing the same superscript letter are significantly different at p<0.05. 1) Wet weight

(29)

22

Table 2-4 Apparent calcium absorption rate of the rats fed on the experimental diets (%) (Exp. 1)

Control Calcium carbonate  Calcium gluconate  Calcium maltobionate

Week 1 82.1±1.4 c 82.6±1.2 c 88.8±0.8 b 92.8±0.6 a

Week 2 79.4±1.2 b 81.6±1.9 b 83.7±2.3 b 89.7±1.2 a

Week 3 73.4±2.2 b 76.5±1.3 b 82.6±2.5 a 86.0±1.3 a

Rats were fed the experimental diets in Table 2-1 for 21 days. Feces were collected and calculated the apparent calcium absorption rate on days 3-5 (Week 1), days 10-12 (Week 2) and days 17-19 (Week 3).

Apparent calcium absorption rate (%) : [(total calcium intake - calcium excretion in feces)/total calcium intake]×100 Values are means±SE (n =6).

(30)

          )LJXUH   &DOFLXPUHWHQWLRQUDWHRIWKHUDWVIHGRQWKHH[SHULPHQWDOGLHWV    5DWVZHUHIHGWKHH[SHULPHQWDOGLHWVLQ7DEOHIRUGD\V)HFHVDQGXULQHZHUHFROOHFWHGDQGFDOFXODWHGWKH  FDOFLXPUHWHQWLRQUDWHRQGD\V :HHN GD\V :HHN DQGGD\V :HHN  

ڹ&RQWURO GLFDOFLXPSKRVSKDWH  ڦFDOFLXPFDUERQDWHࠐ FDOFLXPJOXFRQDWH ەFDOFLXPPDOWRELRQDWH

 &DOFLXPUHWHQWLRQUDWH   㹙 WRWDOFDOFLXPLQWDNHFDOFLXPH[FUHWLRQLQIHFHVDQGXULQH WRWDOFDOFLXP  LQWDNH㹛î  9DOXHVDUHPHDQV“6( Q  0HDQVLQWKHVDPHZHHNQRWVKDULQJWKHFRPPRQVXSHUVFULSWOHWWHUDUH  VLJQLILFDQWO\GLIIHUHQWDWS 

(31)

24

3 章 ラットの Ca および Mg 吸収に対するマルトビオン酸の有効性評

価実験(

Exp. 2)

第1節 緒言 炭酸 Ca は非常に安価な Ca 素材として 菓子,乳飲料,パン,麺類 など Ca 強化食 品中に最も広く利用されており,日本での年間使用量は 13,000 トンにも及ぶ (Miyagawa 2017)。前章で述べた通り,各無機塩の水に対する溶解度と腸管吸収効率 には正の相関を有することが知られている。よって溶解度が非常に低い炭酸 Ca は Ca 吸収性に乏しく Ca 強化素材としては課題が残る。第 2 章では,マルトビオン酸 Ca は 炭酸 Ca やグルコン酸 Ca と比較し,有意に高い Ca 吸収率であることを示した。そこ で炭酸 Ca を溶解性に優れるマルトビオン酸 Ca で置き換えた飼料をラットへ投与した 際の,Ca および Mg 吸収増進効果について検討することを目的とした。 第 2 節 動物実験方法 2-1 実験動物 実験動物は,5週齢の Wistar/ST 系 Clean 雄ラット(体重 120~140 g)を日本エ スエルシー株式会社から購入した。 2-2 マルトビオン酸 Ca の調製 飼料中に用いたマルトビオン酸 Ca は,第 2 章 第 2 節 2-2 準じて調製した。

(32)

25 2-3 実験飼料の調製 試験飼育の飼料組成を Table 3-1 に示した。飼料は AIN-76 飼料組成を一部改変し, Ca 源として炭酸 Ca のみで調製した飼料(Control:C 群),炭酸 Ca の Ca 相当量の 25% をマルトビオン酸 Ca に置換えて調製した飼料(MBCa-25 群),50%を置換えた飼料 (MBCa-50 群),そして全てを置換えた飼料(MBCa-100 群)の計 4 種を用いた。また,飼 料中の Ca 含量は日本人における Ca 摂取不足を想定し,今回は通常飼料の 50%量とし た。また飼料成分の購入先は第 2 章 第 2 節 2-3 に準じた 2-4 動物実験方法 試験飼育期間中の体重および飼料摂取量は毎日測定した。実験飼料投与後 3~5 日 目(1 週目),10~12 日目(2 週目),17~19 日目(3 週目),24~26 日目(4 週目)の 3 日間,計 4 回糞尿を回収し,糞は凍結乾燥後にミルサー(IFM-600DG,岩谷産業,大 阪,日本)で粉砕し,尿は 1,500×g,4℃にて 15 分間遠心分離した後上清を採取し, それぞれ Ca および Mg の測定に供した。 2-5 解剖 ラットは本飼育開始後 29 日目の 9:30 am にペントバルビタールナトリウム(共立 製薬,東京,日本)麻酔下で開腹後,ヘパリン処理したシリンジを用いて腹部大動脈 から採血後,頸椎脱臼により安楽死させた。小腸(空腸+回腸)は取り出し内容物を 採取した。盲腸は総重量を測定して内容物を採取した後に生理食塩水で洗浄後,盲腸 組織重量を測定し,その差から盲腸内容物重量を求めた。盲腸内容物の pH は採取後

(33)

26 一部をすぐに 5 倍量のイオン交換水で希釈し,コンパクト pH メーター(B-212,堀場 製作所,京都,日本)で測定した。残りの盲腸内容物は,SCFA の測定および Ca の可 溶化率の測定に供した。また左大腿骨は膝関節部と骨盤ヒンジ骨より脱離した大腿骨 から骨膜と腱を除去した後,骨長はノギスを用いて測定し,110℃で 15 時間乾燥させ, 乾燥重量を測定した。 第 3 節 各サンプルの調製法および分析方法 3-1 盲腸内容物の分析法 3-1-1 盲腸内容物中の SCFA 量の測定 第 2 章 第3節 3-1-1 に準じた。 3-1-2 盲腸内容物中の pH 測定 第 2 章 第3節 3-1-2 に準じた。 3-2 乾燥糞のサンプル調製および分析方法 3-2-1 凍結乾燥糞サンプルの調製法 第 2 章 第3節 3-2-1 に準じた。 3-3 Ca の定量方法 第 2 章 第3節 3-3 に準じた。

(34)

27 3-4 Mg の定量方法 Mg の定量は高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-OES; Optima7300DV, Perkin Elmer,米国)にて定量を行った。 3-4 尿中 Ca および Mg 量の測定 第 2 章 第3節 3-4 に準じた。 3-5 Ca および出納試験 3-5-1 飼料中の Ca および Mg 含有量の測定 実験飼料を,Ca および Mg 量は第 2 章 第2 節 3-3 に準じて測定を行った。 3-5-2 Ca および Mg の体内保留率の測定 Ca および Mg の体内保留率は以下の式を用いて計算した。 Ca 体内保留率(%)=100×{(Ca 摂取量-糞中 Ca 量-尿中 Ca 量)/(Ca 摂取量)} Mg 体内保留率(%)=100×{(Mg 摂取量-糞中 Mg 量-尿中 Mg 量)/(Mg 摂取量)} 3-6 小腸内容物および盲腸内容物中の Ca 可溶化率の測定 小腸内容物および盲腸内容物 0.1gを秤りとり,0.4 mL のイオン交換水で懸濁した 後,ホモジナイズ(HG-30,日立工機,東京,日本)した。小腸内容物および盲腸内容物 中の総 Ca 量は湿式灰化後,OCPC 法で測定した。ホモジネートを超遠心(30,000×g 20 分,4℃)した上清は, Ca 可溶化率を以下の式を用いて計算した。

(35)

28 小腸内容物中 Ca の可溶化率(%)={(盲腸内容物中の液相部分の Ca 量)/(盲腸内容物 中の総 Ca 量)}×100 盲腸内容物中 Ca の可溶化率(%)={(盲腸内容物中の液相部分の Ca 量)/(盲腸内容物 中の総 Ca 量)}×100 第 4 節 統計解析 第 2 章 第 4 節に準じた。 第 5 節 結果 5-1 成長パラメーター 最終体重,体重増加量,飼料摂取量,飼料効率を Table 3-2 に示した。各項目とも 群間に差は見られなかった。 5-2 盲腸重量,盲腸内容物中の SCFA 量 盲腸組織重量,盲腸内容物湿重量,盲腸内容物 pH,盲腸内容物中の SCFA 量を Table 3-3 に示した。盲腸組織重量,盲腸内容物重量ともに C 群に対して,MBCa-100%群で有 意な増加が認められた。また盲腸当たりの総 SCFA 量は,C 群と比較し,MBCa-50 群, MBCa-100 群で有意な高値を示し,酢酸およびプロピオン酸の盲腸当たりの SCFA 量に ついても MBCa-50 群,MBCa-100 群で有意な増加が認められた。

(36)

29 5-3 試験期間中の Ca および Mg の体内保留率の推移 試験期間中の Ca および Mg の体内保留率の推移を Fig. 3-a,Fig. 3-b に示した。 Ca の体内保留率は,C 群と比較してマルトビオン酸 Ca の置換えが 25%を越える群で 全期間を通して有意な上昇が観察された。Mg の体内保留率は C 群と比較して,1 週目 においてはマルトビオン酸 Ca の置換えが 50%を越える群で,そして 2 週目以降は, 25%置換え以上で有意に高い値であった。またこれらの体内保留率の増加はマルトビ オン酸 Ca への置換え割合が高くなるにつれて顕著であった。 5-4 小腸内容物および盲腸内容物中の Ca 可溶化率と内容物 pH 小腸内容物および盲腸内容物中の可溶化 Ca の割合および内容物 pH を Table 3-4 に 示す。小腸内容物および盲腸内容物ともに,C 群と比較して MBCa-100 群の Ca 可溶化 率は,有意に高い値を示した。また MBCa-25 群および MBCa-50 群においては有意では ないものの,C 群と比較して高値であった。内容物中 pH は,空腸,回腸,盲腸ともに 群間で差は見られなかった。 5-5 左大腿骨の骨重量,骨長,骨中 Ca 量 左大腿骨の骨長,骨重量,骨中 Ca 量を Table 3-5 に示した。骨重量,骨長につい ては差が見られなかったが,骨中 Ca 量は,C 群に比べマルトビオン酸 Ca の置換えが 50%を越える群で有意に高い値を示した。

(37)

30 第 6 節 考察 第 3 章では,食品中への Ca 強化目的として安価で広く使用されている炭酸 Ca をマ ルトビオン酸 Ca に置き換えた際の Ca および Mg の吸収効率について検証を行った。 C 群の飼料として用いた炭酸 Ca の溶解性は低く,アルカリ pH 条件下では不溶性の 塩を形成する。従って,Ca や Mg の体内保留率は低いと予想された。実際に不溶性の 炭酸 Ca から,Ca の可溶化に優れるマルトビオン酸 Ca へ 25%以上置換えた群の Ca 体 内保留率は,C 群と比較して全期間を通して有意な高値を示した。更に大腿骨中 Ca 量 も,C 群に比べマルトビオン酸 Ca の置換えが 50%以上の群で有意に高い値を示した。 よって炭酸 Ca の一部をマルトビオン酸 Ca に置換えするだけでも Ca の吸収増進効果 を発揮し,また効率的に腸管吸収された Ca は体外に排泄されることなく骨形成に向 かうことが推測された。 Mg の体内保留率についてはマルトビオン酸 Ca を 25%以上置き換えることで摂取 2 週目以降において有意に高い値を示した(Fig.3-b)。Mg は正常な骨代謝や体内の Ca 濃度の調節など,Ca 代謝に密接に関与していることが知られており,マルトビオン酸 は Ca だけではなく Mg 吸収増進効果を併せ持つことが明らかとなった。 今回,マルトビオン酸 Ca の摂取による盲腸内の有意な pH 低下は見られず,従来の フラクトオリゴ糖をはじめとした難消化性オリゴ糖のミネラル吸収増進機構とは異 なり,マルトビオン酸 Ca を摂取し吸収を免れたマルトビオン酸が腸管内に存在し, Ca および Mg の可溶化状態を維持し腸管全体で効率良く腸管吸収が行われたと考えら れる。それらを裏付ける結果として,マルトビオン酸 Ca 摂取により,小腸および盲 腸内容物中の pH に差がない一方で,Ca および Mg 可溶化率は C 群と比較して有意に

(38)

31 高い可溶化状態を維持していた。 以上の結果をまとめると,吸収性に乏しい炭酸 Ca の一部をマルトビオン酸 Ca に置 換えるだけで非常に優れた Ca や Mg の吸収増進効果および大腿骨中の Ca 量を高める ことが明らかとなり, これらの結果はマルトビオン酸が腸管全体で Ca や Mg 可溶化 状態を維持したことで,効率的な Ca や Mg 吸収が行われたためと推測された。

(39)

        

(40)

33

Table 3-2 Growth parameters,food intake and feed efficiency of rats fed the experimental diets (Exp. 2)

Final body weight (g) 309 ±5 312 ±6 307 ±7 313 ±5

Body weight gain (g/day)4.15 ± 0.13 4.24 ± 0.13 4.08 ± 0.18 4.30 ± 0.09

Food intake (g/day) 15.9 ± 0.2 15.9 ± 0.2 15.8 ± 0.2 15.9 ± 0.2

Feed efficiency 1) 0.262 ±0.006 0.266 ± 0.006 0.258 ± 0.009 0.270 ±0.004 Rats were fed the experimental diets listed in Table 1 for 28 d. Values are means±SE (n =7).

1) Feed efficiency = body weight gain/food intake

(41)

34

Table 3-3 Weight of cecal tissue and cecal contents and amount of short-chain fatty acids in the cecal content        of rats fed the experimental diets (Exp. 2)

Cecal tissue (g) 0.94 ±0.01 b 1.04 ±0.02 ab 1.13 ±0.04 ab 1.28 ±0.04 a Cecal contents (g) 1) 2.34 ± 0.24 b 3.31 ± 0.37 ab 3.43 ± 0.39 ab 4.61 ± 0.28 a Acetate  (μmol/cecum)269 ± 31 b 283 ± 35 ab 504 ± 69 a 510 ± 44 a Propionate (μmol/cecum)36.8 ± 4.3 b 44.7 ± 6.9 b 72.6 ± 10.3 a 84.6 ± 6.8 a n -Butyrate (μmol/cecum)13.7 ± 2.1 b 13.8 ± 2.3 b 17.2 ± 3.3 ab 19.7 ± 1.9 b Total SCFA 2) (μmol/cecum)319 ± 37 b 345 ± 45 b 590 ± 86 a 615 ± 52 a

Rats were fed the experimental diets listed in Table 1 for 28 d. On the final day of the experimental period, ceca were excised and SCFAs in each cecal content sample were analyzed by gas-liquid

chromatography as noted in Materials and Methods. Data are means±SE (n =7).

Means in the same row not sharing the same superscript letter are significantly different at p <0.05.

1) Wet weight

2) Total SCFA = acetate + propionate + n -butyrate

(42)

35

Table 3-4 Ratios of soluble calcium and pH in the small intestinal to that in cecal contents of rats fed the experimental diets (Exp. 2) Ratios of soluble calcium (%)

Small intestinal contents 1) 45.3 ±3.5 b 50.1 ±4.1 ab 53.2 ±3.7 ab 63.1 ±4.0 a

Cecal contents 23.1 ± 1.7 b 28.3 ± 2.5 ab 34.1 ± 1.7 ab 40.2 ± 3.5 a pH in intestinal and cecal contents

Jejunal contents 6.97 ± 0.14 6.94 ± 0.10 6.94 ± 0.10 7.06 ± 0.15 Ileal contents 7.69 ± 0.10 7.57 ± 0.16 7.83 ± 0.08 7.71 ± 0.25 Cecal contents 7.57 ± 0.08 7.53 ± 0.15 7.33 ± 0.11 7.44 ± 0.08 Data are means±SE (n =7).

Ratios of soluble calcium in the small intestine to that in cecal contents (%) =

[(calcium dissolved in liquid part of small intestine or cecal contents) / (total calcium of small intestine or cecal contents)]× 100 Means in the same row not sharing the same superscript letter are significantly different at p <0.05.

1) Small intestine contents = Jejunal contents + Ileal contents

(43)

36

Table 3-5 Weight, length and calcium content of Ca of left femur of rats fed the experimental diet (Exp. 2)

Dry weight (g) 0.502 ±0.004 0.489 ±0.008 0.508 ±0.003 0.510 ±0.005

Length (cm) 3.52 ±0.04 3.42 ±0.01 3.56 ±0.01 3.57 ±0.01

Ca content (mg / left femur) 94.8 ± 1.7 b 103 ± 0.7 ab 104 ± 0.8 ab 107 ± 1.9 a

Rats were fed the experimental diets listed in Table 1 for 28 d. Data are means±SE (n =7).

Means in the same row not sharing the same superscript letter are significantly different (p <0.05).

(44)

           5DWVZHUHIHGWKHH[SHULPHQWDOGLHWVLQ7DEOHIRUGD\V)HFHVZHUHFROOHFWHGDQGFDOFXODWHGWKH UHWHQWLRQUDWHRQGD\V :HHN GD\V :HHN GD\V :HHN DQGGD\V :HHN  ○&RQWURO▲0%&D؜■0%&D●0%&D9DOXHVDUHPHDQV“6( Q   0HDQVLQWKHVDPHFROXPQQRWVKDULQJWKHVDPHVXSHUVFULSWOHWWHUDUHVLJQLILFDQWO\GLIIHUHQWDWS  )LJXUH&DOFLXP D DQGPDJQHVLXP E UHWHQWLRQUDWHVRIUDWVIHGWKHH[SHULPHQWDOGLHWV

(45)

38

4 章 ラット腸管反転サック法によるマルトビオン酸の Ca 吸収増進効

果の検証(

Exp. 3)

第 1 節 緒言 第 2 章,第 3 章においてマルトビオン酸は,消化吸収率,体内保留率の観点から非 常に優れたミネラル吸収増進作用を有する糖質であることが明らかとなった。しかし ながら,マルトビオン酸の腸管での具体的な吸収促進部位や吸収増進機構については 明らかとなっていない。このような腸管吸収を考察する際に有用な実験手法の一つと して腸管反転サック法がある。この手法はin vitro における物質の腸管吸収を測定 する方法として広く使用されてきた(Wilson と Wiseman 1954)。 そこで第 4 章では,炭酸 Ca とマルトビオン酸 Ca の腸管吸収効率の比較を,腸管反 転サック法を用いてin vitro 系にて検証することを目的とした。 第 2 節 動物実験方法 2-1 実験動物 実験動物は,6 週齢の Wistar/ST 系 Clean 雄ラット(体重 160~180 g)を日本エス エルシー株式会社から購入した。 2-2 飼育方法と腸管反転サック法による評価方法 ラットは 5 連の個別ゲージに入れ,実験環境に慣らすために 3 日間,AIN-76 標準飼 料と水道水を自由摂取させた。そして解剖 24 時間前に,絶食させ,水道水のみを与

(46)

39 えた。なお,飼育室の温度は,23±1℃,明暗 12 時間サイクル(明期 AM6:00~PM6:00) とした。 ソムノペンチル麻酔下で開腹後,空腸(空腸吻合部から 15cm の長さ)と結腸(回 盲弁から 5cm 離して 15cm の長さ)の 5 cm の連続する断片をそれぞれ切り出した。こ の腸断片は,先の鈍いガラス棒で裏返し,その末端を絹糸で結紮した。もう一方のサ ックの末端は,漿膜側溶液 0.4 mL(10 mM Tris-Hcl buffer (pH 7.4),125 mM 塩化 ナトリウム, 4 mM 塩化カリウム,10 mM グルコース,1.25mM 炭酸 Ca またはマルト ビオン酸 Ca)を注入後に結紮し,予め混合ガス(O₂/CO₂=95/5,V/V)で充分にバブ リングして 37℃に保温された 200 mL の粘膜側溶液 120 mL(10 mM Tris-Hcl buffer (pH 7.4),125 mM 塩化ナトリウム, 4 mM 塩化カリウム,10 mM グルコース ,10 mM, 20 mM,40 mM 炭酸 Ca またはマルトビオン酸 Ca)へ投入した。反転サック投入時を吸 収開始として,インキュベート開始後 30 分後に反転サックを取り出し, 内液中の Ca 量を OCPC 法で測定を行った。なお,小腸反転サックは Wilson と Wiseman(1954) の方法を一部改変し作成した。 第 3 節 統計解析 データは平均±SE で表した。二元配置分散分析にて Factor A を Ca 源の違い, Factor B を Ca 濃度とし,検定を行った。Student の t-検定は各 Ca 濃度における 2 群 間での検定に用い,有意差がある場合はマルトビオン酸 Ca 群にアスタリスク(*) を記載した。一元配置多重比較は同じ Ca 源の各 Ca 濃度データ間での検定を行い,第

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40 3 章と同様の手順で解析を行った。 以上の検定はすべて危険率 5%未満(p<0.05)にて有意差ありと判断した。解析には, エクセル 2010 およびエクセル統計 2012(社会情報サービス,東京,日本)を用いた。 第 4 節 結果 反転サック内に取り込まれた Ca 量を Fig. 4-a,Fig. 4-b に示した。空腸,回腸と もにマルトビオン酸 Ca 群の Ca 吸収量は炭酸 Ca 群と比較して有意に増加した。また, マルトビオン酸 Ca 群では,空腸では Ca 濃度 40 mM において 10,20 mM よりも有意な Ca 吸収の増加が見られ,回腸では Ca 濃度 20,40 mM において,10 mM よりも有意な Ca 吸収の増加が確認された。さらに,同じ Ca 濃度間では,空腸,回腸ともにマルト ビオン酸 Ca 群では炭酸 Ca 群と比較して有意な Ca 吸収の増加が確認された。 第 5 節 考察 第 4 章では,ラット小腸反転サック法によるin vitro での Ca 吸収動態について検 討を行った。 炭酸 Ca 群では,腸管吸収量に頭打ちが見られる一方,マルトビオン酸 Ca 群では濃 度依存的な Ca の腸管吸収の増進が見られ,またどの Ca 濃度においても炭酸 Ca 群よ り有意な吸収の増加が確認された。これらの結果はマルトビオン酸が腸管内での Ca の可溶化を維持することで Ca 吸収を亢進させる作用機序を支持している。 以上の結果をまとめると,第 4 章で確認されたin vivo 試験での,吸収性乏しい炭

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41

酸 Ca の一部をマルトビオン酸 Ca に置換えるだけで非常に優れた Ca や Mg の吸収増進 効果はマルトビオン酸が腸管全体で Ca や Mg 可溶化状態を維持したことで,効率的な Ca や Mg 吸収が行われたためと推測された。

(49)

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43

5 章 ラット空腸結紮ループによるマルトビオン酸 Ca の吸収性評価

Exp. 4)

第 1 節 緒言 マルトビオン酸はin vitro 試験において各種消化酵素にとってほとんど分解を受 けないこと(深見 2006),小腸で消化を免れたマルトビオン酸は盲腸へ到達し腸内細 菌により資化され SCFA を産生することを第2章,第3章での in vivo 試験で確認し た。しかしながら,マルトビオン酸の腸管内における吸収動態については明らかにさ れていない。このような物質の消化管内動態を考察する際に有用な実験手法の一つと して腸管ループ法がある。この手法はin situ における薬物動態をはじめ,物質の吸 収性を推測する方法として広く使用されてきた。 そこで第4章では,空腸ループ法によるin situ の実験にて,空腸におけるマルト ビオン酸 Ca の消化管内動態の解析を行うことを目的とした。 第 2 節 動物実験方法 2-1 実験動物 実験動物は 7 週齢の Wistar 系 ST/Clean 雄ラット(体重 200~220 g)を日本エスエ ルシー株式会社より購入した。 2-2 空腸ループの作成方法

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44 ラットは 5 連の個別ゲージに入れ,実験環境に慣らすために 3 日間,AIN-76 標準飼 料と水道水を自由摂取させた。そして解剖 24 時間前に,絶食させ,水道水のみを与 えた。なお,飼育室の温度は,23±1℃,明暗 12 時間サイクル(明期 AM6:00~PM6:00) とした。 ラットはソムノペンチル麻酔下で開腹後,トライツ靭帯からその下方 10 cm までの 空腸を探り,腸管膜を破損することのないように注意しながら軽くつまみ外へ引き出 した。空腸内に内容物が残っている場合は回腸側へ押しやり,側近を平行に走ってい る血管を共に結紮しないように一端を完全に絹糸で結紮した。結紮部位から 6.5 cm のところから,37℃に温めた 20 mM マルトビオン酸 Ca 溶液(pH 6.81)を 空腸内に 注射針を用いて 0.6 mL 注入した。注射針を抜くと同時に 6 cm の位置であらかじめ軽 く縛っておいた絹糸で完全に結紮し,内液 0.6 mL を含む長さ 6 cm の空腸ループとし た。空腸ループ内へ注入後,0 分,15 分,30 分,60 分,120 分,180 分後に,直ちに ループを摘出し,生理食塩水でループ内を洗い流して内液を回収した。実験はそれぞ れn=6 で行った。なお,空腸ループは To-o ら(2003)の方法を一部改変し作成した。 2-3 空腸ループ内液中の全糖量および Ca 量の測定 空腸ループ内液中のマルトビオン酸量はフェノール-硫酸法(DuBois ら 1956)を用 いて全糖量として求め,Ca 量は OCPC 法にて測定を行った。各空腸ループ摘出時間に おける内液中の全糖量および Ca の減少率から,それぞれのマルトビオン酸および Ca の残存率を算出した。

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45 第 3 節 統計解析 データは平均±SE で表した。統計処理は Student の t-検定を用い,各時間におけ るマルトビオン酸残存率と Ca 残存率間での検定を行った。マルトビオン酸残存率に 対して有意差(p<0.05)が確認された場合に,Ca 残存率にアスタリスク(*)を付 して示した。解析には,エクセル 2010 およびエクセル統計 2012(株式会社社会情報 サービス,東京)を用い,有意な確率水準を 5%未満とした。 第 4 節 結果 空腸ループ内に残存した,マルトビオン酸と Ca の残存率の経時的変化を Fig. 5 に 示した。マルトビオン酸は,空腸ループに注入後 60 分で約 90%,120 分で約 80%, 180 分で約 70%の残存率であり,多くは腸管吸収されず腸管内に残存した。一方 Ca は,空腸ループに注入後 60 分で約 65%,120 分で約 30%,180 分で約 15%の残存率 であり,ほとんどが吸収された。 第 5 節 考察 第3章,第4章のin vivo 試験,第5章の in vitro 試験において,マルトビオン 酸の Ca および Mg 吸収促進効果は,小腸上部での可溶性に優れ,この部位で吸収が速 やかに進むためと予測した。そこで,第 5 章では,空腸ループによるin situ 消化管 内動態について検討した。その結果,マルトビオン酸 Ca の Ca 部分は,180 分で約 15% の残存率であり,ほとんどが吸収されたのに対し,マルトビオン酸部分は,約 70%の

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46 残存率であり,多くは腸管吸収されず腸管内に残存していることを明らかにした。 以上の結果より,マルトビオン酸 Ca の Ca 部分は,速やかに吸収されること,マル トビオン酸部分は,殆どが消化管内に留まることが明らかになった。こうした Ca の 吸収促進効果は,牛乳を摂取した場合のカゼインホスホペプチド(CPP)の効果と似て いると考えられる。内藤(1986)は,CPP について比較的弱い Ca2+イオンの結合性は, リガンドとしての CPP から遊離して輸送系に取込まれるために非常に好都合である ことを指摘している。 今回の空腸ループ実験において管腔内 Ca 残存量が経時的に急速に低下した様相か ら,マルトビオン酸 Ca の主要な吸収部位は小腸上部であると考えられた。一方,マ ルトビオン酸部分については,管腔内に多くが残存した状態になっており,小腸から 大腸に向かうと考えられる。今回の実験からは,Ca 摂取量が多く,大腸内に到達した マルトビオン酸が吸収を免れた Ca に対して効果を持つかどうかは不明である。もし, 大腸内においても Ca 吸収促進効果を発揮する場合には,マルトビオン酸が腸管内で Ca の可溶化状態を維持したことで,管腔内の pH 条件に依存することなく腸管全体で 効率良く Ca 吸収を行う可能性がある。こうした点については,マルトビオン酸 Ca の 消化管での吸収部位をさらに別の実験により特定したり,盲腸における Ca 吸収の寄 与を除いた条件での効果を見るなど,別のアプローチによりさらに検証が可能である と考えられる。少なくとも本実験では,マルトビオン酸 Ca は,空腸における Ca 吸収 を亢進させることが明らかにできた。 以上の結果をまとめると,マルトビオン酸 Ca が小腸で吸収を受ける際,Ca 部分が 選択的に吸収され,一方でマルトビオン酸の大半は小腸での吸収を免れ大腸に到達し,

(54)

47

大腸内発酵に寄与することが明らかとなった。

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(56)

49

6 章 ラットにおける潜在性鉄欠乏状態からのマルトビオン酸の早期

回復の検証(

Exp. 5)

第 1 節 緒言 鉄欠乏性貧血は,鉄の喪失が鉄供給を上回り,負のバランスへ傾くことにより鉄欠 乏状態に陥ることによって生じる。鉄の出納が負に傾くと,まず貯蔵鉄の減少がはじ まる。生体で利用されなかった鉄は,貯蔵鉄としてフェリチンやヘモジデリンとして 肝臓や腎臓に存在し,特に肝臓において貯蔵される量が多くを占める(Pantopoulos ら 2012)。よって血清フェリチン値や肝臓中の鉄含量が先ず低下し,また総鉄結合能 (TIBC)が増加することで血清トランスフェリン鉄飽和度(TSAT)が低下し「潜在性 鉄欠乏」となる。 マルトビオン酸は,鉄においてもイオン結合しても高い水溶性を維持する特徴を持 っていることが知られている(深見 2012)。そこで第 6 章では,マルトビオン酸を配 合した飼料をラットへ投与した際の,潜在性鉄欠乏からの回復効果について検証する ことを目的とした。 第 2 節 動物実験方法 2-1 実験動物 実験動物は 8 週齢の Wistar 系 ST/SPF 雄ラットを日本エスエルシー(静岡,日本) より購入した。

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50

2-2 マルトビオン酸 Ca の調製

飼料中に用いたマルトビオン酸 Ca は,第 2 章 第 2 節 2-2 準じて調製した。 2-3 実験飼料の調製

試験飼育の飼料組成を Table 6-1 に示した。飼料は AIN-93G 飼料組成を一部改変 し,貧血誘導期間の飼料として AIN-93G 標準飼料(Control 飼料;Control 群)およ び Control 飼料から鉄を除いた(鉄欠乏飼料)の 2 種類を調製した。そして鉄欠乏か らの回復期間中の試験試料として Control 飼料(MBCa-0 群),Control 飼料にマルト ビオン酸 Ca を 3%添加した飼料 (MBCa-3 群),マルトビオン酸 Ca を 6%添加した飼料 (MBCa-6 群)の計 3 種を用いた。なお 3 種の回復飼料の鉄含量は,AIN-93G 標準飼料の 100%相当になるように調製した。 2-4 動物実験方法 8 週齢のラットを平均体重が等しくなるように Control 群(n=7)と鉄欠乏群(n =21)に群分け後,11 日間飼育を行い,鉄欠乏群については潜在性鉄欠乏状態へ誘導 した。次に回復期間に移行し,鉄欠乏群は血清鉄濃度(SI)が等しくなるように MBCa-0 群,MBCa-3 群,MBCa-6 群に群分け(n=7)し 14 日間飼育行った。なお,飼育期間中 の飼料は自由摂食とし,飲料水はイオン交換水を与えた。回復期間開始 0 日目,4 日 目,11 日目, 15 日目を採血日とし,尾静脈より 500 µL 採血を行った。 2-5 解剖 ラットは本飼育開始後 15 日目の 8:00 am にソムノペンチル(共立製薬,東京,日

(58)

51 本)麻酔下で開腹後,ヘパリン処理したシリンジを用いて腹部大動脈から採血後,頸 椎脱臼により安楽死させ,脾臓および肝臓を採取し重量を測定した。肝臓は生理食塩 水にて潅流を行い肝臓内の血液を除去した。 第 3 節 各サンプルの調製法および分析方法 3-1 血液学的パラメーターの測定 尾静脈より採取した血液の一部はエデト酸二ナトリウムを 1.5 mg/mL blood 添加し てヘモグロビン濃度(Hb),ヘマトクリット値(Ht)を採血当日に分析した。また残り の血液は 4℃,2,000×g で 20 分間遠心分離後し,得られた血清は SI,不飽和鉄結合 能 (UIBC)を採血当日に測定した。Hb は,SLS ヘモグロビン法(Oshiro ら 1982),Ht については,血液をマトクリット遠心機(KUBOTA 3220)で 12,000 rpm,5 分間遠心 分離後,全血液量に対する赤血球量の百分率を測定した。SI は Nitroso-PSAP 法(Beale ら 1962),UIBC はバソフェナントロリン法(Ramsay 1997)を用いて分析を行った。 なお,TIBC および TSAT は以下の式を用いてそれぞれ算出した。

TIBC (µg/dL) = SI (µg/dL) + UIBC (µg/dL) TSAT (%) =100× [SI (µg/dL) / TIBC (µg/dL)]

3-2 肝臓中鉄量および見かけの鉄吸収率の測定

粉砕処理した糞 0.1g または,肝臓 0.5 g をテフロンビーカーに秤り取り,濃硝酸 11 mL,70%過塩素酸 10 mL,6 M 塩酸 7 mL をそれぞれ加え,ホットプレートにて 140℃,

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52 390 分間加熱し湿式灰化した。肝臓中または糞中の鉄の定量は ICP-OES(Optima7300DV, Perkin Elmer,米国)にて行った。 なお見かけの鉄の吸収率は糞中への鉄の排泄量から次式により算出した。 見かけの鉄吸収率(%)=100×{(鉄摂取量-糞中鉄量)/(鉄摂取量)} 第 4 節 統計解析 データは平均±標準誤差で表した。統計処理は先ず Student の t-検定を用い, Control 群と MBCa-0%群間での検定を行った。Control 群に対して有意差が確認され た場合に,MBCa-0 群にアスタリスク(*)を付して示した。そして鉄欠乏群である 3 群(MBCa-0 群,MBCa-3 群,MBCa-6 群)のデータについてバートレット検定により等 分散の場合は一元配置の分散分析を行い,続いて Tukey の多重検定により解析を行っ た。等分散でない場合は,ノンパラメトリック検定およびクラスカル・ウォリス検定 を行い,続いて Steel-Dwass の多重検定により解析を行った。有意差記号にはアルフ ァベットを用いて,同じ記号を含まない群間において有意差ありとした。以上の検定 はすべて危険率 5%未満(p<0.05)にて有意差ありと判断した。解析には,エクセル 2010 およびエクセル統計 2012(社会情報サービス,東京,日本)を用いた。 第 5 節 結果 5-1 成長パラメーター 最終体重,体重増加量,飼料摂取量,飼料効率を Table 6-2 に示した。各項目とも 群間に差は見られなかった。

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53

5-2 血清鉄濃度,血漿トランスフェリン飽和度

試験期間中の SI を Fig. 6-a に示した。SI は回復開始時点において,Control 群で は 231 µg/L に対し,鉄欠乏食群(MBCa-0 群,MBCa-3 群,MBCa-6 群)は,約 84 µg/L まで低下し,Control 群と MBCa-0 群との比較では,MBCa-0 群は試験 11 日目まで有意 な低下が確認された。鉄欠乏群間での比較では MBCa-0 群に対して,試験 4 日目は 6 群において有意な上昇が観察され,試験 11 日目および 15 日目において MBCa-3 群で有意に高い値であった。

TSAT は回復開始時において,Control 群では 57%に対し,鉄欠乏食群は,18%まで低 下し,Control 群との比較では,MBCa-0 群は全ての期間で有意な低下が確認された (Fig. 6-b)。鉄欠乏群間での比較では,MBCa-6 群は試験 4 日目および 11 日目,MBCa-3 群は試験 4 日目以降で MBCa-0 群に対して有意に高い値であった。

5-3 肝臓重量,脾臓重量および肝臓中鉄含量

肝臓重量,脾臓重量および肝臓中鉄含量を Table 6-3 に示した。肝臓重量,脾臓重 量については全群間に差が見られなかった。肝臓中鉄含量は Control 群と比較して 0 群は有意な低下を示した。鉄欠乏群間での比較では,0 群と比較し MBCa-6 群で有意に高い値を示した。

第 6 節 考察

Table 1   Solubility of several calcium sources in water
Table 2-1   Composition of the experimental diets (g/100 g diet) (Exp. 1)
Table 2-2   Growth parameters , food intake and feed efficiency of rats fed on the experimental diets (Exp
Table 2-3   Weight of cecal tissue and cecal content, pH of cecal content and amount of short-chain fatty acids          in cecum of rats fed on the experimental diets (Exp
+7

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