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第 5 章 表面開始原子移動ラジカル重合を用いた

5.2 原子移動ラジカル重合

5.2.2 特徴と反応メカニズム

ATRP の反応にはモノマー, 反応開始剤, 遷移金属イオン, 配位子とこれらを 溶解する溶媒が必要となる(モノマーが溶媒となる場合もある). ATRPはモノ マーの構造によって反応速度が大きく違うため, 反応条件に拘束がある場合は モノマーを選ぶ必要がある. 一般に本研究で使用するメタクリル系のモノマー では反応が速い. 反応開始剤にはハロゲン化アルキル化合物が用いられる. ハ ロゲン化メチルプロピオン酸エステルが用いられることが多い. ハロゲンは臭 素または塩素で, 臭素は反応性が高いが塩素は安定性が高い. 遷移金属イオン は二つの酸化数を持つ物を使用する. コバルトイオンや鉄イオンを使用する場 合もあるが, 銅イオンが用いられる場合が多い. 配位子は遷移金属イオンに配 位結合する有機分子でアミン系化合物が用いられる. 遷移金属イオンに配位子 が配位したものを ATRP においては触媒と呼ぶ. 一つの触媒には二つの状態が あり, ここではそれぞれ状態の触媒を低酸化数触媒と高酸化数触媒と呼ぶ. 配 位子は遷移金属イオンの溶媒への溶解度や配位金属イオンによる重合の触媒能 力に大きく影響する.

次に具体的な重合反応メカニズムを説明する. まず低酸化数触媒が反応開始 剤 の ハ ロ ゲ ン 原 子 を 引 き 抜 き, 高 酸 化 数触 媒 ハ ロ ゲ ン 原 子 複 合 体 と な る

(Activation). ハロゲン原子を引き抜かれた開始剤はハロゲン原子が存在した場

所に一次ラジカルが発生する. 一次ラジカルとモノマーが反応すると成長反応

(Propagation)が起き, ポリマーが成長する. 成長ポリマー端に存在する成長ラ

ジカルが高酸化数触媒ハロゲン原子複合体と反応するとハロゲン原子が付加さ れて成長ラジカルは消滅し, 触媒は低酸化数触媒になる(Deactivation). ハロゲ ンが付加されたポリマーの成長点は反応休止状態になっており, 再び低酸化数

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触媒と反応すると先ほどと同様に成長ラジカルが発生し, 成長反応が起きる.

これらの反応の平衡は図 5-1 の式で表すことができる. またこれらの状態遷移 図を図 5-2に示す.

この様な反応の他に副反応が存在する. 一つ目は低酸化数触媒が反応溶液 中の溶存酸素などによって酸化され高酸化数触媒となってしまう反応である. その為, 酸素が存在する場合, ATRP の反応が起きにくくなる. 二つ目は停止反 応(Termination)でこれは通常のラジカル重合と同じである. ATRP では休止反 応(Deactivation)と成長ラジカル生成反応(Activation)の平衡が休止反応側に偏 る様に条件を設定するが, 例えば低酸化数触媒の濃度が高く反応活性が高い配 位子を使用した場合には成長ラジカル生成反応が優位になり成長ラジカルの濃 度が高くなる. すると通常のラジカル重合に近くなり, 停止反応や連鎖移動反 応が起きやすくなる. この二つの副反応の他にはこの図には示していないが触 媒が金属イオンと配位子分子に分解する反応もある.

図 5-1 ATRP反応の反応式

Mtn+/ L Mt(n+1)+ X / L + e

-X* + e- X

-R-X R* + X* X- + Mt(n+1)+ / L Mt(n+1)+X / L

KET KEA KBH KX

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図 5-2 ATRP反応状態遷移図

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